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マッキンゼーやBCGから内定を獲得する東大生が総合商社に落ち、特別な肩書きもないMARCH生が五大商社から複数の内定を攫う。 ——就職活動の世界に存在するこの奇妙な現象を、御三家・東大卒で新卒から総合商社に身を置き、X・noteで難関キャリアの就職・転職情報を発信する寄稿者「 丸菱商事マン 」氏が、"採用とは将来の経営人材の選抜である"という視点から解き明かします。
・なぜマッキンゼー・BCGに受かる東大生が総合商社に落ちるのか
・総合商社が新卒採用で本当に選んでいる「将来の経営人材」という基準
・タイの食品会社社長の例に見る、海外事業経営に必要な力と学歴の関係
・商社に内定するMARCH生に共通する行動様式
・受験競争と経営者競争——総合商社という"別の競技"の正体
第1回 総合商社 vs 外資コンサル|結局どちらが勝ち組か
第2回 総合商社に落ちる東大生、受かるMARCH生(本記事)
第3回 外銀・外コン・総合商社、令和で最も優秀な学生が集まるのはどこか
第4回 転職市場で最も市場価値が高いのは外銀・商社・外コンのどこだ
第5回 就活生が見落とす「年収3,000万円」の仕事
第6回 早慶生が陥る「就活負け組」のジレンマ
第7回 総合商社内定者の学歴を並べたら、最強は東大ではなく早慶だった
就職活動の世界には、奇妙な現象がある。マッキンゼーやBCGから内定を獲得した東大生が、総合商社に落ちる。一方で、特別な肩書きもないMARCH生が、五大商社から複数の内定を獲得する。
こう書くと、「商社はコミュ力採用だからだ」と説明したくなる人もいるだろう。しかし私は、この説明にあまり納得していない。なぜなら、総合商社ほど学歴を重視している企業もまた珍しいからだ。実際の採用実績を見れば、東京大学、京都大学、一橋大学、東京工業大学、早稲田大学、慶應義塾大学、そして海外大学の出身者が採用の中心を占めていることが分かる。少なくとも「商社は学歴を見ていない」という説明は、現実を正しく表してはいない。むしろ私は、逆だと思っている。 総合商社は間違いなく学歴を見ている。しかし、学歴だけを見ているわけではない のだ。
考えてみれば、不思議な話だ。総合商社が本当に偏差値だけを重視しているのであれば、東大生だけを採用すれば良いはずだ。東京大学は一学年あたり文系約1,200人、理系約1,700人で構成されている。仮に文系の半数、理系の二割が総合商社を志望するとすれば、毎年1,000人近い東大生が商社採用に挑戦している計算になる。京都大学や一橋大学まで含めれば、その数はさらに増えるだろう。
もちろん、全員が商社へ進むわけではない。外資系投資銀行や戦略コンサルティングファーム、研究職、官公庁など、様々な進路が存在する。実際、東大生の一部には国家公務員総合職試験と総合商社を併願する学生も少なくないし、司法試験と総合商社の就活を並行して進める人もいる。しかし、それを差し引いても、五大商社全体で約500人の総合職採用枠を埋めることは、決して難しくないはずだ。にもかかわらず、現実はそうなっていない。
商社は毎年、大量の東大生を採用する。それと同時に、大量の東大生を落としてもいる。そしてMARCHや地方国公立大学、関関同立からも採用している。この事実を、どう解釈すればよいのだろうか。私はここに、総合商社という組織の本質が隠されているように思う。
日本で最も東大生を落とす企業、総合商社
日本で最も東大生を採用している企業は、総合商社だ。しかし見方を変えれば、 日本で最も東大生を落としている企業もまた総合商社 なのだ。もちろん採用人数ベースで見れば、各社が毎年20名前後の東大生を採用している。東大生の就職先ランキングを見ても、総合商社は長年上位の常連だ。しかし前述の試算を踏まえると、それ以上に落ちている東大生の数が、あまりにも多いのだ。
東大生が輝くのは戦略コンサル・投資銀行
ここで、興味深い事実が浮かび上がる。18歳の時点で勉強という競争において圧倒的な成果を収めた学生が、就職活動という競争では必ずしも勝者になれないのだ。東大受験はよく「究極の個人競技」と言われる。私自身、この表現はかなり正確だと思っている。限られた時間の中で知識を習得し、論理的に考え、正解を導き出す。その能力において、東大生は日本最高峰だ。だからこそ東大生は、戦略コンサルティングファームや投資銀行との相性が良いのだ。
戦略コンサルタントに求められるのは、論理的思考力だ。市場を分析し、仮説を構築し、クライアントに示唆を与える。その過程では、一切の論理の飛躍も許されない。一方、投資銀行に求められるのは分析能力だ。財務モデルを構築し、企業価値を算定し、複雑な案件を整理する。そこでは高度な数的処理能力が求められる。いずれも東大受験で高く評価される能力との親和性が高い。だから東大生が活躍する。これは極めて自然な話だ。
商社が見るのは「二十年後・三十年後の姿」
一方、総合商社はどうだろうか。そもそも総合商社の採用担当者が見ているのは、外資系コンサルや投資銀行とは異なり、面接時点の能力ではない。 二十年後、三十年後の姿 だ。私はこれが、商社就活を理解するうえで最も重要な視点だと思っている。戦略コンサルティングファームが採用しているのは問題解決能力への期待値であり、投資銀行が採用しているのは分析能力への期待値だ。
では、総合商社は何を採用しているのだろうか。私の考えでは、総合商社の採用において重視されているのは、 将来の人的資本に対する期待値 だ。もっと分かりやすく言えば、二十年後に世界中の事業会社を率いる経営人材としてのポテンシャルだ。そこには、日系企業ならではの事情もある。外資系企業では、転職を繰り返しながら市場価値を高めていくキャリアが一般的だ。一方で総合商社では、依然として長期雇用を前提とした人材育成が行われている。極端な言い方をすれば、商社は新卒採用の段階で、将来の経営幹部候補を選抜しているのだ。だから語学力や資格、インターン経験といった、後天的に獲得可能なスキルだけでは評価されない。
評価されるのは経営人材としての資質
もちろん、それらは重要だ。しかし商社が本当に見ているのは、その人が長期的に組織の中で信頼を獲得し、多様な利害関係者を巻き込みながら成果を出せる人材かどうかだ。目上の上司から信頼されるか。チームワークが前提の組織の中で協働できるか。困難な局面でも周囲を巻き込めるか。誠実さを備えているか。こうした資質は、短期間で身につくものではない。総合商社の面接で見られているのは、22歳の学生ではないのだ。その学生が40歳、50歳になった時に、海外の事業会社を率いる経営者になり得るかどうか。20代、30代の仕事は、その経営人材としての適性を見極める長い選抜プロセスに過ぎないのだ。
では、総合商社は誰を採用しているのか
総合商社に内定するMARCH生に共通する行動様式/タイの食品会社社長の例に見る「経営人材」の正体/なぜ東大生が落ちるのか
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