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外銀からの転職は当たり前?
実力主義で高い報酬が魅力的である一方で、リストラも激しいことで知られる投資銀行業界。
トップと呼ばれるマネージング・ディレクターまで上り詰めるまでには実力で競争に勝ち抜くだけでなく、景気や運といった要素も重要になるため、殆どの方が途中で退職してしまうのが現状です。
とはいえ大変厳しい環境で耐えぬいた経験と専門性は、たとえ3年間であってもどこの業界でも生きるとも言われています。
実際、彼らはどういったところに転職していくのでしょうか。現役インベストメントバンカーが語る業界事情第3弾、お楽しみください!
前回、前々回記事はこちら↓
社内で出世を目指すか、外に出ること前提か
新卒で投資銀行部門(以下IBD)を選ぶ人には、大きく分けて二種類のタイプがいます。
②そもそも将来的には事業や社会貢献・バイサイドへ転向するなど何か違うことをしたいという野心を有してはいるが、ファースト・キャリアとしてIBDを選び、厳しい環境で社会人経験を積み財務会計や法律などバンカーとしての初期的ビジネススキルを身につけたい人。
会社のカルチャーを受け継ぎ、次世代を担う優秀な若手人材を確保することが、新卒採用の趣旨であることを鑑みると、前者の方が王道であることは自明です。
しかしながら、いかんせん人の回転が早い業界であり、 採用した面接官自身も新卒が入社する頃には既に退職していることが日常茶飯事 の世界なので、面接官の視点としては、まず 「アナリストとして」最初の三年間充分に働けるかどうか、地頭の良さ・体力・気力などの資質が基準を満たしているか が判断のポイントとなっています。
その意味では、「将来は慈善基金を設立して社会にインパクトを与えるような投資をしたい」と語って採用された方もいるので、充分な資質と当面のやる気が備わっていれば、採用されることもあります。
燃え尽きてうつになる人もいる
もちろん、ブラック企業も真っ青の激務度を誇るIBDですので、最初から辞めること前提で務まるほど甘くはありません。
仕事に必要なモデリングやエクセキューションの能力などは、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)で毎日やっているうちに嫌でも身につくので(それでも身につかない人はクビになります)、むしろバンカーとしての寿命を左右するのは、体力と精神力というのが筆者や周囲の見解です。
筆者の下にも、米有名大学卒で三ヶ国語に堪能で会計士資格を有する優秀な新卒の方が配属されたことがありましたが、 三時間睡眠の日々に半年で気力が切れてしまい 、医者に診てもらったところうつ病と判断され、本人がIBDで仕事をつづけて行くことに限界を訴え、やむなく依願退職となったことがありました。
あるいは本人は強健な精神力で持って出社し続けようとしたものの、体のほうが言うことを聞かず、ある朝出社しようとしたら体が起こせず、そのまま自律神経失調症と判断され、マネジメントや人事と協議の上、三ヶ月間入院となったケースもあります。
ハードワークな仕事ですので、 業界で長生きするバンカーは、非常に健康に気を使い、体力の維持に努めています。
足許で多い離職理由は「業界の将来を悲観」パターン
不健康な生活の中で、お昼御飯と夜ご飯はデスクでお弁当、毎日1~5時にタクシー帰宅、土日も基本どちらかは出社、大学時代の友人などから誘われる飲み会には一度も行くことができず友達は減り、銀行口座の残高は増えても使う暇は無い、といった日々を送っていると、そもそも自分は何の為にIBDに入ったのか、を皆一度は見つめ直すことになります。
不健康で非文化的な最低限度の生活であっても、世間の人よりは多めの年俸を貰っているという金銭的優越感、アドバイザーとして大企業の重要案件に自分が関わっている!というバンカー特有のアドレナリンが噴出するような興奮感、あるいは新卒からバンカーやってきて他の仕事はできないし興味もないというパターン、など様々です。
そういったバンカーとして続けていくための理由や精神的支柱を失った時に、「こんな生活やってられるか」と感じ、遂には「辞めたい」となるのが最もありふれた離職理由だと思います。
特に直近では、投資銀行各社の業績が低迷する中で、会社によってはボーナスが貰えない事例(あるい100万円以下)も実際に起きており、経済的なインセンティブが薄れた結果、「激務に見合わない」、「仕事がなくなりはしないが、今後十年のうちにかつてのような好景気が業界に訪れる気配がない」と考えてIBDを離れる若手が、アナリスト~なりたてバイス・プレジデントくらいまでの「まだ職業選択ができる」世代で増加しているように見受けられます。
バイサイドに転職するケースが多いが、起業したり、事業会社にいくケースも
では、上記のような様々な理由でIBDを辞めた方々は、どこにいくのでしょうか。
進路は様々であり、一概にはいえませんが、一番多いのが 「バイサイド」(投資会社) です。直接IBDから中途で入るケースと、IBDを辞めた後にMBAを経由してボストン・キャリア・フォーラム等を経て入るケースがあります。
以下進路を6つに分けて説明します。
1.バイサイド
いわゆるPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)のような投資会社では、新卒採用はあまり実施しておらず、IBDや戦略コンサル出身者を採用するのが一般的です。IBDと比較するとお給料は下がりますが、労働時間は短くて、お客様の靴を舐めるような仕事はしなくてよくて、かつIBDで培ったモデリングやパワポのスキルは生きる職場です。
筆者の周りでは、カーライル、サーベラス、ベイン・キャピタル、MBKパートナーズ、アドバンテッジ・パートナーズ、ローンスター、Morgan Stanley Private Equity、株式会社INCJ、ティーキャピタルパートナーズ、ジェイ・ウィル・パートナーズなどに行った方が多かったです。
PEファンド以外では、フィデリティ、ピムコ、ブラックロック、JPモルガン・アセット、SACキャピタル、Speedwell、Goldman Sachs Investment Partnersなどのアセット・マネジメントやヘッジファンドなどの、いわゆるセカンダリーの投資会社に行くケースも見受けられます。トレーディング主体の会社よりは、企業のファンダメンタルズ分析に重きを置く運用会社が多いです。
これ以外にも、どこからか資金を引っ張ってきて、自分で小規模な投資会社を立ち上げる方も結構います。
2.事業会社
バイサイドほど多くはないものの、元バンカーに対する一定のニーズは存在し、たまに聞くのが事業会社へ転身するケースです。大別して、(1)経営幹部、(2)M&Aなど財務戦略、(3)IR系の三種類の職種に行くケースが多いようです。
(1)としては、最近ではビジネスに勢いがあり高額報酬を提示できるIT企業に、幹部待遇で入社するケースが増えています。この先駆けとして有名なのは、グリーの青柳執行役員常務取締役です。また最近では、サイバーエージェント・アメリカの志賀バイス・プレジデントなども有名です。
(2)としては、最近ではグリーの財務戦略部というM&A専門部隊などが有名で、メリル出身のバンカーがたくさん在籍しており、お給料も破格であることで有名です。またパナソニックなどもバンカー出身者を積極採用していました。
(3)としては、大手製薬会社のIR担当役員にカバレッジバンカーが移籍した事例が有名ですが、他にもカバレッジしていたクライアント会社のIRなどに行くケースはよくあります。グリーのIRにも元GSのバンカーがおります。
これ以外にも、資本市場部経験者であれば、上場を検討しているベンチャー企業のCFOや上場準備室室長などといった話もよくあります。
3.起業
「外に出ること前提」でIBDに入ってくる人に多いのが、自分でビジネスを起こすケースです。そもそも就活の際に、リクルートに行くかIBDに行くか本気で迷った、学生時代にもビジネスコンテストなどに参加した経験があり、とにかく商売に興味があり、起業家精神旺盛というタイプの方に多いです。
個別企業名を上げるとあまりに多いので割愛しますが、IBDに関連したビジネスという意味では、ユーザベースなどが有名です。外資就活ドットコム創業者も外銀⇒PEファンドからの起業であり、他にも多数あります。
4.学問
若手バンカーよりも、いわゆる「上がりのポジション」にいるシニア・バンカーを中心に人気なのが、大学教員などになるケースです。日本ではMBAがはやっていないので事例はそこまで多くありませんが、米国ではよくあるケースです。日本ですと、元ゴールドマン・サックスの服部暢達さん、元UBSの伊藤友則さん、若手バンカーからの転身では『投資銀行青春白書』などを著された元リーマン/UBSの保田隆明さんなどが有名です。
5.政治家
これは完全に「上がりポジション」の方々向けの転身なので、新卒の方には関係ないと思いますが、網屋信介さん、木内孝胤さん、中西健治さんなどがIBD出身者の間では有名です。
6.その他
これ以外にも、渉外弁護士になったり、元々国家Ⅰ種合格者でやはり外務省に行ったり、国際公務員になったり、家業を継いだり、NEETになったりと、新卒でIBDに入ったからといってその進路は様々です。
IBDでの経験
IBD出身者が共通して言うのは、 IBDでの激務は辛かった、だが後から見ると社会人としての一番勉強した時間だった 、ということです。
財務モデリングやExcelのスキルなどは所詮ツールにしかすぎず、やはりIBD経験者にしか理解できないであろうものは、バンカーとしての働き方だと思います。
筆者も一度は経験した道ですが、特に新卒アナリストとして入社すると、IBDにおいてタイトルは絶対で、上下関係も厳しく、時には理不尽に、社会人としての基礎を叩きこまれます。
会議部屋の予約や電話会議の回線セット、関係者への会議招集通知、資料の印刷とバインドといった雑務をアナリストが先回りしてこなすのは勿論、タクシーに乗車したら訪問先へ最短ルートを運転手に指示し支払いをやりますし、 土日の朝に上司から電話かかってきて資料を作れと言われれば、親友の結婚式があろうとも出席断念し すぐ出社して資料作成します。
歓送迎会の会場予約や割り勘傾斜配分のご相談まで、とにかく上司の手足となって尽くします。
24時間いつクライアントや上司からメールが来ても、3分以内には対応できるように常にブラックベリーは持参する、というスタイルもバンカー特有です。
学生の頃は格好いいと思っていましたが、いざ自分が業界に身をおくと、彼女と映画を見ていようが、年末年始・早朝深夜だろうが、いつでもクライアントや上司から呼び出されますし、プライベートが完全に侵食され、神経がすり減り実に大変なものでした。。。
こうした仕事のためにプライベートをすべて犠牲にして死力を尽くして働く、というスタイルの良し悪しには、賛否両論あるとは思いますが、一度激務を経験すると、その後の仕事はどれも楽に見えてしまうという意味では、自身のキャパシティを広げることになると思います。
外銀での経験は価値がある
いかがでしたでしょうか。
大変厳しい環境ながらも、投資銀行部門で働いたあとはさまざまなキャリアが広がっているようですね。
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