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「グローバルで活躍できる人材になりたい」「日本では経験できない厳しい環境に身を置きたい」「テクノロジーの最前線を見たい」――。そう考え、大学卒業後、ファーストキャリアで海外就職を選択する人が増えている。言葉の問題や、日本とは違う環境、カルチャーがある中、そうした道を選ぶのはどのような人なのだろうか。
特集「就活進化論」第1回では、日本の高校を卒業後、米国に留学し、シリコンバレーのテック系スタートアップに就職した山田寛久さんの体験を紹介する。山田さんはどのように海外での就職を決め、働く中で何を得たのだろうか。【南部香織】
1.米国での就職は同級生たちに刺激され、自然な流れで
2.米国で身に付いたのは、多様性への理解、当たり前を疑う観点、逆境への強さ
3.インターンシップは“友人の紹介”が参加につながることが多い
4.優秀なエンジニアを目の当たりにしたインターン。会社は小さければ小さいほど面白い
米国での就職は同級生たちに刺激され、自然な流れで
――山田さんは、日本でも大学に通っていましたが、なぜ米国の大学に行こうと思ったのですか。
山田:自分のモットーとして、「可能な限り、一番厳しい環境に身を置く」というものがあるんです。もちろん、海外でやっていけるかわからないという不安はありましたが、最後は行かなかったら絶対後悔すると思って決めました。
――その時点で、現地で就職することを意識していましたか。
山田:正直、そこまで明確に考えていませんでした。「レベルの高い環境でチャレンジしていれば、就職とかその先のことはどうにかなるだろう」くらいの感覚です。
――ではどのような流れで、米国で働くと決めたのでしょうか。
山田:自然とそうなったというのが、正直なところですね。その意味で、大学の寮で同じエリアに住んでいた同級生たちからの影響は、大きいと思います。
――どういった点で、その同級生たちから影響を受けたのでしょうか。
山田:彼らのほとんどは、シリコンバレーのスタートアップに就職しました。中には、当時勢いがあったSnapchatに、21人目の社員として入社オファーをもらった人もいました。Snapchatのロゴが入ったパーカーを着て「これを着られるのは世界で21人しかいないんだ」と言うのを見て「いいなあ」と思ったものです。
技術を学ぶ優秀な人はシリコンバレーに行くもの、という風潮があって、自分もそれに倣った感じですね。
――同級生たちが「優秀な人」だという実感があったのでしょうか。
山田:そうですね。彼らとは、授業で出た数学やプログラミングの問題について、ホワイトボードを使って、寮の部屋でよく議論していました。頭がいい人たちとのやりとりは、刺激になりましたね。彼らが思いつかないような解法を提案して認められるとうれしかったです。
――現地のスタートアップの中で、Asanaに入社することはどのように決めたのですか。
山田:内定をもらった企業の中で、GoogleとAsanaのどちらに入るかで迷っていました。そんな中、Asanaがオフィスに呼んでくれて、創業者の一人、ジャスティン・ローゼンスタインと話す機会があったんです。
ジャスティンは、なぜAsanaのプロダクトをつくったのかを熱く語ってくれました。彼はFacebookの初期メンバーで、資産も名誉もあって働かなくてもいいくらいなのですが、そのプロダクトで本気で世界を変えようとしていました。それに心を動かされたのが、決め手ですね。
◆インタビューはオンラインで実施
米国で身に付いたのは、多様性への理解、当たり前を疑う観点、逆境への強さ
――Asanaに入社して大変だったことはなんですか。
山田:英語力はずっとテーマであり続けましたね。大学時代を米国で過ごしても、やはりネーティブではないので、理解しきれないところが残ってしまうんです。ですから、常に本来の力の8割5分くらいしか出せない感覚はありました。
――何年か米国に住んでも、英語の問題は残るんですね。
山田:そうですね。ですから、その部分は技術力でカバーするという強い気持ちを持っていました。本などで勉強して人一倍、技術力を高めようと努めましたし、またプレゼンをする時は質問を想定して、英語できちんと答えられるよう入念に準備していました。
――逆にやりがいとなったことや楽しかったことを教えてください。
山田:シリコンバレーという場所で世界基準のものづくりに携われたこと、そして、自分がつくったものを人に使ってもらい、「導入したことで楽になった」など、ユーザーの声を聞けたことです。
それから私は、日本法人の1人目の社員として立ち上げも行ったので、日本のクライアントの商慣習に合わせながら、本社のカルチャーをベースにした会社づくりができたのも面白かったです。
――学生時代も含め、米国で生活したからこそ、身に付いたことはありますか。
山田:まず、さまざまな人種やカルチャーが存在している国なので、多様性に対する理解が深まり、尊重する姿勢が身に付きました。日本では、かなり優秀な人でも、海外だとセンシティブにとられそうなことを無自覚に発してしまうことがあるように思います。その点、グローバル標準を体感できたことは大きいですね。
他のことも含めて、日本で当たり前とされていることを疑う観点と、逆境に負けない強さを得られたと思っています。
――これから社会に出る学生に、海外の企業に就職することを勧めたいですか。
山田:もちろん、勧めます。確かに楽な道ではありません。それでもやはり、海外で働くからこそ得られる経験やスピード感があります。
最終的に日本に帰るとしても、厳しい環境を生き抜いた経験は成長を加速させますし、また日本での就業経験しかないと、海外で働こうとしたときに選考や給与交渉などで不利になってしまいます。
リスクをとれるライフステージの人なら、チャレンジしてみてもいいんじゃないかと思います。失敗しても死にはしません。
インターンシップは“友人の紹介”が参加につながることが多い
――ところで米国の就職活動では、インターンシップへの参加が重要なようですね。どのようにインターン先を見つけたのですか。
山田:ウェブ上で公募もしていますが、私や周囲の友人たちは、お互いに紹介しあうことが多かったです。例えば、前年にある会社でインターンをしてきた人が、今年その会社のインターンに参加したいと思っている友人に、人事の人を紹介するといった形ですね。
それによって、学生はその会社がどんな環境かを事前に聞くことができますし、企業側は信頼できる人材と効率よく出会うことができます。特に、小さなスタートアップは情報があまり出回っていないので、実際に働いた人から話を聞くのが良策です。また、自分が紹介した人がインターンに参加すると、紹介料がもらえることもありましたね。
――山田さんはどんな基準でインターン先を選んだのですか。
山田:私の場合は、ソフトウエアエンジニアとして成長できる環境か、という観点で探していました。
――具体的にいうとどういうことでしょう。
山田:結局優秀な人がいるところ、ということですね。それは実際に働いていた人からの口コミを参考にしていました。それから面接でのやりとりからも判断していました。面接では出されたお題について議論をする時間があるのですが、表面的ではなく深い話ができるか、という観点でみていましたね。
優秀なエンジニアを目の当たりにしたインターン。会社は小さければ小さいほど面白い
――実際にインターンに参加してみて、いかがでしたか。
山田:私は、ボストンの小さなスタートアップ、Google、Palantirの3社のインターンを経験したのですが、どの会社も優秀な人ばかりで非常に勉強になりました。
普通の人の10倍の成果を出すエンジニアのことを「10X(テンエックス)エンジニア」と呼ぶのですが、そういう人が本当にいました。その人が周囲から頼られている姿や、仕事内容に対して尊敬の念を抱いていましたね。
大企業とスタートアップの両方のインターンを経て感じたのは、自分にとって会社は小さければ小さいほど面白いということです。大きな会社では、巨大なシステムの一部分を担う形になります。その一部分を極めるというのも一つの考え方ですが、自分は小規模な企業の中で大きな範囲を任せてもらえるほうが勉強になると感じました。これは就職先を選ぶ際にも重要な指標になりました。
――最後に現況についても聞かせてください。Asanaは既に退社しているんですね。
山田:はい。日本法人の立ち上げをやりきったタイミングで、退職しました。
現在はハーバードビジネススクールに在学中です。MBA(経営学修士)とM.S.(科学修士)を2年間で両方取れるプログラムに、参加しています。
そこで学んだことやAsanaでの経験などを生かして、卒業後は起業したいと考えています。なので、最近はその準備も進めているところです。
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