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はじめに
戦略コンサルタントは、日々クライアントの抱える難問に立ち向かっています。
前回は現役の前略コンサルタントにフェルミ推定へのアプローチ方法について解説していただきました。
現役コンサルが語る、フェルミ推定でありがちなNGケースへの対策【プロによる実践講座:その1】
シリーズ2回目となる今回は、特に思考力を要求される彼らの基礎とも言うべき「ケース問題」について、プロとして必要な視点や考え方のポイントを解説していただきます。
皆さんも、この問題がケース面接で出題されたと想定して、ぜひ1度解いてみてから、下記の解説をお読みください。
「コンサルタントの視点」で考えよ
この問題を解く前提として心得ていただきたいのは、「コンサルティング会社の採用選考」として出題される以上、コンサルタント視点での回答が望ましいということです。
まずは、このお題の特徴を挙げてみましょう。
(サラリーマンになるか、自営業を続けるかは、とても大きな違い)
・方針を決めて動き出したら、簡単には後戻りできない。
(第2新卒として就職し、ショップを閉めてしまえば、自営業に戻りにくくなる)
この特徴をふまえたうえで、「友人」を「企業」とすると、以下のような案件に置き換えることができます。
ここから先は、「海水浴用品ショップ=日本企業X」である想定も踏まえたうえで、お読みください。
回答方針 ―押さえておくべき「コンサルタント視点」―
コンサルティングは、客観性をもって解を示すことが求められます。
これを構成する要素は大きく言うと、「網羅性」と「定量性」の2つです。
「海水浴ショップの改善策」ばかりに言及していたり、「第二新卒の場合のシミュレーション」ばかり行っていたり……といった回答では、網羅性に欠けると言わざるをえません。さまざまな選択肢を検証し、最良の選択をしてこそ、客観的な回答と言えるでしょう。
また、主観ではなく定量的な数値で示すことは、解そのものの論理性を高めるうえ、効果の比較がしやすいため、コンサルタントとしての価値を認めて貰いやすいというメリットもあります。
つまり、『網羅性・定量性に裏打ちされた客観的な解を出すこと』がコンサルティング業務において重要なことであり、これをケース面接に置き換えると、
網羅性・定量性をふまえた議論が可能な方向での解を出すこと
=(イコール)
コンサルタントにふさわしい思考力があると証明すること
……に繋がると考えられます。
ではこの考え方を踏まえ、望ましい回答の一例として、以下を示したいと思います。
【回答例:1】
■回答例1の重要ポイント解説■
上記の回答は、「経済的視点」「価値観の視点」と、「第2新卒」「海水浴用品ショップを続ける」という2つの軸に分けることで整理されています。
1つ目の軸である「経済的視点」「価値観の視点」で整理する理由は、経済的視点と価値観の視点で検証方法が大きく異なるためです。
経済的視点は定量的な視点で解を出すことが可能ですが、一方の価値観は、内容もさることながら、各価値観の重みづけを定量的に整理するのが困難かつ複雑であり、どうしても「インタビューなどの結果を定性的に整理」するレベルにとどまるでしょう。
2つ目の軸に「第2新卒」「海水浴用品ショップを続ける」を挙げる理由としては、友人からこの2つを選択肢として与えられている以上、少なくともこの選択肢についての効果を検証しないと、客観性に乏しいと判断され、友人の説得が困難になると考えられるからです。
(もちろん、第3の方法も考えられますが、面接時間は限られているため、「具体的に指摘のあったこの2つに絞ります」とするのが現実的でしょう)
想定される回答の検証
ここからは、皆さんが考える可能性のある回答について、例を挙げて検証していきたいと思います。
【回答例:2】
■回答例2の重要ポイント解説■
この回答は、「第2新卒として就職した場合」の視点がなく、客観性を著しく欠いているため、かなり厳しい評価を下されるでしょう。
「第2新卒」の検証結果がなければ、友人は正しい意思決定をすることができません。
客観性(主に網羅性)を欠いた回答だと言えます。
【回答例:3】
■回答例3の重要ポイント解説■
こちらの回答に関しては、2つの視点から言及したいと思います。
1つめは、「純粋な経済的視点」です。
実際の面接において、「純粋な経済的視点」と「価値観の視点」に分けた場合、面接官からは「純粋な経済的視点」について深く考えるよう指示される可能性が高いです。
理由は前述した通り、「純粋な経済的視点」の方がよりコンサルティングに近い考え方であるためです。
2つめは、「クライアントが何を望むか」という視点です。
最初に置き換えの例として挙げた「日本企業X」の話を思い出してください。
この社長はコンサルティング会社に対して、以下の2点のうち、どちらを望むでしょうか。
・「そもそも、ブラジル市場になぜ進出したのか。それを続ける選択肢を捨てない、撤退するという意思決定を躊躇する理由は何なのか」という価値観を整理すること
この答えについては、価値観の整理と比較した場合、定量的な検証の方が、「他社における経験」や「情報収集力」などのさまざまなノウハウを必要とすることからも、コンサルティング会社に望むのは、おそらく前者であると考えられます。
【回答例:4】
■回答例4の重要ポイント解説■
この指摘や考え方そのものは正しいのですが、忘れて欲しくないのは、これが「コンサルティング会社の面接である」ということです。
こういった現状分析という名のヒアリングは、コンサルに限らずどの業界でも行うことですし、、そもそもプロジェクトの提案、もしくは序盤段階で行う内容であり、プロジェクトにおいてメインでおこなうべき事柄ではありません。
「価値観の視点」で実施する「ヒアリング」は、必要なことではありますが、これだけに言及するのは、コンサルティング会社の採用選考の回答として不十分です。
(面接であれば、質疑応答の中で逆転できますが、記述式回答の場合は挽回できないので注意してください)
一方、「経済的視点」で実施する「定量分析」は、すでに述べた通りノウハウが必要であり、なおかつ実際の検証に多大な時間が必要なことから、そもそもの方針の良し悪しがコンサルティングの成功を大きく左右します。こちらを重視した記述を心がけたいところです。
しかし、お題の内容によっては、この「価値観」の整理を非常に重要視する場合もありえます。このような原則 にとらわれることなく、お題で問われている内容の本質を見極めるために、しっかり考え抜くことも重要であることを、最後に注記したいと思います。
おわりに
問題を解くにあたり、その開始位置・論点の選択を間違えると、その後の議論の意味がなくなってしまったり、面接官とのコミュニケーションを成り立たせるのが困難になってしまうことがあります。くれぐれも、「何にこたえるべきなのか」という、論点を外さないよう意識してください。
「コンサルの面接である以上、コンサル視点で答えるべき」という、言われてみれば当たり前のことも、実際に考える段階になるとできなくなってしまう方も多いようです。
論点を把握する方法やケース面接の解き方については、学ぶというよりも、多くの具体例に触れる方が身につきます。
元BCG日本代表の内田和成氏の『論点思考』などの書籍も、非常に参考になります。
このコラムとあわせて、ぜひ目を通してみてください。
論点思考
内田和成
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