
プロンプトエンジニアとは何をするエンジニア?生成AI登場で話題の職種
2025/03/10
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私は理系の情報系学部の大学院に所属しており、主にAIに関する研究に携わっています。就職活動では、25卒のAIエンジニアとして、IT系メガベンチャーや大手メーカーから内定をいただきました。本記事では、AI研究に携わる立場から、近年話題の「プロンプトエンジニア」について、どのようなエンジニアか、その将来性などを解説いたします。
プロンプトエンジニアとは
近年のAI技術の急速な発展、特に生成AIの台頭により、プロンプトエンジニアという新しい職業が注目を集めています。プロンプトエンジニアは、AI、特に大規模言語モデル(LLM)との効果的なコミュニケーションを促進し、AIが人間の意図を理解し、より適切なアウトプットを生成できるようにするための専門家です。目的達成のためにLLMに適した指示を与えるスキルが求められます。
プロンプトエンジニアの仕事はLLMにテキストで指示を与えることですが、LLMの基本的なアルゴリズムを理解している必要があります。LLMが文章を生成する手順は以下のようになっています。
2. LLMは与えられた文章の後に続く確率が高い単語を予測する(例:「吾輩は猫である。名前はまだ」)
3. LLMが生成した文章からさらに次の単語を予測する。(例:「吾輩は猫である。名前はまだない」)
4. 以下、同じことを繰り返す
つまり、LLMは与えられた文章からもっともらしい次の単語を予測するということを繰り返し、文章を生成しているだけとなります。逆に、このシンプルなアルゴリズムでこれほどの性能になると予測できた方は多くはなかったと思います。
プロンプトエンジニアの仕事は、step1において、精度の高い文章を入力することです。 AIの世界では「ゴミを入れるとゴミが出てくる」という格言があります。
これは、AIに関して精度の低い情報を入力すると、同じように精度が低い情報を出力する性質を表す言葉です。裏を返すと、良い入力を入れると良い出力を出してくれるのがLLMでもあるわけです。
プロンプトエンジニアリングの例
具体的にプロンプトエンジニアリングがどのようなものなのかの例を挙げます。私が以前行っていた、「ChatGPTによる物件探し」を例に挙げます。普通にChatGPTに対して「東京都の物件を探して」と依頼すると、以下のような出力が得られます。
- サイトA:賃貸・売買・住宅情報が豊富で、住みたい駅や行政区を指定して検索できます。
- サイトB:こちらも豊富な物件情報を掲載しており...
- サイトC:...
物件探しのポイント
- エリア
- 種類
- ...
このように抽象的な情報だけが得られます。ここで以下のように、具体的な処理手順、出力形式などをプロンプトによって指定します。
また、精度が向上すると知られているテクニックもいくつか取り入れてみます。
- 家賃X万円以下
- 駅から徒歩Y分以内
- バストイレ別
以下の手順でお願いします。
1. 複数のウェブサイトを訪問
2. ウェブサイトから1つずつ条件に合う物件を探す
3. 表形式で出力
その結果、以下のような結果が得られます。
物件名 | サイト | 路線/駅 | 徒歩分数 | 家賃 | 間取り |
---|---|---|---|---|---|
物件A | サイトA | D線E駅 | 10分 | X万円 | 1K |
物件B | サイトB | C線F駅 | 16分 | Y万円 | 1K |
このようにプロンプト一つで、内容、具体性、正確性、出力形式などさまざまな要素をコントロールすることができます。このようにタスクごとに適したプロンプトを作成するのがプロンプトエンジニアの仕事になります。
LLMの登場から2025年現在までの流れ
プロンプトエンジニアの将来性について記述する前に、LLMの登場の前後から2025年までのLLM周辺の歴史について触れたいと思います。
この歴史を知っておくことで、プロンプトエンジニアが今後どのような役割やポジションになるか理解しやすくなると思います。
LLM登場以前
LLMが登場する前は、「1つのタスクに1つのAIを作成する」ということが一般的でした。例えば、文章の翻訳には文章の翻訳AI、要約には文章要約AIなどです。
これらのタスクごとのAIは、AIエンジニアが長い時間をかけてモデルを訓練する必要がありました。具体例としては、GoogleのBERTというモデルが挙げられます。つまり、現在のLLMが持つような汎用性は持ち合わせていませんでした。
LLMの登場(チャット形式時代)
2020年前後あたりから「1タスク = 1つのAI」の流れが変わってきました。GPT-3(ChatGPTのモデルの前のモデル)というLLMが登場しました。このようなLLMによって、「複数タスク = 1つのAI」というような流れになってきました。
そして、2022年12月にChatGPTが登場しました。ChatGPTの登場により、これまでのタスクごとにAIを作るという流れはなくなり、プロンプトによって行うタスクを切り替えるという流れになりました。このあたりから「プロンプトエンジニア」という言葉が登場し始めました。ただこの段階では、LLMはプロンプトの入力によりタスクが与えられるのを待っているだけの状態でした。
また、誤った情報をまるで真実かのように出力する「ハルシネーション」というLLMの問題点も多く指摘され、それを軽減するためのプロンプトなどが多く研究されました。
AIエージェントの台頭
2025年現在は、チャット形式のLLMからさらに進化し、「AIエージェント」の普及が始まっています。チャット形式のLLMアプリケーションは、人間側がタスクの分割を行い、指示をする必要がありました。例えばLLMを活用して、簡単なゲームアプリを開発するとします。アプリを開発するのに必要な工程が以下のものだとします。
2. アプリの設計
3. 設計に従ってプログラミング
4. テスト
チャット形式では、これらのステップを人間が考えて作成し、各ステップの補助としてLLMを使用します。一方、これをAIエージェント化すると、つくりたいゲームをLLMに伝えるだけで、そこまでの手順を提案するところからやってくれたりするので、いちいちプロンプトを考える必要が減ります。Clineなどが有名です。
プロンプトエンジニアの将来性
私個人の意見としては、今後しばらくの間、適切なプロンプトを設定して、LLMに指示を与えるという作業は必要になるかと思います。よってプロンプトエンジニアには一定の需要は存在すると考えています。その一方、「プロンプト担当エンジニア」の将来性は厳しいと考えています。将来需要が高くなる人とそうでない人は以下のようになると考えています。
将来性のあるプロンプトエンジニア
将来性のあるプロンプトエンジニアの例の一つとして、AIの理論を理解しているプロンプトエンジニアが挙げられます。LLMの学習を行わないプロンプトエンジニアリングとよく比較される手法として、LLMの学習を行うファインチューニングという技術が挙げられます。
このファインチューニングという技術は、LLMの仕組みや学習の手法などを知らないと理解ができないものになっており、技術選定をする際に、ファインチューニングを選ぶべきところでプロンプトエンジニアリングを選んでしまうという事態が起こりえます。
また、データベースやネットワークなどの知識を持ったプロンプトエンジニアにも一定の需要が生まれると思います。結局LLMを活用する際は、これらの技術と組み合わせて使用するため、この領域の知識を一通り持ったエンジニアは、非常に重宝されると考えています。
ReAct、Chain-of-Thoughtなどと呼ばれる専門的なプロンプト手法などを知っていると、複雑な問題が解けるようになったり、外部ツールを呼び出せるようになったりしますが、これらもエンジニアリングやAIの理論の知識なしでの活用は難しいものとなっています。
将来性が少ない可能性があるプロンプトエンジニア
こちらについては、「プロンプト(しかできない)エンジニア」が挙げられます。LLMに対してどのプロンプトを与えれば良い出力をするかは、一定の傾向はあるものの、どのような訓練をしたLLMかによります。現在、存在する有名なLLMの一部を列挙しても以下の数存在します。
- Gemini(Google)
- Llama(Meta)
- DeepSeek(DeepSeek)
- Claude(Anthropic)
「良いプロンプト」というのは、上記のどのLLMを使用するかによって変わり、また、各社がLLMの学習手法を変え、アップデートを行うだけで変わる可能性があります。従って、常に「良いプロンプト」についてのキャッチアップが必要になりますが、これについてもAIエンジニアとしての知識が必要になってきます。
また、現在AIエージェントの登場により、プロンプトが雑で抽象的でもAIエージェントが意図を読み取ってタスクを実行してくれることも少なくありません。とはいえ、AIエージェントを作る際には、プロンプトの技術が間違いなく使われているので、プロンプトエンジニアリングが重要な技術の一つであるということは変わっていないと思います。
まとめ
本記事では、プロンプトエンジニアとは何をするエンジニアか、またその将来性などについてまとめました。進化の早いAIの業界では、プロンプト"だけ"で生き残るのは、かなり大変なことだと思います。
しかし、プロンプトの技術に加え、エンジニアリング、AIの知識、他分野の知識などを合わせ持つ場合、多くの作業を効率化することができる可能性を秘めており、世の中に必要とされる人材になれるのではないかと考えています。
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