フェルミ推定の教科書【原則編 5/7】Step4 各項目の具体的な数値を設定 & Step5 数値の設定理由を説明:ケース面接で他の学生と差がつくポイントとは?
2018/07/07
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本コラムでは、前回に引き続き、「とあるカフェ一店舗の売上金額は?」というフェルミ推定の回答例に沿って、ケース面接で「やりがちな間違い」や「差がつくポイント」を解説していきます。
ここまでのコラムを読んでいることが前提ですので、併せてご覧ください。
今回の記事の要点は下記3点です。
- 前提や状況は、具体的な数値の設定の段階でだんだんと細かくしていけ
- 最初に置いた前提は、適宜見直して訂正せよ
- 絶対的な数値の大きさではなく、他の数値との相対的な大小を議論せよ
【Step4】各項目の具体的な数値を細かく設定していく
さて、数式をある程度詳細に分解し、面接官とも認識が合致したところで、ようやく具体的な数値を設定していくことになります。
以下の項目の数値を埋めることで、数値計算が可能な段階までもっていきましょう。
※いったん、テイクアウトの視点について、まだ気が付いていないと想定してください。テイクアウトの視点は、次のステップで言及します。
さて、順番に数値を設定していくわけですが、たとえば以下のように数値を設定された場合、聞き手である面接官はどう感じるでしょうか。
・営業時間は、10時から22時
結論を述べると、これらの数値が妥当か否かは、「現時点では、曖昧すぎて判断が難しい」です。以下、その理由を検証していきましょう。
※再掲【ポイント9】面接官と明示的に共有できていない前提・状況がないか、適時確認する
さて、Step3に引き続き、ここでも前提・状況の設定が必要になってきます。
何を想像して、占有率80%と置いたのか、はっきりしない
いわれてみれば当たり前ですが、単純に「終業後の時間帯」といっても、様々な要因で席の占有率は変化します。例えば以下のような要因です(全て挙げるときりがないので、いったん一部を掲載します)。
➢ 「平日」 or 「休日」
上記の例は、「年末年始」のような「特殊な例」を持ってきているわけではありません。つまり、どの設定でも、「自然な設定」といえるでしょう。
どの前提も、ある程度自然であるため、「明示しなくても、明らかにこの前提である」とはいえません。つまり、「面接官と前提を共有」しないと、同じ前提を持っているとは限らないため、議論が成り立たないリスクがあります(※一方、わざわざ明示しなくてもわかる条件として、例えば、「日本の店舗である」などが当てはまるでしょう)。
適時、前提や状況の設定を行う
以上のように、前提・状況の設定は、様々なタイミングで必要になります。特に、面接官との話がかみ合わなくなった時が要注意です。このような場合、お互いが想定している前提が異なっていることが少なくありません。少し冷静になって、自分がどのような前提を持っているのか、整理しましょう。
【やりがちなミス】矛盾した前提・状況を設定してしまう
この後は、一旦「平日」の「オフィス街」の店舗をイメージしているとして、話を進めていきます。
さて、次は「営業時間」に設定した値を見てみましょう。少し違和感があると感じた方はいないでしょうか。
合理的に考えて、朝10時に開店とは思い難い
常識的に考えて、カフェが朝10時に開くとは思い難いです。特に、今回は「平日」の「オフィス街」ですので、「朝の出社前サラリーマン」の需要を取り込むために、朝早い時間から店を開けるのが「合理的」といえるでしょう。つまり、今回の営業時間の設定は、論理的に不自然な設定といえます。
さて、このような不自然な設定はなぜ起こるのでしょうか。またそれを避けるにはどうすべきでしょうか。
【ポイント10】前提・状況の設定は、最初ではなく、適時必要なタイミングで実施する
さて、よく「ケース面接の最初に、前提や条件を確認すべき」という提言がありますが、これを「“全て”の前提を最初に確認する」と理解するのは危険です。
そもそも受験者は、フェルミ推定のテーマについて初心者である
ケース面接は、受験者の専門や興味とは全く関係なく、テーマが選ばれます。つまり、よく知らない内容について議論させられることが大半です。
例えば、今回の場合、カフェがテーマですが、ほとんどの方は、あくまで消費者として「たまにカフェを利用する」といった程度であり、企業サイドでカフェにかかわっている(例: カフェでバイトしている)などという場合は少ないでしょう。
テーマについて理解しないと、適切な前提を設定できない
「ポイント3」でも議論した通り、具体的にイメージすることで、様々な視点が整理され、テーマに対する理解が深まります。今回の場合、「朝、大学に行く前にカフェを利用したことがあったな~」といったことをイメージできていれば、そもそも「10時開店」などという前提を置いてしまうリスクはなくなります。
前提や条件を早く設定しすぎると、思考停止状態で数値を決めることになるため、このような不自然な設定をしてしまいます。あくまで、必要になったタイミングで設定をしましょう。
前提の設定は、議論が進むにつれて、少しずつ細かくなっていく
Step3の段階では、「スターバックス」というチェーンの種類のみ、設定が必要でしたが、このStep4という、具体的な数値設定を行う段階になると、さらに「どのような立地のスターバックスか」という立地の設定が必要になりました。このように、必要に応じて、だんだんと設定を細かくしていくのが自然です。
テクニック:最初に置いた前提は、利用時に見直す。間違っていたら、素直に訂正する
そうはいっても、なかなか「適切なタイミング」なるものを判断することは困難です。現実的には、どう対応すべきでしょうか。
まず、面接の最初に「営業時間を10時から22時」とすでに設定してしまったとしましょう。
しかし、このStepまで、この設定を利用しなかったはずです。つまり、早すぎた設定であったといえます。また、「ポイント3」にて実施した、具体的なイメージによってわかった内容によって、情報や視点が増えています。
このようなときは、改めて自分で設定した前提に矛盾が発生していないか、一度考え直すことが重要です。
万が一、イマイチだと感じた場合は、「よく考えたら、朝営業していないのはおかしいので、朝7時開店に変更します」と、素直に訂正すればよいでしょう。
自分の意見を訂正できることは、客観性という思考力の高さを示すことになる
訂正というと、少しイメージが悪いと感じるかもしれませんが、「自分の考えを、客観的に見る」「間違ったところがあれば、素直に訂正する」といった姿勢があるという意味で、むしろ思考力が高いと、面接官も評価してくれる可能性が高いです。
面接官は、不自然な前提であることに気が付いている可能性が高いです。くれぐれも、イマイチな前提をごまかしたまま進めないよう、注意してください。
【Step5】なぜその数値を設定したのか、理由を説明する
さて、様々な側面から考えた結果、以下のように数値を設定し終えたとしましょう。
その次は、当然「なぜそのような数値を置いたのか」を説明しなければなりません。場合によっては、面接官から、より細かく「なぜその数値にしたのか」を質問されるでしょう。
さて、その時、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。
まず、「議論がかみ合わない」と感じたときは、「ポイント9」で説明した通り、前提・条件の設定に不十分な箇所がないか、見直すことが必須です。
ここでは、それ以外の注意点について、言及していきます。
【やりがちなミス】絶対的な数値の大小を気にしてしまう
比較的よく見られるのが、数値の細かい値を、いくつにするか迷うという現象です。例えば、「夕方の時間帯は、だいたい席が埋まっているだろう。しかし、数値を70%と80%のどちらにすべきだろうか」といった感じです。
そもそも、絶対的な数値の妥当性など、検証が難しい
しかし、占有率の数値が、80%か70%か程度の違いは、様々な要因で発生します。「どのオフィス街か」「通りのどちら側か」「近くには、どんな業種のオフィスが、どの程度の従業員を抱えているか」といった非常に細かい条件によって変化します。同じ店舗の「熱い真夏の平日金曜日」を想像したとしても、先週と今週で、10%くらい変化する可能性があることは、容易にイメージできるでしょう。
そして、このようなとても細かい条件を、短い面接時間内に、いちいち設定する余裕はありません。そのため、絶対的な数値を、80%と70%のどちらにするのかといったことを、決定したり、議論したりすることは困難です。
では、数値の設定時は、何を気にするべきでしょうか。
【ポイント11】絶対的な数値の大きさではなく、他の数値との相対的な大小を議論する
上記の通り、絶対的な数値の大きさを、適切に定義することは、フェルミ推定に置いて困難です。しかし、相対的な大小関係であればどうでしょうか。
平日のオフィス街であれば、「ランチ時間帯が一番混んでいる」「朝早い時間や夜遅い時間が比較的すいている」といったあたりは、感覚的に妥当かと思います。つまり「昼>夕方>夜≒朝」といった順番を振る程度であれば、論理的な議論が、比較的しやすいでしょう。
フェルミ推定は、「0%」「100%」といった数値設定を除いて、正確な数値を設定するのは困難です。そのため、絶対的な数値をどうするか考えるより、まず、「相対的な数値の大小関係」を考え、次にそれに会うような数値を入れていくのが、現実的に妥当でしょう。また、この方法であれば、議論が論理的かつ有意義になります。
絶対的な数値は、「昼>夕方≒夜>朝」に対して、「100>80>60≒60」「90>70>40≒40」など、どのように設定しようと、あまり論理性に対する議論はできないでしょう。面接官から、細かく質問・指示された場合は別ですが、基本的にあまり気にする必要はないでしょう。
フェルミ推定は、ある意味「数値を曖昧なまま議論する」という側面があるため、絶対的な数値の妥当性検証には限界があります。しかし、相対的・比較でみるレベルであれば、論理的な妥当性検証がしやすいです。
数値の絶対感を全く気にする必要がないわけではありませんが、それよりも、まずは相対感を意識した議論を心がけましょう。
では最後に、今回の記事の要点を改めてまとめると下記3点です。
- 前提や状況は、具体的な数値の設定の段階でだんだんと細かくしていけ
- 最初に置いた前提は、適宜見直して訂正せよ
- 絶対的な数値の大きさではなく、他の数値との相対的な大小を議論せよ
さて、次回のコラムでは、次のStep6の解説を行っていきます。併せてご覧ください。
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