フェルミ推定の教科書【原則編 4/7】Step3 全体像に過不足がないか確認(続き):ケース面接で他の学生と差がつくポイントとは?
2018/07/06
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本コラムでは、前回に引き続き、「とあるカフェ一店舗の売上金額は?」というフェルミ推定の回答例に沿って、ケース面接で「やりがちな間違い」や「差がつくポイント」を解説していきます。
ここまでのコラムを読んでいることが前提ですので、併せてご覧ください。
今回の記事の要点は下記4点です。
- 面接官のツッコミには「反論」ではなく、議論の上で回答に反映せよ
- 問題の前提条件を自ら設定し、漏れなく面接官と共有を
- 面接官に話が伝わらないときは、説明のわかりにくさではなく、前提共有の不足を疑え
- 具体的な数値の設定の手前までで、厳しい選考結果にほぼ確定してしまう場合が多い
※前回からの続き: 【Step3】検討の全体像に過不足がないかを確認する
引き続き、この後のStepで細かい数値を設定する前に、押さえておかなければならない事を解説していきます。
【やりがちなミス】 面接官の指摘をうまく議論に組み入れられない
さて、直前の「ポイント7」で言及した、「面接官は適時修正やアドバイスをしたい」という部分に関連した注意点を、ここで提示しておきます。
ここまで、数式の分解など、抽象的・定性的な論点の整理をしてきました。もし、この段階でイマイチと思われる箇所がある場合、次のステップである、具体的な数値設定に入る前に、面接官が質問・突っ込みを入れてくるでしょう。
さて、この時、面接官の質問に対して、どのように対応すべきでしょうか?
自分が述べた意見の正しさを証明することが求められていると考えてしまう
この時、「質問・突っ込み」に対して、「その指摘は正しくない。何故ならば、○○だから」といった回答を“しなければならない”と感じる方が少なくありません。
もちろん、このような回答をすることが正しい場合が、ないわけではありません。しかし、後述するように、特に新卒採用のケース面接において、このような場合は稀です。
基本的に、ケース面接にて、「鎌をかける」ことを目的とした質問がなされることは、ほぼないでしょう。大抵は、面接官が「何かおかしい」と考えているから、質問してきます。
以下、少し考察してみましょう。
【ポイント8】面接官をディスカッション相手と考え、指摘を適時自分の意見に反映する
まず、結論としては、面接官を「ディスカッションに付き合ってくれる先輩」くらいに考えるのが良いでしょう。
もしかしたら、面接官から「社長に対するプレゼンだと思って、話してみて」と言われるかもしれませんが、その場合でも、同様に面接官を「ディスカッションに付き合ってくれる先輩」と考えるくらいで、現実的にはOKです。
そもそも、短い時間で論理の穴のない回答など導けない
そもそも、ケース面接は、よく知らないテーマに対して、短い時間で回答する必要があります。さらに、直前の「ポイント7」でも述べた通り、最初の考える時間は3分程度と短いです(中途採用面接の場合より短い)。
つまり、新卒採用のケース面接において、そもそも「論理的に穴のない回答」を実施することなど不可能に近いですし、直前の「ポイント7」に書いた通り、それを面接官も求めていないからこそ、考える時間を3分しか与えないわけです。
上記の背景から、面接中に、面接官の指摘を受け入れるような場面が存在する(回答にイマイチな箇所が存在する)のが、むしろ自然でしょう。
あまり素直すぎるのもよくない
一方、これは、面接官の指摘に対して、「はい、わかりました」とそのまま反映したり、「どこが間違っているでしょうか」と聞き返したりすることを意味してはいません。前者は「何も考えずに、回答を話していたのか」、後者は「質問し返す前に、自分の頭で考えろ」と、面接官に受け取られ、「思考力がない」と判断されてしまいます。
対応策: 面接官の指摘を受け入れつつも、自分の考え自体は、しっかり表現する
現実的には、どう対応すべきでしょうか。パターンによって異なるので、客単価に関する2つのタイプの質問をイメージとしてあげながら、説明します。
質問A: 客単価に、「ドリンク」と「食事」があると話していたけど、他にもあるよね?
この質問の場合、最も良くないのは、「どこが抜けているのでしょうか」と質問し返すことです。これは、思考力がないだけでなく、そもそも「思考力を発揮する習慣や意思すらない」と判断されてしまいます。
また、ほとんど考える時間を持たず、「わかりません」「特に抜けている箇所はないと思います」と答えることも、考える習慣がないと思われてしまうので、同様にNGです。
まずは、少し自分の頭で考えてみましょう。場合によっては、「30秒(1分)考える時間をください」と言って、明確に考える時間をもらいましょう。
しかし、場合によっては、考えてみても、やはり何も思いつかなかったという場合もあります。面接時間は限られているため、この質問に何分も時間を使うことはできません。
その場合は、「考えてみたのですが、私には、○○や△△程度しか思いつきませんでした。もし、お気づきの点があれば、教えていただいてもよろしいでしょうか。もしくは、一旦先に進めてもよいでしょうか」といった形で、話を進めるしかないでしょう。
一番まずいのは、「自分で考えようとする姿勢が見えない」ことです。注意してください。
質問B: 客単価には、タンブラーやコーヒー豆などもあるよね?
まず、この質問に対しては、「客単価に対するインパクトがほとんどない」と回答するのが論理的な気がします。タンブラーやコーヒー豆を買っている人の割合は、きわめて小さいと思われるからです。
しかし、この考えは、あくまでご自身の仮説・感覚に過ぎないので、正しいか否かをしっかりと検証したわけではありません。また、もしかしたら面接官は、「タンブラーやコーヒー豆の客単価を、どう論理的に計算するのが見たい」といった考えを持っているのかもしれません。
このような場合、たとえば、「私の考えでは、それらの商品は、購入する人が少なく、客単価に与える影響は極めて小さいと考えます」と回答しつつ、「しかし、しっかりと検証したわけではないため、念のため、検証してみます or 念のため検証したほうが良いでしょうか」といった回答をするとよいでしょう。
このとき、「はい。わかりました」と回答するのはイマイチです。このように回答すると、面接官から「何も考えずに、タンブラーやコーヒー豆を無視していたのか」とマイナスに見られかねません。
何故そのように考えたのか、自分の考えを伝えつつ、相手の指摘を柔軟に取り入れる姿勢を見せましょう。
面接官は議論相手。指摘の内容自体は、素直に受け取り、回答に反映する
直前の「ポイント7」で言及した通り、面接官の質問は、方向性を修正したりするための助け舟として行われている側面があります。しかしながら、一方で、あなたの論理力を確認するために、発言の理由や背景を確認している側面もあります。
面接官の質問があったときは、面接官の指摘を柔軟に取り入れる姿勢を持ちつつも、あなたがなぜそのように考えたのか、理由をしっかりと表現しましょう。
実際の仕事でも、似たような状況は多い
そもそも、なぜケース面接で論理思考を見るかと言えば、もちろんコンサルの仕事に必要だからです。しかし、それ以外にも重要なことはあります。コンサルの仕事はチームで行うものであり、上司によるレビューや議論は、実際の仕事で頻繁に行われます。
論理的思考力だけでなく、レビューや議論に必要な、「他者のアドバイスを聞き入れて、自分の意見をブラッシュアップできる柔軟な姿勢」も見られていると、気軽に考えながら、取り組みましょう。
【やりがちなミス】 面接官と意思疎通がうまくいかず、自分の話している内容が理解されない
さて、ここまで、様々なことを考慮しながら、全体像を整理してきました。
頭で考えたことは、当然、言葉にしないと、相手(面接官)に伝わりません。まず、「しっかりと考える」ことが重要&大前提ですが、せっかく考えた内容を、しっかりと相手に理解してもらわないと、評価されません。
ところで、ケース面接を受けたとき、「面接官に話が伝わらない」といった経験はないでしょうか。
面接官もプロのコンサルタントなので、論理的思考力がないとは思い難いです。一方で、後から振り返ってみても、自分の考えた論理におかしな箇所はないように思えます。では、なぜ、面接官に話が伝わらなかったのでしょうか。
【ポイント9】面接官と明示的に共有できていない前提・状況がないか、適時確認する
よく、ケース面接では、「前提を、最初に質問するか、自分で設定する必要がある」というアドバイスがなされています。
さて、何故このようなことをする必要があるのでしょうか。様々な理由がありますが、その一つは、「コミュニケーションを円滑に進めるため」です。
計算の「対象期間」を明確に定義する必要がある
さて、ここまで、「売上金額」を求めるための議論をしてきました。さて、この売上金額の「期間」(1日、1週間、1か月、1年など)は、明確に定義されていたでしょうか。
まず、上記の因数分解の式を見ると、何となく「1日」のように見えますが、面接官に対して、明示的に期間が提示されていないことは、きわめてリスクです。
これまでの数式の分解に、「営業時間」とありますが、そもそも「売上金額」の期間が定義されていないと、何が正解かわかりません。1日の売上であれば、営業時間の合計は、十数時間でしょうが、これが1週間、1カ月だと、大きく数値が変化します。
面接官が、前提・状況の設定に対して、適切と考えるものが存在する可能性もある
また、面接官が、特定の期間を求めている可能性がある点にも注意です。
仮に、あなたが、1日の売上を求めていたとしましょう。しかし、カフェは、季節はともかく、曜日によって売上が大きく変化します。そのため、面接官は、最低でも1週間以上の期間の売上を求めるのが“合理的”であると考えている可能性も否定しきれません。
こうなると、上記の数式の分解は、1日の売上を求めている受験者にとっては正しくても、そうではない面接官にとっては、間違った数式の分解になってしまいます。
「テーマの題材(カフェ)」が、何を対象としているのか、明確にする
別の例をあげましょう。そもそも、「カフェ」といわれて、イメージするものは、皆さん同じなのでしょうか。
「カフェ」「喫茶店」などと言いますが、この両者の違いは曖昧です。カフェの中に、喫茶店を含めて考える人もいれば、喫茶店は別の業態だと考える人もいるでしょう。
もし、受験者が、コメダ珈琲(いわゆる喫茶店)のような店舗をイメージしながら、議論を進めた場合、おそらく「イートイン」のみを考えるでしょう。
しかし、面接官がスターバックス(いわゆるカフェ)のような店舗をイメージしていた場合、「テイクアウトが抜けている」と感じるはずです。
前提や条件を明示的に伝えないと、議論がスムーズに進まない
今回のフェルミ推定では、最初に「スターバックス」と定義してしまいましたが、このような定義がない問題文も多いです。
議論をするときは、必ず「具体的にどのようなものをイメージしているのか」といった、問題の定義や対象範囲の確認を、明示的に実施しましょう。
お互いが想定している前提・状況の不一致は、基本的に受験者の説明不足と判断される
上記のように、前提・条件の説明不足によって、「受験者の持つ前提に立てば正しい」が、「面接官の持つ前提に立てば間違った回答にみえる」という事象が発生してしまいます。
この場合、面接官がそのことに気が付かなければ、「思考力が低い」と判断されます。仮に、面接官がお互いの前提の不一致に気付いたとしても、「どこを説明すべきか」という、論理的思考力やコミュニケーション力の部分の能力が低いと判断されるでしょう。つまり、どちらにしても、評価としてはマイナスです。
客観的な視点に立って、明示的に提示すべき前提や条件が漏れていないかチェックし、気が付いた時点で、適時面接官と共有しましょう。特に、議論がかみ合わないときに、意識してください。
前提・設定の定義の例については、色々と難しい部分もありますので、この後もストーリー内で随時言及していきます。
Step3のまとめ: 数値の議論をする手前までが勝負である
さて、この「回答Step3」は様々なポイントがあったので、ここでまとめておきます。
以上のように、具体的な数値を設定する前段階で、様々なことを考慮しなければなりません。このあたりが不十分だと、例えば以下のような状況になってしまい、この先の議論が厳しくなります。
➢ 面接官と、自分が考えている内容をうまく共有できておらず、議論として成立していない
➢ ここまでの論理が、すでに無茶苦茶であり、低い評価となっている(選考に通過できないことがほぼ確定)
数値の議論をするまでに、考えなければならないことは非常に多いです。この部分が「最低限」できていて、初めてこの先のステップの「数値の設定や計算」が意味を持ってきます。軽率な進め方をしないよう、注意してください。
では最後に、今回の記事の要点を改めてまとめると下記4点です。
- 面接官のツッコミには「反論」ではなく、議論の上で回答に反映せよ
- 問題の前提条件を自ら設定し、漏れなく面接官と共有を
- 面接官に話が伝わらないときは、説明のわかりにくさではなく、前提共有の不足を疑え
- 具体的な数値の設定の手前までで、厳しい選考結果にほぼ確定してしまう場合が多い
さて、次回のコラムでは、次のStep4とStep5の解説を行っていきます。併せてご覧ください。
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