
文理問わず使える!面接で困らないための最新M&A知識と活用法
2025/04/10
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私は現在、環境学専攻の修士課程に在籍している学生です。就職活動の中で、企業研究をしていると意外なほど多くの業界でM&A(企業の合併・買収)が行われていると感じました。本稿では、日本国内におけるM&Aの動向や、注目度の高い事例を整理しつつ、専攻分野との結び付け方や面接での活用方法を紹介します。
自分の興味や学問領域と掛け合わせて、どう話を展開すればよいのか考えるきっかけになればうれしいです。
M&Aが就活に役立つ理由
就職活動では「最近注目しているビジネスニュースを挙げてください」と質問される機会が少なくありません。そこで、M&Aを話題にする利点は大きいと感じています。なぜなら、企業戦略・ファイナンス・技術獲得・社会的影響など、多方面に話を展開できるからです。
たとえば、コンサル志望者はPMI(Post Merger Integration)などのアドバイザリー業務に触れやすいですし、メーカー志望者でも自社やライバル企業が買収案件を行っていれば、その背景や目的を語ることが可能です。文系・理系問わず、自分の専攻とM&Aをどう結びつけられるか考えてみると、意外なほど多彩な切り口が見つかります。
私自身は環境学の研究をしていて、「エネルギー企業が再生可能エネルギー関連のベンチャーを買収している」という事例を追ううちに、就活でも話題にしやすいと感じるようになりました。
2023〜2025年の日本M&A概況
大型案件の続出とその背景
2023年には、1兆円を超える超大型M&Aが複数登場し、件数や取引総額の観点で過去最高水準を記録しました。コロナ禍を経て業績が回復し、大企業が「選択と集中」を進めたことや、中小企業の事業承継ニーズが高まったことが主な理由として挙げられます。
さらに、海外投資家による対日M&Aも進んだとされています。円安によって日本企業が割安に見えることや、国内では依然として金利が低く、レバレッジをかけやすい環境が続いていることも後押ししています。事業承継を狙う仲介業者や、事業再編を促すアクティビスト株主の存在感も増し、M&Aの活性化に寄与しています。
事業承継とファンドの役割
大企業の再編だけでなく、中小企業が後継者不足を補うためにM&Aに踏み切る例も急増しています。国や自治体も事業承継支援策を打ち出しており、民間ファンドがそのニーズをうまく取り込み、多数の企業を集約・再生している状況です。
これによって地方の雇用が維持されたり、技術が残ったりする一方で、買収先との統合がスムーズに進まないケースもあり、そこにコンサルや金融機関のサポートが入る事例も見受けられます。
注目の四大M&A事例
2023年前後に大きな話題となった四つの事例をピックアップします。いずれも経営の大きな転換点を象徴する案件であり、面接や企業研究で話す際に役立つ要素が満載です。
1. 東芝の非公開化(国内投資ファンドによるTOB)
【概要】
2023年、総合電機大手の東芝が国内ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)連合による約2兆円規模のTOBを受け入れ、上場廃止の道を選びました。
【背景】
長年の経営混乱や原発事業などのリスクで株価や資金繰りに悩み、海外アクティビスト株主との対立も深刻化していました。非公開化によって短期的な株主圧力から解放され、抜本的な再建を進める狙いがあるとされています。
【就活ポイント】
大手企業でもM&Aによる経営再建に踏み切る例があると示す象徴的事例で、ガバナンスや投資家との関係など、会計不祥事を含む企業体質の変革を語る題材にもなります。
2. JSRの官民ファンド買収(半導体素材メーカーの非上場化)
【概要】
半導体材料大手のJSRが、日本政府系ファンドのJIC(産業革新投資機構)の買収提案を受け入れ、約9,000億円規模で非上場化する方針を発表。
【背景】
半導体産業の強化を国策として推進する流れがあり、短期の株主利益よりも研究開発や業界再編を優先させるために、一時的に非公開化して集中投資を行う狙いがあるとされています。
【就活ポイント】
国策とファイナンスが直結した珍しいパターンで、理系の方ならば技術面との絡みを、文系の方ならば産業政策やグローバル競争への対応策として語れます。
3. そごう・西武の米ファンド譲渡(百貨店事業売却)
【概要】
セブン&アイ・ホールディングスは、業績不振が続いていた百貨店事業を中核事業から切り離し、再建の一環として米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに譲渡しました。この譲渡プロセスでは、労働組合によるストライキなどの内部対立が表面化し、社会的にも大きな注目を集めました。
【背景】
セブン&アイは、コンビニエンス事業など中核事業への集中を図る「選択と集中」戦略の一環として、不採算の百貨店事業の整理に踏み切りました。買収側のフォートレスは、特に都心部に所在する旗艦百貨店の不動産価値に着目し、家電量販店との連携(たとえばヨドバシカメラとの協業)など、新たな事業モデルを模索することで、事業再生を狙っていました。
【就活ポイント】
本件は、労使関係の複雑さ、小売業界の構造変化、そして不動産投資ファンドの戦略的動向といった、複数の視点から議論できる事例です。就活面接では、「企業の事業再編」「企業価値と不動産価値の関係」「ブランド再編や文化の変革」といったテーマで自分の考えや分析を展開する材料として活用できます。
4. アステラス製薬の米バイオ企業買収(約7,800億円)
【概要】
アステラス製薬が米国のバイオベンチャー・アイベリックバイオを巨額投資で買収し、新薬開発のパイプライン強化を狙っています。
【背景】
特許切れ対策や研究開発のスピードアップを目的に、大手製薬企業が有望ベンチャーを取り込む形は一般的になってきました。
【就活ポイント】
製薬や化学系志望者にとっては非常にわかりやすい一方、文系でも「クロスボーダーM&Aの手続き」「研究開発リスクと投資判断」などを論じられます。
専攻ごとにM&Aを語るヒント
文系(人文社会・心理・教育など)
M&A後の統合や労働組合との交渉など、組織や人の問題に注目すると良いでしょう。そごう・西武のストライキのように、労使コミュニケーションが買収後の経営を左右する点を深掘りするだけでも面接の話材になります。
経済・経営学系
TOB、MBO、シナジー効果などのファイナンス視点を活かし、「どのような評価額で買収が決まったか」「買収後のPMIでコスト削減がどれくらい見込めるか」など具体的に語れます。東芝やJSRの非公開化も、金利や株主対応といった要素を織り交ぜると説得力が増します。
理工系
半導体や製薬の事例で技術獲得がM&Aの主要目的になる例を分析すれば、自分の研究内容と結びつけやすいです。特に「企業がベンチャーから特定技術を得る意義」「研究者がどのようにM&A後の体制で働くか」を想像しておくと、専門性をアピールできるでしょう。
国際関係・政治学系
政府系ファンドによる買収や、米中対立が絡む半導体産業の再編など、国際政治の視点で語れるテーマが豊富です。企業単独の判断ではなく、国策としての狙いが組み合わさっている事例(JSRなど)に着目すると、自分の関心分野を引き込みやすくなります。
環境・エネルギー系
再生可能エネルギー分野のベンチャー買収や、石油元売り同士の統合を取り上げると、脱炭素化との関連を語れます。私の場合も、エネルギー企業の動きを調べるうちに多数のM&A事例が出てきて、「環境分野がいかに企業の事業戦略に組み込まれているか」を再認識しました。
M&Aを面接でどう話すか
「最近気になったニュース」として
面接官に問われたら、具体的な事例名と大まかな取引概要を簡潔に述べ、自分の意見を添えましょう。「東芝の上場廃止は衝撃的だった」「そごう・西武のように労使対立が表面化する買収もある」といったエピソードを挙げ、それに対してどんな背景があるか、自分の専攻や興味から何を感じたかを語ると深みが出やすいです。
「志望企業との関係」に絡める
志望企業が最近ベンチャーを買収したり、海外企業と統合を検討していたりするなら、「その動きに共感し、自分の○○分野の知識が活かせると考えた」と結び付けることができます。M&A事例を挙げるだけでなく、「もし自分がそのプロジェクトに配属されたら」という視点で語ると、より実践的です。
「M&Aのメリット・デメリット」を問われたら
【メリット】
時間をかけずに技術や人材、シェアを獲得できる。多角化や選択と集中による競争力強化など。
【デメリット】
企業文化の衝突、人材流出、過大投資のリスク、統合(PMI)の失敗など。
【ポイント】
東芝やJSR、そごう・西武、アステラス製薬の事例に照らして具体的に語ると、表面的な知識にとどまらない印象を与えられます。
2025年以降の展望
2025年以降、日本のM&A市場は一時的な調整を経た後、再び成長基調に戻ると考えられます。特に、グローバルな競争環境の変化や国内企業の構造改革の必要性が相まって、戦略的M&Aの重要性はますます高まるでしょう。近年のM&A市場では、短期的な財務リターンの最大化だけでなく、持続可能な成長や市場競争力の強化を目的とした取引が増えており、この傾向は今後も続くと予想されます。
成長分野におけるM&Aの加速
デジタル技術や半導体、バイオテクノロジーなどの高成長分野では、技術革新のスピードが速く、企業単独での競争力維持が困難になりつつあります。そのため、グローバル企業との提携や買収を通じた技術獲得の動きが一層活発化する可能性が高いです。
特に、日本企業の競争力強化を目的とした海外M&Aの件数は今後増加するでしょう。実際、近年では欧米企業による日本市場への参入が加速しており、それに対抗する形で国内企業同士の統合も進むことが予測されます。
事業承継型M&Aの深化
国内では、中小企業の後継者問題が依然として深刻であり、M&Aを活用した事業承継のニーズは引き続き高まると考えられます。特に、地方企業においては、単なる事業継続のためのM&Aではなく、地域全体の経済活性化を目的とした複数企業の統合や業界再編といった動きが本格化するでしょう。
これに伴い、ファンドや事業会社による事業承継型M&Aがより多様化し、企業価値向上に向けた経営支援の手法が求められるようになります。
環境・エネルギー分野における再編
SDGsやカーボンニュートラル政策の推進を受け、環境・エネルギー関連企業の統廃合が加速する可能性が高いです。特に、再生可能エネルギー分野では、大手企業によるスタートアップの買収や技術統合が活発化し、新たなエネルギー供給体制の構築が進むと予測されます。
また、脱炭素社会の実現に向けた投資が増加する中で、エネルギー業界全体の構造転換を目的とした大規模M&Aも相次ぐでしょう。
大規模再編プロジェクトの本格化
東芝の再編に象徴されるような、大企業の構造改革を目的とした大規模M&Aが2025年以降も続くと考えられます。特に、経営課題を抱える企業や事業ポートフォリオの見直しを迫られる企業では、経営資源の最適化を目的とした事業売却・買収の動きが顕著になるでしょう。
政府主導の国策M&Aや、経済安全保障の観点から進められる企業統合も増加し、業界再編の規模が拡大する可能性があります。
M&A市場の変化と就活生への影響
こうした動向を踏まえると、M&Aはもはや一部の投資銀行やコンサルティングファームだけの話ではなく、一般の事業会社においても避けて通れないテーマとなります。入社後に突然、買収した子会社の統合プロジェクトに参加することになるケースも珍しくなく、企業戦略の一環としてM&Aを理解することが求められます。
そのため、就職活動の段階からM&Aの基本的な仕組みや市場動向を押さえておくことは、会社選びや面接において大いに役立つでしょう。特に、自身の専門分野とM&Aの関係性を意識し、それをどのように企業の成長戦略に結びつけられるかを考えることが重要になります。
まとめ
私は環境学の研究室で学んでいますが、企業の再生可能エネルギー導入や排出削減策を調べているうちに、多くの事例でM&Aが使われているとわかりました。コンサルや商社、メーカーなど広い業界で「技術獲得」や「不採算部門の整理」「急速なシェア拡大」といった目的でM&Aが実行されています。
就職活動においてM&Aを取り上げるメリットは、世の中の経営戦略を学びながら、自分の専門や興味との接点を示せることにあるでしょう。たとえば「半導体素材メーカーが国と連携して非上場化する意義」「老舗百貨店がファンドに買収されて雇用がどうなるか」などを考えてみると、単なる業界研究にとどまらず、大きな視野で企業を分析できるようになります。
面接で「最近関心を持った経済ニュース」や「当社の動きで注目している点」を問われた際、M&Aの事例を取り上げて自分の意見を述べると、深い洞察力や情報収集力をアピールしやすいです。理系・文系問わず、自分の学んできたことと結びつける工夫をすれば、説得力がいっそう増すはずです。
みなさんも気になる業界や企業の買収・合併ニュースを追いながら、「なぜそのM&Aが必要なのか」「自分の専攻や興味とどう結び付けられるか」を考えてみてください。それだけで就活の視野が広がり、面接やES作成において独自のアピールができるようになるでしょう。
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