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外資系投資銀行のクオンツに聞いてみた(1)-数学・物理博士が集まる金融世界の実態

はじめに

クオンツのお仕事について、現場にいる方からレポートをお寄せいただきました。

数学・物理学の修士号やプログラミングスキルが備わっていないと入社することさえ難しい世界ですが、投資銀行の収益を生み出す要となる部門です。

一般的に「ロケットサイエンティスト」と呼ばれます。NASAのロケット打ち上げ計画の凍結により、80年代多くの物理学者がウォールストリートに職を移して、それ以降金融工学が大いに発達したのです。

クオンツは数学的に高度なモデルをもちいて、投資銀行の収益を生み出す上で重要な役割を担っております。マーケットサイドにおいて重要なのは「情報」と「時間」。

トレーディングでもセールスでも、情報取得⇒分析⇒トレーディングのプロセスをいかに他社より速く執行できるかが重要で、取得⇒分析を自動化したり、トレーディングタイムを短くするためサーバーを取引所に近いところに設置したり、さまざまな工夫をしています。

そんな0.001秒の世界で戦うスーパープログラマーがクオンツ。その方からレポートを頂戴いたしましたのでご紹介します。

仕事内容やクオンツになるにはどんなスキルが必要なのかなど、日本語訳と合わせてご紹介いたしますので、比べて読んでみるのも勉強になるかもしれません。

What exactly does a quant do?  クオンツは何をやっているのか

A Quant is somebody with a strong scientific background working on the financial market. They often have an engineering, math, or physics background at a MSc or Phd level. Quants are usually categorized as “Ivory Tower” quants and “Crystal ball” quants. Their fundamental objectives and work environments are quite different.

クオンツとは、高度な数学的手法をもちいて投資戦略や金融商品を考案・開発する専門家のことをいう。工学、数学、もしくは物理といった理数系分野で修士か博士号を持っている人が中心。

クオンツは通常「アイボリー・タワー」と「クリスタル・ボール」という大きな2つのカテゴリーに分けられる。この2つの基本的な目的や仕事環境は大きく異なる。

The Ivory Tower Quants are responsible for modeling and pricing financial instruments, usually derivatives instruments. If the bank is creating a new, complicated and illiquid instrument for a client, the quant will typically participate in pricing the instrument and devising methods for hedging the risks associated with it (The notion of risk hedging and pricing are actually intimately linked, the price of an derivatives instrument being usually given by the price of covering its risks, over the life os such instrument). Their work environment can range from being on the trading floor assisting traders with existing pricing models, quickly devising pricing methods for OTC products, to a much more academic work environment, far from the trading floor (hence the name Ivory Tower), doing fundamental research, involving pure mathematics: stochastic calculus, probability theory, partial differential equations. One side of their work is about the pure theoretical modeling (think about the Black-Scholes model for option pricing), and the other side is about how to compute a price based on the model (which can be even more complicated than the model itself). This involves computer science, numerical methods for solving PDE, monte-carlo methods, and is the more practical side of their job.

アイボリー・タワー・クオンツはデリバティブ系のファイナンシャル・モデリングやプライシング(価格決定)を主に担当する。銀行が複雑で流動性に乏しい商品を、顧客のために新たに組成する場合、クオンツは通常その仕組債のプライシング、その仕組債に係るリスクを分散する方法を考える。

プライシングとリスクヘッジは常に密接な関わりがあり、仕組債の値段は通常その債券の満期までリスク・カバーのためにかかるコストとして計算される。

仕事環境はトレーディング・フロアで既存のプライシング・モデルを使いOTC商品(店頭取引する商品:取引所取引のように売買注文が一カ所に集中するのではなく、投資家と債券ディーラー、あるいは、債券ディーラー同志で、個別に相対の取引を成立させるもの)のプライシング方法を考案し取引を補佐する仕事から、トレーディング・フロアから離れたより学術的な環境(それがアイボリー・タワーと呼ばれる所以)で確率解析論、確率論、偏微分方程式といった純粋な数学的技術を駆使してファンダメンタルズ・リサーチの仕事をしたりと様々である。

彼らの仕事は純粋な理論値モデリング(オプション価格決定にかかるブラック・ショールズ・モデルなど)と既存モデルを利用した値決めの方法(これはしばしばモデル以上に複雑になることもある)を考えること。

この仕事には、コンピューター・サイエンス、偏微分方程式を解く数学的手法、モンテカルロ法などが関わってくる。

クリスタル・ボール・クオンツは先に述べたクオンツとトレーダーを掛け合わせたような存在であって、リスク・ヘッジにはさほど興味はなく、むしろリスク・テイキングを率先して行う。

アルファと呼ばれるトレーディング・シグナルを作り出したり、アービトラージの機会を見つけたり、とにかく何でも市場でお金になる何かを探すのである。

トレーディング・シグナルを作り出すには、コンピューターとシステムを多様化することが重要。そこでは人間の直感は排除され、アルゴリズム的手法が利用される。

彼らの多くも理系のバックグラウンドを持っているが、彼らが使う理化学的手段は前者に比べると理論的ではなく、それよりは発見的問題解決が重要となり、より実践的なものとなる。

クリスタル・ボール・クオンツの中では、そのトレーディング・シグナルを探る対象期間により区分けされており、数カ月掛けて見えるシグナルを作る者もあれば、一方ではハイ・フリクエンシーと呼ばれる時には数ミリ秒といった単位のシグナルを作る者もいる。

時間単位が短くなればなるほど、ビジネスはよりテクノロジー(IT)の影響を受けるようになる。特にハイ・フリクエンシートレーディングでは、コンピューター・システムの待ち時間(無駄)を搾り出し、競合他社から数ミリ秒でも早くなることを目的に本格的なプログラミングが必要になる。

Which devisions work closely with you? Sales? Traders? ITs?  仕事上どの部署と密接に関わるのか

I work on a High Frequency desk. Because of the proprietary trading nature of our business, and of Chinese Wall policy, we do not work with other traders and sales. We do work a lot with IT on our trading infrastructure.

私自身はハイ・フリクエンシー部門で働いているが、プロップ・トレーディングの一部であることから、チャイニーズ・ウォールの関係で他のトレーダーや営業を関わることはない。トレーディングのインフラ整備のためITが最も密接に関わる部署である。

What quality are you looking for for a candidate? 応募者にはどんなクオリティを期待しているのか

A good candidate should have an excellent scientific background, but still be able to sometimes set aside his more theoretical tools to apply a pragmatic approach to high-frequency trading. He should be very comfortable with computers, and a fast learner at everything related to computer science.

He should also be business-oriented, and be able to actively pursue revenue opportunities.

クオンツ志望者にはかなり優秀な理系のバックグランドを求めているが、一方で実用主義的アプローチを取るハイ・フリクエンシートレーディングに対し時には理論的手段を除外して働くことも出来るような柔軟性を求めている。

コンピューターのプログラミング言語等にも馴染みがあり、コンピューター・サイエンスに関わる全ての事柄において物覚えが良いことを求められる。

ビジネスを中心に物事を考えられ、収益機会を積極的に追い求められる人が望まれる。

What is “fun” of your work? 仕事の楽しみはなにか

Fun is being able to devise a trading strategy and actually see it trading live on the market (and of course seeing it making money, which is not that easy). It could be akin to a game sometimes, where your opponent is the market as a whole. Learning new computer techniques can also be fun, if you are a bit tech-savvy.

We are very independent in the sense that our business is not client-oriented, which could be good or bad depending on one’s temper. It limits outside interactions, but at the same time allows you to be more creative.

仕事の楽しい面は、トレーディング・ストラテジーを考案しそれが実際の市場で取引をするのを見ることである(もちろん、そのストラテジーが儲けているのを見るのが最大の喜びだが、そう簡単にはいかない)。

それは時にはゲームのようで、市場全体が自分の敵のようになることもある。もしハイテクに精通した人ならば、新たなコンピューター技術を常に学べるところも面白い。

顧客ビジネスではないことから、ビジネス自体はかなり独立したものとなるが、これは本人の性質次第で良し悪しがある。

外との交流は限定されるが、同時に自分の創造力を駆使してより自由に(=顧客のためにではなく、自分の収益のために新たなシグナルを作り出すといった)仕事が出来る。

How long do you usually work? How busy are you? 労働時間と忙しさはどうか

Because we trade many markets in Asia, hours are pretty long. I work from 8am to 8pm most of the time. Depending on the current project and staffing, it can get really busy. But because of the long hours, we try to take a lunch break.

東京(香港)ではアジア市場全体を見るため、仕事の時間は自ずと長くなる。

通常は朝の8時から夜の8時まで働いているが、現行のプロジェクトや人員の関係でかなり忙しくなることもある。勤務時間が長いので、昼食は出来るだけデスクを離れてとるようにしている。

おわりに

いかがでしたでしょうか。投資銀行のクオンツはフランス人が多い職場で、特定の某工科大学出身者で固められています

フランスは現代数学の里とも呼ばれるくらい数学に強い国であり、フィールズ賞(数学におけるノーベル賞)の受賞者も多数。こういった先端数学がどんどん金融工学にビルトインされていきます。

そもそも理系修士以上ではないと応募すら難しいクオンツですが、どのようなことを面接で聞かれるのか。次回は面接対策についてお送りしようと思います。

知的刺激に溢れる仕事、チャレンジしてみるのも面白いのではないでしょうか。
お楽しみに。

次回記事→「クオンツ志望者への面接:想定問答集-外資系投資銀行のクオンツに聞いてみた(2)」

最後に参考書籍と投資銀行に関連するコラムを掲げます。ぜひご参照ください。

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