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VC業界は冬の時代……でも「こんなに楽しい仕事はほかにない」。スタートアップ投資の今を、熟練ベンチャーキャピタリストに聞く

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GMO VenturePartnersのジェネラルパートナーを務める村松竜さんは、1990年代後半からスタートアップ投資に携わる、日本を代表するベンチャーキャピタリストの一人だ。通算200社以上への投資や設立に関与し、うち20社超が上場、時価総額が1000億円に達している企業も少なくない。

特集「就活生が知らない『VC』の正体」第1回では、30年近くスタートアップ投資の世界に身を置いてきた村松さんに、ベンチャーキャピタル(VC)業界の現状や、ベンチャーキャピタリストの仕事の醍醐味(だいごみ)などを聞いた。【大井明子、南部香織】

 

〈Profile〉
村松竜(むらまつ・りゅう)
GMO VenturePartners ジェネラルパートナー。
GMOペイメントゲートウェイ 取締役副社長(企業価値創造戦略統括本部本部長)。
1994年、早稲田大学政治経済学部卒業後、VC最大手の日本合同ファイナンス (現ジャフコ グループ)に入社し、現GMOインターネットグループなどへの投資を担当。米国シリコンバレーの現地法人駐在を経て、1999年にカード決済処理サービスのペイメント・ワンを創業。2004年にGMOインターネットグループのカードコマースサービスと経営統合してGMOペイメントゲートウェイに社名変更。現在は同社の取締役副社長を務める。2005年にGMO VenturePartnersを設立し、ジェネラルパートナーに就任。2012年からシンガポール在住。2022年11月には、Forbes JAPANの2023年版「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」で1位に選出された。

※内容や肩書は2023年5月の記事公開当時のものです。

投資し続けることが重要。冬には冬の戦い方がある

――村松さんは長くベンチャーキャピタリストとして活躍しています。ベンチャーキャピタル(VC)を取り巻く今の状況を、どう捉えていますか。

村松:一言で表すと、「冬」ですね。約30年前からこの仕事をしていますが、振り返るとドットコムバブルの崩壊が2000年ごろ、リーマンショックが2008年にあり、7~8年に1回は大きな危機が来ています。

景気が高揚して“波”が、高くなるほどその後の落ち込みは激しくなります。リーマンショック以降、景気を刺激するために金融緩和が進み、お金の供給が増えてバブルが膨らみました。2018年ごろに「そろそろ危ない」と言われ始めましたが、コロナ禍になり景気刺激のためさらに資金の流動性が高まった。VCだけでなく、事業会社が投資する金額も急増し、2021年ごろには史上最大ではないかというほどに膨らみました。

そこにロシアのウクライナ侵攻や各国の金融引き締めなどのさまざまな要因が重なって、一気に冬に突入したのです。

まだ回復の兆しはありませんが、これを乗り越えれば上昇トレンドに転じるはずです。2024年か2025年、遅くとも2026年には2017年前後の健全な状態には戻るのではないかと見ています。

――ここ数年、VC業界は勢いに乗っていた印象です。

村松:ダウントレンドになる前の十数年は、LP(*)から資金を調達しやすかったので世界中で新しいVCが増えました。米国の名門VCなどは何度も冬を越えているので戦い方をよく知っているのですが、新しいVCには経験がありません。「冬の戦い方」を知らないVCが多いのです。
* VCが組成するファンドに出資する、リミテッドパートナー

――冬の戦い方とは。

村松:まず冬が来る前に大きなファンドを作っておきます。そして冬になると投資先を見つける上での競争が減り、総じて株価も下がるので、有望なスタートアップに有利な条件でリスクを恐れず果敢に追加出資していきます。すると、景気が戻った時に大きな利益を得られる。つまり、今は投資のチャンスでもあるのです。

大事なのは、ずっと投資し続けること。資金繰りで苦労しているスタートアップが多く、今こそ支えて応援するべきなのですが、それをどのくらいのVCが実行できるか……。

――大手事業会社によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)も増えています。

村松:多くのCVCは、大手事業会社の一組織が作っているのですが、経験豊富なベンチャーキャピタリストがいないことが多く、社内で選ばれた人材が中心になっています。

VCのビジネスはソーシングからエグジットまで10年ほどかかるので、起業家を長期的に支える必要があります。ですから、基本的に担当のベンチャーキャピタリストもその間同じ人が務めるべきなんです。でも、大企業は定期的な異動がありますから、なかなか難しいですよね。大企業的な文化を、VC業界独自の文化に合わせられるかがカギになるのではないでしょうか。

「上から目線」になるとうまくいかない。重要なのは「起業家の世界観への共感」

――村松さんは、起業の経験もあります。それはスタートアップ投資にどのように生きていますか。

村松:起業の大変さを想像できることが、生きていると思います。VCと起業家は、お金を「出す側」と「受け取る側」の関係ですが、少しでもVC側が「上から目線」になるとうまくいきません。「成長性があるから投資してやろう」ではダメなんです。

例えば今、起業家にはよく「資金調達期限は資金枯渇の6カ月前を意識した方がいい」と言っているのですが、これは起業当時の私の反省を踏まえたものです。

資金調達は、追い込まれるほど選択肢が狭まって交渉の余地がなくなり、投資家に有利な条件を受け入れざるをえなくなります。私は資金が枯渇する直前まで追い込まれたことがあるのですが、ギリギリの交渉は非常に大変でした。

それに資金調達以外でも、営業や開発、採用など、うまくいかないことはたくさんありました。

どんなビジネスも、ずっと伸び続けるわけではありません。時にはフラットになったり下がったりするのを、時に数年単位で耐え忍び、ごく限られた会社だけが成功する。ですからVCに大事なのは、その起業家の世界観に共感できるか、支え続けられるかどうかだと思います。

日本の市場規模が、海外進出のハンデを生んでいる

――日本はスタートアップがなかなか育たないといわれますが、なぜでしょうか。

村松:市場規模の違いが大きいと思います。例えば、米国市場は世界の5割近くを占めているので、そこで成功すると世界に打って出るときも有利です。つまり、世界市場への距離が近い。一方、日本市場は世界に占める割合が米国より小さく、言葉の壁もあります。世界市場から遠いのです。

投資家の目線に転じると、日本企業に10年投資して国内シェアトップになり、5〜10倍のリターンを得られれば、日本では大成功ということになります。でもその段階では、たいてい世界展開にはほど遠い規模です。

一方、米国で同じような投資をして、投資先が米国市場で勝ち残ってシェアトップになった場合、その段階で既に世界進出の足掛かりができています。すると、リターンの期待値が5〜10倍どころか、100倍や1000倍になるわけですから、世界中の投資家が投資するようになります。

――シンガポールやイスラエルのように、国内市場がかなり小さく最初からグローバルに目を向ける国もありますが、日本はある程度の市場規模があるところも難しいですね。

村松:そうなんです。日本の市場規模はある意味中途半端に大きい分、それが海外進出のハンデになっている。日本に集中して成功すれば時価総額1000億円規模の会社にはなれますし、大成功すれば5000億円規模にもなれます。だからこそ、グローバル展開をする余裕がなくなってしまう面があるのです。

スポーツに例えると、国内予選を勝ち上がるのが大変なので、チームの半数を世界大会用に温存すると負けてしまう。なので、多くの選手を投入して国内予選を戦う必要があります。その配分が、非常に難しい。

我々が投資している日本のスタートアップには海外展開に力を入れている企業もありますが、経営者がかなり強い意志を持って、特別な戦略をとっているところが多いですね。

インドのフィンテックはこれから開花するところ。脱炭素にも注目したい

――ベンチャーキャピタリストとして、今どんな領域に注目していますか。

村松:我々が得意としているのはFinTech(フィンテック)で、東南アジアとインドに集中的に投資しています。ここ10年で大きく伸びましたが、まだ持っているポテンシャルの1割にも満たないくらい。社会全体に影響を与えるのはこれからです。特にインドはこれから開花するところです。

フィンテックは「人口テック」といってもいいほど人口に関係しています。インドの人口は約14億人ですから日本の10倍以上。さらに24歳以下の若者の比率は、日本が約2割なのに対してインドは約4割です。人数でいうと日本の20倍以上になります。その人たちがフィンテックの使い手となって経済をけん引するので、これから市場はもっと拡大するでしょう。

日本でももちろんフィンテックは重要ですし、産業として伸びていますが、人口が減っているのでインドや東南アジアに比べると不利なんです。でも、アジアの他国に比べて企業の予算が大きいので、BtoB向けSaaSでは可能性があります。

――フィンテック以外で注目の分野はありますか。

村松:脱炭素です。世界的なトレンドになっていますが、まだそれほど企業数が多くなく、世の中を変えるようなスタートアップが生まれやすい状態にあります。各国そんなに差がないので、もしかしたら日本の会社が大きくなって米国やグローバルに進出できるかもしれません。

――各国それほど差がないのはなぜでしょうか。

村松:脱酸素の分野は、数年前に国連や欧州から広がり世界的なテーマになりました。世界中でほぼ同時に立ち上がったので、日本は若干出遅れたものの、それほど差が開かなかった。また、米国がトランプ政権のときに、「パリ協定」から離脱するなどして取り組みが遅れたことも影響していると思います。

ベンチャーキャピタリストは世界のさまざまな問題を解決しようとする人たちと、一緒に未来を創る仕事

――ベンチャーキャピタリストのやりがいやおもしろさは、どんなところにありますか。

村松:起業家というのは今ある問題を認識し、解決方法を考え、「5年、10年後に世界を変えたい」と語り、実行しようとしている人たちです。ベンチャーキャピタリストは、こうした起業家と一緒に未来を考えます。世界中のさまざまな問題を命がけで解決しようとしている人たちと一緒に未来を創ることができるなんて、こんなに楽しい仕事はほかにないと思います。

例えば、インドでは車よりもバイクが多いのですが、今、電動バイクが急速に増えていて、世界最大の市場になろうとしています。

ガソリン代が急騰しているので、電動バイクはランニングコストの節約になります。しかし、本体価格はまだ高い。そんな中、電動バイクのローンをフィンテックで提供しているスタートアップがあるんです。スマートフォンのアプリで、簡単に好みの電動バイクや販売店を探せて、ローンが組めるというものです。

このサービスがなければ、みんな安いガソリンバイクを買ってしまう。でも、この会社の存在がインドの電動バイク比率を上げるんです。そしてそれが二酸化炭素排出量の削減につながります。

こうした状況は、私はこの会社の社長に会うまでまったく知りませんでした。ですが今では、どれがガソリン駆動のバイクでどれが電動バイクかまでわかるようになった。見える景色ががらりと変わったんです。こういった経験は、ベンチャーキャピタリストの醍醐味ですね。

金融の仕事はほかにもたくさんありますし、より年収が高い仕事もある。でも、社会を変える、世界を変えるという世界観を持った起業家と一緒に未来を創るすばらしさは、何物にも代えられません。

――では、大変なところはどんなところでしょうか。

村松:何といっても、LPからの資金調達です。

世の中にはいろんなファンド系の金融商品がありますが、「10年間まったくリターンがないかもしれない」というものはあまりありませんよね。でもスタートアップ投資の場合、10年後に2倍、3倍のリターンを得られる場合もあれば、元本割れして「1億円が半分になった」という失敗例も少なくありません。

10年くらい経たないと結果が出ないので、1本目、2本目のファンドを組成する際は非常に苦労します。最初の10年間を持ちこたえられず、1~2号目のファンドでなくなるVCは結構多いんです。

また、将来性を確信できる起業家にお会いするのが難しいという悩みもあります。成功の可能性を見極めるのは、簡単ではありません。私も新卒で入ったジャフコで最初の2年間くらいは、なかなか苦労しました。

そして「この人は」と思う人に出会っても、こちらがなかなか選ばれなかったりする。いい起業家には、当然ほかの投資家も殺到しますから。めげそうになるのを、あきらめず探し続ける。そういう努力が必要なんです。

――VC業界を目指す学生に、アドバイスはありますか。

村松:スタートアップでインターンやアルバイトをすることをお勧めします。

スタートアップには「今に見ていろ!」という空気が充満しています。ちょっとした出来事が、その会社の未来を拓くこともある。それを、起業家たちと同じ空間で体験することは、VCで働く上で貴重な経験になるはずです。


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