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現役コンサルが語る、将来予測×フェルミ推定における論点の洗い出し(後編)【プロによる実践講座:その20】

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本コラムの趣旨

前回のコラムでは、必要とされる介護士人数の将来予測から、面接官の出題意図を探ることで、問題の重要論点を探っていきました。

ケース面接の中でも、特にフェルミ推定となると、ついつい数値計算にばかり意識が行ってしまいがちです。しかし、長い問題文の場合は、様々な情報や制約が付けられており、ビジネスケースと同様、論点の把握が必要です。今回の例題の場合、現在の値ではなく、15年後という「将来の数値」を推定させていますし、さらに「諸問題を解決していく」といった形で、介護を取り巻く「状況・環境の変化」があることを示唆しています。

これらの変化は、「その変化の程度によって、推定数値である介護士の数に大きな影響を及ぼす」ことから議論の重要な論点となりえますし、また「将来の値であるため正解といえる確定した値がない」ことから、面接官と認識を合わせる必要がある前提・要素になります。

前回のコラムでは、これらの「変化」を、いったん思いつきベースで上げたため、網羅性がありませんでした。今回は、この「変化」をどう漏れなく洗い出すかについて、方法・思考プロセスを提示していきます。

フェルミ推定の因数分解を活用しつつ、論点を洗い出す

さて、今回は、論点(変化の要素)を網羅的に洗い出す方法の1つとして、フェルミ推定の因数分解の式を活用した方法を紹介します。

まず、「論理矛盾のないフェルミ推定の計算式」を導き出すあたりは、それほど難しくないので、そこはできていているものとします(ここが怪しい方は、筆記試験を突破するのも困難かと思います)。

問題は、計算式がどれだけ出題された問題の論点を把握できるものになっているかにあります。論点は、ケース問題のテーマとなっている「業界の特性」や、今回のように同じ業界でも「問題文に付随する情報」によっても変化するでしょう。そして、フェルミ推定の式自体が、それらの論点を押さえたもの、論点を議論するのに適したものであることが望ましいです。

Step0: まず、自由に考えて、あり得そうな選択肢を出す

まずは、型にはまった考え方をせず、将来の変化として、どのような項目があり得るのか、自由に考えることが有効です。例えば、以下の変化は、比較的簡単に思いつけるのではないかと思います。

・母数である、高齢者人口が増える
・医療技術の進歩により、介護を受ける人が減る(ほぼ健康なまま、寿命を終える)
・介護を受けられず、待機していた人が、介護を受けられるようになる

いきなり、フェルミ推定の計算式を書いてしまうと、論点を大きく外した計算式を策定してしまうリスクがあります。これらの変化は、もちろん網羅性がありませんが、重要な項目の一部であることは間違いないので、これらの変化をきっかけとしつつ、すべて含む計算式を書けば、大きく外すリスクを低下させられるでしょう(これは、仮説思考の考え方に近いです)。

Step1: フェルミ推定の数式の各項目を起点に考える

さて、Step0で考えた変化を踏まえつつ、フェルミ推定を考えてみます。いったん下記のような、比較的“簡単かつ単純な”フェルミ推定の式(3項目のみ)を考えたとして、解説を進めていきます。

・高齢者人口 × 介護を受ける割合 ÷ 介護士1人当たりの供給

次に、これらの3つの各項目について、将来大きな変化の要因がないかを考えると、わかりやすいでしょう。

特に、Stetp0にて、1つも変化を考えられていない要素が重要です。例えば、「介護士1人当たりの供給」にあたる部分は、Step0で何も言及されていません。この部分で、何か変化はないかと考えていけば、「ロボット」や「機能的なベッド」あたりを想起できる可能性が高まります。

フェルミ推定の式は、論点の見落としを防ぐうえで有効

以上のように、「定量的」なフェルミ推定の計算式を書くことで、「定性的」に考えたとき、あまり考慮・考察の対象にできていなかった「介護士1人当たりの供給」が明示的になります。それによって、「介護士1人当たりの供給」の部分における将来の変化を意識的に考えることが可能になり、見落としていた変化に気が付く可能性が上がるでしょう。

定性的な思考方法で網羅的に考えることは難しくても、フェルミ推定の因数分解式のような定量的な思考方法であれば、網羅的に考えることが難しくない場合も多いでしょう。このように、フェルミ推定の因数分解は、「網羅的」に考えるという意味でも、有効な考え方です。いわゆる「〇〇の数値を向上・改善せよ」といったケース問題であっても、一度、フェルミ推定を出題されたときのように、因数分解した計算式を考えておきたいところです。

Step2: 必要に応じてツリーを細かく分解し、見落としがないか探す

さて、次に実施したいのは、フェルミ推定の計算式の分解・詳細化です。Step1とStep2を経て、いろいろと考えが深まってきたと思いますので、より細かい計算式を作るタイミングとしてピッタリです。

逆に、いきなり細かい計算式を作成してしまうと、大して意味のない方向へ詳細化を行ってしまうリスクがあります。最初は、Step1程度のシンプルな因数分解を行いつつ、議論が進むにしたがって、より細かい分解を「ツリー状」に行っていくと良いかと思います。

「高齢者人口」をより細かく考える

さて、「高齢者人口」というのは、広義でみて介護対象の母数となります(いったん、「交通事故・病気・障がい」などで、若くして要介護となったパターンなどは無視します)。

高齢者人口は、より細かく考えると、例えば「単年あたりの人口の変化」と「寿命の変化」に分けられるでしょう。「単年あたりの人口の変化」は、人口ピラミッドの形状に依存するため、予測しやすい変化です。しかし、「寿命の変化」となると、医療技術の発達などの様々な要因が考えられるでしょう。ここは予測が難しく、人によって考え方が異なる部分だと思いますので、特に介護士人数への影響が大きいと考えるのであれば、面接官と議論しながら明確にしたいところです。

「介護を受ける割合」をより細かく考える

さて、ここは深く考えたい箇所です。以下のように抽象的に考えてみましょう。

・まず、当然ですが、高齢者の中には、「介護が必要な人」と「介護を受ける必要がない人」がいます。
・次に、「介護が必要な人」の中には、「実際に介護サービスを要望する人」と「介護サービスを要望しない人」が考えられます。
・そして、「実際に介護サービスを要望する人」の中には、「介護サービスを実際に受けられる人」と「介護サービスを受けられない人」がいます。

介護需要を「一連のプロセス」として考えれば、まず「介護の必要性が発生」し、次に「介護サービスを需要」し、最後に「介護サービスの契約を結ぶ」という流れで、上記のように因数分解できると思います。
(※さらに追加で述べるのであれば、「介護サービスを実際に受けられる人」は、「人数」×「時間・頻度」にも分解できますが、今回の解説では、いったんパスします。)

さて、それぞれの要素を考えてみましょう。

「介護を受ける必要がない人」の将来の変化

ここは、Step0でも出ていた通り、医療技術の進歩などによって変化するでしょう。

「介護サービスを要望しない人」の将来の変化

ここは、何か別の方法を選ぶ方ということになります。わかりやすい例は、自宅介護でしょう。一方、若干わかりにくいのですが、今回の問題は、厳密に定義を読むと「“日本で” 介護サービスを要望しない人」とすべきなので、母数が日本人であれば、「海外で介護を受ける」などもあり得るでしょう。

また、これも若干思いつきにくいですが、介護施設が足りないことを見越して、事前に対策しておく人が減る、「潜在的な需要が喚起される」可能性もあり得ます。

「介護サービスを受けられない人」の将来の変化

ここは、Step0にも出ていた通り、「介護を受けられず、待機している人」が、介護における諸問題が解決されることによって、介護を受けられるようになるでしょう。

「介護士1人当たりの供給」をより細かく考える

この部分については、細かく考えようとすると、抽象度合が高くなってしまうので、若干難しい部分です。

まず、1人あたりの「労働時間 × 労働生産性」で分けられると思います。労働時間で考えれば、おそらく現在の介護士は長時間労働を強いられていると思いますので、諸問題が解決されるのであれば、労働時間は減っていくでしょう。

一方、労働生産性については、「個々人に紐づく」部分と、「組織としての全体的な取り組み」に紐づく部分があります。「個々人に紐づく」部分は変化があるか否か微妙ですが、強いて上げるのであれば、「外国人の介護士の増加」が起これば、日本語に不慣れなことも想定されるため、労働生産性が落ちるかもしれません。「組織としての全体的な取り組み」であれば、「介護士へのサポートを充実させる(機械・ロボットによる補助、バックオフィス業務の集約化など)」などによる労働生産性の向上が考えられるでしょう。

Step3: 因数分解の式に別の軸を加え、2軸のマトリックスとする

これまでの因数分解は、1軸(1次元)で考えていました。ここで、顧客属性のようなもの(今回であれば要介護度や、介護のサービスタイプ)を新たに軸として加え、2軸(2次元)のマトリックスにすると、新たな視点が出てくるでしょう。

説明を簡略化しますが、例えば、技術・ノウハウの深化などにより、要介護の度合が低い人が増えれば、全体としての介護サービスの総需要は減ると言えるでしょう(2軸目の各要素の割合が変化するイメージです)。

余談ですが、このStep2とStep3は、順序が逆でも構わないです。どちらを先にすると良いかは、問題の特性によって変化するでしょう。

フェルミ推定の式のMECE感を、論点洗い出しの網羅性向上に利用

定性的に考えていると、どうしても思いつきベースの考えになってしまうため、ついつい見落としをしてしまいます。

しかし、フェルミ推定の式の因数分解であれば、定量的に考えるため、要素の見落としが発生する可能性が低いです。この因数分解の式を、定性的な要素の洗い出しに利用することで、網羅性を上げられます。

せっかく、フェルミ推定の数値推定をしているのであれば、この因数分解の数式を、定性的な要素の洗い出しにも活用し、シナジーを利かせましょう。(面接官も、ある程度それを期待しているでしょう)

補足: 今回のStepの注意事項

このStepの考え方は、フェルミ推定の因数分解というフレームに沿って考えていますが、一方で、このフレームにとらわれすぎないことも重要です。

まず、すでに述べた通り、最初からいきなり因数分解のフレームを作成してしまうと、筋の悪い分類による因数分解を提示してしまうリスクが高まります。まず、自由に考えて、いくつかの要素・論点などを出したのちに、それらを踏まえつつ因数分解を実施すべきでしょう(これらの自由に考えた思いつきは、問題内容・業界への理解を深めることにもつながっています)。

次に、Step1以降で、因数分解の内容に沿って考える場合でも、すでに分解された要素にとらわれず、自由に思いついたことをメモしておくと良いでしょう。そうすれば、とくにStep2などで、因数分解を詳細化するとき、よりよい分解ができる可能性が高まります。

やはり、フェルミ推定といっても、論点の特定が必要な場合が多い

このフェルミ推定は、別の視点から考えれば、ケース問題における、「打ち手のパターンの洗い出し」をしているのに近いです(上記の変化を実際に起こすことが、介護士の諸問題を解決する打ち手とも解釈できます)。

ケース面接では、問題の種類にかかわらず、「ほかに何かないの?」といった形で、思考の広さが重視される場面(質問をする面接官)は多いです。

単純な計算力を見たいのであれば、問題文も単純な「介護士の人数を推定してください」」で十分でしょう。このような、いろいろと補足のついたフェルミ推定においては、普通のケース問題と同様に、「論点の特定」の思考プロセスを忘れないでください。

まったく視点が出てこなかった人は要注意

さて、今回いくつかの「変化」を具体例としてあげましたが、「これらのうち、1つも出てこなかった」「そもそも変化を考える部分まで思考が及ばなかった」という方は要注意かと思います。

仮に、「会社の会議」「大学の研究室やゼミ」のディスカッションであれば、まず将来の数値を予測せよと言われたとき、どうするでしょうか(将来予測の対象は、今回の介護士の人数でも、商品の需要量でも、何かしらの産業の市場規模でも構いません)。

おそらく、いきなり数値を計算し始めたりはしないはずです。大半の方は、「計算したい数値って、どんなことが原因で(どの指標の変化に応じて)変わるのかな」「将来の社会や技術って、どんな部分がどう変化しているのかな」といった、“漠然”としたことから考え始めるはずです。

これらの“漠然”とした思考や議論は、決して無意味ではありません。なぜならば、計算したい数値が、この“漠然”とした議論で出てきた「視点」「要素」によって変化するからです。

自然な思考プロセスの方が、ケース面接に有効

以上のように、普通の議論の場面であれば、当然実施できる議論・思考プロセスも、なぜかケース面接といわれると、急に「型にはまった」よくわからない方法をとってしまい、論点を大きく外した回答をしてしまう方が頻出します。(上記の“漠然”とした思考は、「友達同士の少し真面目な会話」レベルでも、出てくるはずです。そう考えると、「型にはまった」方法は、「友達同士の会話」レベル以下とも言えます。)

変に「ケース面接」などと意識せず、「普通の議論・思考プロセスをベース」に考えつつ、一部「論理的な思考方法を補助に使う」くらいの気分の方が、良い回答ができるはずですので、あまりかたくならず、普通に取り組んでください。

これまでの他のコラムでも解説してきた通り、MECEなどといったコンサル的なフレームワークは、「プレゼンテーションのツール」としては非常に役立ちます。しかし、「思考のためのツール」としてみた場合、使い方を間違えると、「思考方法がかたく」なってしまい、かえって害となる場合も多いです。

MECEなどといったフレームワークは、最終段階である「プレゼン」や、今回解説したような、その直前の「見落としの有無のチェック」といった、「思考・議論の終わりの方で有用度が高い」ので、あまり思考や議論のプロセスの最初の方で使いすぎないように注意してください。

特に、最初に例示した「変化」のうち、一つも出てこなかった方は、「思考方法がかたくなっている」可能性が高いので、今後気を付けていただければと思います。

本コラムのまとめ

今回のコラムでは、公共政策系の将来予測のフェルミ推定の問題について、解説を行いました。

ケース面接の中でも、特にフェルミ推定となると、ついつい数値計算ばかりに意識が行ってしまいがちです。しかし、問題文が長い場合は、様々な情報や制約が付けられているため、ビジネスケースと同様、論点の把握が必要になります。

今回の場合は、「将来予測」がテーマであったため、「将来の変化」に着目することが重要であることを解説しました。また、この「将来の変化」をはじめとした論点を洗い出すためには、「フェルミ推定の因数分解」が活用できることも解説しました。フェルミ推定の因数分解は、それにとらわれすぎると、かえって弊害になりますが、「自由な思考」とうまく組み合わせる(適時、思考を切り替える)ことができれば、網羅的に要素や論点を洗い出すうえで非常に有用です。

今回の問題で、「将来の変化」に対して、明示的に整理・言及できなかった方は、「フェルミ推定には決まった解き方がある」といった、一種の「型にはまった思考」に陥っている可能性が高いです。いったんコンサル的なフレームワークのようなものは、「プレゼン」や「見落としのチェック」のような、議論や思考の最終段階で利用するツールとして扱いつつ、まず考えはじめる上では、普段の「会社の会議」や「研究室やゼミ」のディスカッションのように、自由に議論・考えるという姿勢を忘れないでください。


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