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外資系投資銀行(IBD)バンカーの年収は?
外資系投資銀行はトップ校の学生が続々と門をたたく人気の業界です。
巨大な資本市場を相手に株や債券の取引を行うトレーディング・セールスから、流動性の少ない未公開株・債権を扱うプリンシパルインベストメント、M&Aのオリジネートをするカバレッジまで職種はさまざまです。キャリアの方向も多様です。
中でもM&Aや債券・株式の引受といった新聞紙面をにぎわすディールを手がける投資銀行部門は投資銀行の中でも花形と呼ばれており、とても高い人気を誇る部門になっています。
外資系投資銀行で活躍するスタッフの年収は金融業界の中でも大変高水準であることで知られていますが、その中でも投資銀行部門に属する方の報酬は昨今どのようになっているのでしょうか。
実際のところを現役社員の方に聞いてみましたので、ご一読ください。
(外資系投資銀行の前に)日系投資銀行の給料は?
外資系投資銀行のバンカー給与の高さを実感していただくために、まずは野村證券やSMBC日興証券、みずほ証券などの日系証券会社の投資銀行部門の給与についてご紹介します。
日系投資銀行の給与は外資と比べるとやや見劣りするものの、総合商社やメガバンクなどの他の日系大手企業には全く引けを取りません。新卒で入社した場合、2~3年目は年収が600~800万円ほどになります。年功序列的に昇進すれば、30代で年収が1,000万円台に突入し、40代以上になると2,000万円以上稼ぐ社員も出てきます。
日系証券のIBDバンカーの具体的な年収データは以下のページを参考にしてください。
早期選考迫る!日系投資銀行各社の特色(強み・教育制度・年収)まとめ<各社比較編Part1>
早期選考迫る!日系投資銀行の特色(強み・教育制度・年収)まとめ➁<各社比較編Part2>
バンカーの給与はベース+ボーナス+株(+証券)
ではここからは外資系投資銀行のバンカー(投資銀行員)の給与について説明していきます。バンカーの年収はベースサラリー(給与)とボーナス(賞与)で構成されています。
外資系投資銀行の具体的な年収データは以下のページを参考にしてください。
ベースサラリー
ベースサラリーに関してはバンカーのタイトル(職級)で決まります。
所属する会社にもよりますが、一般的には
新卒アナリスト(1~3年目):800万円~
アソシエイト(4~6年目):1,100万円~
バイスプレジデント(以下VP、7年目~):1,500万円~
マネージングディレクター(以下MD、実力次第):2,500万円~
といったあたりが相場です。
かつては新卒アナリストのベースサラリーが600~650万円という時代もありました。しかしリーマン・ショック以降、新卒採用の場面で学生の投資銀行離れが進んだことをきっかけに、優秀な人材を確保するためにベースサラリーが切り上がりました。その結果、現在は800~900万円が相場となっています。
ボーナス
ボーナスの一般的な相場はベースサラリーの30%~100%程度です。
ボーナスに関しては非常に変動性が高く、①バンカー個人の人事評価、②所属する投資銀行の予算達成度、③業界全体の景気に左右されます。
この中で最も大きな決定要因は、マクロ要因である③業界全体の景気です。例えば2005~2008年の投資銀行業界の活況期において、アナリストでも800~2,000万円のボーナスが支給される会社ですら、リーマンショックに端を発する低迷期では、ゼロ~数百万円程度になってしまったという例もあります。
特に東京の投資銀行部門では、2009年以降に収支ゼロ~赤字続きの会社も多かったため、ボーナス源泉が枯渇しておりほとんど支給できない状態が生じていました。
これに対して各社優秀な人材の流出を防ぐために、投資銀行部門の人員削減により必要な人材に対するボーナスを捻出する傾向にありました。
ボーナスの傾斜配分についてはタイトル(職級)が上がるほどに業績連動や個人能力評価への割合が高まり、業績不振時においてはアナリストには一律にボーナスが支給されても、VPやMDにはボーナスが支給されないこともよくあります。
不況時のとある投資銀行部門では、アナリストには一律300~1,000万円のボーナスが支給されたのに対して、アソシエイトには99万円、VPやMDは8割がゼロボーナスということも実際に発生しました。
RSU (Restricted Stock Unit、制限付き株式)
上場企業を母体に有する投資銀行のほぼ全てに共通して、年俸が一定額を超えた場合に賞与は現金ではなく株式で支払われます。
会社によって基準は異なるものの、一般的には年俸で2,500~3,500万円程度を超えた場合に、超過部分の賞与は母体となる上場企業の株式で支払われます。
すなわち年収5,000万円といっても、実際に現金で支払われるのは最大2,500~3,500万円のみで、基準超過額の1,500~2,500万円は海外企業の株式で付与される計算です。
この株式はベンチャー企業などでよく耳にする通常のストックオプションとは異なり、RSU (Restricted Stock Unit、制限付き株式)といい、同じ会社に3~5年以上勤続した場合に限り全額行使できるといった条件が付いています。
つまり1,500~2,500万円相当のボーナスをRSUで付与されても、他社に転職をせず、あるいは首にならずに3~5年間務め上げて初めて全額を貰える訳です。
なお注意すべき点としては、RSUは価格が変化するという点です。貰った当初は1,500~2,500万円相当額のRSUであっても、会社の株価が50%下落すればRSUの価値も750~1,250万円相当に下落します。
また円換算して評価する場合には、原通貨(ドル、ユーロ、ポンドなど)と円貨の間での為替差損リスクもあります。
上記のようなRSUを導入することで社員は会社を辞められず、全額行使できるまで会社の株価が上昇するように忠実に頑張る、という効果が期待されています。
なおバークレイズやUBSなどでは、上記のRSUにさらに自己資本比率連動の条件を付したCC(コンティンジェント・キャピタル)証券というものもあります。
具体的には上記のRSUに、バークレイズでは同社の中核的自己資本比率(Tier1)が7%以上の場合にのみ支払われる、UBSでは同社の普通株自己資本比率が7%を下回った場合や同行が救済を必要とした場合には支払われない、といった条件を加えています。
50代で飢える?!高収入はどこまで持続できるのか
外資系の投資銀行部門で働く上で考えなくてはならないのが年収の持続可能性です。
一見すると日系証券会社や邦銀よりも年収は高いものの、終身雇用制度ではないため、30-40代でMDに昇進して部長や執行役員、上級幹部などのマネジメント層になっていない場合、45歳程度がキャリアの終わりとなります。
我が国の厚生年金は退職者の増加や少子化による若年労働者の減少などの構造的な問題より、昭和41年以降に生まれた我々に関しては年金支給開始年齢が従来の60歳より65歳まで引き上げられています。
つまり退職の45歳から厚生年金支給開始年齢の65歳までの約20年間、無収入となる可能性があるのです。(失業保険も給付期間は最大で離職より360日間までです)
日系であれば50歳から60歳までは年収は緩やかに落ちていったり、関連会社への出向を命ぜられたりすることはあっても、無職にはなりません。
また61歳から65歳までも雇用延長を希望すれば、嘱託社員などになり大幅に年収は減少するものの、現役のままで在籍することも不可能ではありません。
上記のような事情を鑑みると、必ずしも日系と比べて外資系が恵まれているとは言えません。長期的にはあまり収入が安定した職業であるとは言い難いので、自己責任と盤石な人生プランニングが必要です。
25~45歳の約20年の間、高い税金を支払い続けながら比較的高水準の年収を貰い、きっちり老後資金を蓄えることができなかった場合、50代で飢える可能性があります。
これは多くの外資系バンカーに共通の悩みでもあります。外資系バンカーとしてそれなりのキャリアを積んだ後に、日系の投資銀行に転職して、そこでそれなりの位置につくという方もいるため、人それぞれのキャリアがあるようです。
金融引き締めの影響
コロナが落ちついた今は、違う側面での影響が出ています。FRBの金融引き締めにより金利の上昇などにより、企業の資金調達などが鈍化し投資銀行の収益に大きく影響しました。多くの投資銀行がそれらの影響を強く受け、給与減、リストラに踏み切りざるを得ない状況になっています。
今後この状況がどうなっていくか、注目が必要です。新卒採用に関しても少なからず影響が出ています。投資銀行部門は、投資銀行のフロント部門の中でも採用数が多いことで有名ですが、それでいても近年は人数を減らしている企業もあります。
そうなってくると、ただでさえ狭き門であった採用がさらに厳しいものとなってくる可能性もあります。給与だけでなく、このような側面でも影響が出ています。
外資就活相談室では、実際にその業界で働く社会人の方や内定者に質問ができます。今回は、年収・景気悪化についてなどの質問がされておりましたので、以下をご覧ください。
また、特に社会人の方からはその業界の情勢について詳細に回答をいただけるので、コロナの影響で気になることがある方は是非質問してみてください。
給与だけでなく、その他の側面にも目を向けよう
いかがでしたでしょうか。いまだに高い給与が支払われる業界ではありますが、一時期に比べればなかなか厳しい状況のようですね。
外資系投資銀行といった早くから大きな裁量を求められ、ペイも大きい実力主義社会においては、いつリストラにあってもいいように、スキルアップも含めたキャリアプランをしっかり設計する必要があります。
次回はリストラの実情について、もう少し詳しく突っ込んでみたいと思います。
第2弾はこちらから→外資系投資銀行リストラの実情|現役I-bankerが語る業界事情(2)
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