会員登録すると
このコラムを保存して、いつでも見返せます
こんにちは、トイアンナです。
新型コロナウイルスの影響で、不景気になるぞなるぞと予告されていた2020年。徐々に内定取り消しのニュースが出てきています。
内定取り消しの人数が日に日に増える一方、実際の就活生を見ていると危機意識はまだ見られません。大変そうだなあ……と同情しつつも、どこかで対岸の火事に見えているようです。
しかし、不景気が続いた場合は 東大・京大・一橋大・東工大・早慶クラスの学生にも等しく内定取り消しの災厄は降りかかります。
内定取り消し企業の中にはトップクラスの学生が就職する会社も
ここからは、私の経験談です。2008年、リーマン・ショックが日本を襲いました。外資系投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻がトリガーとなり、全世界的に不景気が押し寄せたのです。日本でも採用人数の大幅縮小、内定取り消しが相次ぎました。
しかし、当時内定取り消しが大っぴらに報道されたのは、ごく一部の会社だけでした。全国で知名度が高く、ニュースとして誰もが気になる社名だけが報道され、多くの企業は公然と内定取り消しをしつつも、報道されるには至りませんでした。そして 報道されなかった内定取り消し実施企業には、トップクラスの学生がいく会社も多く含まれていました。
「トップクラスの企業」と「知名度」は相関関係がない
「トップクラスの学生がいく会社で、全国に知名度がない会社?」と思うかもしれませんが、地方において一橋大やICU(国際基督教大学)の知名度が課題を抱えるように、トップクラスの会社=知られている会社、というわけではありません。
一般人にとっては三菱商事よりも森永乳業のほうが身近ですし、ゴールドマン・サックスよりも花王のほうがたくさんの人に知られているでしょう。どちらの社格が上か、という話よりも、身近な製品の社名は全国的に知られているというだけの話です。
試用期間を“悪用”する企業も
とはいえ、当時から企業側が内定取り消しをやみくもに出せば、訴訟を起こされたときに負けうる……というのは知られていました。そこで一部の企業は、残酷な手を打ちます。 一度正社員として入社させ、試用期間のうちにレイオフ(=リストラ)したのです。
新入社員は、入社後の一定期間を「試用期間」として雇用されることがよくあります。多くの会社では3カ月を試用期間と定めています。新卒社員を試用期間なしに最初から採用してしまうと、勤務態度が悪い人や、本人の経歴に虚偽が判明した場合に解雇が難しくなります。そこで試用期間を設け、その間に、重大な問題がないかチェックするのです。
……とはいえ、試用期間だからといってやみくもに解雇できるわけではありません。一般論としては、就業規則に記載のない理由では、試用期間であっても解雇できないとされています。しかし、実際の現場ではどうでしょうか。
試用期間であっても、不当解雇の可能性はある
私は、今年、実際に試用期間で解雇を宣告された人の相談に乗りました。その時の事例を、ここからお話ししていきます。
不景気の影響なのに「勤務態度が悪い」と解雇
この人が勤めていた会社は大手メーカーで、とても労働関係法令に違反するような会社には思えませんでした。ところが、その会社は新型コロナウイルスによる影響でダメージを受け、彼は入社後に「やはり正社員雇用は難しい」と言われてしまったのです。もちろん、新卒入社直後の彼は「納得できません」と伝えました。
すると今度は、彼の勤務態度に問題があると難癖をつけられ「勤怠不良」として試用期間後の解雇を言い渡されたのです。実際、その彼は会社を休んだことがありました。しかし休んだ日には事前に上司の承認を取っていた……どころか、出社しようとした彼の意思に反し、上司から休むよう言い渡されていました。そのため、本人の勤怠に全く問題はありませんでした。
法的に争うといっても、簡単ではない
これがまかり通るなら、名ばかりの正社員採用をして、後からいくらでも内定を取り消し、新卒社員を入社3カ月で無職にしてもよいことになってしまいます。私は話を聞いてすぐ、弁護士を紹介しました。
弁護士の先生からは、以下のポイントをご指導いただきました。
・ 交渉中、原則として出社しつづけなければいけない。休んでしまうとそれが勤怠不良と判断され、解雇できてしまうおそれがある。
・ 先方が「裁判で勝てないから、解雇を取り消します」と言ったなら、その会社に復帰することになる。あなたへの風当たりや、険悪な雰囲気を踏まえて、会社にそれでも残りたいかは会社との交渉前に決めたほうがよい。
・ もし会社に戻りたくないのであれば、退職交渉もできる。30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を請求できる。ただし新卒の初任給だと額も少ないため、依頼した弁護士費用と同額くらいになる可能性がある。
・ いきなり会社へ弁護士を連れていっても、弁護士は社外の人間なので会社に入れてもらえない可能性がある。
・ 最初は「解雇の理由に納得できません。ちゃんと教えてください」と粘るなどして、録音データなどで不当解雇の証拠を集めるのが賢明。
……と、簡単にはいかない交渉事情が明らかになりました。
内定取り消しとの戦いは甘くない
この事例では、新卒の彼は当初、「絶対に争います。だって不当解雇ですから」と燃えていましたが、出社時に「まだいるのか。なぜまだ辞めていないのか」と、周囲から向けられる目に耐えられなくなりました。
鋼のメンタルがあれば不当解雇と徹底抗戦できるが…
日に日に彼は「会社へ通い続けたくない」と感じる状況となっていました。そのため録音などによる不当解雇の証拠集めが難しく、交渉は頓挫しました。
このように、いざ不当解雇だ! 内定取り消しだ! といっても、企業と争うのは簡単なことではないのが現実です。また、企業が「ごめんなさい、“内定取り消し”を取り消します」と言い出したとして、では自分の内定を取り消すような会社へ復帰したいか? という点は、実際には大きな疑問でしょう。
内定取り消しをいざ受けたら
では、いつ降りかかるともしれない内定取り消しを、私たちはどうとらえればいいのでしょうか。まずは「どんなに法的に争っても、どんなに職場の人間関係が危うくなろうとも、その会社に残りたいか」を考えることです。
そして、もし「こんなひどいことをする会社、うんざりだ」と思うならば、内定取り消しそのものは受け入れつつも、30日間の平均給与(解雇予告手当)をもらえるよう交渉する……というのが、法的には正しくないかもしれませんが現実的な線でしょうか。
そして、2021~23年卒のみなさんには、それ以上に覚悟していただきたいのです。これから内定取り消しがありうること、そして入社後の解雇という、裏切りも存在することを。新卒にとって、あまりに手厳しい船出を強いる就活事情となってしまったことに、社会人の先輩としても申し訳なく思います。
ただ、そのような状況であっても、就活は与えられたカードで戦うことしかできません。これからみなさんが就活をされる際は「どれくらい会社に資産が残っているか」「どれほど新型コロナウイルスの影響を受けうるか」をIR情報(投資家向け情報)でしっかり見定めてリスクヘッジしつつ、いざ自分が内定取り消しの憂き目にあっても「次だ、次」と切り替える強いマインドを持ち、就活戦線を生き延びてほしいと願っています。
会員登録すると
このコラムを保存して
いつでも見返せます
マッキンゼー ゴールドマン 三菱商事
P&G アクセンチュア
内定攻略 会員限定公開
トップ企業内定者が利用する外資就活ドットコム
この記事を友達に教える