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パンデミック、自然災害、地政学的緊張といった複合的な脅威に直面する現代において、5大商社複数内定者である私が分析したところ、「強靭性」、つまりレジリエンスが、企業の生存を左右する能力となっており、商社が目指す「冗長性」「柔軟性」「可視性」「協調性」の四つの要素から、21世紀のサプライチェーン経営の本質が見えてくるのです。本シリーズの最終回では、これまでの分析を統合し、総合商社が21世紀において果たすべき役割と、その先にある可能性を展望していきます。
第1回:総合商社の歴史とサプライチェーン進化論
第2回:三菱商事・三井物産・伊藤忠商事 ─ 三強の戦略分析
第3回:中堅・小規模商社の戦略
第4回:グリーンサプライチェーンと環境対応
第5回:デジタル変革がもたらすサプライチェーン革新
第6回:地政学リスクと経済安全保障
▶ 第7回:サプライチェーン・レジリエンスと未来展望(最終回)(この記事)
サプライチェーン・レジリエンスの四つの要素
現代のサプライチェーンは、かつてないほど多様で深刻なリスクに直面しており、こうした不確実性の時代において、レジリエンス、つまり混乱から回復し、適応する能力が、企業の生存を左右するのです。
レジリエンスの高いサプライチェーンとは、どのようなものでしょうか。サプライチェーンマネジメント研究では、レジリエンスを構成する要素として、「冗長性」「柔軟性」「可視性」「協調性」の四つが挙げられているのです。
冗長性:バックアップと余裕を持つこと
冗長性とは、バックアップや余裕を持つことです。効率性を追求すると、無駄を削ぎ落とし、ギリギリの状態で運営することになるのです。しかし、何か問題が発生したときに対応できる余地がなくなるのです。適度な冗長性を持つことで、リスクへの耐性が高まるのです。
例えば、複数のサプライヤーから同じ部品を調達できる体制を整えておく。一つのサプライヤーに問題が発生しても、他から供給を受けられるのです。あるいは、在庫を戦略的に保有する。ジャストインタイムで在庫を最小化すれば効率的ですが、供給途絶のリスクには脆弱なのです。重要部品については、一定の在庫を持つことで、リスクに備えられるのです。
三菱商事は、LNG事業において、複数の供給源を確保しており、オーストラリア、カタール、ロシア、北米など、地理的に分散した供給源を持つことで、一地域で問題が発生しても、他地域でカバーできる体制を構築しているのです。
柔軟性:変化に迅速に対応できる能力
柔軟性とは、変化に迅速に対応できる能力です。需要が急増したときに生産を拡大できる、供給元が途絶えたときに代替先に切り替えられる、輸送ルートが使えなくなったときに別ルートを使える。こうした柔軟性が、レジリエンスを支えるのです。
柔軟性を高めるには、複数のオプションを持つことが重要なのです。一つのサプライヤー、一つの工場、一つの輸送ルートだけに依存していると、それが使えなくなったときに打つ手がないのです。しかし、複数のオプションがあれば、状況に応じて切り替えられるのです。
伊藤忠商事は、繊維製品の生産において、中国、ベトナム、バングラデシュ、インドなど、複数国に生産拠点を持っており、需要の変動や、各国の情勢に応じて、生産を柔軟にシフトできる体制です。例えば、ある国で労働争議が発生して生産が停滞しても、他国の工場で増産することで対応できるのです。
可視性:リアルタイムで何が起きているかを把握できること
可視性とは、サプライチェーンの各段階で何が起きているかを把握できることです。問題を早期に発見し、迅速に対応するには、リアルタイムの情報が不可欠であり、IoTセンサーやデジタルシステムの導入により、商品の位置、状態、在庫レベルなどをリアルタイムで追跡できるようになりました。
例えば、輸送中の商品の温度が異常値を示したとします。従来なら、目的地に到着して初めて発見されるかもしれませんが、リアルタイムモニタリングなら、異常を即座に検知し、代替措置を講じられるのです。住友商事の医薬品コールドチェーンシステムはその好例であり、温度逸脱による問題をほぼゼロにすることに成功しているのです。
また、可視性はリスク管理の面でも極めて重要です。サプライチェーン上のどこにリスクが集中しているのかを把握できれば、事前に対策を講じられるのです。豊田通商が進めるサプライチェーンマッピングも、この可視性の向上を目指したものなのです。
協調性:サプライチェーン全体での連携と情報共有
協調性とは、サプライチェーン全体で連携し、情報を共有することです。従来、サプライチェーンの各段階は競争関係にあり、情報共有も限定的でしたが、現代では、全体が共通の目標に向かって協力する姿勢が求められるのです。
例えば、需要予測の情報をサプライヤーと共有することで、サプライヤーは生産計画を立てやすくなり、必要以上の在庫を持つ必要がなくなります。また、供給側の課題を顧客企業が理解することで、より現実的な要求をすることができるようになるのです。
豊田通商とトヨタ自動車の関係はその典型です。トヨタのジャストインタイム生産を支えるには、サプライチェーン全体での緊密な連携が不可欠であり、豊田通商がサプライヤーと顧客の間に立ち、情報やリスクを共有し、全体の最適化を図っているのです。
また、業界レベルでの協調も重要です。新型コロナウイルスのパンデミック時には、企業が競争を一時的に脇に置き、医療用品の調達や輸送を協力して進めました。サプライチェーン上の企業が協力することで、社会全体のレジリエンスが高まるのです。
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