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美大卒ではない。絵が描けるわけでもなければ、作曲もしていない。けれどクリエイティブな仕事がしたい。幸い、そこそこの学歴がある。
そんな方が就活で惹かれやすいのが「広告代理店」と「外資メーカーのマーケティング部」です。
しかし広告代理店は、入社するまでコピーライターなどのクリエイティブな仕事に就けるかどうかが不明。しかも大半は営業に回されます。
そのうえ、「国語が得意だった」「俳句で賞をもらったことがある」くらいの自分が、果たしてクリエイティブな職種を選んでいいものか? 自分は果たしてそこまでクリエイティブなのか? ただ、 ちょっとクリエイティブな仕事に触れてみたいワナビーでは?
そう思うなら、ぜひ外資マーケターを目指してください。
外資マーケターに必要な資質は「思考の」クリエイティブさ
外資マーケターに必要な資質に、ある程度の「クリエイティブさ」があることは事実です。ですがそれは実際に絵が上手、曲が作れるといった制作活動を指すのではなく「思考の柔軟さ」を意味します。
以前、コンサルタントとマーケター、両方を経験した友人と「コンサルとマーケターの違いってなんだろうね?」とカジュアルな話をしたことがあります。その際、友人はこう答えました。
コンサルタントは、ある程度「課題や、解決策の選択肢が決まっている」状態でロジカルに考える仕事 だと思っている。
例えば、「カニの缶詰を海外で売りたいが、次の5カ国の候補のうちどの国から進出すべきか?」といった課題を与えられれば、コンサルは現地の法律、税制、販売経路、食文化を調べ上げて比較・提案できる。
対して、 事業会社(メーカー)のマーケターは、「とにかく売上・利益を上げたいがどうすればいいか?」という、選択肢の定まらない質問へ取り組んでいる。
だから広く競合でもない事例を勉強して、時には降ってきたインスピレーションをもとに「これだ!」と当たりをつけて提案するよね。もちろんプランの採択にはロジックが必要だけれども。取れる選択肢が無限にあって、「思いつき」も含めた柔軟さが求められるのがマーケターかな。
この友人の語ったとおり、マーケターは「とにかく売上・利益を上げる」という大きな課題へ取り組みます。先人の通った道は多数あれど、時には「突然天から降ってきた」アイデアが大きな効果につながることも珍しくありません。
アイデアがどれくらい売りにつながるか、安定して利益を生むかを、「思いついてから」検証するロジックはあれど、思考のクリエイティブさは常に求められる・・・・・・それがマーケターの面白さであり、難しさです。
ゼロから思いつく力よりも、事例に学ぶ力
ここまでご覧いただいた方は、「じゃあ、面白いアイデアを出しまくるのがマーケターの資質か」と思うかもしれません。しかし、アイデアを出しまくるのはむしろ、広告代理店の仕事です。
マーケターが持つべき資質は、「業界を問わず他社事例や消費者の声を吸収し、自社ブランドで試せないか」と常に考える力 です。悪く言えばパク・・・・・・いえ、オマージュする力であり、決してクリエイティブとは言えません。
具体例:ヒルトンがアウトレットでスクラッチ?
具体例を示しましょう。例えば私が直近感動したのは、ヒルトンホテルのマーケティングでした。
先日、御殿場のプレミアムアウトレットにいたところ、「スクラッチを削るだけでハワイ旅行が抽選で当たる」懸賞がありました。
スクラッチくじは外れでしたが、そこで「確実にハワイのヒルトンに泊まる方法がある。ヒルトンの別荘利用プログラムの説明会を聞いてくれるだけで、今なら全員にホテル3泊分をプレゼントしている」と聞かされました。90分の説明を聞くだけでハワイのヒルトンに3泊できるなら、聞かない手はありません。
ヒルトンでは現在、別荘代わりに年1週間ほどハワイのヒルトンに泊まれるHilton Grand Vacationsというプランを扱っています。管理人費や固定資産税がかかる別荘よりも、清掃や食事のあるホテルを別荘に選んでもらおうという試みです。
しかし、いきなり「別荘としてヒルトンはいかが」と言われても、高そう・・・・・・と敬遠されて、足が向く方も少ないでしょう。
ですから、マーケターは代わりに、 「プレミアムアウトレットなどに多くいる“ブランド物をお得に買いたがる層”を狙い」「スクラッチの簡単な懸賞でハードルを下げてハワイ旅行に関心がある消費者を選別し」「“懸賞より確実なヒルトン・ハワイ宿泊”をエサに説明会へ誘導」 という一連の流れを考えたわけです。
仮に1,000人が説明会へ参加・宿泊し、そこから実際にプランを購入するのが2割でも8,000万円/年程度の売上。ROI(投資利益率)はばっちりです。
私はスクラッチくじを削りながら、「絶対に同様の販売フレームを担当したブランドへ導入しよう」と決めました。
もちろん「スクラッチくじ」などのディテールは変わります。しかし、「最初に簡単に参加できるキャンペーンを試してもらい、外れた方へ“絶対に望みが手に入る手段がある”と提案する」というプロモーションの枠組みは応用可能です。
このように、 別業界の他社のプロモーション、キャンペーンから学んで自社へ応用すれば、クリエイティブでなくてもマーケターになれます。
消費者のことを知るにも、「消費者リサーチ」と銘打った仕事をしている日だけユーザーの声を聴いているのではもったいない。友人に「今、食器用洗剤は何を使ってるの? なんでそれにしたか教えてくれない?」と普段から尋ねてみるのです。
あるいは、他社ブランドでも「これ買ってよかったんだよね~」という友達の声を深掘りして、「なぜそう思ったんだろう? 自分の担当している製品/バイト先/インターン先の施策に応用できないかな?」と考える。こういった思考のクセがあれば、マーケターとして幅広い施策を考えられます。
“興味のない相手”が狂喜乱舞するようなプレゼントを選べるか
そして、これらの思考ができている人は、必然的に「他人へプレゼントをあげるのが得意」になります。
他社事例をどん欲に吸収していけば、人がどんな動機でものを選び、買っているかを、「日本人」あるいは「人類」という大きな枠組みで理解していくからです。
もし自分がマーケターに適しているかどうか知りたかったら、「特に好きでも嫌いでもない人を1人想像して、その人が狂喜乱舞するプレゼントをあげられるか」でテストしてみてください。
自分にとって興味のない相手が、大喜びするものを届けること。これがマーケター業務の本質です。
そのためには自分と無関係な他社のプレゼントを見たり、プレゼントする相手と似たタイプの友人にヒアリングしたりせねばなりません。その努力を楽しめる人こそ、マーケターに向いているのです。
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