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「プロダクトマネージャー(PM)は、“枕詞”になるような強みを持つことが大事」。さまざまな業界のプロダクトマネジメントを経験しているAさんは、PMが自分ならではの強みを持つことの重要性を説く。
そして、安易にPMという肩書にこだわることは、「“何者でもない人”になってしまう悲劇につながる」と警鐘を鳴らす。
特集「一流のプロダクトマネージャー」第8回では、Aさんの経験談を基に、若手のPMが陥りがちな落とし穴や、成長するための環境などを紹介する。【北川直樹】
※内容や肩書は2023年11月の記事公開当時のものです。
1. トップダウン型企業で「言われたことをやる」を繰り返した苦い経験も……
2. Appleのような企業のプロダクトマネジメントは、若手にとって難度が高い
3. 転職で失敗しないためにも、「〇〇に強いPM」であるべき
トップダウン型企業で「言われたことをやる」を繰り返した苦い経験も……
——Aさんのこれまでのキャリアを教えてください。
A:新卒で入社した会社ではソフトウエア開発をしていて、次に入社したアパレル系企業で初めてPMを担当しました。その後、小売り系企業での勤務を経て、現職のスタートアップに移りました。PMを担うようになって3社目ですが、業界やプロダクトのタイプは各社で異なります。
——現在の担当業務は。
A:PMとして特定のプロダクトを担当しているわけではなく、事業全体のロードマップ策定や事業目標の定義付けなどを担っています。加えて、他のPMメンバーのマネジメントや、採用も行なっています。
——PMとして成長を実感したエピソードはありますか。
A:アパレル系企業ではプロダクトを立ち上げ、ユーザーが全くいない段階からPMF(*)まで持っていくことができました。一般的にはPMFに至らず終わってしまうほうが圧倒的に多いので、良い経験ができたと思います。
小売り系企業はコロナ禍の影響を直接的に受ける業態だったので、状況にあわせて軌道修正しながら機能を追加していくプロダクトマネジメントを、経験できました。他ではできない経験だったと思います。
* プロダクトマーケットフィット。サービスが市場に受け入れられること
——大変だったことはありますか。
A:アパレル系企業はトップダウンの風潮がとても強い会社でした。当時、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するアプリの開発を担当していたのですが、上から“お題”が次々に降ってきて……。ユーザーに対して本当に価値があるものなのかを検証することもできず、「ただ、言われたからやる」を繰り返していました。今振り返ると、とても不毛だったと思います。
——それは、会社のカルチャーによるものだったのでしょうか。
A:そうですね。PMがその状況を打開する余地は無かったように思います。ただ、経営陣にもっとユーザーを意識してもらうための活動は必要だったかなと感じます。
——というと。
A:期日と予算に合わせて機能をリリースすることが最優先されて、前提となる目標そのものの正しさや、ユーザーにとっての有益性などを十分に検証できなかったんです。もっとユーザーの方を向く文化を作っていく努力が、必要だったと感じます。
それからユーザー数が多いサービスに関わっていた時、カスタマーサポートの面で多くの問題に直面したことがあります。例えば、旧式のスマートフォンOSをサポート対象から外すようなケースです。全体の割合で見ると1%以下であっても、実数だとものすごい数になるので、カスタマーサポート担当などにしっかりと根回しをしないとトラブルが起きます。
異なる職種の人と共通認識を作るのは簡単ではなく、「そもそもこういう問い合わせを無くせないのか」とか「バグはなんで0にならないのか」といった要望も出てきます。それぞれが大したことではなくとも、数が多いと対応に時間がかかるため大変でした。
Appleのような企業のプロダクトマネジメントは、若手にとって難度が高い
——最近はPMが就職の対象として注目されています。若手を見て何か感じることはありますか。
A:漠然と「PMになりたい」という人が多いと感じています。PMという肩書にこだわってしまうと、結局は「“何者でもない人”になってしまう」という悲劇につながるんじゃないかと……。そうならないためには、成し遂げたいことをしっかりと定めて、そこに至るための手段としてPMのキャリアがあるという順序で考えた方が良いと思っています。
新卒でPMになったけど、会議の設定をしたり議事録をとったりという、先輩PMのアシスタント業務から抜け出せない人は何人も見たことがあります。
——若手のPMが、基礎的な素養として持っているべき力は何でしょうか。
A:「人の話を聞く力」ですね。単純に話を聞いて理解するだけではなく、相手の内側にある考えを聞きだせるかがポイントです。聞き出したことに対して、核心を突く追加の質問をする力も求められます。
あらゆる職種の人とのコミュニケーションが発生するため、大前提としてこの人の話を聞く力は必要だと思います。
——他の職種の人たちとしっかり会話をするための知識も必要そうです。
A:そうですね。デザイナーやエンジニアと同じレベルである必要はないと思いますが、わからないことは素直に聞いて学び、ディスカッションできるレベルになることが求められます。
——若手のPMが成長できる環境とは。
A:PMに権限がもらえる会社ですね。実は、そうではない会社が結構あるんです。プロダクトに関する意思決定ができる権限を持てないと、PMとして素早く成長するのは難しいでしょうね。
——入社前に見極める方法はありますか。
A:私は転職活動をしていた時、PMの人による面接では「最近やった一番大きい意思決定は何ですか?」と質問するようにしていました。こう聞くことで、その会社ではどの程度まで裁量が与えられているのかを、推しはかることができます。
それから、ユーザーと接点を持ちやすいかは大事だと思います。特にBtoBのプロダクトだと、一般の人はあまり使うことがないですよね。そういうケースでは、ユーザーとの関係が構築できていて、しっかりとコミュニケーションが取れることが大事です。
——ユーザーと接点を持ちにくい場合とは。
A:例えば、Apple のような情報公開に慎重な企業でプロダクトマネジメントをする場合です。提供できる情報が限られることで、ユーザーとのコミュニケーションに制約が生じがちですから。経験が少ないPMにとっては難度が高いと思います。
転職で失敗しないためにも、「〇〇に強いPM」であるべき
——若手がPMとして働く上で、心がけるべきことは。
A:大事なのはユーザーのことをよく考え、向き合う姿勢です。自分自身のために何かをやりがちな人は結構多いんですよね。「楽しいからやる!」というのは場合によっては大事だと思うのですが、その楽しさの先にユーザーがいないのは良くないと思います。
PMに向いているのは、ユーザーの喜びと自身のモチベーションが直結する人ですね。そうではなく「自分自身がここで成果を上げたい」などと自らのキャリアを第一に考えるタイプの人は、プロダクトマネジメントの本質からズレやすいと思います。
——若手のPMが陥りがちな落とし穴はありますか。
A:よくありがちなのが、担当するプロダクトが変わると、前向きに仕事ができなくなるパターンです。「このプロダクトのマネジメントは楽しいけど、あのプロダクトのマネジメントはあまりやりたくない」みたいな感じですね。これは表面的なイメージだけを見てPMを志望して、PMの仕事に携わる明確な理由を持っていない場合に、起こりやすいと思います。
あと落とし穴という意味では、PMとして働いてみて自分に足りないスキルが見つかったけど、それを身につけるのに苦労する……というパターンもよくありますね。
——転職時には、どんな問題が起こりやすいのでしょうか。
A:期待値のすり合わせが、会社と候補者の間でうまくなされないことが多いです。「このプロダクト、楽しそう!」などと安易に考えて応募してしまったりすると、会社側が求める要件とのギャップが生じがちです。このようなミスマッチを何度も繰り返して落ち込む人は、よく見ます。
——転職で失敗をしないために大事なことは。
A:自分自身の明確な強みをしっかり考えて、持っておくことが重要です。つまり、「自分は〇〇に強いPM」というような“枕詞”が必要だと思います。それがないと、志望先が求めるPM像と自分がマッチしているのかを、見極めにくいですから。
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