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こんにちは。外資就活 商社チームです。
就職活動において絶大な人気を誇る総合商社。
前回の「右から左に流すだけ」ではない。総合商社のトレーディング業務を簡単解説!では、総合商社のビジネスの一つであるトレーディングについて解説してきました。
本コラムでは二つ目のビジネスの柱である事業投資について、詳しくご説明します。
総合商社の事業投資とは?
総合商社の事業投資とは、ある企業に対して商社の保有する経営資源を投資し、持続的な経営参画を通じて、投資先企業とのシナジーを創出し、新たなビジネス価値を生み出すことを目的とした投資を指します。
PEファンドが短中期的な企業価値向上とエグジット(IPO・売却)によるファイナンシャルリターンを主目的とするのに対し、商社の事業投資は長期的な事業シナジーの創出を重視する点で大きく異なります。
経営資源とは、一般的に「ヒト・モノ・カネ・情報」と呼ばれるものです。
総合商社は独自に生産設備を有していないため、「モノ」を除いた「ヒト・カネ・情報」を投資することになります。
一般的に投資というと、企業にお金を出資してキャピタルゲインで儲けるというビジネスをイメージしますが、 人的支援や情報の提供にも力を入れていることが商社の投資の特徴です。
総合商社の事業投資の背景
一昔前の商社ビジネスといえば、貿易の仲介を行うトレーディング業務がメインでした。では、なぜ総合商社は事業投資に乗り出したのでしょうか?
1970~1980年代にかけての日本企業はその成長と共に、海外との取引ノウハウを学び、蓄えるようになりました。
そして、仲介料が発生する商社を挟まず、独自で取引を行うようになったため、商社不要論が唱えられるようになりました。
こうした逆風の中で、商社が目をつけたのが事業投資です。
原料調達(川上)から製造・加工(川中)、販売・流通(川下)まで、サプライチェーン全体の企業に投資することで、一気通貫したバリューチェーンの構築が可能になりました。
これにより、各段階での付加価値を取り込めるだけでなく、安定した収益基盤を確保できます。
このように、 時代に合わせてビジネスモデルを変革することができる柔軟性 こそが、今日までの商社の成長を支えてきた要因の一つなのです。
トレーディングで培った強みが事業投資を支える
商社が事業投資で大きな成果を上げることができたのは、長年のトレーディング業務で培った独自の強みがあったからです。
商社は世界各地でのトレーディングを通じて、各業界の川上から川下までの構造を熟知し、どこにボトルネックがあり、どこに利益の源泉があるかを把握していました。また、品質管理、物流、与信管理、為替リスクヘッジなど、国際取引に伴う様々なリスクとその対処法についても豊富な経験を有していました。
さらに重要なのは、世界各地に構築したネットワークと、現地の商慣習や規制環境に関する深い知見です。これらは一朝一夕では築けない貴重な資産でした。
事業投資においても、これらのトレーディングで蓄積したノウハウが大いに活かされています。投資先の選定、リスク評価、投資後の経営支援、そしてバリューチェーン全体の最適化において、商社ならではの視点と経験が競合他社との大きな差別化要因となっているのです。
総合商社の事業投資の目的
事業投資を通じて利益を得る仕組みは二つあります。一つ目はキャピタルゲイン、二つ目は シナジー効果による新規ビジネスの創出 です。
1.キャピタルゲイン
キャピタルゲインとは、資産価値の上昇による利益のことです。 この場合の資産とは、株式を指します。
ある企業に出資した後、人的支援やそのネットワークを活かした情報力を通じて、投資先企業のバリューアップを図ります。
そうして企業価値が向上した企業の株式を売却することで、出資時に支払った金額との差額分を得られます。
しかし、 キャピタルゲインも重要な収益源の一つですが、総合商社が事業投資で最も重視するのは、次に説明する新規ビジネスの創出です。
2.新規ビジネスの創出
新規ビジネスは、既存ビジネスの掛け合わせで生まれることが多く、これが上述したシナジー効果と呼ばれるものです。
豊富な資金力と広い事業領域、会社をつなげるネットワークを有する総合商社だからこそ、このシナジー効果を最大化することができます。
総合商社のシナジー効果の具体例として、伊藤忠商事のコンビニエンスストア事業が分かりやすいでしょう。
伊藤忠商事は、ファミリーマートへの投資を通じて、食品事業、繊維事業、情報通信事業など複数の事業領域とのシナジーを創出しています。
コンビニという消費者接点を活用して、グループ企業の商品販売やサービス展開を行うことで、単体投資では得られない相乗効果を生み出しています。
近年は、第4次産業革命期と呼ばれるほどデジタル化が進んでいる影響もあり、IT系のベンチャー投資に力を入れている総合商社が多くあります。
また「ヘルスケア」や「モビリティ」なども、今後商社が投資し、新規ビジネスを開拓していく分野として期待されています。
投資銀行・ベンチャーキャピタルとの違い
就活生の中で「投資」というと、投資銀行やベンチャーキャピタル(VC)をイメージする人が多くいるでしょう。
特に投資銀行は、総合商社を志望する学生の併願企業としてもよく挙げられます。
ある商社の面接では、事業投資を希望していた就活生が「なぜ投資銀行ではなく、商社なのか?」と質問されたケースもあるようです。
そこで、総合商社の投資と、投資銀行・VCの投資との違いを以下にご説明します。
1.投資銀行
投資銀行と商社の一番の違いは、「ビジネスに内外どちらから関わるか」であるといえるでしょう。
投資銀行は主に企業のM&Aや資金調達において、財務分析や取引構造の設計などのアドバイザリー業務を提供し、案件成立時に手数料を受け取ります。
つまり、サポート、アドバイスを提供し、手数料を得るビジネスです。
対して、総合商社は自分達で投資をし、その企業の事業に参画していくというビジネスになっています。
収益源は、企業価値の向上によるキャピタルゲインやシナジーを活用した新規事業となります。
自分の性格やバックグラウンドと照らし合わせた上で、どちらの業務がより自分に合っているか考えてみることをお勧めします。
2.ベンチャーキャピタル(VC)
VCと商社の違いは、投資の対象と目的にあります。
VCは非上場企業に投資をし、その企業をExit(=上場あるいは、M&A)させることで、キャピタルゲインを得るというビジネスモデルになっています。
対して総合商社の投資対象は非上場企業に限らず、また上述したように新規ビジネスの創出やバリューチェーンの構築を目的とした投資も行っています。
当然、新規ビジネスの創出などには時間がかかるため、投資先企業との長期的な関係作りに携わりたい場合は、商社の事業投資が適していると言えます。
事業投資から事業経営へ
総合商社のビジネスモデルは常に変化しており、各商社は事業投資のみならず事業経営にまで、そのビジネスを広げています。
事業経営とは、商社内で経営人材と呼ばれる人員を投資先企業に派遣し、企業の経営改善・バリューアップに努めていくというものです。
各商社とも、この経営人材の輩出には力を入れており、住友商事は社内で「事業経営者養成塾」といったプログラムを開設しています。
今後、各商社の経営人材育成に向けた取り組みはさらに発展していくと予想されます。
総合商社の事業投資は、単なる資金提供を超えた『ヒト・情報・ネットワーク』を活用した長期的なパートナーシップです。この独自のアプローチこそが、商社ならではの投資価値を生み出す源泉となっています。
いかがだったでしょうか。
総合商社の事業投資を理解する上で、本記事が少しでも皆さんの役に立てば幸いです。
総合商社のビジネスに興味が湧いたら、OB訪問などを通して実際に社員の話を聞き、具体的な業務内容への理解を深めるとよいでしょう。
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