「45歳で区切り」「母のように生涯働く」 VC、コンサル在籍20代が語る“キャリアの終わり”
2020/12/03
会員登録すると
このコラムを保存して、いつでも見返せます
特集「あなたはいつまで働くのか」。第4回では、Liiga会員の中からベンチャーキャピタル(VC)勤務で20代中盤の坂田雄太さん(仮名)、コンサルティングファーム勤務で28歳の李民俊さん(仮名)に想定引退年齢や人生設計などを聞いた。
坂田さんは2億円を貯めた後、45歳から“セミリタイア生活”に入ることを想定する。一方の李さんは、生涯働くことが目標。共に「プロフェッショナルファーム」と呼ばれる組織で働きながらも、人生設計が大きく異なる2人の就業観を掘り下げる。【丸山紀一朗、南部香織】
1. 45歳までに2億円つくれば、運用収益だけでも暮らせる
2. VCは最高の仕事。でもプライベートでやりたいことも両立したい
3. いつまでも働くことを前提に、45歳で資産10億円を目指す。それは両親の姿を見たから
4. 他の人に喜んでもらうために働きたい。将来は自らの事業立ち上げを目指す
45歳までに2億円つくれば、運用収益だけでも暮らせる
――日ごろから、「いつまで働くか」を意識していますか。
坂田:はい、意識しています。具体的には45歳ごろまでは働こうと思っています。
――なぜ45歳なのですか。
坂田:45歳ごろであれば、まだまだ体力があり、その後に活動できる期間も長く残されているだろうと想像しているからです。また、現在20代中盤なので、あと20年ほどあれば、必要な貯蓄をすることも可能だと考えているためです。
――「必要な貯蓄」というのは何に必要ということですか。
坂田:安定的な運用収益で生活していけるのに必要な貯蓄、という意味です。具体的には、2億円程度の資産があれば、運用収益で暮らしていくことが可能と考えています。
――なぜ2億円程度なのか、少し詳しく教えてください。
坂田:ぴったり2億円でなくともだいたいその程度の資産があれば、あまりリスクを取らなくても3~5%くらいの利回りで運用できると思っています。これは過去の仕事や現在のVCでの勤務などを通じた経験則です。
仮に2億円で5%の利回りだとすると、年間1,000万円の運用収益が得られます。運用収益は税引き後でも8割くらいは残るので、800万円くらいは手元に入る。それくらいあれば、仮に「運用収益だけ」で生活しようとしても何とかなりそうというイメージです。
――ではその2億円ほどを作るために、どういう計画を立てているのでしょうか。
坂田:VCには「キャリー」といわれるボーナスのような報酬があります。これはファンドを清算したときに、投資による利益の通常2割を、運用したVCがもらえるというものです。
例えば100億円のファンドが200億円に成長していたとすると、利益の2割すなわち20億円がVCに入ります。そのお金をVCのメンバーで分け合うことになります。ただ、私より経験も豊富で年齢も高いメンバーも多いため、そうした1度のファンド清算で2億円を手にすることは想定していません。
――すると、段階を追って資産を形成していくということでしょうか。
坂田:そうですね。イメージとしては、35歳ごろまでに現在運用しているファンドを清算して、それによるキャリーで一定のお金を確保します。また、並行して30代前半ごろから、別のファンドも創設し、こちらは40代前半までに清算することを狙おうと思っています。これらの活動を通じて、合計2億円程度の資産を形成するという計画です。
現在(20代中盤):VC業務にフルコミットを続ける(結婚は数年内にする可能性あり。子どもをもうけるかは未定)
30代前半ごろ:ファンドBを新たに創設
35歳ごろまで:すでに運用していたファンドAを清算→一定の資金(a)を確保
40代前半まで:ファンドBを清算して資金(b)を確保→(a)と(b)で計2億円程度の資産を形成
45歳以降:サウナコテージを作るなどして暮らすほか、仕事は何かしら続ける
――仮に45歳ごろに働くのをやめた場合、その後は何をしたいと考えていますか。
坂田:自然の豊かな土地で、サウナコテージでも作って暮らしたいと考えています。趣味であるサウナを自分が満喫するためだけではなく、例えば一般の人向けに営業しながらサウナ文化を広めることもできればとイメージしています。
ただ一方で、社会とのつながりを持ち続けるという観点で、社外取締役をやったり、業務委託で働き続けたりということは頭にあります。そういう意味では引退を考えていないともいえるのかもしれません。
VCは最高の仕事。でもプライベートでやりたいことも両立したい
――完全に「引退」はしないにしても、45歳ごろで働くのをやめたほうが、坂田さんにとっては幸せなのでしょうか。
坂田:仕事をしないほうが幸せというのとは違うのかもしれません。先ほど話したような計画の通りにVCで活動していくとすると、仕事にフルコミットせざるを得ないと思っています。そうした仕事中心の生活の中では、例えばセカンドビジネスをやりたくても仕事柄やりづらいですし、そもそも時間もリソースも足りないのは間違いありません。
そこで、まずはVCにはフルコミットすることで、45歳ごろまでには、年収の多寡(たか)を気にせず生活できるような状態を作り、その後は何か「これをやりたい」と思えることをできるようにしたいと思っています。現在の同僚を見ていても、VCを続けながら他のこともやるのは非現実的なので、VC業務からは退く想定です。
――いま働いていることの一番の意義は何になりますか。
坂田:生活のために働く、いわゆる「ライスワーク」のようなことはしたくないと思っています。自分が楽しいと思えることや、やりたいと感じることを仕事にしたいと考えています。とはいえ、自分の希望だけだと社会から必要とされるか分かりません。ですから、それらの重なり合う領域の活動をしていければいいと、抽象的ながら思っていますし、実際にVC業務はそれにあたる部分があると実感しています。
もう少しだけ具体的にいうと、私はある業界への投資を得意としています。その業界は現代の日本人の幸福を支えるのに重要な役割を担っています。その業界の起業家たちをVCとして支援することは、私の思い描く世界観を実現することに直結していると思えるのです。自分を必要としてくれる起業家たちの声に応えることは、とても意義深いと感じています。
――VCの仕事にも強い使命感をもって臨んでいる印象です。それを続けていくのも幸せではないのでしょうか。
坂田:確かにVCは最高にいい仕事だと思います。ただ、VCが支援できるのは限られた大きめのビジネスだけという事情もあります。例えば小さな売り上げ規模しか見込めない事業には手を出しにくい。そう考えると、45歳以降は、別の形で起業家を支援したり、私自身がそうしたビジネスをやったりするのがいいと思っています。そうしたパブリックな面でのやりがいも自分の幸せには必要だと考えているからです。
また、先ほど話したサウナコテージもそうですが、他にもプライベートでやりたいことがあります。そしてそれらの実現には、ある程度の時間とお金を使った準備が必要です。自分の人生を後悔なくおくるためには、やはり45歳ごろに1度区切りを付け、プライベートとパブリックのバランスをうまく取っていくのがよさそうだと思っているのです。
――完全に引退して「遊んで暮らす」のは、坂田さんにとっては幸せではなさそうでしょうか。
坂田:遊んで暮らすのは飽きる気がします。別荘にサウナコテージを作って好きな人とお酒を飲んで過ごす生活は、3年ともたないのではないかと。消費するばかりで創造性がない世界は私には向いていないだろうと思っています。
また、そうした「隠居」した人でも、本当に社会に必要とされている人のもとには、いろいろな人から相談がいきます。これはベンチャー界隈を見ていれば分かります。もし私のもとにもそうした声がかかるのであれば、その声の主を支えたり一緒に何かに取り組んだりする生活のほうが、遊んで暮らすよりは楽しい人生なのではないかと思います。
いつまでも働くことを前提に、45歳で資産10億円を目指す。それは両親の姿を見たから
――いつまでも働きたいとのことですが、そう思った理由は何ですか。
李:両親の様子を見てそう思いました。現在、母は働いていて、父は半分リタイアのような状態です。2人を比較すると、働いている母の方が幸せに見えるので、息子の私からしたら安心ですし、自分も将来はそうなりたいと思いました。
特に母は今でも自分が詳しくない分野に挑戦しています。年も年なので疲れることもあるようですが、充実している様子です。対して父は、数年前に勤めていた企業をやめて、今は時々大学で講義を行うこともある、といった働き方をしています。私から見ると、フルタイムで働いていたころに比べ、元気をなくした印象があります。
親にはいきいきと過ごしてほしいですし、自分が将来子どもを持つことがあったら、いきいきしていると思ってほしいと感じます。
一方で、仕事をしていなかったら何をしていいかわからないからという理由もあります。私にも趣味はありますが、ある程度のところまで楽しめればよく、それ以上追求したいと思いません。仕事はある意味「最高の暇つぶし」ではないでしょうか。
――いつまでも働くことを前提に、通過点として目標としていることとそれを達成したい年齢を教えてください。
現在(28歳):コンサルティングファームで会社に貢献できるような仕事をする
35歳ごろ:コンサルティングファームでマネージャーに昇格した上で、転職
36歳ごろまで:結婚
45歳まで:資産10億円をためる
以降、働けるところまで働く
李:まず、「35歳で転職」についてです。これを目標と設定している理由は、2つあります。1つは現在勤めている外資系コンサルティングファームでマネージャーまで昇進してから転職したいということ、もう一つはコンサルティングファームに限界を感じていることです。
マネージャーになりたいのは現在の会社に貢献した証しが欲しいからです。今の会社はマネージャーになるのが35歳くらいからが一般的なので、この年齢に設定しています。
――コンサルティングファームの限界というのは。
李:クライアントの課題に対する解決案を出すときに、あらかじめ決められた要件の中でしかできないもどかしさがあります。もちろん現状よりはよい形にするのですが、実はもっとよい案があったのではという気持ちがぬぐえないことがあります。ですからいずれは違う仕事をしたいという意味です。
――「36歳で結婚」についてはいかがですか。
李:自分はそんなに女性に縁があるほうではないので、結婚はどちらかというと遅めではないかと思っています。でも36歳くらいには結婚できるといいな、という願望ですね。もっと早くできるのだったらそれに越したことはありません。
他の人に喜んでもらうために働きたい。将来は自らの事業立ち上げを目指す
――一番気になるのが「45歳で資産10億円」という目標です。
李:実はこれは両親が45歳で達成した資産の額なのです。
――それはすごいですね。
李:はい。ですがこれは達成できるということを、私は両親を見て知っています。なので、ひとつのめどとして、設定しています。
――ご自身にとって働く意義として大きいものはなんですか。
李:他の人に喜んでもらうことです。現在もクライアントの役に立ちたいと思って仕事をしていますが、将来的にも自分で考えたサービスで世の中の人によい影響を与えたいと考えています。
現状では、マッチングアプリのような事業を考えているのですが、これも、より相性のよいカップルが生まれる仕組みをつくり、多くの人に喜んでもらうことが目的です。
――今、将来のために何かやっていることはありますか。
李:週末に本業とは別にデータ修正を自動化する仕組みをつくるという仕事を請け負っています。これは将来、マッチングアプリ事業にも役立つのではないかと考えています。
会員登録すると
このコラムを保存して
いつでも見返せます
マッキンゼー ゴールドマン 三菱商事
P&G アクセンチュア
内定攻略 会員限定公開
トップ企業内定者が利用する外資就活ドットコム
この記事を友達に教える