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「ソーシャルビジネスを自称しない」。GS出身ファッション企業副社長が考える社会貢献

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経済動向を分析・調査するゴールドマン・サックス(GS)のエコノミストから、途上国の素材や職人の腕を生かしてバッグやジュエリー、アパレルなどを企画・販売する事業の経営者へ。総合ファッション企業・株式会社マザーハウスの山崎大祐副社長は「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を企業の理念に掲げ、事業を回すことで国内外の働き手の生活を支えてきた。

創業15年の歩みの中で、世間から「ソーシャルビジネスに取り組む企業」として注目されることもあったが、山崎副社長は「自らそう言うのは違うのではないか」と説く。「社会貢献は“稼げる”か」の第7回は、山崎副社長の社会貢献に対する考えと、事業成長の歩みを聞いた。【李有佳、南部香織】

〈Profile〉
山崎大祐(やまざき・だいすけ)
株式会社マザーハウス 代表取締役副社長。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧国・開発問題に興味を持つ。2003年、ゴールドマン・サックス証券に入社。エコノミストとして、日本およびアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。2007年3月、同社を退社。同年7月にマザーハウス取締役副社長に就任し、経営戦略やマーケティングなどの管理を担う。2019年から現職。

 

GS時代との考え方の違いで現場と衝突

――GSを4年で離れ、大学のゼミの後輩だった山口絵理子社長が立ち上げたマザーハウスに関わった経緯を教えてください。

山崎:大学時代、アジア金融危機を通じ、金融市場が暴走することによって人々の生活が一変してしまうことに問題意識を持ちました。経済をマクロな視点でとらえたいと考えていたので、志望した金融機関の業務の中でも関心があったのはGDP(国内総生産)、失業率、消費者物価といった経済動向の分析や調査をするエコノミストの仕事です。

僕がGSで働き始めて3年目が終わろうとしていたころに、山口は単身バングラデシュで「途上国発のブランドをつくる」と決心し、「バッグをつくっちゃった」と持って帰ってきたのです。僕は社外アドバイザーとして会社の立ち上げを助言するなどと携わるうちに楽しくなり、GSを離れ2007年に副社長に就任しました。

バッグの入った段ボール箱を運び、夜行バスで地方の百貨店に出向き、お客様に向き合う。自分の手を動かしチャレンジも絶えずあって、GS時代とは全く異なる環境にやりがいを感じていました。

ただGSという会社がいかに特殊な環境だったかも感じました。GSは貢献できることを言った人、やった人が評価される実力主義で、会社というのはそれが当たり前だと思っていました。しかし、マザーハウスの副社長となって同じようなことをしていても、誰もついてきてくれませんでした。

――GS時代の経験を生かせる場面はあったのでしょうか。

山崎:売り上げが2億円ほどの時から10億円まで伸ばす過程ですね。

創業4年目くらいのころ、業務は忙しいのに全然利益が上がらない。働いているスタッフの給与は安く、大量に離職していく。ないない尽くしで、もう会社が持たないなと思いました。満足な給与を支払うために必要な売り上げを計算してみると10億円という、その時には想像もできないような規模でした。

何ができるかを考えた末、自分の金融の知識を生かして予測モデルを作りました。10億円までの戦略を綿密に立て、社員にオープンにしました。

最初は毎月の店長会で反発を受けました。周りは数字のプロじゃないから「分からないです」と言われ続け、僕はそのたびに数字を全部現場レベルに細分化し、何度も伝えていきました。

戦略を間違えないことも大切でした。ロゴやブランディングの変更もしましたし、出店を増やす一方でうまくいかない店は全部クローズした時期でもありましたね。売り上げ10億円を達成した時、初めて「GS時代の経験が生かせた」と感じました。

「事業拡大を目指すべきか」。創業者と意見をぶつけて見つけた形

――会社を成長させてきましたが、「事業を大きくしたい」という思いは山口社長と共通していたのでしょうか。

山崎:初めはそうではありませんでした。僕自身は会社を大きくしたいとずっと考えている人間です。予測モデルをつくって10億円までの戦略を立て、それによって安定した経営が実現できたことからも事業拡大の重要性は感じていました。

一方、社長の山口は「大変な苦労をしてまでさらに会社を大きくする意義はあるか。大事なのは途上国でものをつくることだ」という意見でした。2人の意見がかみ合わないから、たびたびけんかをしていました。ただ、6~7年目くらいから山口が「むしろ大きくしよう」という方向に変わりました。

それはデザイナーでもある山口が、会社が大きくなればさらに途上国で良いものづくりができるという気付きを得たからでした。バッグづくりは製造業ですから、ロットが集まらないと色や種類が増やせず、良いクオリティーに近づけない。ロットを大きくすることで素材の供給が安定し、品質が高いものづくりが可能になりました。

一方で世間から「会社を大きくしないほうがいいのではないか」とはよく言われます。ですが、大きくなったことでやりづらくなったと思ったことは一つもないです。むしろ大きくなったほうが、チャレンジの機会が増えました。

――なぜ「大きくしないほうがよい」という意見があるのでしょう。

山崎:世の中の人たちが、社会的な思いが強い会社を大きくしないほうがいいと考える理由には、2つのパターンがあると思っています。

1つは、市場規模を踏まえて合理的に考えた時、会社の規模を大きくしないほうがいいケースです。たとえば特定のマイノリティーにフォーカスしている事業だった場合、売上規模が1億円まで達せず3000万円だとしても、役割が大きい会社といえますよね。だからその3000万円の売り上げでも会社が回るようにするサステナブル(持続可能)な仕組みを作ればいいのです。

2つ目には、組織が大きくなると運営の面でも気持ちの面でも厳しい局面にぶつかるから大きくしたくないケースがあります。しかし、それは個人のつらさから来た考えだから合理的ではない、と僕は思ってしまいます。

社会的なミッションを持っているからこそ大きくすべき会社はたくさんあるし、市場規模も含めて冷静に考えなければいけないと思います。

ビジネスだから、社会的な価値にこだわる

――マザーハウスに対して、黎明(れいめい)期のエピソードから「社会貢献や社会課題解決を軸にした企業」という印象を抱いていました。

山崎:僕たちも30~40年前にこの事業をやっていたら「日本の産業の空洞化を生む」「日本の職人の仕事を奪う」などと批判されていたでしょう。時と場所が変われば社会における意義なんていくらでも変わるのです。「社会にとって良い」というのはその時々の誰かの主観ですよね。

だから、僕らは社会貢献や社会課題解決、ソーシャルビジネスといった言葉について「外からそう言われるのは構わないけれど、自分たちから言うのは違うよね」と考えています。つまり、自分たちが正しいと思ってやっている事業であって、それが社会全般において正しいなんておこがましくて言えないです。

――社会貢献や社会課題解決、ソーシャルビジネスといったことを一貫して理念に掲げてはいないのですね。

山崎:そうですね。そもそも僕はビジネスは社会的に価値がないといけないと思っているし、そこにこだわっています。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念に基づくと、僕たちにとっては株式会社という方法が合理的だとも考えてきました。

ただ、この会社に本格的に参画した2008年ごろを振り返ると、自らの事業を「ソーシャルビジネスです」と言っている起業家も結構多かった印象があります。誰もが社会にとって価値があると考えてビジネスに取り組むのに、「『ソーシャル』と言ったもの勝ち」みたいな雰囲気があり、僕はそれがすごく嫌でした。

他方、誰もが正しいビジネスに取り組み、社会全体が正しい方向に向かっているとは思いません。本当に社会や地球のサステナビリティー(持続可能性)がなくなってしまう危険性もはらんでいるので、ビジネスは変わらないといけない。その監視役としてソーシャルという言葉が使われ、SDGs(持続可能な開発目標)といった言葉が生まれてきたことも理解できます。

「社会貢献」とは、突き詰めれば自分の個性を発揮すること

――起業家向けの塾も主宰されていますね。

山崎:150人ぐらいの卒業生がいます。その中には、売り上げが10億円近い会社の経営者もいれば、まだ始めたばかりで自分しか従業員がいないといった人もいます。寄付で成り立っている状況のNPO(非営利団体)メンバーも参加していますね。

――塾の受講生を通じて、SDGsを重要視した事業やソーシャルグッドな分野にお金が回っていると感じることはありますか。

山崎:それはまだ一部だと思うし、これからだと思います。

企業がSDGsを重要視した分野に目を向けざるを得なくなったきっかけは、ESG投資(*1)に対する投資家の姿勢が変わってきたためだと思っています。市場が財務情報だけでなく環境、社会、ガバナンスといった価値を判断基準に入れたことは、衝撃的な変化だと言えます。
*1 環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を重視した企業を選別して実施する投資

この流れはソーシャルセクターにとってはチャンスであり、ピンチでもあります。

チャンスの部分は、企業は社会的な分野に一定以上のコストを払わないといけなくなったことです。企業側にそのノウハウがなければ、ソーシャルセクターでの経験を持つ人たちは、ノウハウがない企業とアライアンスを組んだり予算を引っ張って価値を生み出したりしていくことも可能です。

一方、ピンチの部分もあります。ソーシャルセクターをはじめとした小さい事業体は、いわゆるストーリーマーケティング、ソーシャルマーケティングを手法として使ってきました。それを大企業が当たり前のようにやる状況が広がれば、小さい事業体は埋もれてしまいます。

――改めて、社会貢献とは何なのでしょうか。

山崎:社会貢献とは、突き詰めれば自分の個性を発揮することだと考えています。この地球上に自分が命を授かる理由は、生物学的に見れば、多様性を維持することしかない。そして社会学的な意味合いも含めて、多様な人たちがいることが人類を繁栄させてきた。生物学的にも、社会学的にも、社会というのは個性の集合体だと思っています。

だからこそ、自分がより良く生きるためにすべきことを考え、自分以外の誰かのために何かができるかを見つけて、個性を発揮することが一番の社会貢献です。

「みんな社会貢献はすばらしいと言っている」と考えて動くのはある意味、同調圧力によるものですよね。日本社会の問題は「社会貢献」がトレンドになっているがためにそれに合わせて動き、没個性になってしまっていることです。

一人一人が「社会貢献」という言葉を思考停止のまま受け取らず、自分の個性とは何か、自分が貢献できることは何かを考えてくれればいいと思っています。


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