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外資系マーケターのやりがいと楽しさ
こんにちは、トイアンナです。外資系マーケターとして約4年勤務し、現在は独立してマーケター・ライターとして活動しています。
その経験を踏まえ、この連載では、外資系マーケターの「やりがい、楽しさ」について事例を踏まえてご紹介します。
就活生を狙って刺した、パンテーンのCM
ヘアケアブランドのパンテーンが2018年秋、就活の「あるある」へ疑問を投げかける広告を出しました。
就活生であれば、目にした方も多かったと思います。
就活の髪型どうあるべき? #1000人の就活生のホンネ から見えてきたのは、就活ヘアに対する息苦しさ。今日をきっかけにひっつめ髪をほどいた就職活動がこの国の当たり前になりますように #就活をもっと自由に #HairWeGo #内定式https://t.co/NTv2xxO4oa pic.twitter.com/nYHlT8vZMu
— パンテーン (@PanteneJapan) 2018年9月30日
参考:パンテーン ~#就活をもっと自由に~“1,000人の就職活動のホンネ”から生まれたキャンペーン 第2弾始動!
このキャンペーンでは、 「#就活をもっと自由に」というハッシュタグを通じてTwitter(現X)で多数の投稿が見られ、企業広告を超えた社会的ムーブメントが巻き起こりました。そして 同じマーケターの観点からパンテーンのキャンペーンは「ブランドとして山ほど制限を抱えた中で出した、起死回生の一手」 に見えます。
ここから先は、あなた自身がパンテーンのマーケターだったと想像しながら、読み進めてください。(内容は、必ずしも取材などに基づくものではなく、これまでの経験に基づく個人的な見解であることをお断りしておきます)
パンテーンは苦境に立たされていた
まずは、パンテーンが置かれた状況を考えてみましょう。
ヘアケア業界へは2010年に「レヴール・ショック」がありました。レヴールというブランドから、ノンシリコンシャンプーが登場。ベンチャー企業であるにも関わらず市場を席捲したのです。 同時にパンテーンをはじめとする「シリコンが入った市販のシャンプーは悪いシャンプーだ」という印象が消費者に定着してしまいます。
その後も続くノンシリコン・オイルシャンプーブーム。ベンチャー企業が「BOTANIST」を筆頭に新しいブランドを立ち上げていきます。
しかしパンテーンは多国籍ブランドでした。多数の国へ進出するブランドは原則として「国ごとに異なるメッセージは伝えない」ようにして、イメージを一貫させます。ゆえに、日本で唐突に起きたノンシリコンブームへの対応も遅れたと思われます。
売上が下がれば、予算が減ります。売上をV字回復させるには、その分CMやPRにお金が必要となるのですが、そこで予算が減ると回復が難しくなる のです。
さらにシャンプーのトレンドが800円を超える高価格・高機能になっていきます。そこでもパンテーンは「価格は上げられないのに、価格を無視して機能で比較される」という苦境に立たされました。
V字回復を実現した優秀なマーケティング
毎週あがってくる売上の数字を見て、冷汗が出る。なんとかしなければ。しかし予算もない、担当人数も減らされる。上からのプレッシャー。
その状況でも、打開策を考えて社内の人間を説得するのがマーケターの仕事です。
そして、パンテーンのマーケティング担当者はすぐれた手腕を発揮しました。まず、機能面ではなく情緒へ訴えかけるPRを提案。これで機能面での比較は避けられます。
TVのCMは最も予算がかかるため、TVで継続的なCMを打たなくても響く10~20代を狙ったと思われます。中でも就活生は髪の毛を黒に戻すため髪が傷みやすく、ヘアケアの緊急性も高いターゲットです。
よし、就活生を狙おう!
・・・・・・しかしここで課題が生まれます。
就活生は人口わずか40~50万人。広告を打って年2回購買されてもわずか80万本です。巨大ブランドであるパンテーンの規模を考えると、この売上は不十分といえるでしょう。
そこで、パンテーンは最高の「ひねり」をきかせます。 就活生だけでなく「いまのルールやマナーに凝り固まった社会へ不満を抱く社会人」を巻き込むことにしたと思われます。
社会人を狙うと決めたら、広告の掲載媒体が変わります。今回の掲載媒体は日経新聞。つまり社会人の目にも触れる場所となりました。
学生だけを狙うなら、YouTube広告やアプリ広告の方が効率的です。しかしそれでは社会人へのリーチが減る。そう考えて日経新聞を選んだと推測します。さらにOOH(屋外広告)へ二次掲載することで、日経を読まない10代・20代もそれを撮影してSNSでシェアするよう狙ったのでしょう。
TVのCMを打てない。日経新聞以外で広告を大量に打つ余裕もない。機能面では800円以上の高価格シャンプーと比較されたら負けうる。あれもできない、これも無理。パンテーンはそういう状態でも冷静に最大のチャンスをうかがい、見事成果を出した最良の事例です。
マーケターのやりがい2つ
この事例を通じ、マーケターのやりがいが見えてきます。
やりがい1.全責任を持ってゲームをひっくり返す喜び
負けそうなゲームをひっくり返し、大勝利を収める。仕事でこんな経験ができる業務はそんなにありません。しかも 外資系マーケターは1年目から大きなプロジェクトを任される傾向にあるため、1年目から「これが私のやった仕事です」と胸を張れます。
たとえば私は入社1週間でプロジェクトの責任者となり、2年後にはブランドの全部を把握。後輩の面倒も見ながら全体の戦略策定ができるようになっていました。
やりがい2.成果が世に出る喜び
多くの業種では、最初から最後までプロジェクトが社外秘。ましてやわかりやすく「これが私のやった仕事です」と明かされることはありません。
しかしBtoCのマーケターであれば、いずれ自分の仕事が世に出ます。そして 友人や家族にも「これが〇〇さんのやった仕事か」と目に見える のです。コケたプロジェクトも世に出てしまうので、良くも悪くも成果が丸見え。それが外資系マーケターのスリルであり、楽しみです。
なお、マーケターは自分が出した製品をわが子のように愛する傾向があります。私はかつて消臭芳香剤のブランドを見ていましたが、担当した消臭剤がレストランのトイレにあろうものならその店ごと大好きになりますし、担当ブランドと同じ色の服を買ったり、担当ブランドを友達へプレゼントしまくったります。
愛するブランドたちが世にたくさん生まれ、消費者に愛される経験は何物にも代えがたい喜び です。
もし「コンサルもいいけど、外資ってほかに何があるんだろう?」と思ったら・・・・・・。ぜひ、外資系メーカーのマーケティング職も検討してみてください。
仕事のプレッシャーはきつく、労働時間も長め、予算と戦い・・・・・・楽な仕事ではありません。しかし、苦難の末に痛烈なやりがいを感じられる。そういう場所を、楽しめるあなたを待っています。
と、採用担当のようなことを申し上げましたが、現在私は独立してさまざまな企業へマーケターとして入り込んでいます。連載次回からは他社事例とも比較しつつ、マーケターの業務内容へ迫っていきます。
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