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起業につなげた、“超楽しい”という原体験 「スタートアップ転職後でなければ、たぶん失敗した」~戦コン出身起業家図鑑(9)

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写真はすべて@WeWork 池袋メトロポリタンプラザビル

 
特集「戦コン出身起業家図鑑」、最終回の今回の主役は、慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、新卒でA.T.カーニーに入社した高橋理志さん。2年足らずで退職し、転職先のスタートアップでの3年間を経て起業した。「スタートアップへの転職がなければ、たぶん失敗していた」と語る高橋さんの真意とは。【丸山紀一朗】

〈Profile〉
高橋理志(たかはし・まさし)
株式会社Voyagin 代表取締役CEO。
1982年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、2006年に新卒でA.T.カーニーに入社。2008年、友人が立ち上げたスタートアップに3人目のメンバーとして転職。2011年にVoyaginを創業。
同社は訪日観光客向けの体験販売サイトを運営。旅行者が一般的なパッケージツアーなどでは経験することが困難なユニークな旅を提供する。2015年7月に楽天傘下となった。

 

1年10カ月で、超ロジカルなコンサルに「お腹いっぱい」

――就職活動の当時、何か将来やりたいことは明確にありましたか?

高橋:起業については全然思い描いていなかったですね。ただ何となく、自分が何かやりたいと思ったときに、それができる能力はつけておきたいと思っていました。その能力というのは、何かの事業で世の中に価値を提供し続けるために、ビジネスとして回る仕組みを作る力のことです。

学生時代、僕の周りではNPOなど社会貢献活動をしている人が多くて。僕も、街を映像化するプロジェクトや、地域のコミュニティを再生するための活動とかをやっていました。ただ、その瞬間は情熱を注ぎ込んでやり遂げるのですが、なかなか持続しない。「燃え尽きて終わる」の繰り返しに課題を感じていたのです。

――そのビジネスの能力をつけるために選んだのがA.T.カーニーだったのですね。

高橋:はい、就活ではコンサルティングファームと外資系投資銀行を受けていました。多少は迷える選択肢があったのですが、とりあえず「戦闘力」を高めようとコンサルにしました。金融よりコンサルのほうが汎用性のあるスキルが身につくし、より現場の実務に近い経験ができると考えました。

――「やりたいことを探すためにコンサルに行く」のは理にかなっていると思いますか?

高橋:レガシーな業界を横断的に見ることはできますし、約3カ月ごとに別のプロジェクトに携われるので、その中でやりたいことが見つかるかもしれないですね。例えば、さまざまな業界の非効率な部分を発見したり、人材や資金が急速に集まっている分野を見つけられる可能性は高いです。

――コンサルを若いうちに辞める人は少なくないですが、2年弱での退職は中でも早いほうかと思います。

高橋:1年10カ月で辞めたのですが、その時点でコンサルが割とお腹いっぱいになりました(笑)。仕事なのでもちろん全力で取り組みましたが、僕個人としては例えば自動車業界の動向などに思い入れを持てなかった。ですので、次は本当に自分の興味があることをしたいと感じていました。

また、ロジカルな世界にも満腹感がありましたね。コスト削減のプロジェクトはもちろん、例えば新規事業を考える案件でも超ロジカル。社内のリソースや既存事業、海外事例などを調べ切り、リスク度別の三つの案を示すのが典型です。それよりも「これは絶対当たる」と思えるものをクリエイトしたいという意欲が強くなりました。

結果、一兵卒の段階で辞めてしまいましたが、このレベルで世の中に出ても大丈夫かなという感覚もありました。僕は、それ以上突き詰めて職業コンサルを目指すようなタイプではなかったのだと思います。

 

Airbnbで自宅に泊めた外国人の「あした何すれば?」が起業のタネ

――次の仕事をどうするか考え始めたのはいつごろですか?

高橋:辞める1~2カ月前から少し考えて動き始めた気がしますが、何とかなるかなと思っていました。少なくとも、すごく前から準備していたわけではないです。

――転職先のスタートアップは友人が立ち上げていたのですか?

高橋:そうです。学生時代から面識はあって、当時からすごい人だとは思っていました。その友人が起業して1年くらい経って、3人目のメンバーを探しているタイミングでした。焼き肉を食べながらその人から「明日からおれの会社に来て(笑)」と言われ、何度か試しに働いて面白いと感じたのです。

他にも大手企業から新規事業担当のオファーをもらったのですが、たくさんの上司の下で働くよりも、すべてを自分で決めることができるスタートアップのほうが魅力的でした。またその友人が本当に優秀だったので、「この人が全力出した上でコケるならまあしょうがないかな」と思い参画を決めました。

――その後、3年間勤めてから起業しています。いつ起業のタネに気づいたのですか?

高橋:起業につながったと思う出来事はいくつかあります。その中で一番直接的なのは、2008年末くらいに民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」‎のホストを始めたことです。学生時代から海外旅行が大好きだったのですが、日本にいながら自宅で外国人と交流できるなら最高だと思って。

当時のAirbnbは生まれたてで知名度も低く、「どうせ誰も来ないだろう」と思って登録したら、結果ものすごい需要がありました。2009年の1年間で計100人くらい泊めました。ほぼ3日に一人、新しい人が来ていた。それがすごく楽しかった上に、家賃分が賄えるほどお金も得られていました。

――そこから今の事業にどうつながったのですか?

高橋:初めの1年くらいは楽しかっただけです。ただ、宿泊してくれた旅行者から「あした何をしたらいい?」「何を食べるといい?」といった質問をたくさん受けていて。そこで、旅行中の外国人向けに、アクティビティや食事をマッチングする仕事があるのではないかと思い始めました。

そこでスタートアップで働きながら、土日は自宅に泊まった人を相撲部屋に連れていくといったテストマーケティングを始めました。「いくら払える?」と聞いていくうちに、けっこうお金がもらえるかもしれないと。どこまで大きくなるかは未知数ですが、楽しみながらそこそこの事業は作れそうだと思い、軽い気持ちで起業しました。

――では高橋さんの起業にはAirbnbが深く影響しているのですね。

高橋:はい、Airbnbがなければ起業していないでしょう。

「軽い気持ちで」とは言いましたが、マーケットを調査した上で、いけそうだと確信していました。当時、大手の国内旅行代理店のインバウンドの売上は全体のわずか1%。そんな小さな市場にジャイアントが本気で来るはずがないと。他の競合もほぼいませんでした。

「メルマガの文章が書けない」 人は論理的に動くという“常識”で苦労した

――コンサルのキャリアは起業の役に立ちましたか?

高橋:役立ったのは、何か意思決定をするときにパッと試算したり分析したりする能力ですね。それはコンサルの仕事を通じて鍛えられました。

ただ、自分で事業をやると、コンサルの20%くらいの緻密度ですべて意思決定しています。判断するための材料を100%集め切ると数カ月かかるところを、20%の材料であれば数日で集まる。スタートアップは、その段階で意思決定しないと勝てない「スポーツ」です。

――そのスピードの違いに、初め戸惑いはなかったですか?

高橋:僕は元々大雑把な性格なので大丈夫でしたね。無理やりトレーニングすることでコンサルをやっていた人間なので。

20%の緻密度で判断することに怖さもなかったですね。ただそれは、緻密度100%がどのくらいのものであるかを実際に経験していたからこそ、なのかもしれません。本気を出せばあそこまでいけるという自信があるので、これくらいでやめても大丈夫と判断できるのだと思います。

――スタートアップへ転職したことは起業に役立ちましたか?

高橋:ものすごく役立ちましたね。転職して僕が最初につまずいたのは、メールマガジンの文章が書けなかったことでした。コンシューマー向けビジネスだったので、個人のユーザーにメルマガを送るのですが、僕は企業向けの固い言葉しか出てこない。BtoCの感覚値が全くなくて、苦労しました。

コンサルはBtoBですし、クライアントもロジカルです。人は論理的にしか動かないという世界だったので、コンシューマーは論理的に動かないこともあるという想像ができなかった。それを加味したサービス設計をすべきなのですが、最初の1年ほどは全くできず、頭でっかちな発言をして社内ですごく反論されましたね。

――前職と今の事業は、ウェブ上のマッチングプラットフォームという面でも同じでしょうか?

高橋:そうですね。前職はプライベートレッスンのマッチングサイトを運営していたので、サプライ側とディマンド側を両方用意するというビジネスモデルは今と全く同じですね。

プラットフォームを僕自身が開発しわけでもないですが、本当に少人数だったので、誰が何をやっているかを間近で見ていた。ですから、自分でやるときにもどうすればいいか想像できるようになったのです。

――今振り返ると、転職せずにコンサルから直接の起業は考えられましたか?

高橋:少なくともかなり苦労したでしょうし、たぶん失敗していたと思います。転職したことで、起業の成功確率は相当上がったでしょう。大企業の末端のプレイヤーではなく、そこに僕以外の責任者がいない、自分の頭で考えないと進まないという状況に置かれたのがよかったですね。

 

「張り紙を見なければ行けない世界をなくしたい」 インドでの原体験

――総じて、コンサルのキャリアは起業の役に立つと思いますか?

高橋:起業するビジネスによると思います。コンサルからいきなりC向けのビジネスをやるのは、ものすごく難しいですね。もしもやりたいのがC向けならば、実際にそのビジネスをやっていて経験を積ませてくれる会社に入ったほうが役立つと思います。

ただ、やりたいことがそこまで明確でないのであれば、コンサルも悪くないでしょう。繰り返しになりますが、業界を横断的に見ることができますし、突き詰めて考えるトレーニングができるので、長期的に起業にも役立つと思います。

――就活中の学生に向けて伝えたいことはありますか?

高橋:学生時代に長い休みを取ってインドに行ったことがありまして。街角に「2つ目の通りの建物の303号室でマッサージやってます」みたいな張り紙があったのです。怪しいなと思いつつ行ってみたら、そこの先生や、3年くらい瞑想の修行をしているアメリカ人がすごく面白くて。

そのアメリカ人に連れられて行った道場で、僕もインド人に交じって修行していました。僕がマッサージが好きだと言うと、あるインド人が「タイに外国人向けのマッサージ学校がある」と紹介してくれて。1カ月のコースを受講したら、受講生のフィンランド人とかフランス人と同じドミトリーで過ごすことになったのです。

日本人は僕だけだったのですが、その一連の体験が本当に超楽しくて面白くて。それで思ったのは、「すごく面白いことがそこにあるのに、勇気を出さないと体験できないというのをなくしたい。あの張り紙を見なければ行けない世界をなくしたい」ということでした。

当時、このガツンと来た体験が、ビジネスになるかもしれないとまでは考えられなかった。でもこの原体験を心に蓄積していました。これが、その後のコンサルやスタートアップ、Airbnbなどの体験を経て、今の事業につながっているのです。

ですから、何かこういうガツンと来る体験を学生のときにしていたら、それは今は分からなくても将来どこかで必ず役立つので、覚えておいてほしいです。


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