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現場で働くベンチャーキャピタリストは、日々どのような仕事をしているのか。未上場スタートアップを支援する仕事とは具体的に何をするのか。若手だからこそ求められることは、あるのか。
「就活生が知らない『VC』の正体」第5回は、元投資銀行で現在はあるベンチャーキャピタル(VC)に勤めるBさんへのインタビュー。「比較的ホワイトだと思います」と語る、Bさんのリアルな日常とは。【南部香織】
1.ゼロイチをつくる起業家を助けたいという気持ちからVCへ
2.19時半以降はプライベート中心。「投資銀行と違って時間に追われているわけではない」
3.常にカオスな状態なので、「落ち着いて対応できる人が向いている」
※内容や肩書は2023年6月の記事公開当時のものです。
ゼロイチをつくる起業家を助けたいという気持ちからVCへ
――ベンチャーキャピタル(VC)業界に入った理由を教えてください。
B:親族に経営者が多く、幼い頃から、債権者に追われるなどその苦労を目の当たりにしてきました。そのため、経営者や起業家を助ける仕事がしたいと思ったのです。そこで企業に対して金融面で最適なファイナンス手段のアドバイスができる投資銀行に、新卒で入りました。
投資銀行ではIBD(投資銀行部門)に所属し、金融に関するハードスキルはしっかり身に付いたのですが、関わる相手は基本的に上場企業で、時価総額は数千億円以上と、企業としては成熟しているようなクライアントでした。私はゼロイチで事業をつくる起業家を支援するイメージを持っていたので、そういった仕事ができるVCに転職したのです。現在勤務している会社は、VCとしては2社目になります。
――現在の会社はどのくらいの規模なのでしょうか。
B:メンバーは数十人規模ですが、ファンドのサイズはVC業界の平均以上だと思います。7割ほどのメンバーが投資に関わっており、それ以外はバック・ミドルオフィス担当ですね。投資先は国内外のスタートアップになります。
――以前は大手のVCで働いていたとのことですが、今の会社との違いはどんなところでしょう。
B:大手には知名度と投資金額の大きさという強みがあります。また、これは大手だからというよりは、そのVCのカルチャーやバックグラウンドにもよると思いますが、前の会社はトップダウンの傾向が強く、今の会社の方が個々のベンチャーキャピタリストの意見が反映されやすいと感じます。
19時半以降はプライベート中心。「投資銀行と違って時間に追われているわけではない」
――Bさん自身は具体的にどのような業務を行っているのですか。
B:まず、前提からお話しします。VCにおける投資業務はいくつかの段階に分かれていて、それぞれソーシング(投資先の調査・検討)、エグゼキューション(投資実行)、バリューアップ(投資先の成長支援・価値向上)、イグジット(資金回収)と呼びます。また、これらの投資業務とは別に、新たなファンドを立ち上げるためにLP(*1)投資家からの資金調達も行っています。
*1 VCが組成するファンドに出資する、リミテッドパートナー
B:段階ごとに分業しているVCもあれば、1人のベンチャーキャピタリストが一気通貫ですべてに携わるVCもあります。私の勤めている会社は、後者に近いです。ただ、必ずすべての段階の仕事を担うわけではなく、各ベンチャーキャピタリストはそれまでのキャリアで培った知見が生きる仕事に多めの時間と労力を割きつつ、周りと助け合いながら案件を進めています。
例えば私の場合は、投資銀行時代にヘルスケア領域に携わっていたことがあるので、そういった分野なら、ソーシングからバリューアップまでなど、他の人よりも深く長く関わります。イグジットに近づくにつれて会計系の知識がより必要になるのですが、私も投資銀行出身者として関わりながら、さらにプロフェッショナルな人もいるため、個々の得意分野に応じて、詳しい人に引き継いでいくといった具合です。もちろん希望すれば、すべての段階に関わるチャンスがあります。
――強みを生かしながら、自分が強化したい能力を伸ばせる機会があるのですね。1日の業務のスケジュールはどのようになっていますか。
B:日によって業務内容はまちまちですが、比較的アクティブな日の予定を一例として紹介しますね。
まず、朝は7時半ごろに起きます。8時から9時半ぐらいまで米国のVC、もしくは投資先企業と情報交換を兼ねたミーティングを行います。時差の関係で米国とのやりとりは日本時間の朝早くになることが多いです。9時半からお昼ごろまでは社内の投資チームのミーティング。投資先の現状を共有したり、ある分野の市場動向や最近注目しているトレンドについて話したりします。
その後ランチを挟んで、投資を検討している企業との面談。事業内容や見通しについて聞きます。午後から国内のLP投資家との定例ミーティング。ここでも投資先の現状の共有などを行います。16時ごろから国内の投資先とのミーティングですね。同じく現状の共有はもちろんのこと、新しい事業のアイデアや組織づくりの相談に乗るなど、状況によって内容は異なってきます。
そのあと17時ごろから資料を作ったり、時には東南アジアやインド、欧州などの投資先とミーティングを行ったりもします。それから、投資委員会に上げる新規投資案件のデューデリジェンス(DD)をして、19時半ごろには業務を終えることが多いです。以後はプライベートの時間ですね。
――19時半には仕事を終えるんですね。案外ホワイトな環境、という印象を持ったのですが……。
B:そうですね。比較的ホワイトだと思います。投資銀行と違って時間に追われているわけではなく、自分で調整できるからでしょうね。もちろん、これはあくまでもある1日に過ぎず、もっと遅くまで仕事をすることもできますし、そこは個人に委ねられている形ですね。
――給与形態はどのようになっていますか。
B:これもVCによって違うのですが、私の会社の場合は年俸がまずベースの給与として支払われます。それにプラスしてキャリードインタレスト(*2)、いわゆるキャリーと呼ばれる成功報酬が上乗せされる形になっています。
*2 ファンド運営者がファンドの利益のうち、一定割合を受け取る報酬
――役職者しかキャリーをもらえないVCもあるようですが。
B:はい、そういうVCも多いと思いますし、役職者ですらもらえないところもあります。特にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC *3)なんかはそうでしょうね。私の会社の場合、分配に関しては社内の報酬委員会でその案件にどのくらい関与したかを査定され、決まる形になっています。
*3 事業会社がファンドを組成し、スタートアップに投資を行うこと
常にカオスな状態なので、「落ち着いて対応できる人が向いている」
――Bさんは今30歳前後とのことですが、若手のベンチャーキャピタリストに求められていることは何だと思いますか。
B:新しいアイデアを出すことだと思います。どうしても年を重ねれば重ねるほど、固定観念にとらわれやすくなりますから。
スタートアップは変化が激しい世界です。その中で、いかに最新のトレンドを取り入れ、新しい事業を行っている起業家を見つけられるか、あるいは起業家にユニークな提案ができるかが重要だと思います。私の年でもすでに遅れている可能性はあるので、高校生や大学生がつくっているトレンドには敏感であるよう心がけています。
――ベンチャーキャピタリストとして働く上で得られる、やりがいや喜びは何ですか。
B:私の場合は起業家に「相談してよかった」と感謝してもらえると、やりがいを覚えます。ゼロから新しいことにトライする起業家を尊敬しているので、どんな形であれ、彼らに少しでも貢献できたと感じられれば、喜びになります。
――では、大変なことはどんなことですか。
B:一言で言うと、常にカオスな状態であることですね。スタートアップでは本当に毎日いろんなことが起こります。事業の方針もすぐ変わりますし、予想もつかないような出来事もある。ですから、それに対してパニックにならず、落ち着いて対応できる人が向いていると思います。
――将来のキャリアをどのように考えていますか。
B:まだ決めきってはいないのですが、自分でファンドをつくったりして投資家の道を突き進むか、起業家になるかのどちらかだと思っています。さまざまな投資がある中で、未上場スタートアップへの投資は最も難しいと感じていて、今はVCの中で日々修業をしているところです。
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