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こんにちは、トイアンナです。私はこれまで、就活生を数百人指導いたしました。中でも英語のエントリーシート(ES)に関しては最後に指導をした2018卒で「全通」となっています。
そこで今回は、 「外資志望者だが、英語がやや苦手」な学生の皆さんへ向けて、英語エントリーシートを全通させる黄金ルールをご提供できればと思います。 なお、事例では投資銀行が登場しますが、本稿では外資系コンサルティングファーム、外資メーカーにも共通するメソッドを扱っていきます。
今年の外資就活は例年より競争が激化する
本題に入る前に、今年は外資就活の対策をしっかりしておくべきだというお話をさせてください。2022卒の就活は例年より早めにスタートする方が増えています。新型コロナウイルスで不安になった方が多いからだと考えています。
今年の就活は新型コロナウイルスの影響で、厳しくなっています。 その理由はふたつ。ひとつめは、採用減です。不景気になっている業界、そしてそこから広告出稿などで資金を得ている取引先は、採用数自体が減る可能性があります。
ふたつめは、 就活不安から早期に動き出す22卒が増し、ライバルが増えた ことです。2019年まで、大学3年/院1年の夏休み以前から動き出す就活生はごく一部の優秀層に限られていました。しかし今年は全体的に学生が早期に動き出しており、倍率アップが予想されます。そのため、通年通りの対策では落ちる学生も出てきてしまうでしょう。
そのため、 今年就活をする学生にはぜひ、その旨をふまえて就活へ挑んでいただきたいと思います。
英語エントリーシートを作る前に、「国語」を見直そう
英語が苦手であるにもかかわらず英語のESを書かざるをえない場合、多くの方は日本語で原文を書いてから、英訳を試みるのではないでしょうか。
その際、 高学歴の学生ほどやりがちなのが「難しい日本語の熟語や言い回しを、そのまま英訳する」こと です。そうすると日本語と同じ能力で英語を駆使せねばならなくなり、ロジック以前に文法が破綻します。
本音を言えば、英語で考え、書ける脳を身につけられるくらいまで勉強をしたほうがよいのですが、現時点でそこまで時間的猶予がある方も少ないでしょう。ひとまずESを日本語で書き、英語へ変換するやり方はアリです。
ですが、日本語でESを下書きする際、無意識のうちに「日本語のESはよくできている」と思いこんでいませんか? 英語のESは、日本語のロジックが破綻していればもちろん英語でも破綻します。特に国語(現代文)が得意な学生ほど、レトリックを駆使して美文を書ける一方、幹となるロジックが甘いケースが散見されます。
「きれいな文章だけれども、何を伝えたいのか分からない」という指摘をレポートなどで受けたことのある学生は、特に注意してください。
美文だがロジックが破綻している日本語ESの例
日本語では一見きれいに見えるのに、ロジックが破綻している日本語ES(英訳する前の原文)の例がこちらです。
貴部門で専門性を身につけたいからだ。私は大学時代にベンチャーで長期インターンに入り、財務会計を学んだ。そこで「どんな戦略にも、まず資金がいる」という必要性を痛感した。そこから投資銀行に興味を抱き、資金調達支援を行うIBDへ進みたいと考えた。
貴部門は世界トップの投資銀行の先鋭部門であり、どの部門でも英語で取引が必要となる高度人材が集まる場だ。そこで私は資金調達やM&Aを通じ専門性の獲得に励みたい。世界トップの現場で研さんを積み、世界の金融に貢献できるという貴部門を強く志望する。
原文ESのロジック破綻ポイント(1) 専門性を身につけたい理由が書かれていない
冒頭の結論には「専門性を身につけたいからだ」と記載されていますが、専門性を身につけたい理由は一切書かれていません。なぜ金融に関し広範な知見を得られる企業ではだめなのでしょうか。その理由は全文を読んでも不明瞭です。このまま英語に変換すれば、ロジックの破綻がより明確になってしまいます。
原文ESのロジック破綻ポイント(2) 結局志望先で何をしたいのか分からない
この書き手は「資金調達支援をしたい」と書いているにもかかわらず、後半になると「M&Aを通じ」とやりたいことがブレています。資金調達支援がやりたいことならば、「資金調達の専門家としてひとかどの人間になりたい」くらい一貫していないと、論理が破綻してしまいます。
原文ESのロジック破綻ポイント(3) 世界トップ「だから何?」となる
ゴールドマン・サックスは世界トップの投資銀行と書かれていますが、「だから専門性が身につくと考えた」という続きの文が欠けています。したがって、「貴部門は世界トップの投資銀行の先鋭部門であり」という文章は、ゴールドマン・サックスを無意味に讃えた文として浮いています。
唯一、ゴールドマン・サックスなら専門性が身につけられそうと書かれている根拠は「英語で取引が必要となる」という失礼ながら薄っぺらいもの。これでは、説得力のある文章とは言えません。
と、 日本語でアラのあるESは英語へ変換した瞬間、ズタズタになります。 第二言語では、レトリカルにロジックの穴を補填するスキルがないのなら、突っ込まれる隙がない日本語ESを最初に作っておきましょう。内定者の先輩や、OB/OGなどに日本語の原文を添削してもらってください。
英語ESを書く前に日本語をローコンテクストにする
次に、日本語をローコンテクストにします。日本語は話をする際に文化的な知識が必要となる「ハイコンテクスト」な言語とされています。
有名なものでは「私、かつ丼たべたい」「俺はウナギだ」という会話があります。これは英訳すると “I want to eat Katsu-don.” “I am an eel”となり、文意が破綻してしまいます。 日本語話者は「I am an eel(俺はうなぎだ)」という日本語を常識から判断して「俺はうなぎが食べたい」に変換している のです。
これは、脳内でハイコンテクストな言語を、ローコンテクストな理解に落とし込んだ会話となっています。 こういった言語は情緒や風情がある一方、レトリックに頼ってしまいロジックが破綻した文章が作られやすい言語でもあります。
そして、ビジネス英語で採用されやすいアメリカ英語は最もローコンテクストな言語のひとつです。上記のように常識と照らし合わせる前提の“常識”がバラバラなため、あいまいな言い回しを避けて書かれます。
英訳しやすいよう、ローコンテクストに落とし込んだ日本語ESの例
普通の日本語を英語ESへ訳すと、「ハイコンテクストな日本語→ローコンテクストな日本語→英語」という2段階処理を脳内でせねばなりません。英語が苦手な人は、この2段階処理でつまずくため、文法や語彙が破綻しがちです。必ず「ローコンテクストな日本語のESを書く」よう心がけてください。
以下は、ローコンテクストな日本語のES例です。
私には就職先を決めるうえで重視していることが2点あります。その2点は「早期成長」 と「専門性」です。これらを重視する理由は、生涯を通じて資金調達を支援したいからです。私はベンチャー企業のインターンで資金調達の支援に取り組み、そのやりがいから資金調達へ生涯携わりたいと考えました。しかし、資金調達へ生涯関わるためには高度な専門性と、早期に大量の経験を積まねばならないとOB・OG訪問で学びました。そこでこの2点を得るため、投資銀行のIBDを志望しています。
中でも貴社を志望する理由は3点あります。1.専門性と早期成長を手にする機会が平等に与えられるとOB・OG訪問で聞いたため 2.案件数の多さが早期成長につながると判断したため 3.MUFGとの連携により日系と外資双方の専門性を身につけられると考えたため です。これら3点の理由から「専門性・早期成長の2つを手にし、生涯を通じて資金調達支援に携わる」ビジョンを叶えるには貴社が最高の場と考え、第一志望としています。
この文章は1文が短く、かつ「生涯資金調達支援をしたい」「そのためには早期成長と専門性が必要」「御社のIBDなら早期成長と専門性が手に入る」「だから御社を志望する」というシンプルすぎるロジックに落とし込まれています。
そのため、日本語でありながらローコンテクストな文として、読みやすくなっているかと思います。(代わりに情緒やレトリックは犠牲になります)
この文章であれば、英訳でもそこまで困らないでしょう。実際にあえてローコンテクストなまま明快に書いた英文も掲載します。ネーティブはレトリカルな英語を書くこともできますが、英語が苦手な人はなるべくシンプルな文を心がけましょう。
ローコンテクストな日本語ESを、英文に翻訳した例
I have 2 points to decide where to work. The first is “early growth” and the second is “profession”. The reason is that I want to support fundraising throughout my life. I worked at a start-up company and experienced a rewarding fundraising project. This made me think of working in this field for life. However, the fundraising job requires early growth and profession. Hence, I am applying to IBD for my first career position.
There are 3 reasons to apply to Morgan & Stanley. (1) The alumni taught me the fairness of M&S in having early growth and profession. (2) Many projects encourage my early growth. (3) The relationship with MUFG gives the profession beyond countries. Those 3 reasons made me think M&S is the best place to work. Hence, I applied to M&S as my first choice.
この通り、ローコンテクストな日本語からの英訳ではロジックに破綻のない英訳ができました。 英文法の正誤には無料のGingerや、言葉を添削し合う相互添削サービスLang-8で確認できます。
資金や時間的に可能ならば、ネーティブにチェックをお願いしましょう。ネーティブチェックはココナラやランサーズをはじめとするクラウドソーシングサービスにもあります。また、留学生の友人がいれば頼んでもいいでしょう。
「英語」であることにとらわれすぎない
そして、英語が苦手な方ほど「英語で」書くことにとらわれすぎ、肝心な内容の精査を欠く傾向にあります。 どんなにネーティブらしい英語を書けても、中身がお粗末なESは普通に落ちます。
志望動機の精度を上げる
志望動機を書くのであれば、 他社にも当てはまるような志望動機になっていないかを常に確認してください。 特に外資志望者は志望動機をおろそかにしがちですが、外資系投資銀行では志望動機もしっかり読まれます。「確かに、この理由なら弊社に来るしかないな」と言わしめる志望動機になるよう、日本語の段階で詰めてください。
投資銀行の内定者は共通して、「M&Aの事業にインターンなどで携わった」「自発的に勉強会へ参加している」など、志望度の高さをうかがわせるエピソードがあります。こういったエピソード作りは今からでも間に合うため、積極的に研さんを積んでください。
長時間労働とレジリエンスを鍛える
さらに 外資系企業各社ではタフな精神力が求められます。 多くの企業では「挫折を乗り越えた経験」を質問してきますので、他の学生に負けないタフさをアピールしてください。
中でも長時間労働に耐える体力と、精神的に追い込まれても踏ん張れるレジリエンスが高く評価されます。追い込まれた経験が不足しているようであれば、今から近しい経験を積んでください。
“ガクチカ”を準備する
何語であれ、学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)も手を抜かないように注意してください。 外資系投資銀行では高度な数的知識や正確さ、外資系コンサルティングファームや外資メーカーではリーダーシップが問われます。 これらを発揮できた経験をESで問われるため、事前にエピソードを書き出しておきましょう。
特に全業界で使えるのが「チームワークで・自発的に動き・数的成果を出した経験」です。自分の過去を洗い出し、該当する経験がないかを考えてみてください。
外資系企業を通じて早期成長を手に入れよう
今年は冒頭に述べた通り、例年より就活生全体の動きが早まっています。そのため夏季選考からハイレベルな線引きが行われるとみていいでしょう。
これから、みなさんは多数の企業から「お祈り」されるはずです。しかし、そこで落ちた経験は早期成長へつながります。将来自分が幸せに働ける環境を手に入れるためにも、早期に挫折し、課題を洗い出してください。失敗は成功の前段階にすぎません。あなたが一刻も早く焦り、失敗し、そこから得た学びで内定を獲得されるよう、全力で応援しています。
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