目次
はじめに
商社は激務という印象が強いですが、海外で大規模な事業に携われるといった魅力はもちろん、給料が高く、福利厚生も充実しているため、非常に人気のある業界です。
しかし、皆さんは商社がどのような事業展開を行い、収益を上げているのかをご存知でしょうか?
今回は、商社について詳しく知っていただくためのイントロダクションとして、「総合商社とは?商社マンは何をしているのか?」ということについて理解を深めていただけたらと思います。
トレードから事業投資へ〜総合商社の歴史を紐解く
商社とは、字面通り「商いを行う会社」の事を指します。特に総合商社は、「ラーメンから航空機まで」といった言葉で表されるように、幅広い商品の輸出入を担当する広義の卸売会社として、大きく発展を遂げてきました。
特に高度経済成長期には、各種資源を日本に調達し、それらを加工した工業製品を世界各国へ販売して外貨を稼ぐという国益上非常に重要な役割を担い、対外的な折衝役という立ち位置でもあったことから、「海外に行くなら商社に就職するべし」と言われていました。
しかしその後、各メーカーが独自の海外販路を築くことで商社に取られるマージンを削減する動きが広まっていき、「商社冬の時代」と言われる時代に突入します。
この「商社冬の時代」を生き残っていくために試行錯誤した結果、サプライチェーンマネジメントと呼ばれる流通網整備の効率化や、蓄積された海外ネットワークを生かした国内外企業への事業投資といった様々な形で利益を上げる事に成功。今日まで存続しているわけです。
商社の説明会で事業体系について説明する際によく使われる、「トレードと事業投資という2つの車輪」というフレーズはこのような意味を持っています。
しかし、だからといって貿易・販売ビジネスが消滅したわけではなく、これらも変わらず商社の主要ビジネスとして存在しています。ただでさえ幅広い商品を扱っていたのに、そこから収益を上げる仕組みがさらに多様化してしまったのです。
このような経緯により、現場の社員ですら全容を掴みきれないほどに複雑化したことが、「商社は何をやっているのかよくわからない」と言われる原因となっているように考えられます。
では、商社の手掛ける事業を大まかにまとめてみましょう。
トレード&事業投資の簡単解説
先ほど出てきた「トレードと事業投資という2つの車輪」というフレーズ。まずはこれについて、ざっくりと解説していきましょう。
トレードとは、物を右から左に流す仕事です。
例えば新日鉄が鉄板を作って中国の企業に売りたいとします。その時に鉄鉱石を鉄鋼メジャーから買い付け、八幡製鉄所まで搬入される手続きを整える仕事を担当するのが三菱商事、つまりは総合商社のトレードビジネス担当部門になります。
一方で事業投資とは、商社が国内外の企業に対して出資を行って人を送り込み経営に関与させることです。
それまでのトレードビジネスで培ったノウハウを生かして経営に関与、企業の成長に伴う企業価値の増大や配当金などから収益を上げるというものです。先ほどの例で言いますと、鉄板を中国各地の工場へとより効率的に納入する物流網を整備したい(それに必要なノウハウがある)と考えて現地の物流関連会社へ出資を行い、派遣されてきた社員主導のもとで経営関与を行っていく……といった内容です。
事業内容から分かる!五大商社それぞれの特色とは
商社と言っても、どの会社も同じ仕事をしているわけではありません。事業投資とひとことで言っても、各社さまざまな企業に投資をしています。
今回はその事業投資に注目し、少しでも実感として理解してもらうため、五大商社それぞれの代表的な案件を紹介していきたいと思います。
サハリンプロジェクト【三菱商事・三井物産】
ロシア政府主導の下、サハリンで行われている油田・天然ガス田の開発プロジェクト。サハリンⅡと呼ばれるプロジェクトの推進母体であるサハリン・エナジー社には、三菱商事が10%、三井物産が12.5%を出資しています。
日本という国の特性上、各種資源をいかに調達するかは、国益のうえでも重要な問題です。このサハリンプロジェクトは、地理的に日本の原油やLNG調達先として非常に適しており、日本のエネルギー戦略において主要な地位を占めています。
ジュピターテレコム(通称J:COM)【住友商事】
日本最大のケーブルテレビプロバイダーとして、高速インターネット接続や多チャンネルテレビなどのサービスを提供しているジュピターテレコムは、住友商事が株式の40%超を保有するグループ会社です。
住友商事は商社の中では珍しく国内事業に強く、特にJ:COMやユナイテッドシネマ(シネコン。都内では豊洲が有名)、アスミックエース・エンタテインメント(映画製作会社)などを有するメディア事業には定評があります。こういった消費者に近いビジネスにも、商社は手を伸ばしています。
デサント【伊藤忠商事】
昔から繊維が強いと言われていた伊藤忠は、特に他社と比べてもアパレル事業が強いと言われていますが、そのわかりやすい例がこのデサントです。
国内スポーツウェア大手としてUMBRO(アンブロ)やle coq sportif、また社名にもなっているDESCENTEなど各種スポーツブランド衣料の製造・販売を行っているこの会社は、かつて伊藤忠が一部出資する関連会社でした。
しかし同社の韓国に重点を置いた事業戦略に危機感をもった伊藤忠商事は2019年1月、株式公開買付けを表明。敵対的TOBを行い、経営の実権を獲得しました。その後伊藤忠商事の予想は見事的中。2019年後半に韓国で反日運動が起こり、日本製品の不買運動が活発化し、韓国での売上が大幅に減少しました。
水事業【丸紅】
昨今の商社ビジネスの流れとして、長期的に安定した収益が見込めるインフラビジネスへの注目が挙げられます。特に日本の高い技術力を生かした水ビジネスの成長が期待されていますが、商社の中でも水ビジネスに最も力を入れているのが、丸紅です。
丸紅はヨーロッパ、アジア、中南米、中東において、上下水道や水処理施設の建設請負、施設管理、BOTなど様々な水道事業を行ってきました。今後は水道の民営化が進むヨーロッパ市場で、培った水事業のノウハウを活用し、更なる事業展開を図ります。
おわりに
超国家的ビッグプロジェクトの実現に関与することができる、日本経済の基盤を築いてきた商社のグローバルネットワークは、予測ができない将来のビジネスにおいて確固たる地位を確立しています。
トレードだけではなく事業投資という新規事業も成長しており、新しいことに挑戦したい人に合っているかもしれません。事業内容だけでなく、給料や待遇の面でも魅力的な商社マン。詳しく知りたい方は下記の書籍を参考にして下さい。
参考書籍
商社志望の学生におすすめしたい書籍は、壮絶列伝!商社志望なら必ず目を通したい書籍18選で紹介しています。
なかでも特にオススメなのが、黒木亮氏の名作「エネルギー」です。緻密な調査・取材に裏打ちされた小説で、現役商社マンの躍動感溢れる生活を追体験することができます。
歴史から総合商社を研究した名著です。三井物産を目指す方であれば、一度は目を通しておいたほうが良いでしょう。
三菱商事を目指す方には、こちらもオススメです。
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