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BCGを2年で辞めてSAKE造りの道へ 多難なtoCビジネスにあえて飛び込んだ「クレイジーな選択」~戦コン出身起業家図鑑(6)

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特集「戦コン出身起業家図鑑」、第6回の今回登場してもらうのは、慶應義塾大学理工学研究科を修了後、新卒でボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社した稲川琢磨さん。入社後に訪れた寿司店で口にした日本酒をきっかけに、SAKE造りで起業。自らを「クレイジー」と評す稲川さんが、難しいといわれるゼロイチのtoCビジネスに“ものづくり”であえて挑む理由とはーー。【丸山紀一朗】

〈Profile〉
稲川琢磨(いながわ・たくま)
株式会社WAKAZE 代表取締役CEO(最高経営責任者)。
1988年生まれ。慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。在学中、フランス政府の奨学金給費生として2年間パリのEcole Central Parisに留学。2013年9月に新卒でBCG入社。2016年1月にWAKAZEを設立。2019年からはフランスに移住しパリ醸造所の陣頭指揮を取る。
同社は「日本酒を世界酒に」のビジョンを掲げ、独自の醸造技術で日本酒を製造。販売まで一貫して行う。2019年5月、ベンチャーキャピタルや個人投資家から計1.9億円の資金調達を実施。同年11月にはパリ醸造所をオープンした。

 

将来はフランスで起業したい 「日本人だからこそ勝てる領域」を目指して

――就職活動の時点で、何か明確にやりたいことはありましたか?

稲川:将来的に起業しようと考えていましたが、当時はまだ「これ」と決まったものはありませんでした。

ただ、やりたいことの軸は明確でした。二つあって、一つが日本の文化を世界の人に知ってもらいたいということ。20歳でフランスに行ったのですが、当時はアジア人は皆一緒くたに捉えられていましたし、日本のカルチャーもあまり知られていませんでした。

もう一つは、ものづくりに何とか貢献したいということ。父が製造業を営んでいて、市場の急激な変化で伸び悩み、辛い思いをしている背中を見てきたからです。

その二軸で就職先を探しましたが、僕の理想にかなうような会社はあまりなくて。将来の起業のためにも、まずは武者修行しようとBCGに入りました。

――将来の起業については、当時どこまで具体的に思い描いていたのですか?

稲川:学生時代にパリやニューヨークに行って思ったのは、ニューヨークには英語の話せる日本人がいくらでもいるのですが、パリにはフランス語が話せてグローバルに仕事ができる日本人が少ないということ。ですので将来、言語能力を生かしてフランスで何かやりたいと考えていました。

でも、いきなりフランスで会社を作るといってもネタも資本もない。何もない状態だったので当時は厳しかったです。「何年後に起業」といった時期も決めていませんでしたが、何かしら日本人だからこそ勝てる領域でやりたいとずっと思っていました。

――就活ではコンサルティングファームだけを見ていたのですか?

稲川:ディー・エヌ・エーやグリーなどのゲーム会社と、BCGなどの外資コンサルを受けていました。ゲーム会社は当時急成長していて、そのときに在籍していた優秀な社員に魅力を感じていましたね。

それらに比べれば外資コンサルは古い業界かもしれないですが、インダストリーとファンクションをそれぞれ幅広く見ることができるのがいいと思いました。自分がどこにハマるのかという広い視野で考えていたので。あと、僕はロジックが強くないと自認していたので、優秀な人に囲まれて「修行」しようとBCGを選びました。

 

「一生を捧げたい」と思えるほど好きだと感じた

――「やりたいことを探すためにコンサルに行く」という考え方をどう思いますか?

稲川:僕自身はやりたいことの軸は決まっていて、それにピンポイントにハマるものを探しに行く戦略でした。これはいいと思うのですが、これよりふわっとした状態で「とりあえず」とコンサルに入社してしまうと、そもそも辞められなくなってしまうと思います。

まず他の業界よりも給与が高く、パフォーマンスが高ければ昇進してさらに給与が上がり、どんどん抜けづらくなる。サンクコスト(埋没費用)が高くなると、ゼロイチを目指しにくくなりますし、リスクを取りづらくなるのです。

――BCGにも、やりたいことを探しに来ていたような人はいましたか?

稲川:BCGにも「とりあえず」という人は少なくなかったと思います。例えば同期で、当時は将来の起業を口にしていても、実際に起業してある程度長く続いている人は本当に少ない。だいたいの人はやはり起業していないのです。

――稲川さんの起業につながったきっかけは、いつごろのどんな出来事だったのですか?

稲川:入社後1年くらいは特にピンとくるものはありませんでした。ところが、そのころ父と行った寿司屋で飲んだ日本酒が衝撃的なおいしさで。それまで、フランスではワインを飲んでいましたし、向こうで出てくる日本酒はおいしくないイメージだったのですが、これは本当においしいと感じました。

そして商材としても面白いと直感的に思いました。日本には着物や漆器など他にもさまざまな伝統的なものはありますが、それらを見たときには得られなかった「これならいける」という感覚的なインスピレーションを受けたのです。

――日本酒も、もちろんこれまでも多くの人に伝統的に愛されてきている中で、なぜ稲川さんは「これならいける」と思えたのでしょうか?

稲川:一つは、一生をこれに捧げたいと思えるほど、本当に自分のすごく好きな味だったということ。また、日本酒のようなレガシーな領域だからこそビジネスチャンスもありそうだと感じたことです。BCGもまさにそういう産業でこそバリューが出せる、革命が起こせると謳っている会社だったので。

あとはグローバルで通用しそうという点にもビビッと感じるものがありましたね。日本酒は日本固有のもので、他の国が真似しようとしてもすぐにはできなさそうだと。「日本はプラットフォームよりもコンテンツで勝負」と考えていたところ、日本酒との良い出会いがあったわけです。

 

コンサル的には絶対にやってはいけない「一択」で起業の決断

――そのきっかけから、実際に起業に至るまではどのように過ごしたのですか?

稲川:日本酒で起業したいという熱意は当初からすごくありましたが、本当にできるのかという点でまだ疑問がありました。ですのでまずは「週末起業」のような形で、CTO(最高技術責任者)で杜氏の今井翔也ら友人と休みの日などに集まって、働きながら試してみることにしました。

今井の実家が酒蔵なので、そのマーケティングを手伝ったりしながら、酒造りを一緒にやらせてもらったりしていました。そこで意外にも自分でおいしいお酒が造れると実感しました。人のつては頼りましたが、頑張ればやれると思えたのです。

また、クラウドファンディングの活用も含め、実業でお金を得ること・稼ぐことの面白さも強く感じました。コンサルをやっていると、パートナーが営業して案件を取ってきます。そのため僕は自分でお金を稼ぐということを知らなかったのです。

――週末起業のほうにのめり込んでいっている様子ですね。

稲川:そうですね。僕の興味が日本酒のほうにかなり向いてきて、僕らが造ったお酒を現地の人に飲んでもらうために2015年くらいにはフランスに行きました。すると皆、衝撃的な表情を浮かべながら「うまい。日本酒がこんなにおいしいものだと思っていなかった」って言うんですよ。

それは、日本酒を知っている日本人が多少変わったお酒を飲んだときの反応とは違う。これまで世の中に存在していたこと自体知らなかったものを口にしたときの顔なんですよね。寿司屋での僕と同じです。このギャップに、現地の人に飲んでもらって初めて気づきました。

また、ノルウェーにビール会社が作った酒蔵があると聞いて、そちらにもお邪魔しました。実際に蔵を見せてもらい、現地で飲み食いしながら「海外でも酒って造れるんだ」と実感しましたね。

――やはり当初から、将来的にはフランスで醸造するプランだったのですね。

稲川:そうですね。何十ページにも及ぶマーケティングリサーチのレポートを趣味で作り、それをベースにフランス進出のプランなどを友人らと夜な夜な語り合っていました。入社して1年半くらいのとき、近いうちに会社を辞めるのもありかなと思い始めました。

――では、ある程度「いける」と感じてからの起業だったのですか?

稲川:いえ、もうやりたいと思って、すぐ行動という感じで起業しました。あまりにも不確実性の高い、儲かりづらい領域だと思いましたし、なるべくリスクを取らずにということで、最初は一人で始めたのです。

BtoBの例えばコンサルティング業でなら、顧客を3つくらい押さえてから仲間を引き連れて独立することも比較的容易にできますが、BtoCはすごく難しいので初めはあまり自信がありませんでした。

――とはいえ、他のビジネスアイデアを検討したり迷ったりはしなかったのですよね?

稲川:はい、これ以外考えてなかったですね。自分の好きなものと、自分のできること、そしてマーケットギャップがあること、という三つが重なる点での貴重な発見だったので、迷いはなかったです。ビジネス的にうまくいきそうというだけで選ぶ気はありませんでした。

コンサル出身で「一択」で起業する人もおそらく珍しいですよね。他の選択肢を考えないというのは、コンサル的には絶対やってはいけないことですし(笑)。

 

コンサルに長居すると“ぶっ飛んだアイデア”を実行しづらくなる

――実際に辞めるのも躊躇しなかったですか?

稲川:はい。2年目だったので給与もそこまで上がっていなかったですし。

また、戦略策定の案件はすごく楽しかったのですが、辞める1年くらい前に担当したのが、クライアントの代わりにエクセルを作るという地味めなプロジェクトで。もちろん価値ある仕事ですし自分のスキルも上がりますが、こうした作業に何週間も費やすより、自分のやりたいことで価値を生みたいと考え始めるきっかけになりました。

あと、エンドユーザーが見えない点も気になっていました。コンサルだと、我々の直接のお客さんが、その先にいる最終的なお客さんのことを考えないような意思決定をすることもあるのです。例えば社内政治に引っ張られたり、単にコンサルのお墨付きをもらうための依頼のこともあります。そうした負の部分も感じたのです。

――退職時には、すでに一つ昇進したシニアアソシエイトという役職だったと聞きましたが、例えばプリンシパルやパートナーなど、より上の役職での起業と何か違いはあると思いますか?

稲川:繰り返しですが、ゼロイチをやるなら、アソシエイトなどの早いタイミングで辞めたほうがいいとは思います。

toCビジネスなら特にそうですね。toBはマネタイズが比較的うまくいきやすいので、そちらを選択するほうがライトだと思います。toCにいきなり飛び込もうというのはかなりクレイジーじゃないとできない。僕みたいに割と早い年次で、うまくいくかどうかも分からないまま辞めるくらいの勢いがないと、なかなかできないと思います。

――コンサルのキャリアは、起業するのに役立つと思いますか?

稲川:やりたいことによると思います。

例えばブロックチェーンなど、新たなテクノロジーで次のムーブメントを作っていくようなことで起業したいなら、コンサルに長居するのはよくないでしょう。リスクを分析する癖がついて、ぶっ飛んだアイデアを実行しようとしても頭の中のストッパーが働くようになってしまうからです。コンサルはお勧めしません。

一方で、例えば日本酒のようなレガシーな領域で起業したいなら、コンサルの経験が生きる場面があると思います。インターネットの力だけでは変えることが難しい領域で、戦略をきちんと考えたほうがいい部分があると感じています。でも将来的には、若い人がどんどん起業するような産業にしたいという想いでやっています。

 

“息を止める訓練”としてコンサルで経験を積むのは意義がある

――稲川さん自身は、起業後にコンサルの癖で苦労したことはなかったですか?

稲川:起業当初はマーケティング戦略をカッチリ作り過ぎていたと思います。それは悪いことばかりではないのですが、「まずはABテストで試してみよう」といった発想ではなく、100ページくらいの資料を作り、それを基にロジックを組み立ててから実行していて。

今思えば、とりあえず少量でお酒を造ってみて、消費者の反応を見て生産を進めるか否かを判断するようなことが1年目からできていれば、ビジネスとしてはよかったかもしれないと感じますね。

当時はそうした「アジャイルな感覚」がなかったのです。今は新たなお酒を年間48回も仕込めるようになりました。この“世界最速”の開発環境が功を奏していると思います。

――もしも自分の子どもが今就活中だと仮定したとき、どういうアドバイスをしますか?

稲川:やりたいことをやればいいと思います。親としてはそのサポートをするだけですが、いろいろな選択肢を与えてあげるようにはしたいですね。もしやりたいことがないなら、コンサルなどで経験を積むのもありだと思います。

――コンサルは、他業界に比べるとまだまだ厳しい働き方もあると聞きますが。

稲川:適性もありますよね。僕は海外にいたこともあって、他人からコテンパンにやられても「なにくそ」と思えるタイプ。そういうメンタリティを持っていれば全く問題ないと思います。

また、厳しい環境で鍛錬することで「閾値」を上げるのはいいことだと考えています。それは水の中でどれくらい息を止められるかというイメージに近いです。

起業すると、どこかのタイミングで息を止めなければいけない瞬間がやってくる。閾値が低いと、本当にやりたいことをやる上での妨げになりかねない。コンサルとかでその準備をさせてもらえるのはすごくいいと思います。


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