総合商社・デベ内定者が教える「戦略と覚悟」の就活ロードマップ〈第7回/全8回〉決断の思考プロセス

こんにちは。総合商社、デベロッパー、広告代理店から複数内定をいただき、最終的にデベロッパーの道を選んだ慶應生の者です。

ESからGD、複数回の面接、そしてOB/OG訪問。これまでの連載で解説してきた戦略と戦術を駆使し、あなたはついに複数のトップ企業から内定という果実を手にしました。周囲からは祝福され、達成感に満たされる一方で、おそらく今、あなたはこれまで経験したことのない、重い問いと向き合っているのではないでしょうか。「どの未来を選ぶべきか」。

今回は、私自身が経験した、複数内定という贅沢な、しかし同時に残酷な状況下での葛藤と、最終的な意思決定に至るまでの思考プロセスについて、包み隠さずお話しします。これは、単なる企業比較ではありません。自分自身の 人生の軸 を見つけ出すための、内なる旅の記録です。

論理の限界：「比較シート」が答えを出せない時

第1回でお話ししたように、私は各社の情報を整理・比較するために、自分だけのExcelシートを作成しました。「短期成長」「長期キャリア」「働きがい」「人・カルチャー」といった評価軸に加え、年収、福利厚生、配属リスクなどを細かく書き込み、◎〇△×で評価していく。この作業は、頭の中を整理し、各社のメリット・デメリットを客観的に把握する上で、非常に有効でした。

しかし、そのシートが完成し、全ての項目が埋まった時、私は愕然としました。どの会社も一長一短であり、「総合点」で明確な優劣をつけることができなかったのです。

・ 総合商社 : 圧倒的な事業スケールと高い報酬（光） vs 配属ガチャのリスクと激務（影）
・ デベロッパー : 地図に残る仕事の誇りと安定性（光） vs 業界の将来性と成長スピードへの懸念（影）
・ 広告代理店 : 知的な興奮と若手からの裁量権（光） vs 精神的な消耗と無形商材ゆえの不安定さ（影）

Excelシートをどれだけ眺めても、論理的に「これが正解だ」と言える選択肢は見つかりません。むしろ、情報を集め、分析すればするほど、選べなかった未来への後悔が大きくなるような気さえしました。A社を選べば、「B社の安定性が失われる…」。B社を選べば、「C社の面白さが手に入らない…」。

まさに 論理の機能不全 。比較検討という武器が、もはや何の役にも立たない。私は、自分が「決断」という、これまで経験したことのない重圧の前に立ち尽くしていることを痛感しました。

問いの転換：「どの会社がベストか」から「どの未来に賭けたいか」へ