コンサルでもデジタルでも「プロ」になる―。BCG若手データサイエンティストが選んだ、“二刀流”で生きる道
2021/05/13
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異色の経歴――。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のデータサイエンティスト、横山聡恵さんのキャリアを見て、そう感じる人もいるかもしれない。
米国の大学で応用数学を学んだ後、2018年4月にファーストキャリアとしてBCGに入社。1年余り戦略コンサルタントとして実績を積んだ後、自ら希望してデータサイエンスに特化する組織に移った。コンサルティングの現場でデータサイエンスなどのテクノロジーの活用が不可欠になりつつある中、こうした事例は今後増える可能性がある。“先駆者”ともいえる横山さんに、キャリアチェンジの狙いや、実際にどんな経験を得られているかなどを聞いた。
大学でデータサイエンスに親しむも、ビジネス経験を積むため“ファーストキャリア”に戦略コンサルタントを選択
――どういった経緯でBCGに入社しましたか。
横山:戦略コンサルティングファームを志望したのは、さまざまな業界の一流企業をサポートする中で、数多くの優秀な人たちと関わりながらビジネスの経験を積めると思ったからです。その良さは実際に体感しています。
就職活動をしていた時期、内定を得たファームの中でも、BCGはまさにデジタル分野を強化しようとしているところでした。大学でデータサイエンスに関わっていたこともあり、テクノロジーを重視する姿勢に強く引かれました。
――大学でデータサイエンスに関わっていたのですか。
横山:UCバークレーに在学中、それまでになかったデータサイエンスの教育プログラムができようとしていて、そのプログラムの企画の手伝いなどをしていたんです。基礎的なレベルでしたが、Pythonでコードを書いたりもしていました。
――では、就職活動でデータサイエンティストも希望職種の一つだったのでしょうか。
横山:そうですね。内定先の一つに、事業会社のデータサイエンティスト職もありました。
――データサイエンティストというと、大学などで研究者として働くキャリアもあると思うのですが。
横山:それは考えていませんでした。理系で長らく研究に携わってきたこともあり、今度はビジネスに直接関わる中で学びを得ていきたい、という思いがありました。
――それで、経験の幅が広がりそうな戦略ファーム、中でもBCGを選んだわけですね。BCGへの入社は「コンサルタントとして」が前提だったと思いますが、当時データサイエンティストにならないことについて、迷いなどはなかったのでしょうか。
横山:確かに、一貫してデータサイエンスへの興味は持ち続けていましたが、この最初の職種選択は自分の意思によるものです。
――その意思とは。
横山:最初に述べた、ビジネスの経験を積みたいということに尽きますね。特に戦略コンサルタントは、あらゆるビジネスで価値になる論点を整理したり、構造化したりする力が磨かれる仕事です。
入社後にシニアのコンサルタントと働く中で、そうしたスキルに加え、ビジネスの“勘の良さ”みたいなものも目の当たりにしました。最初からデジタル系の職種に就くのに比べて、より大きな視野で物事を見る習慣も身に付いたと思います。
志願して実現したキャリアチェンジ。コンサルティングにおいて「データはますます大事になる」
――そのコンサルタント時代、具体的にはどんなプロジェクトに携わったのでしょうか。
横山:クライアントの業界でいうとエネルギー、通信、産業材などですね。ウェブマーケティングの強化や、DXなどの支援をしました。例えば、ウェブサイト改善やパーソナライゼーション(個別ユーザーに合わせた仕様最適化)を通じた集客力の向上、あとはデジタル化によるオペレーション改革などですね。
――多様な経験を得るという意味で、狙い通りだったでしょうか。
横山:そうですね。幅広い分野のクライアントを抱える、BCGならではの経験だと思います。
――コンサルタントとして1年余り経験を積んだタイミングの2019年8月、デジタル領域を担うDigitalBCG Japanのアナリティクス組織「GAMMA」へ、身を移すことになります。
(図表:ボストン コンサルティング グループ提供)
横山:コンサルタント時代にGAMMAと協業する機会も多く、「いつか、あのチームで働いてみたい」と思うようになりました。社内のキャリアアドバイザーなどにもその旨を伝えていたところ、タイミング良くGAMMA側で若手人材のニーズが生じ、トランスファーが実現したんです。
――GAMMAと協業する中で、どんなところに魅力を感じたのでしょうか。
横山:当然かもしれませんが、データのプロフェッショナルたちなので、分析のレベルは高いです。私は元々データサイエンスへの理解があったわけですが、GAMMAの仕事の質や速度は想定以上でした。実際に、コンサルタントとしてすごく助けられましたね。自分もそのようなレベルの分析ができるようになりたい、と思うようになりました。
――コンサルタントもファクトに基づく分析はしますよね。どんな面でデータサイエンティストに「助けられる」のでしょうか。
横山:確かに、コンサルティングファームには分析が得意な人たちが多く集まっていますが、データのプロが機械学習などを駆使することで、そうした分析を「一歩先」に進められるんです。コンサルティングにおいては、これからますます重要になると思います。
――一歩先とは。
横山:分析結果を示すだけではなく、データを実効性のある形で活用できるようにして、ビジネス上の恩恵を生み出します。例えば、パーソナライゼーションや不正検知などですね。
――社会全体として蓄積されるデータが指数関数的に増える中、その膨大な量に対応するのに専門家の知見が必要ということでしょうか。
横山:そうですね。それから、今のところデータが整っていない、つまり標準化されていない形で取得されることが多いんです。そうした「きれいではない」データ群を効率的に整えて利用できるようにすることも、データサイエンティストが生む価値の一つです。
データのプロとして顧客に提言する、“受け身”にならない戦略ファームならではの実務
――では、GAMMAへのキャリアチェンジはどのように進んだのですか。
横山:GAMMAチームと話を重ねて、トランスファーが決まりました。それ以降、データサイエンティストの仕事に徐々にシフトしていった感じですね。コンサルタント時代の最後の方は、もっぱらGAMMAと協力するデジタル関連の案件に関わっていましたし、周囲からのサポートもあり、スムーズにキャリアチェンジができたんです。
BCGには、自ら発信してチャレンジする姿勢を示せば、機会を与えてくれる柔軟性があります。
――データサイエンティストとしての実務について教えてください。
横山:クライアントの業界は、コンサル時代の延長線上といえるものが多く、エネルギーや産業材、あとは保険などですね。日々の業務は当然もっと技術寄りになり、例えばパーソナライゼーションの機械学習モデルを構築したり、そのためのアルゴリズムをひたすら考えたりといった感じです。
――1日の中で、どんな時間の使い方をするのでしょうか。
横山:コーディングには集中して臨む必要があるので、基本的には作業用のまとまった時間をしっかり確保するようにしています。例えば、作業の合間にミーティングなどが入ると効率が下がるため、そうした予定はなるべく朝と夕方に寄せてもらっています。
とはいえ、関わっているプロジェクトのフェーズによっては、ミーティングなどにより多くの時間を割くこともあります。課題の定義などが定まっていないプロジェクトの初期段階では、データ分析で何ができるのかを、プロの視点で直接クライアントに伝えなければなりませんから。
――クライアントとの接点も多いんですね。
横山:戦略ファームのデータサイエンティストならではかもしれませんね。クライアントの経営課題という抽象度の高いテーマを扱うので、初期段階ではデータを使って何をするのかを、綿密に議論する必要があります。
――一般的なデータサイエンティスト職に比べて、ビジネス側に近い印象を受けます。“受け身”ではないというか。
横山:そうですね。そこもコンサルティングならではだと思います。ひたすら分析や開発に没頭したい人や、次々と自社プロダクトを作っていきたい人などは、ひょっとしたら合わないかもしれません。
私にとって良いのは、そうした環境だからこそコンサルの経験が生きることですね。データサイエンティストとしてのスキル面では、まだ到底かなわない先輩たちに囲まれながらも、コンサル経験者として自分なりの価値を出せていると思います。
データサイエンティスト“ブーム”下で価値を生むべく、「+α」の力を磨く
――データサイエンティストが人気職種になり、これから競争が激しくなりそうな感もあります。その上で、どんなキャリアを歩んでいきたいと考えていますか。
横山:コンサルティングの経験を生かして、データサイエンス+αで成果を生むことを追求していきたいですね。データサイエンティストが増える中で、それが自分の価値になると思います。
それを通じて、デジタルとビジネスをつなぐ懸け橋のような存在になれたらいいですね。さまざまな分野でDXが進みつつも、まだ両者の結び付きは不十分な面がありますから。ただそのためには、もっと力を伸ばしていく必要があります。データサイエンスでもビジネスでも、BCGの先輩方と比べるとまだまだ足りない部分が多くあります。
――例えば、どんな面を高めたいと感じていますか。
横山:技術面では、シニアのデータサイエンティストのように分かりやすい「きれいな」コードを書けるようになりたいですね。同じ分析内容でもコードがきれいな方が、クライアントや協力会社との連携がスムーズになりますから。
幸い、コードレビューをはじめ、社内の熟練者の思考プロセスを学ぶ機会は豊富にあります。周りは結構“教え好き”の人が多いですし、恵まれていますね。
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