目次
はじめに
こんにちは、外資就活編集部 コラムチームです。
今回は、「PEファンドへの転職願望を投資銀行に伝えるとNG?」面接でのセカンドキャリアの伝え方(※2020/10/12公開予定)という記事に関連して、外銀志望の就活生が志望動機を述べる際に悩むことについて解説します。
具体的に、上記では外資系投資銀行(以下、外銀)の選考の際には志望動機が重要である、という話をしました。その際には各社の業務面の特徴や、社風などと自分の就活の軸を絡めることが高評価につながる、と述べました。
しかし、外銀志望者の中には業務面や社風よりも給与水準の高さに魅力を感じている方も少なくないと思います。この傾向は毎年のことで、公に口には出さなくても、各社の給与水準を比較した結果、外銀に興味を持った人も多いはずです。
けれども、選考が始まってからわかることですが、給与水準の高さを志望動機として伝える学生はそう多くありません。そもそも、「その企業の給与水準の高さ」を志望動機としても問題ないのでしょうか?
「お金を稼ぎたい」と伝えること自体はマイナスではない
結論から言うと、外銀業界においてお金を稼ぎたいと伝えること自体は全くマイナスではありません。
まず、外銀に関わらず、就活生に人気の業界に勤めている人たちは給与水準の高さに魅力を感じて入社し、働いている場合が多いです。
もちろん、実際の面接では経済へのインパクトの大きさなど、志望動機として他の理由を挙げる場合もあります。しかし、特に新卒で入社し、泥臭い業務ばかりを行う時期は「高額な報酬」がモチベーションの源泉となるのは自然なことです。
それでは、外銀社員は「お金を稼ぎたい」という理由が働くモチベーションとして大きいことを隠しているのでしょうか?
これは人にもよると思いますが、ほとんどのバンカーは「お金を稼ぎたい」を口に出して言います。もっといえば、外銀からの転職者も多い投資ファンドなどでは「お金を稼ぎたいとちゃんと言え」と上司から言われることすらあります。
これはなぜかというと、投資ファンドでは成果給の割合がかなり大きいからです。企業によりますが、運用益の20%を報酬として受け取る投資ファンドも珍しくありません。
そして、その報酬の一定割合が企業全体の成果給と連動しています。そのため、自分たちが稼ぐことで顧客に利益が生まれ、さらに自分たちの実入りも大きくなります。
自分自身が稼ぎたいと思っていないようでは、顧客の収益が上げられないという発想が企業に浸透しているため、投資ファンドではむしろお金を稼ぎたいことをアピールすべきでしょう。
そして、外銀の場合もヘッジファンドほど自分の業績と顧客の利益が一致しているわけではないにせよ、手数料ビジネスである点は変わりません。自分たちが稼ぎだしたアドバイザリー・フィーを「自分たちが生み出した価値」ととらえている側面があります。
そのため、「稼ぎたい」という発言は「顧客を稼がせたい」や「社会に価値を生み出したい」と本質的には同じであり、誇らしく発言できる内容だといえるのです。
したがって、お金を稼ぎたいと伝えることは全くマイナスではありません。むしろ、お金を稼ぎたいと考えていない人は「やる気がなさそうに見える」、「外銀には向いていないタイプ」などマイナスの印象を与える可能性もあります。
「高給を得たい」が主たる志望動機になりえないことには注意
前述のとおり、外銀においてはそのビジネスモデルの特徴上「お金を稼ぎたい」と考えていること自体は伝えて構いませんし、どちらかというと伝えたほうが良い内容ではあります。
ただし、気を付けなくてはならないのは、「高給を得たい」という文言自体は、主たる志望動機にはなりえないということです。その理由は主に3つあります。
1つ目の理由として、外銀を志すにあたっては高い給与水準をモチベーションにすることは当たり前だと認識されているためです。それを踏まえると、「お金を稼ぎたいから外銀を志望しています」はもはや何も言っていないのと同じだといえます。
2つ目の理由として、ほかの候補者も共通して「高給を得たい」と考えていることに注意しなければなりません。1つ目の理由と結論は同じですが、全員がお金を稼ぎたいと考えている場合にお金を稼ぎたいと主張することは、まったく差別化要素にはなりえないのです。
そして3つ目の理由は、高給を得るだけなら外銀以外にも多くの手段があるという点です。
お金を稼ぐことを目的とした場合は、入社2年後には颯爽とヘッジファンドに転職したほうが効率的です。生涯勤めあげる業界ではないとはいえ、数年でやめてしまうつもりの候補者を積極的に採用することはないでしょう。そのため、数年で転職すると主張する人は好まれません。
また、従業員として働いている限りはどれだけ外銀業界の給与が高くとも資産家になることはできません。本当にお金が好きで、お金を稼いで富を築きたいというのであれば、リスクをとってでも起業して上場やバイアウトを目指したほうがよいでしょう。
前述したようにビジネスモデルの特性を踏まえると、外銀の選考でお金を稼ぎたいかどうかと聞かれれば肯定しても問題はありません。
ただし、以上の理由から「高給を得たい」を第一の志望動機にしてしまうと外銀でなくてもよい理由がいくらでも出てきてしまうのです。
つまり、「高給を得たい」はいくつかある志望動機のうちの1つにはなりえますが、それは主たる志望動機にはならないということです。
「高給を得たい」を志望理由とするならば、その理由を深掘りすべき
上記では「お金を稼ぎ、高給を得たい」を第一の志望動機にしてしまうと外銀でなくてもよい理由がいくらでも出てきてしまうと述べました。
それを理解した上で「高給を得たい」を主たる志望理由にする場合は、他の学生との差別化が難しいと理解したうえで、「なぜ高給を得たいのか」をしっかりと整理しておく必要があるでしょう。
がむしゃらにお金を稼ぎたいと考える人は、大体下記の2パターンに分かれます。
1つ目のパターンは、人生を通してお金で苦労してきた実体験からお金を稼ぎたい場合です。具体例としてはお金がなくてお稽古事を習えなかったとか、お金がなかったから公立の中学・高校に行かざるを得なかった、などが考えられます。
こういったバックグラウンドを持った人たちは、お金の重要性を人一倍わかっています。なぜお金が欲しいのかを聞かれたとしても、お金がない苦労を語ることができれば納得のいく説明ができるでしょう。
2つ目のパターンは、適度に裕福な家庭に育った学生たちにあてはまります。具体的には、適度に高い所得とちょっとした資産はあるが、一生働かずに済むほどのお金はない、という人たちです。要するに、稼ぎ続けなければいまの生活を維持できないから、危機感をもって稼ごうとするのです。
実際、外銀の内定者もおおよそこの2パターンに分かれます。大富豪の子息が入社することはあまりない一方で、私立の中高出身者が大半であり、名門女子高などの出身者も珍しくありません。そうでない場合は、郊外の一般家庭で育って、ひたむきに努力をしてきたような折り紙付きの努力家がほとんどです。
ここで留意すべきは、1つ目のパターンの志望動機では給与の高さが志望動機になる可能性がありますが、2つ目のパターンの志望動機では面白い実体験や、熱意を伝えることは難しい傾向にあります。
なぜなら、お金はないよりもあったほうがいいのは明らかなので、誰でも多かれ少なかれお金は欲しいと考えているからです。このため、実体験に基づいたエピソードや自分の生い立ちや価値観に裏付けられた志望動機と比べて弱い志望動機にしかなりません。
お金を稼ぐために何ができるかを伝える
志望動機で「自分になぜお金が必要なのか」を整理したら、次に実際に自分の行動にどう影響するかについて説明しましょう。ただお金がほしいというアピールをすることは誰でもできます。そのため、そのモチベーションがどのように会社にとって有益なのかをしっかり説明しましょう。
高給を得たいと伝える場合にポイントとなってくるのは、お金のために必死になれるのかどうかです。
お金のために必死になれる証明として最も有効なのは、お金を稼ぐために努力した経験を話すことでしょう。
例を挙げると、
「私はお金が必要になったとき、インターネットで個人輸入したものを転売することによって稼いだ経験があります。効率的に転売をするために英語を勉強し、海外と日本とで価格が違うものを懸命に調べました。実は〇〇は海外のほうが40%も安いのです。これにみんな気づかず、私だけ大儲けできました。3か月でだいたい100万円くらいになりました。かなりの時間を割いたことを考慮しても、ふつうにアルバイトをするよりは稼げたと思っています。」
というようなエピソードがあれば、非常に説得力のある「高給を得たい」というアピールができるでしょう。この場合は、理由なく「お金がほしい」という候補者と比べて、十分に差別化できるといえます。
具体的なエピソードがないのであれば「高給を得たい」を補助的に使うべき
そうはいっても、「高給を得たい」を全面的に押し出してしまうことに気が引ける人はいるでしょう。日本文化においては、お金稼ぎがよくないことであるかのような考え方が蔓延しているのは事実です。メーカーの選考などではお金が第一だと語った瞬間に落とされるケースも少なくありません。
また、高給を得たいとは思っていても、ほかの候補者よりもお金への欲求が強いわけではない方もいらっしゃるでしょう。実際、日本人にはお金のためだけには働けないという方は少なくありません。
お金への執着心がそれほど強くなく、お金がほしいことを示す具体的なエピソードがないような方は、お金に関する志望動機は補助的に利用したほうが良い場合が多いです。お金以外のモチベーションを志望動機として用いたうえで、お金がほしくないのかを聞かれたときに「いえ、お金はほしいです。将来こういうことに挑戦したいので、そのための資金にしたいと考えています。」などと答えれば十分でしょう。
官僚を目指さない理由を話すときに「お金」を志望動機にするのは有効
お金を引き合いに出した志望動機とは少し趣旨がずれますが、なぜ官僚を目指さないのか?について聞かれた際にお金を話題に出すことも得策です。
外銀に勤める人は多かれ少なかれ、世界にインパクトを与える仕事をしたい、大きなプロジェクトを支えたい、という傾向があります。そして、こういった価値観を面接で話すことは多いでしょう。
このため、面接では「官僚ではいけないの?日本のために、経済のために働くなら官僚のほうが良いと思うんだけど?」と問われる場合があります。実際、日本の経済のために働きたいというのであれば、外銀よりも経済産業省のほうがずっと大きなインパクトを与えられるでしょう。
グローバルな課題に取り組みたい、国境をまたいだ交渉をしたい、という方向性の志望動機に対しては「外務省じゃいけないの?」と聞かれますし、経済を支えて人々の生活をよくしたいといえば「経済産業省じゃいけないの?」と聞かれます。
実際、省庁の業務の目的意識は外銀の業務の目的意識とやや近いところがあり、仕事内容を踏まえて否定するのは難しいです。
ここで、お金に関する志望動機を使うとよいでしょう。
例えば「官僚の仕事もとても魅力的ではありますが、プロフェッショナルとして働くからには、適切な水準の報酬を受け取りたいと考えています。」と答えるのもいいでしょう。
実際にこのように考えている方は官僚には向かないので、官僚ではない理由はきちんと示せるでしょう。官僚に適した人物像とは、ある意味では国のために自分を犠牲にできる人なので、そこまで自己犠牲の精神がない人は外銀が向いているかもしれません。
ちなみに企業にもよりますが、コンサルティングファームは外銀の6割くらいの給与水準ですので、志望がコンサルティングファームではない理由にも使えます。
ただ、コンサルティングファームの仕事と外銀の仕事はそもそも大きく異なるので、報酬水準よりも仕事内容を理由に否定したほうが説得力は大きくなるでしょう。
まとめ
外銀の選考において「お金は欲しくないのか」と聞かれれば素直に欲しいと言って問題ありません。外銀のビジネスモデル上、お金を稼ぎたいのかと聞かれて否定するのは、むしろマイナスになる可能性すらあります。
また、官僚やコンサルティングファームなどではなく外銀が良い理由という文脈では報酬水準を理由に挙げることも可能です。
しかし、お金を稼ぎたいという話を積極的にしてプラスの印象になるのは、お金への執着心が強く、お金儲けのチャンスを逃さないことを示せるようなエピソードのある方に限られます。そのようなエピソードを強みとして話す方であっても、外銀よりも所得が大きくなる仕事があるということも念頭において話すとよいでしょう。
まとめると、外銀の志望動機として「お金が欲しい」ということ自体は伝えて構いません。ですが、伝え方やアピールの方法には注意して選考に臨みましょう。
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