元スマートニュース役員が挑む、ゴールドマンでのスタートアップ投資。「起業家にGSをどんどん活用してほしい」
2023/06/05
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特集「就活生が知らない『VC』の正体」第6回では、ゴールドマン・サックス(GS)によるスタートアップ投資を取り上げる。
ただ、そう聞いたところで、ピンとこない人もいるかもしれない。GSといえば、投資銀行ビジネスの“巨人”。スタートアップよりは、大企業を相手にするイメージが強い。しかしながら、近年は日本を含む世界各国で新興企業への投資を強化しており、ベンチャーキャピタル(VC)が関わる領域で存在感を増している。
この記事は2022年12月からGSでスタートアップ投資に携わり、過去にはUBSやユニゾン・キャピタルへの勤務、スマートニュースでの大型資金調達を経験した松本哲哉さんへのインタビュー。近年はGS以外の投資銀行やプライベート・エクイティ(PE)ファンドなどもスタートアップ投資に力を注ぐ中、松本さんが語るGSの取り組みなどから、VC周辺の“今”を感じ取れるはずだ。【藤崎竜介】
1.驚きだったGSの起業家精神。スマートニュースからの転身は、「日本にとってよくないこと」を解消するため
2.投資銀行もPEファンドもスタートアップ投資に熱視線。主な対象は「ユニコーンと呼ばれるようになった大きめのスタートアップ」
3.GSのスタートアップ投資の課題は、「意外と知られていない」こと
4.新卒でも、スタートアップ投資を経験できる
※内容や肩書は2023年6月の記事公開当時のものです。
驚きだったGSの起業家精神。スマートニュースからの転身は、「日本にとってよくないこと」を解消するため
――スマートニュースで経営陣の一角を担った後、ゴールドマン・サックス(GS)に移り、スタートアップ投資に携わるようになった理由を聞かせてください。
松本:2019年に参画したスマートニュースでは、2021年に実施した251億円の調達をリードするなど、計400億円ほどの調達に関わってユニコーン企業(*1)と評価される状態にできました。実はその過程で経験したことが、GSへの転職につながっているんです。
*1 企業価値の評価額が10億ドル以上の未上場スタートアップ企業
――どういうことでしょうか。
松本:資金調達のためアジア、米国、欧州など世界中の投資家と対話し、また他のスタートアップの経営者と情報交換もする中で、日本のスタートアップについて2つの大きな流れを感じました。
1つ目は、日本でも未上場の段階で数十億円、もしくは100億円以上の大型調達をしようとするスタートアップが、増えていること。
2つ目は、特に2021年末くらいから資本市場の停滞によって調達環境が冷え込み、ミドル期(*2)やレイター期(*3)に必要なまとまった資金を投じる投資家に、不足感が生じていることです。
*2 スタートアップにおいて事業が軌道に乗り、さらなる拡大を見据える時期
*3 ミドル期に続く段階で、成長が加速してIPO(新規株式公開)などを見据える時期
――需要があるのに、供給が足りていないということですね。
松本:はい。それによってスタートアップが大きく成長するための手段が、限定されてしまっています。大げさかもしれませんが、日本にとってよくないことだと感じるようになりました。
そうした中でGSに在籍する知人と話す機会もあって、大型のスタートアップ投資を実行しているこの会社で、新しい仕事に挑戦したいと思うようになったんです。
――とはいえ、大型のスタートアップ投資をする事業体は他にもあります。その中で、なぜGSを選んだのでしょう。
松本:確かに、大型投資案件を増やそうとしている独立系のVCやその他のファンド系企業など、他にも候補はありました。ただ、その中でもGSは際立って魅力的に映りました。
あまり知られていませんが、この会社は長年にわたって、スタートアップに投資してきた実績があります。スタートアップに特化したファンドも運営していますしね。
それから、入社前にGS内の人と話す中で、新しいことに挑戦するアントレプレナーシップ(起業家精神)を重んじる企業文化を、感じたんです。スタートアップ投資を成功させる上で、とても大事な要素だと思います。
――失礼かもしれませんが、GSがアントレプレナーシップの文化というのは、やや意外です。投資銀行ビジネスの“巨人”というイメージがあるので……。
松本:そうかもしれませんね。私としても、そこはいい意味でサプライズでした。
3年半ほど在籍したスマートニュースへの名残惜しさはありましたが、そうした経緯があって次の一歩を踏み出すことにしました。
投資銀行もPEファンドもスタートアップ投資に熱視線。主な対象は「ユニコーンと呼ばれるようになった大きめのスタートアップ」
――GSはどのようなスタートアップ投資を展開しているのでしょうか。
松本:我々が主に手がけるのは、出資規模でいうと数十億円、バリュエーション(企業価値の評価額)だと数百億円から1000億円超の、ユニコーンと呼ばれるようになった大きめのスタートアップなどへの投資です。
――松本さんの転職理由の話で出た、ミドル期やレイター期の企業が主な対象というわけですね。
松本:その通りです。アーリー期(*4)からミドル期のスタートアップに投資するVCは、既に日本にも数多く存在しますしね。
*4 ミドル期の前の段階で、事業の方向性を固めて軌道に乗せるまでの時期
――どんなスタートアップが投資対象になるのでしょうか。
松本:投資規模が大きいので、必然的に大きなインパクトが期待できる事業体が対象になります。産業構造や人々の行動様式を大きく変えるようなビジネスに、投資していきたいと思っています。
――GSが手がけるミドル〜レイター期でいうと、カーライルやベインキャピタルなど外資のファンド系企業も、日本でのスタートアップ投資を強化しています。
松本:多くのプレーヤーが日本のスタートアップに注目しているのは、いいことです。我々だけで全てのスタートアップに投資できるわけではありませんしね。
スタートアップ投資は「競業より協業」といわれます。いろいろな投資関連の人などと連携して、日本のスタートアップエコシステムが盛り上がるようにしていきたいと思います。
GSのスタートアップ投資の課題は、「意外と知られていない」こと
――松本さんは、実際にどのような仕事をしているのでしょうか。
松本:ポジションはディールリードの1人、つまり担当する投資案件の執行責任者です。投資対象の候補を定めて、分析し、グローバルの投資委員会に提案する上でのドライブ役ですね。
投資対象の候補を定めるきっかけは、さまざまです。つながりのあるスタートアップの経営者から調達の相談を受けることもあれば、有望な企業を見つけてこちらからアプローチすることもあります。
――前職でスタートアップの経営に携わった経験は、生きていますか。
松本:間違いなく生きています。スタートアップの経営者の仕事は、資金調達だけではありません。組織や事業の戦略など、いろいろなことを考える必要があります。経験上それをよく知っているので、彼らとのコミュニケーションは取りやすいですね。時には資金調達以外の相談にも乗ったりして、バリューを出せていると思います。
――GSのスタートアップ投資を推進する上で、課題はどこにありますか。
松本:少し前に触れましたが、GSの名が知られている割に、スタートアップに特化したファンドを持っていて投資に力を入れていることは、意外と認知されていません。なので、イベントなどを活用しながら、我々の提供価値を起業家の方々などに知ってもらうための取り組みに、力を入れています。
数十億円規模の大型投資ができる我々は、スタートアップが大きく成長するための手段の幅を広げることができます。起業家の皆さんなどには、GSを選択肢の1つに入れていただき、どんどん活用してほしいですね。
新卒でも、スタートアップ投資を経験できる
――日本のスタートアップについて、ここ最近注目している傾向があれば聞かせてください。
松本:海外展開に挑む若い起業家が、2022年あたりから目立っている印象です。ただ、特にTech系だと日本のスタートアップがグローバルで成功した例は、残念ながら多くありません。だからこそ、そういった挑戦のお手伝いをして、日本の活性化に貢献したいと思っています。
――ところでGSに新卒入社して、スタートアップ投資を担当できる可能性はあるのでしょうか。
松本:あります。スタートアップ投資や不動産投資などを展開しているGSのアセット・マネジメント部門はコンスタントに新卒採用をしていて、若手(*5)に対しては担当領域を限定しないプール制を採っています。つまり、スタートアップ投資、不動産投資、バイアウト投資、クレジット投資など、さまざまな投資案件に関わる可能性があるわけです。
*5 入社3年程度の(職位としての)アナリストまでが対象
いずれにしても、投資業務に興味がある人にとっては、とてもエキサイティングな仕事だと思います。
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