「データ分析は“手段 ”でしかない」。若手データサイエンティストが戦コンを選んだ理由【BCG】
2021/12/16
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データサイエンティストとして働く時、事業会社ではなく、コンサルティングファームを選ぶ理由は何か。ボストン コンサルティング グループ(BCG)内のデータ分析専門組織GAMMAに所属する、社会に出て4年目の四方裕さんの場合は「社会にプラスのインパクトを与える」という目標に対し、最適な環境だからだった。
就職活動時から一貫してコンサル業界を狙っていたという四方さん。機械学習などデータ分析関連の力と、コミュニケーションのようなビジネス側の力を共に重視しているといい、「データ分析は(課題解決のための)“手段”でしかない」と断言する。特集「データサイエンティストとは何者か」の第2弾は、戦略ファーム内の若手データサイエンティストの職務の実態と、その環境から得られるものを紹介したい。【橘菫】
◆BCG Digitalの別メンバーを紹介する参考記事はこちら(スポンサード記事です)
1. 事業会社は“対象が狭かった”。いろいろな課題に触れられるコンサル業界に絞って就活
2. コンサルタントと議論し、プロジェクトを作るところから参画。データ分析で経営課題の解決を目指す、データサイエンティストの役割
3. 小売りチェーンの物流拠点を検討。典型的な問題でも、現実の制約を組み込むと複雑に
4. 計算結果をそのまま伝えるのはダメ。経営陣の意思決定を支援するため、意識した「データの見せ方」
5. 「分析だけしていたい人」には向いていない。技術に加え、社会やビジネスにも関心がある人に適した環境
事業会社は“対象が狭かった”。いろいろな課題に触れられるコンサル業界に絞って就活
――学生時代からデータサイエンティストを志していたとのこと。なぜですか。
四方:はい。学生時代の研究で統計学を使っていて、興味を持ったことがきっかけでした。
統計学や機械学習は、本質的な仕組みや因果関係が解明されていない事象であっても、データからそれらしい法則を見つけていきます。こうした“データドリブン”なアプローチが面白いと感じました。
このアプローチなら、複雑な物事でも分析できることがあります。例えば、私が研究していた「鉱山内部の(地盤などの)構造を推定する」ことや、ビジネスでいえば「定期契約商品の解約者を予測する」といったことも可能になります。
――データサイエンティスト職だと、事業会社も募集していますが、選択肢に入っていましたか。
四方:事業会社は、自社のプロダクトやシステムなどが業務の中心となるため、 “対象が限られる”印象で、あまり考えませんでした。学生の段階では、データサイエンスの技術を使って「世の中をどのようによくできるのか」という具体的な見識がなかったこともあり、まずはいろいろな課題に触れられる環境に身をおきたいという思いもありました。
そうした中、クライアントに対し、幅広く課題解決をしているコンサルティング業界に魅力を感じて就職活動をし、総合系ファームにデータサイエンティストとして新卒入社しました。
――そこからBCGに転職した理由はなんだったのでしょうか。
四方:前職のファームで2年半ほど働いて、より社会に対して大きなインパクトを与えられるところにいきたいと考えるようになりました。かつ、よりグローバルな環境で働く機会が欲しいという気持ちもありました。
実際に現在は経営課題に直結するような案件に多く携わっています。グローバルという点でも、例えばアジアパシフィック全体で研修があるなど、海外とのつながりが強く、望んだ通りの環境で働けていると感じます。
コンサルタントと議論し、プロジェクトを作るところから参画。データ分析で経営課題の解決を目指す、データサイエンティストの役割
――BCG内のコンサルタントでも、データ分析ができる人がいると思いますが、GAMMAメンバーと役割はどう違うのですか。
四方:たしかにトラディショナルなコンサルタントでもデータの加工や分析、BIツールを使った可視化ができる人はいますね。ただ、データの規模が膨大だったり、データを複雑な手法で分析したりする場合は専門的な知見やスキルが必要なので、GAMMAが担います。
――「コンサルタントがプロジェクトを設計し、GAMMAがアサインされる」というイメージを持っていました。
四方:そうではないですね。GAMMAメンバーが、コンサルタントと議論しながら、提案活動やプロジェクト設計、課題設定の段階から関わることも多いです。
また、GAMMAメンバーもコンサルタントと同様、クライアントにプレゼンしたり、そのために資料を作成したりしますし、主体的に経営課題を解決に導くことが求められています。
――四方さんのようなデータサイエンティストの、1日の時間の使い方はどのような感じなのでしょうか。
四方:案件によりますが、例えばソリューションの中で機械学習のモデル構築の比重が大きいようなプロジェクトだと、1日の大半をコーディングに使うことが多いです。
コーディングで何をしているのかという点は、フェーズごとに異なります。初期段階だと、クライアントから受領したデータの前処理を行ったり、特徴量(*)を作成したりと、モデルに入れるためのデータを用意するようなことをしています。中期になると、モデル自体のコーディング、そのチューニングが増えていきます。
ただ、朝や夕方にメンバーと議論することもありますし、時にはクライアントに進捗(しんちょく)報告やプレゼンをしたりもするため、「コーディングのみ」ということはありません。
*各データを特徴づけ、かつ数値などで度合いが表れる項目。分析テーマによって設定・抽出すべき特徴量は異なる
小売りチェーンの物流拠点を検討。典型的な問題でも、現実の制約を組み込むと複雑に
――最近関わったプロジェクトを紹介してもらえますか。
四方:ある小売りのクライアントに対する、サプライチェーンの再構築の案件の話をします。
クライアントは、今後規模を拡大し、店舗数を増やそうと考えていました。規模が大きくなると、既存のサプライチェーンでは支えきれなくなるため、その再構築がプロジェクトのゴールとなりました。コンサルタントと協働していた案件で、GAMMAメンバーは、複数ある論点の中で、「物流拠点をどう配置すべきか」を検討しました。
一般的に、物流拠点は都心に近づくほど、店舗への配送距離が短くなり、時間が短縮され便利になります。一方で、都心は家賃や人件費が高くなりますし、大きなスペースを確保するのも難しくなります。そうしたトレードオフを踏まえて、どんな規模の拠点をどこにおけば、全体として最適な物流網ができるのかを考えました。
――具体的には、どのようなアプローチで考えていくのですか。
四方:数理最適化の中でも有名な「混合整数計画法」(Mixed Integer Programming=MIP)といわれる枠組みを活用し、定式化しました。拠点などの最適化では典型的ともいえるアプローチです。
――典型的だと、教科書通りに解けるものなのでしょうか。
四方:いえ、現実では教科書のように簡単にはいきません。
「ここの拠点は外せない」とか「この拠点からは必ずこの店舗に運ばなければならない」といったクライアント特有の制約が発生するので、MIPをそのまま適用すると、複雑すぎて計算量が膨大になってしまいます。
ですから、現実的な時間で解くために、問題を1度分解したり、ある条件を1度緩和させてから、再度条件を強めたりします。例えば「各店舗は1つの拠点からしか配送できない」という制約があったとき、1度数理上は「複数の拠点から配送してもいい」と条件を緩和させて問題を解いた後で、最初にあった条件を復活させて再度問題を解き、1つの拠点に絞り込むという感じで、試行錯誤していました。
計算結果をそのまま伝えるのはダメ。経営陣の意思決定を支援するため、意識した「データの見せ方」
――では、四方さんにとって、このプロジェクトでの最大の学びは、そうしたモデリングの力が向上した点ですか。
四方:いえ。たしかに技術面でも磨かれましたが、一番大きかった学びは、分析結果やモデルをどのようにクライアントの経営層へ伝えるか、という部分です。
例えば、クライアント側のデータサイエンティストと協業する際は、技術寄りのコミュニケーションで意思疎通できますし、Kaggleなどのコンペでは「モデルの精度は何%よくなりました」で十分かもしれません。しかし、BCGのクライアントはビジネス上のインパクトを気にしていますから、数値などをビジネスの言葉に変換して伝える必要があります。
――クライアントと会話するときは、計算結果などをそのまま伝えるのではダメだということでしょうか。
四方:そうです。計算結果は、ただの数値にすぎないので、それを可視化したうえで、経営層が考える課題を踏まえたビジネスの言語に変換する必要があります。例えば、先ほどのプロジェクトでは、算出した数値をもとに「物流拠点をこのような配置に変更すると数億円のコスト削減になる」という形で伝えました。
1つのプロジェクトの中で、
①「ビジネス上の課題を精緻に詰めて、エンジニア視点の課題やプログラムに落とし込み、計算する」
②「その結果をまたビジネスの言語に切り替えてクライアントに伝える」
の双方を“行ったり来たり”していますね。
「分析だけしていたい人」には向いていない。技術に加え、社会やビジネスにも関心がある人に適した環境
――今回の特集では、データサイエンティストなどデータ分析系の4職種をマトリクス型で整理しています(下図)。四方さんや、GAMMAメンバーは、この中でどこに位置するのでしょうか。
四方:左上のゾーンにあたりますが、その中のどこかは案件によりますね。コンサルタントが“がっつり”入るプロジェクトならば、役割分担の結果、右寄りに。GAMMA主体のものだとビジネス的なことも求められて左寄りになることが多いです。
また、上下の軸は、クライアントへ提供できる価値が、機械学習をはじめとした高度な技術によって大きくなるなら上寄りになり、そうでなければ下寄りになります。
ただ、BCGにいる限り、ビジネスの観点を持たないことはないので、他のGAMMAメンバーも含め、中央より右側に入ることはないでしょう。
――そうした現状などを踏まえ、データサイエンティストとしてどのような方向に進みたいと考えていますか。
四方:データサイエンスとは、“手段”にすぎません。ですから、やはりビジネスの目的や社会の課題に対して、どうその手段を使って解決するかを描ける人になりたいですね。そのうえで、欲張りですが、それを自ら実装できるよう技術力も高めたいです。
――“二刀流”を目指しているのですね。
四方:はい、BCGに入った理由もそうですから。昔から社会問題に関心があったこともあり、一番大きな目標は「クライアント、ひいては社会にプラスのインパクトを与えること」なんです。だから、「データサイエンスによって世の中の何がよくなるのか」という視点は持ち続けたいと考えます。
一例ですが、課題設定がよくないと、その後いくら精度の高いモデルを作っても使われなくなりますし、よい課題を設定しても実装できなければ意味がないですよね。先ほど述べた目標を達成するには、やはり問題解決の手法をはじめとするビジネススキルと、技術力のどちらも高めていく必要があると思います。周囲にも、自分の志向性を伝えていて、業務の中で両方バランスよくスキルアップできるような環境になっています。
――聞いているとビジネススキルを高める機会は多くありそうに感じますが、技術的なスキルアップの方に不安はありませんか。
四方:技術を学ぶチャンスは、想像以上に多いため、そうした不安はありません。例えば、私が先日参加した、ある技術に関する研修では、著名な大学教授を招いて1週間ほど、Zoomで講義を聴いたり、演習でそれを実践したりということを行いました。海外チームから学ぶこともあり、最新の技術に触れる機会には恵まれています。
――最後に、“コンサルティングファームのデータサイエンティスト”というのは、どんな環境で、どんな人が向いているのか、改めて考えを聞かせてください。
四方:コンサルティングファームは、「分析だけしていたい」という人はあまり向いていないと思いますが、技術に加え、社会やビジネス上の課題に興味がある人にとってはいい環境です。
これまで話したように、ビジネス面ではコンサルタントとともに、問題解決の手法やクライアントコミュニケーションを学んでいけますし、技術面の成長機会も豊富です。前職も含め、コンサル業界一般として「プロフェッショナルだから自学自習して成長していくのは当然」という前提がありつつ、それを会社はサポートしてくれているなと感じています。
そうした環境を魅力的だと思う人は、コンサルティングファームが一つの選択肢になるのではないでしょうか。
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