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本コラムのテーマ:ケース面接対策に有用な書籍紹介
学生や社会人に向けてケース面接の指導や執筆活動をしている戦略コンサルタントが、フェルミ推定やケース問題のポイントについて解説する【プロによる実践講座】シリーズ。
今回は番外編として、ケース面接対策として有用と思われる書籍を複数紹介していきます。ケース面接においては、多面的な視点から考える力を強化し、幅広い要素・項目を把握することが重要であり、これは「一朝一夕で」「つけ焼き刃的に」身につけるのは困難です。そのため、短期的な対策のための書籍だけではなく、「中長期的な対策」「思考力UPの対策」も提示していきます。
導入:ケース面接に向けてどのような能力を鍛えるべきか
そもそも、ケース面接を行う上で、必要な能力とは何でしょうか。「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「抽象的に考える能力」など、様々な能力が必要といわれています。
私は、多くの方のケース面接の練習に付き合っていますが、それらの経験も踏まえると、上記の様々な能力に共通して「多面的な視点から、広く要素・項目をとらえる」思考力が非常に重要だと考えています。
さて、書籍の紹介に入る前に、なぜ「多面的な視点から、広く要素・項目をとらえる」思考力が重要なのか、いくつかポイントを提示しながら解説してきます。書籍を読む上の心構えでもありますので、推薦書籍を読む前にご確認ください。
ポイント1-1: 論理的に「正しい解答」など導けない場合が多い
わざわざ言うまでもありませんが、そもそも、ビジネスのような、「現実世界の事象」に対して、「論理的に正しい解答」など導くことは、“ほとんど不可能”と言って差し支えないでしょう。このことは、ほとんどのケース面接の問題にも当てはまります。
ポイント1-2:「間違っているといって差し支えない」解答は存在する
しかし、「正解」が存在しないことは、「間違い」が存在しないことを、同時に意味するわけではありません。現実的には、「間違っていると言い切って差支えない」といえるような、論理や解答は存在します。
ポイント2-1:「自分が正しいと信じる」解答を持っている面接官も多い
さて、面接官はどのようにケース面接を実施するのでしょうか。まず、ケース面接にて出題する問題は、面接官がある程度すでに考えた経験のある(馴染みのある)テーマが使われるのが大半でしょう。
そうなると、面接官はそのテーマに対し「少なくない知識を保有」していますし、そもそも面接官が「正しいと“信じている”」仮説、解答のようなものが存在しているはずです。
※注: ここで述べている「解答」は、最終結果や打ち手のみを指すわけではありません。「逃してはならない現状分析」「途中経過の論点・課題」や、「あるべき思考プロセス・思考順序」においても、面接官が「正しいと“信じている”解答」が存在しているでしょう。
ポイント2-2: 「正しいと信じている」解答を望んでいる面接官も少なくない
ケース面接では、可能な限り「中立的」な視点から、あくまで「論理力」「考える力」といったものを、面接における「プロセス」から見極めることが、基本的に面接官に期待されていると思われます。
しかし、面接官も人間ですから、ついつい自分の「意志」「感情」が紛れ込みます。また、「忙しい」「疲れている」「眠い」といった状況で面接が行われることも多いため、労力を必要とする中立的・論理的な視点に集中できず、ついつい“自然”な感覚的判断が入り込んできてしまいます。
以上の背景から、「想定した解答」にどれだけ近いかで判断する面接官も少なくないのが現状です。
結論: 「多面的な視点」を持って重要な要素・項目を広く把握できれば有利
まず、多面的にみることは、「間違った」解答をしてしまう(ポイント1-2)リスクを減らせます。例えば、「論理の飛び」「要素の抜け漏れ」や、これらが原因となってイマイチな論点・課題を重要なものとして設定してしまうことです。
次に、面接官に受けの良い解答を導き出せる(ポイント2-1、 2-2)可能性が上がることも重要です。「ポイント1-1」でも明示した通り、そもそもケース面接において、「正しい答え」なるものは存在しないことが多いです。そうなると、同じケース問題でも、面接官によって異なった「解答」をもっている可能性が低くありません。
しかし、仮に提示した解答に対して、面接官が「それは違うと思う」とコメントした場合や、「(うーん…)」といった納得していない様子であったとしても、もし「多面的な視点」で項目や要素を洗い出すことができていれば、そこで考えていた残りの選択肢を矢継ぎ早に提示していくことで、面接官から「そう! それだよ、それ」というコメントを引き出せる(正しいと信じている)解答を提示できる可能性が高まります。
補足:コミュニケーション能力の問題解決にも多面的視点が必要
面接官と議論がかみ合わない場面も少なからず見受けられます。これは「コミュニケーション能力」の問題とされることが多いですが、その原因は「お互いが持つ前提が異なる」ことが少なくありません。このような場合も、多面的な視点で考えることができる方は、その祖語の原因(どの部分の前提がお互いに異なるのか。面接官はどのような前提を持っているのか)を特定し、議論を補足・修正できる(お互いの理解の祖語を解決できる)可能性が高まります。
補足: 多面的視点が持てていれば論理の飛びも発生しにくい
論理的な思考力として、「項目にモレがない(ダブりがない)」と「論理の飛びがない」の2種類が、例として提示されています。
今回の、「多面的な視点」で多くの項目や要素を洗い出すことは、もちろん「項目のモレ」を防ぐために有効ですが、現実的には「論理の飛び」を防ぐためにも有効であることが多いです。
ケース面接練習時の皆さんの解答を見ていると、「論理の飛び」が発生してしまうとき、そもそも「飛んでしまった項目が頭にない(パズルのピースが存在しない)」ため発生する場合が大半です(「間違いを指摘」「抜けている項目を提示」されれば、すぐに間違いに気が付く方が大半です)。
一方、「現状分析」がしっかりしている(広く物事をとらえている)場合、必要な“パズルのピース”自体はそろっているため、ほとんどの方は、それをうまく組み直すことで論理の飛びがない解答を導き出します。
そもそもコンサルティング会社のケース面接の選考ステップに進む方(難しい筆記試験を突破している)は、高学歴でよく勉強している方が多く、根本的な論理力の欠落が原因で「論理の飛び」が発生する例は、あまり見られません。しかし、広く物事を抑える部分については、改善の余地が大きい方が少なくないため、「項目に漏れがない」ことに注意しながら練習・対策していただくと良いかと思います。
推薦図書の紹介: 推薦図書の選定基準
さて、ここから書籍の紹介に入ります。
ケース面接は、その人の根本的な「思考力」を見るためのものです。そのため、つけ刃的対策では、なかなかうまくいきません(もしそれでうまくいくようであれば、そのケース面接は、コンサルティング会社から見れば、失敗していると言えるでしょう)。
そのため、「鍛えるべきなのは、あくまで本質的な思考力」です。特に、上記の解説の通り、「多面的な視点から、広く要素・項目をとらえる」思考力が非常に重要です。それは一朝一夕では不可能であるため、中長期的な視点で、基礎的な思考力をUpさせるための書籍を含めて紹介していきます。
推薦図書1: まずはケース面接の流れを理解する
まず、どのような選考の対策であっても、その選考内容や目的地・ゴールを知らなくては、何を学習してよいか、イメージがわかないでしょう。その意味で、ケース面接対策本を利用することが有用です。
・過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題
過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題
大石 哲之
東洋経済新報社
(Amazonで詳細を見る)
※この本は、日本のコンサルティング会社の新卒・中途使用において、実際に出題されているものに近いレベルのケース問題とそれらの解答例が多く記載されています。「イメージを持つ」「ゴールを知る」うえで、非常に有用でしょう。
・戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策
戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策
マーク・コゼンティーノ
ダイヤモンド社
(Amazonで詳細を見る)
※この書籍は、海外の書籍の訳書であることからもわかる通り、海外オフィス採用向けの印象です。日本では、一部のファームにて、それもかなりラスト段階の選考などでしかみられない問題が多い印象です。ハイレベルな問題ばかりなので、余裕があれば、ストレッチする意味でも確認しておきましょう。
問題⇒解答というコンテンツは中長期的な実力UPには不向き
上記の2冊は、もちろん素晴らしい内容であり、有用な書籍ですので読んでおきたいのですが、ケース面接対策として、これだけでは不十分です。上記のタイプの書籍を読んだとき、「ケース問題の解答そのもの」ばかりに意識を向けてしまい、それらの「解答を暗記する」という使い方をする方が、少なくありません。
しかし、この利用方法は正しいのでしょうか。高校までの数学を思い出していただきたいのですが、「模範解答」を読んでも、必ずしも類題が解けるようになるわけではなかったはずです。模範解答を単純に読んで「表面的に理解する」だけでなく、「解答の要点・ポイントなどを抽出・抽象化し、より本質的な意味で理解する」というプロセスを経る必要があります。
以上の様に、「どうやって頭を使えば、模範解答のようなプロセスで考えることや、模範解答のような視点を思いつくことが可能なのか」という部分は自身で補完しないと、別のケース問題の時に、再現性がありません。また、模範解答は面接官によって異なる(ポイント2-1)と想定したほうがよく、書籍に掲載されている解答方法のみ、面接時に想起できるだけでは、選考通過が、かなりの運任せ(面接官の考え方次第)になってしまうでしょう。
そのため、本質的な思考力を鍛えるために、ケース問題ではなく「思考方法そのものにフォーカス」した別の書籍・コンテンツを利用することも有効です。ここからは、中長期的な視点で思考力を鍛える、特に多面的な視点で考えるために有用な書籍を紹介していきます。
推薦図書2: コンサルタントの考え方が理解できる書籍
思考方法そのものにフォーカスした書籍として、下記のようなコンサルタントの書籍が、特にケース面接を念頭に置いたとき、有効かと思います。
・論点思考
論点思考
内田 和成
東洋経済新報社
(Amazonで詳細を見る)
※そもそも、「多面的な視点」といわれても、具体的なイメージが難しいと思われます。この書籍は、まず「間違った論点に取り組んでも、そもそも無意味」という原則から始まります。次に、単純・シンプルに考えると論点を外してしまうような事例を紹介し、別の様々な視点を提示しながら、重要な論点を特定しています。最初に思いついた項目・要素などにとらわれることなく、常に多面的な視点で考えることを意識しながら、重要な論点を抑える癖をつけることは、ケース面接に必須ですので、事例を通してイメージを持っていただければと思います。
・問題解決の全体観 上巻 ハード思考編
問題解決の全体観 上巻 ハード思考編
中川 邦夫
コンテンツ・ファクトリー
(Amazonで詳細を見る)
※この書籍は、思考の幅を広げるための「ツール(考え方)」を提示しています。ツールの活用方法を見ていただくとわかりますが、ツールを使いこなすには、自身が考えた内容を客観的に見ることや、抽象化できることが重要です。ツールそのものの使い方だけでなく、「自身の考えた内容を客観的にみる」「考えていることを抽象化する」ことの具体的なイメージも持っていただくために良いかと思います。
(現在、この書籍は一般的な取り扱いが終了しております。新品はAmazonマーケットプレイスにある、著者の会社“株式会社エーテン”より購入可能なようです)
推薦図書3: 論点はどこなのか、ビジネス事例から帰納的に学習
「多面的な視点」で考えながら重要な論点を特定できるようになるためには、「原則」を学習するだけでなく、具体例に多く触れることも非常に有効です。
・戦略思考トレーニング
戦略思考トレーニング
鈴木貴博
日本経済新聞出版社
(Amazonで詳細を見る)
戦略思考トレーニング 2 (日経文庫)
鈴木貴博
日本経済新聞出版社
(Amazonで詳細を見る)
戦略思考トレーニング3--柔軟発想力 (日経文庫)
鈴木貴博
日本経済新聞出版社
(Amazonで詳細を見る)
※上記のシリーズは、主にビジネスの事例を中心に、実際の様々な具体例を紹介しながら、それらの「重要な論点の特定」について、一問一答のクイズ形式で多くの問題を掲載しています。また、このクイズは、「ビジネスそのものへの深い理解(お金を生む仕組み など)」が問われるので、「現状分析」をしっかり行う(特に重要な現状分析を漏らさない)ということの重要性について、具体的なイメージを持つためにも有用であると思います。
推薦図書4: ビジネスに限定せず、思考を広げる・多面的に物事を見る訓練
「多面的な視点」で考える能力を鍛えるうえで、ビジネス系のテーマで学習することは、もちろん、ケース問題に近い形式で学習できるという点で手っ取り早いです。しかし、一方でビジネスというフィルタ・バイアスがかかってしまうため、純粋に「多面的な視点」で考える能力を鍛えるためには不向きです。もっと長期的に思考力を鍛える時間的余裕がある方は、以下のクイズの書籍がおすすめです。(一部、筆記試験で頻繁に出題される問題も含まれますので、筆記試験対策込みでご確認いただくと良いかと思います)
※余談ですが、このタイプのクイズを、「面接時の選考」として出題している戦略コンサルティング・ファームも存在します。コンサルティング会社自体が、多面的に物事を見る能力を重視している一例かと思います。
・頭の体操 BEST
頭の体操 BEST
多湖 輝
光文社
(Amazonで詳細を見る)
頭の体操 BEST2
多湖 輝
光文社
(Amazonで詳細を見る)
※シリーズとして、多くの書籍が出版されており、色々なテーマについて、“様々な意味”で柔軟に物事を見ることができるかを、一問一答のクイズ形式で掲載しています。このタイプの問題は、「自身が考えていることを客観視する」思考や、「抽象的に考える」「具体的にイメージする」という両極の思考を、問題に応じて使い分けないと解くことができません。各問題にてどのような思考が有効かについて解説パートにおいて頻繁に言及されるので、解答の正誤に関わらず、解答に対する解説もしっかりと確認してください。
・外資系企業がほしがる脳ミソ
外資系企業がほしがる脳ミソ
キラン・スリニヴァス
ダイヤモンド社
(Amazonで詳細を見る)
※外資系の各種企業・業界の選考として出題される問題を掲載しています。コンサルティング業界が、面接ではなく筆記試験で出題するタイプの問題も、少なからず掲載されています。純粋に思考力を鍛える上では、若干問題の選定にフィルタがかかりすぎていますが、まずはこちらから読んでいただいてもよいかと思います。
・ビル・ゲイツの面接試験
ビル・ゲイツの面接試験
ウィリアム パウンドストーン
青土社
(Amazonで詳細を見る)
※この書籍は、問題や解答そのものだけでなく、問題が出題されるに至った歴史的背景なども含めて解説しています。各種問題の抽象的な解釈・考え方まで踏み込んだ解説も多数掲載されていますので、抽象的な考え方が苦手な方は、他の推薦書籍を確認してこの種の問題になれたのちに、この書籍をご確認いただくと良いかと思います(抽象的な思考が得意な方は、直接この書籍から読んでいただいてもよいかと思います。)。
本コラムのまとめ
本コラムでは、「来週に選考がある」といった方のような、短期的な視点の対策ではなく、「数か月後の選考を見据えて、じっくり実力をあげたい」といった、中長期的に基礎的な思考力を鍛えたい方向けの書籍を紹介しました。
以上のように、「明らかに間違った回答を出さない(重要な論点を見逃さない)」「面接官に合わせた回答を行う」ことは、ケース面接に置いて非常に有効であり、そのためには「多面的な視点で見る」能力が重要です(この能力は、「コミュニケーションの祖語を減らす」「論理の飛びをなくす」ためにも有効です)。この能力を鍛えるためには、腰を据えて様々な考え方に触れ、それを自身の思考方法に定着化させる必要があります。上記のような対策を通して、つけ焼き刃的な方法論ではなく、本質的な思考力をUpさせたうえで、ケース面接選考に臨んでいただければと思います。
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