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総合商社、冬の時代を経て
こんにちは、外資就活 商社チームです。
就活生の皆さんは総合商社をどれほど理解しているでしょうか?
総合商社はよく「ラーメンからロケットまで」という有名な台詞もあるように、その巨大なリソースをもって様々な商材を扱っています。
そんな商社にも「冬の時代」と呼ばれる商社不要論が飛び交っていた時代がありました。しかし、そのような逆境に立たされても事業の仕組み自体を大きく変えることによって生き残りに成功し、今もなお日本独自の企業形態として世界に注目されています。
そんな魅力あふれる総合商社の実態を、官公庁資料から紐解いていこうと思います。
事業別に見る総合商社
※各サムネイルをクリックで資料が開きます。
※掲載されている情報は各資料作成時点でのものです。
水ビジネスにおける海外展開編
水ビジネスは各地域、各国において必要不可欠な分野であり、総合商社の得意な領域です。
本資料によれば、世界の水ビジネスの市場規模は約83兆円と極めて莫大ですが、日本企業の占有率は0.4%と低い状況にあります。このことからも水ビジネスはまだまだ可能性のある成長マーケットであることが見て取れます。
資料8ページにある通り、総合商社の水ビジネスへの関わり方としては大きく3点あります。1点目は海外企業とのジョイントベンチャー、2点目は海外企業の買収、3点目は自治体との連携や事業参画です。
総合商社の事業投資という強みを生かすには、1点目の海外企業とのジョイントベンチャーが主な関わり方となります。国によっては外資系企業が参画するには様々な制約があるため、ハードルが高くなることがしばしばあります。
ジョイントベンチャーのメリットとしては、あくまで総合商社は現地企業に対して出資しているというスタンスを取ることができます。また、その国における複雑な制約や法的な措置に対応するノウハウを出資先の現地企業は持っているため、参入障壁が低くなるのは事実です。
住友商事は2012年にマレーシア及びスペインのエンジニアリング会社(Malakoff、Cadagua)と、海水淡水化プラントの建設及び20年間のO&M事業を受注し、事業会社を設立しました。また、三菱商事は2015年にJERA(東京電力と中部電力の出資会社)と共に、カタールでの海水淡水化プラント・発電プラントの建設、25年間のO&M事業を受注し、カタール財団等と事業会社を設立しています。
一方で水事業に強みを持つ丸紅は2点目の海外企業の買収を行っています。
丸紅は2006年にチリの上下水道事業会社(アグアスデシマ社)を買収。さらに2010年には、丸紅と産業革新機構が、同国内第3位の上下水道事業者(アグアスヌエバス社)を買収しています。
総合商社が現地の海外企業を買収して現地でビジネスを行うことは、一般にリスクが大きいものです。 しかし、これらの事例から、丸紅はリスクを取る選択を行い、より多くの収益を得ていることが分かります。また、リスクの高い企業買収を行えるノウハウを蓄えていることから、他商社に比べて水事業に力を入れていることがうかがえます。
本資料には三菱商事、住友商事、丸紅のみが総合商社としては記載されていますが、水ビジネスの海外展開の方策等に関する検討会メンバーには五大商社すべてが名を連ねていることからも、総合商社が水ビジネスに注力していることが分かります。
資源外交の取組編
2015年度の資源価格の暴落から、総合商社は不安定な資源分野だけでなく安定的に収益が見込める非資源分野にリソースを集中させる傾向にあります。しかし、だからといって莫大な収益が見込める資源分野から撤退するわけではありません。非資源分野が現地の民間団体、民間企業とやり取りをするのに対して、資源分野では国の機関とやり取りを行うため、国家レベルのプロジェクトとなります。
本資料の資源外交における取り組みを見ても分かるように、安倍総理(当時)を筆頭に資源大国と積極的に外交を行っていることがわかります。資料19ページによると、石油・天然ガスの上流開発投資は直近2年連続で減少しているものの、その規模は4,330億ドルと莫大です。
総合商社の資源外交について見る際にはロシアとの資源外交を見るといいでしょう。日露エネルギー・イニシアティブ協議会傘下の3WG にあるように、日本とロシアは積極的に資源外交を行っており、ロシア政府も日本の技術力の高さを評価しています(資料作成当時)。
官公庁資料における炭化水素関連の合意文書を参考にすると、日本が自信を持ってロシアに技術提供している企業がどこなのか、ひもとくことができます。
合意文書の例として記載されている11件のうち総合商社が関わっているのは7件。内訳としては三井物産3件、三菱商事2件、丸紅2件です。このデータから資源分野に強みを持つ3社はやはり、国家レベルのプロジェクトに関わっており、資源分野で収益を稼いでいると言えるでしょう。
各商社の官公庁資料
三井物産
商社は自身の潤沢な資金力と人を世界各地に派遣し、その派遣先の企業で成果をだすというようなビジネスモデルを近年構築しています。ここではその総合商社の一角を担う三井物産の最近の事例を、官公庁資料から理解していきます。
発展途上国の医療事業に総合商社が直接的に関与している事例を取り上げてみます。
この資料は、海外に医療事業を輸出する際にどういったプロセスで、どのようなステークホルダーがそこに介在するのかがまとめられています。ヒト・モノ・カネという潤沢なリソースをもっているからこそできる商社の事業の幅を感じることができるのではないでしょうか。
日系企業が現地パートナー企業と組んだ際に出資するのはヒト・モノ・カネであるが、総合商社が現地パートナーと組んだ際に注力して出資しているのは人、特に経営人材を派遣していることが特徴的です。
近年の総合商社の特徴として、従来通りの投資というよりは、よりニッチな部分の稼げる分野への出資が多く見られます。資源過多であった三井物産が非資源分野へ注力し、収益に安定性を持たせようとする狙いを読み取ることができます。
住友商事
本資料では、住友商事がバイオマス燃料をどのように扱っていくかについて述べられています。ビジネスの現場での総合商社のリアルな交渉の末端を垣間見ることができるようなものになっています。商社志望の就活生には是非一読していただきたいです。
欧州では今後2030年までにエネルギー供給に占める再生可能エネルギー比率を42.5%まで引き上げることを決定させています。 森林開発から需要家への供給までのバリューチェーンをイチから構築し、川上から川下まで抑える、総合商社ならではの事業といえます。 本資料においては「安定的」「長期的」というフレーズが数多く見受けられます。これらのことから、住友商事は資源ビジネスでありながらも、安定的に発電することができるバイオマス燃料での発電に、今後注力していくことが分かります。
このプロジェクトの他にも上記の「水ビジネスにおける海外展開編」でも取り上げられているように、2016年度の資源価格の暴落によって、2016年度3月時の当期純利益が第2位となった住友商事は今後も非資源分野や安定的に収益を稼げる分野へのリソースを集中させていくことが中長期経営計画を見ても分かります。
従来のメディア事業だけでなく、水ビジネスや中国における介護、リハビリ事業を行うなど非資源分野での新規事業を行っていることからも住友商事が今後、よりニッチな分野への投資を行い収益を伸ばしていく意図がうかがえます。
丸紅
こちらの資料では海外での鉄道販売戦略の過去のプロジェクトのひとつとして、タイで行った丸紅の鉄道プロジェクトが紹介されています。鉄道事業は日本国内では今後のマーケットの拡大は難しいため、積極的に海外に出て行くことが必須です。
鉄道事業に関して、海外企業は総合メーカーが一貫してプロジェクトを行うのに対して、日本企業は各々のメーカーが共同でプロジェクトを行うことになります。海外企業との競争に勝つためには、海外でビジネスを行うためのノウハウを蓄えていることが必要です。そこで丸紅はタイでの知見を活かし、日本企業の取りまとめを行うことで、タイでの業務を遂行しました。
このプロジェクトにおいて丸紅は保守業務を担当しています。メンテナンスや車両更新、リスク対応をJR東日本と共同で行うことで、高品質インフラの低い保守費用の実現に貢献しました。
上記の「水ビジネスにおける海外展開」でも見られるように、 丸紅は強みのある事業においては失敗するリスクを恐れずに、積極的に収益を上げていこうとする意思が見られます。
さらに、食品部門における全世界の産地・加工拠点から消費者のニーズに応じた水産物を調達し、日米両市場で業界トップクラスの販社を通じた販売展開にも強みがあります。
丸紅の強みである電力、水、食糧、これらの資源を最大限活用し、これから伸ばすことで収益を上げていく戦略が官公庁資料や中長期経営計画から読み取れます。他社にはない需給のノウハウは、丸紅ならではの武器となっているのでしょう。
豊田通商
こちらは豪州にて総合商社が天然ガスの採掘権益の一部を譲渡した事例です。
この付近では石油天然ガスを始めとする多くのガス田の開発事業があったため、その権益を狙ったようです。この天然ガスのプロジェクトは豊田通商でも初めての試みであり、今後の事業展開を予想する際にも役立つ可能性があるのではないでしょうか。
今後の総合商社の展望
いかがでしたでしょうか。
丸紅以外の総合商社は非資源分野に注力しており、収益のバランスを取ろうとしています。さらに、丸紅以外がリリースしているのは全て都市開発事業です。これらの事例から総合商社は海外での街づくりにおける日本ブランド展開を加速させようとしていることが分かります。
「冬の時代」を皮切りに「トレーディング」主体のビジネスモデルから「事業投資型」のビジネスモデルに一気に舵を切った総合商社。外資コンサル・外資投資銀行と並んで就活生からも引き続き人気の業界であり、内定を得るためには業界研究をはじめとする入念な対策が必要です。
この記事や最新の情報を参考に、ぜひ総合商社志望の方は商社への理解を深めて内定を目指してください。
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