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グローバル標準に近いジョブ型の雇用が増えたら、就職活動や働き方はどう変わるのか―。特集「“ジョブ型”時代の就活とキャリア」第1回では、海外でのビジネス経験が豊富で今は米国Quoraの日本事業担当を務める江島健太郎さんと、人事・採用コンサルティングで有力企業向けに多くの実績を持つ曽和利光さんに話を聞いた。

両者共通の見解が、「あらゆる仕事が高難度化する」こと。誰もが専門性を求められるジョブ型時代を、学生や若手社会人はどう捉えるべきか。2人の視点に迫る。【藤崎竜介】
◇ジョブ型とは何かについては、こちらの記事を参照ください

〈Profile〉
写真左/江島健太郎(えじま・けんたろう)
Quora エバンジェリスト(日本担当)。
6歳でプログラミングを始め、京都大学工学部卒業後、1998年に日本オラクルに新卒入社。2000年にインフォテリア(現アステリア)へ転職し、同社米国法人の代表などを務める。2009年から2013年までパンカクでゲームプラットフォームの開発などに従事。同年に米国ニューヨークでアジア系特化型のマッチングサービスを手掛けるEast Meet Eastを共同創業し、CTO(最高技術責任者)として開発などを主導する。その後帰国し、2018年から現職。

 
同右/曽和利光(そわ・としみつ)
人材研究所 代表取締役社長。
1995年、京都大学教育学部卒。リクルートの人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命保険の総務部長などを経て、2011年に人事・採用コンサルティングなどを行う人材研究所を設立。著書に「コミュ障のための面接戦略」(星海社新書)などがある。

※内容や肩書は2022年8月の記事公開当時のものです
 

 

ジョブ型の普及で「社会が劇的に変わる」は誤解!? 米国Tech企業は意外とメンバーシップ的な側面も

――メンバーシップ型からジョブ型への転換を打ち出す日本企業が増えている現状を、どう見ていますか。

江島:基本的にはいいことだと思います。これまで日本企業は採用の際に、候補者の卒業(見込み)大学名を気にする一方で、専攻はあまり重んじない傾向にありました。その人が実際に何をできるかはさほど見ないで、「とりあえず」入ってもらい、ジョブローテーションなどを通じてある意味パターナリズム(*1)的に汎用性のある人材に育ってもらう仕組みというか……。
*1 強い立場にある者が、弱い立場の者の意思決定を強制的に代行すること
 
パターナリズム的、言い換えると「おせっかい型」の採用・人材育成は、非効率な部分が目立つと個人的に思うので、ジョブ型の導入でこの点が変わるならいいことだと思います。

◆各社のプレスリリースより(リンクは以下の通り)
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/03/0330c.html(日立製作所)
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/07/6.html(富士通)
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/07/31/4580.html(KDDI)
https://jpn.nec.com/press/202104/20210406_01.html(NEC)

――海外だと、大学での専攻内容が就職に直結しやすいと聞きます。

江島:そうですね。最近の米国西海岸では特に、それが顕著です。現地のTech企業では、応用数学や物理などの博士号を持つ人が増えていますね。

曽和:ジョブ型に転換した国内企業の一部では、新卒採用の募集で好影響が出ているようですね。ある企業ではジョブ型を打ち出した結果、例えば機械学習を学ぶ学生など、それまでほとんど採用できなかったタイプの人が応募してくるようになったと聞きます。募集・採用の段階で職務内容が明確になって、応募者にとっての「配属リスク」が減るからでしょう。

江島:それに従来の新卒一括採用だと初任給に差をつけづらいので、機械学習を学ぶ学生みたいな獲得競争が激しい人材の採用は、待遇面で障壁が高いですしね。それが変わっていくならば、国際競争力の観点でも意義深いはずです。

曽和:ただそうした採用への影響がある一方で、ジョブ型の普及が日本を根本から変えるかというと、そうでもなさそうな印象も抱いています。1990年代以降、ジョブ型の影響を受けた職務等級制度(*2)を採り入れる日本企業が増えましたが、昨今のジョブ型ブームはその延長線上の側面もあるようにみえるからです。
*2 従業員を職種と求められる業務の難易度によって分類し、待遇に反映する仕組み

正直、ジョブ型への転換を打ち出す企業の発表を見ると、「職種」から「ジョブ」に言葉を変えただけでは?と思わせるものもありますし……。

江島:確かに、すごく大きな変化ではないかもしれませんね。国内外のさまざまな企業で働いてきましたが、雇用のあり方は違うものの、驚くほど大きなギャップを感じたかというと実はそうでもありません。特に私が主に関わってきた米国のTech系スタートアップ企業だと、ジョブに縛られず「必要なことは何でもやる」ことが求められがちですし。

――ある意味、メンバーシップ型のような側面もあると。

江島:はい。なので、時に「ジョブ型の世界だと、ジョブディスクリプション(JD、職務記述書)に記された業務以外はやらない」みたいに捉えられることもありますが、それは誤解だと思います。

社会全体が便利で豊かになり、仕事は高度化。だからこそ「ジョブ」を意識する

曽和:確かに誤解ですね。なのでジョブ型の普及が劇的なものとは感じないのですが、一方でキャリアを考える上で「ジョブ」「職種」を意識することは前より大事になっているとは思います。

なぜなら人に求められる仕事の内容が、どんどん高度になっているからです。

――ITなどによって業務の効率化・自動化が進んで、多くの人がより高い付加価値を出すことを求められるからでしょうか。

曽和:それもあります。いろいろな理由によってあらゆる仕事が高難度化して、より専門性が必要になっていると思うんです。

場合によっては、専門性がないと出発点にすら立てないというか……。

例えば私が関わることの多い、企業の人事部門についていうと、昔は専門性が低く「若手がジョブローテーションの中で短期間だけ経験する部門」みたいな感じで位置づける企業が少なくありませんでした。それが最近は、必要要件が労働法の知識、データ分析スキル、心理学への理解といった具合に複合化していて、スペシャリストと呼べるような人が増えているんです。

江島:仕事が高難度化しているのは、その通りですね。社会全体が昔より便利で豊かになっていることも、背景にあると思います。

例えばかつて、洗濯機が登場して人々の生活を大きく変えた時代がありましたが、今はもう多くの家庭に洗濯機がありますよね。あらゆる欲求が満たされていて、革新の余地は限られます。そういう中で価値を認められる製品やサービスを作ったり、売ったり、運営したりするには、高度な知識やスキルなどが不可欠なのだと思います。

懸念点は「ジョブの陳腐化」。重要性が増すピープルマネジメント

曽和:あらゆる仕事の専門性が高まる中、懸念があるとしたら「ジョブの陳腐化」に伴うリスクですね。仮にある人が1つのジョブに一定期間就いて専門性を高めたとして、もし社会全体におけるその仕事の必要性が大きく下がったとしたら、当人のキャリアは行き詰まってしまいます。

特に、就く人の数が多いジョブが陳腐化すると、社会問題になります。そういう時にどうやってリスキリング(*3)やキャリアチェンジを促すかについては、社会全体として、もしくは個々の企業が知見を蓄えるべきでしょうね。
*3 新たなスキルを会得すること

江島:米国のTech業界、特にソフトウエアエンジニアリングの領域は技術の移り変わりが激しいので、ジョブの陳腐化とまではいかなくとも、「専門性の陳腐化」みたいなことはしばしば起こります。なので基本的にエンジニアは常に学び続けることが求められるのですが、一方でマネジメント領域にシフトチェンジする道も確立されています。

――エンジニアのピープルマネジメント、あとはプロダクトマネジメントやプロジェクトマネジメントといった領域でしょうか。

江島:そうですね。現地だとそれらの仕事が、一般的なジョブとして定着しています。日本ではマネジメント、特にピープルマネジメントは職位が高くなった人が担う仕事とみなされがちですが、米国はちょっと違います。

――マネージャーは職位というよりも職種、つまりジョブという考え方ですね。

江島:はい。確かに米国でもキャリアを重ねた人がマネジメントを担うことは多いですが、それは必ずしも昇進の結果ではなく、どちらかというとジョブの選択によるものという意味合いが強いですね。

時には、先ほど話した専門性の陳腐化に起因するものだったりします。

曽和:そのピープルマネジメントですが、これからますます重要になるでしょうね。

――なぜでしょうか。

曽和:ジョブ型が日本でも普及すると、今まで以上に転職機会が増えるからです。企業目線でいうと、従業員を「つなぎとめる」のがより難しくなる。そしてピープルマネジメントの巧拙は、人材流出を防げるか否かに大きく影響します。

江島:米国、特に西海岸では離職率の高さが日本以上に深刻で、知見やカルチャーの継承が課題になっています。確かに、ピープルマネジメントは重要ですね。

総合職採用はなくならない!? 「やりたいことは決まっていないけど○○社に入りたい」学生は米国にも……

――ジョブ型の普及によって、日本企業の新卒採用はどうなっていくと思いますか。

曽和:職務内容を定めない「総合職」のような形でまとめて採る日本独特の仕組みが、すぐになくなるとは思えません。企業目線では高ポテンシャルの若手を効率よく採用する手法として今も有効で、また学生側のニーズもありますから。

独自のジョブ型新卒採用として98種のコース(職種)別に選考をするソニーグループも、職務内容を限定しない「WILLコース・専門性不問コース」を設けています。つまり「やりたいことは決まっていないけど、とにかくソニーに入りたい」と考える学生の受け皿ですね。

同じようにKDDIも、特定職種での採用を前提とするコースと、職務内容を限定しないコースを併存させています。

要は、2社とも従来の総合職採用のような形を、部分的に残しているわけです。

時に学生と話す機会があるのですが、一番よく聞く悩みが「自分が何をしたいのか分からない」といったものです。それを踏まえると、2社がこうした形態を採るのも理にかなっているように思えます。

――米国だと「自分が何をしたいのか分からない」みたいな学生はもっと少ないですか。

江島:意外と日本と大きな違いはないと思います。例えば、「やりたいことは決まっていないけど、とにかくGAFAに入りたい」みたいな意識で就職活動をスタートする感じですね。一方で違うのは、募集対象のジョブとそれに基づく給与水準が、日本より明確で透明化されていることです。「この企業のこのジョブに就いて、この水準の給与を得たいから、こういうスキルを得よう」みたいな流れになりやすいんです。

――なるほど。一方その給与水準について、ジョブ間の格差という“負の側面”を指摘する声もあります。

江島:難しい問題ですね。英国、スイス、香港などは金融業への依存度が高いこともあって米国以上に深刻で、高収入のジョブとそうでないジョブに就く層に二分化しています。いわゆる中間層の消失ですね。なので、高学歴者の多くがIT系や金融系のジョブを志す欧米の現状が健全かというと、確信は持てません。

リスキリングの時代に求められる、「自分なりの学習スタイル」

――あらゆる仕事が高難度化する現況を踏まえて、学生や若手社会人に助言できることはありますか。

曽和:既に述べたように、リスキリングが必要になるケースは増えると思います。その上で大事だと思うのは、自分なりの学習スタイルを確立することですね。どう学べば効率よく知識やスキルを得られるかは、結構個人差があります。

僕の場合、例えば歴史を学ぶ際は漫画を活用します。人によっては、それがYouTubeだったりするかもしれません。いずれにせよ、自分にとって効果的な学びの“型”を確立しておくと、強みになると思います。

江島:学びの話でいうと、データを読むための数学、統計学の力は高めておいたほうがいいでしょうね。ITや金融などの付加価値が高いジョブは特にそうですが、あらゆる仕事が高度化・複雑化する分、データの活用は今まで以上に重要です。

あとは、20~30年先とか遠い未来のことは、考え過ぎないほうがいいと個人的には思っています。頭の良い人は、未来を想像しつつ逆算してキャリアを設計したりしがちですよね。でも、例えば2007年にiPhoneが現れる前から現在のスマートフォンの普及ぶりを予想していた人は、ほとんどいなかったはずです。

だから先のことを考え過ぎるよりも、今興味があることや必要だと思うことに集中するほうが、その人のためになるのではないでしょうか。


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