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新卒入社したGoogleでアナリストなどを務めたのち、THECOOでプロダクトマネージャー(PM)となり、ファンコミュニティーサービス「Fanicon」の立ち上げからグロースまでをリードしてきた星川隼一さん。
星川さんはプロダクトマネジメントを「クリエイターの仕事、例えばアニメ作りなどに近い」と評しつつ、ユーザーから評価されたり、批判されたりしながら“作品”を作り上げていくところが醍醐味(だいごみ)だと説く。
THECOOでは、組織が数人から約70人まで膨らむなど、事業の急成長を経験してきた星川さん。その過程で学んだこと、失敗体験、PMの面白さなどを語ってもらった。【北川直樹】
※内容や肩書は2023年11月の記事公開当時のものです。
1. Google退職は「仕事に慣れた」から!? スタートアップ参画を機にPMへ
2. プロダクトマネジメントと組織マネジメントのはざまで……
3. PMは担当範囲があいまいになりがちで「悩みやすい」職種
4. 楽しくて魅力的、だけどプレッシャーを受け続けるのがPMの仕事
Google退職は「仕事に慣れた」から!? スタートアップ参画を機にPMへ
——新卒で入社したGoogleでは、PM以外の職種だったのですね。
星川:はい。入社後半年ほどカスタマーサポートを担当して、続いてビッグデータを扱うアナリストを任されました。関わったサービスは、「Google AdWords(現Google広告)」やクラウドサービスの「Google Cloud Platform」などです。
——PMに通じるような業務内容はありましたか。
星川:カスタマーサポートはユーザーと接することが多く、本質的な部分でPMと共通する点があったと思います。アナリスト職での経験は、PMとして定量的な情報を扱う際に役立ちました。
また、当時Google社内のPMと仕事をする機会もありました。さまざまな言語のメンバーがいる中でグローバルなプロダクトを作るため、彼らがドキュメントをすごく重視していたのを覚えています。その部分は学びが多かったです。
——そもそも、なぜGoogleに入社したのですか。
星川:インターネットが好きで、かつグローバルな仕事をしたいと思っていたからです。また将来的には自分でプロダクトを作りたいという目標を持っていて、その“下積み”としてGoogleを選んだ側面もあります。
——Googleで「自分でプロダクトを作る」という目標を実現するのは、難しかったのでしょうか。
星川:不可能ではないと思います。ただ新規事業を立ち上げて育てるのは、簡単ではありません。検索エンジンなど、既存事業の存在感が圧倒的ですから。
——そこで次のキャリアを考えたと。
星川:ええ。それに、私はカルチャーやエンタテインメントにもっと直接的に関わる仕事がしたいと感じていたので、そういった志向性とのズレもありました。
入社から4年くらいが経った当時、Googleでの仕事に慣れてきていたというのもあります。
直接的なきっかけは、Googleのカスタマーサポート時代に上司だった平良(THECOO代表取締役CEOの平良真人さん)がTHECOOを起業していて、声を掛けられたことです。
THECOOは入社を決めた時点ではプロダクトがまだなく、エンジニアもいない状態でした。PMというポジションもなかったですね。
プロダクトマネジメントと組織マネジメントのはざまで……
——THECOOではまず、どんな仕事をしたのですか。
星川:Faniconという、ファンコミュニティーサービスの構想と立ち上げに携わりました。プロダクトをゼロから作ったので、あらゆる仕事を担いました。
——プロダクトの立ち上げは、グロースよりも難しそうですね。
星川:何もない所で火起こしをするようなもので、誰にでもできる仕事ではないかもしれません。
初めの頃は、100人ほどしかユーザーがいなくて、競合優位性をつくっていくのに苦労しました。Faniconのようなファンクラブの代わりになるサービスは既にあったので、より先進的な形にしようと試行錯誤をくり返しました。
サービスの立ち上げからブランドを確立するまでは、あらゆることを自分で決めないとプロダクトに対して責任を持てないと感じていたので、意思決定の連続でしたね。
——プロダクトが成長する過程で、いくつかのフェーズがあったのではないでしょうか。
星川:大きく3つの段階がありました。まずPMF(*)までの初期段階、続いてユーザー数の増加をKPI(重要業績評価指標)として置く段階、その後は利益を出すことにフォーカスする段階です。それぞれで追うべきことが変わるので、動き方も違いました。
初期は数人のチームでプロダクトを回していましたが、成長を経て70人前後まで組織が大きくなりました。私は事業責任者やエンジニアのマネージャー、プロダクト全体の意思決定役を担っていたこともあるので、一般的なPMの職務範囲を超えていたかもしれません。
*プロダクトマーケットフィット。サービスが市場に受け入れられること
——自身の成長を感じることはありましたか。
星川:プロダクトとともに成長したと思います。ユーザーが少ないままだと同じような仕事をし続けることになりますが、プロダクトの成長に伴いさまざまな職種のメンバーが加わり、PMに求められる責任や能力も増えていきます。これが成長につながったのだと思います。
——振り返って、失敗や困難だったと感じることは。
星川:まだ組織が小さかったときに、メンバーが退職したことがありました。自分の中でプロダクトマネジメントと組織マネジメントのバランスを取りながら進めていたつもりでも、プロダクトに偏ってしまい、結果としてそのメンバーにプレッシャーが掛かってしまったようで……。
今振り返るとそのメンバーは事業にとって重要な存在だったので、もっとうまくやれたんじゃないかと思います。当時は経験がなかった面もあり、つい短期的な目線で事業を見てしまって、長めのスパンでの方向性を示すことができなかったんです。
——プロダクトマネジメントと組織マネジメントのバランス……難しそうな点ですね。
星川:特にハードな状況下だと、メンバーとのコミュニケーションは難度が上がります。その点、もっと配慮ができたかもしれません。それに、当時はコミュニケーションの“押し引き”がうまくできず、押してばかりだったなと感じます。メンバーを信頼するという意味での“引くこと”を身につけたのは、結構後になってからです。
PMは担当範囲があいまいになりがちで「悩みやすい」職種
——プロダクトマネジメントでの失敗はありましたか。
星川:エンジニアに無駄な機能開発をさせてしまったことは、何度もあります。3回作ったら、1回は無駄になるといった具合でした。それでもエンジニアのメンバーは許容してくれて、とても支えられたと感じています。
——プロダクトマネジメントで成功するために大事なことは。
星川:絶対的な“勝利の方程式”があるわけではないのですが、私自身は状況にあわせて、あらゆる要素を俯瞰的に考えるようにしています。
——あらゆる要素とは。
星川:例えばユーザーの属性、取り組みの優先度、タイミング、エンジニアのモチベーションなどですね。こういった要素を整理しつつ綿密に検討して、判断します。
もう一つ重要なのは、何でもユーザーを起点として考えることです。そこからそれないように、常に注意するべきだと思います。
——エンジニアやデザイナーなどと協力する際に、大切なことは。
星川:意思決定はできるだけPMに集約したほうがいいと考えています。人間の体に例えると、PMは“脳”といえるのかもしれません。
だからといって脳が一番偉いということではなく、1つの役割として意思決定を担うという意味です。
なのでPMは基本的な方針を決めることに徹して、具体的な施策はエンジニアやデザイナーなどを信頼して、任せることが大切だと思います。
——なるほど、PMは業務範囲が明確でないことによる難しさもありそうです。
星川:そうですね。担当範囲があいまいになりがちで、悩みやすい職種です。
ただ多くの場合、それは“PMっぽい仕事”にとらわれるがゆえの悩みであって「プロダクトを成功させるために何でもやる」と本質に立ち返って考えれば、たいてい解消されるものだと思います。
楽しくて魅力的、だけどプレッシャーを受け続けるのがPMの仕事
——PMに特に求められる能力とは。
星川:大きく2つだと考えています。コミット力と、リーダーシップですね。GoogleのPMもそうでしたが、エンジニアなど違う職種の人や、場合によっては別の部署の人と仕事をする必要もあるので、共通認識を作りながら物事を進めることが求められます。この部分をしっかりと実行するには、コミット力とリーダーシップが必要だと思います。
あとは、学び続ける姿勢ですね。例えばエンジニアリングの知識は、PMの仕事を始める時点では「Must」ではなく「Nice to have」だと思っています。つまり、すぐにできなくてもいいけど、できるようになればいい。
逆にいうと、ずっと知識がないままの人は厳しいと思っています。だからこそ、学び続けることが求められます。
——PMの面白さはどんなところにあると感じますか。
星川:クリエイターの仕事、例えばアニメ作りなどに近い面白さがあると思います。さまざまな職種の人と一緒に“作品”に向き合い、ユーザーから評価されたり、批判されたりしながら作っていく。その結果、明確な形で成果が表れることが、とても楽しく魅力的だと感じます。
一方で、自分が作った“作品”に圧迫される面もあります。誰でも自分が以前に作ったものよりも、良いものを作りたいと考えるはずです。そういうプレッシャーは常にあるかなと。だからこそ、それを乗り越えたときの喜びも大きいですね。
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