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社会課題を解決したいという熱い思いを胸に事業を立ち上げても、その思いだけで事業基盤を固めることは難しい。

ICT(情報通信技術)を活用した保育関連サービスを展開するスタートアップのユニファ株式会社は、BtoCの収益モデルからスタートし、大企業や自治体と連携しながら事業を成長させてきた。2019年には、事業が安定成長に入った段階の「シリーズC」で35億円を調達。土岐泰之代表取締役CEO(最高経営責任者)は「これから上場に耐えられるような時価総額になっていく」と力強く語る。

特集「社会貢献は“稼げる”か」の第3回は、政府でもNPOでもない、事業・財務戦略を駆使したTech系スタートアップならではの社会課題解決について土岐氏に聞いた。【李有佳】

〈Profile〉
土岐泰之(とき・やすゆき)
ユニファ株式会社 代表取締役CEO。
九州大学経済学部卒業。2003~2008年、住友商事でリテール、ネット領域におけるスタートアップへの投資および事業開発支援に従事。その後、ローランド・ベルガーやデロイト トーマツ コンサルティングにて、経営戦略・組織戦略の策定および実行支援に関与。2013年5月にユニファを創業。保育業界のデジタル化を推進し、2017年、米ベンチャーキャピタル主催のスタートアップピッチコンテスト「Startup World Cup 2017」で優勝した。

 

「政府でもNPOでもない第3の道」。スタートアップだからできる問題解決

――保育園内で撮影した園児の写真を家庭と共有するBtoCのインターネットサービスからスタートし、子どもの安全や保育業務の負担軽減を目指した保育園向けツール開発、自治体との連携などを通じ、事業拡大を続けていますね。

土岐:起業したのは2013年で、家庭の事情で半ば主夫として保育園児を育てていた時でした。収益モデルとしてBtoCから始めたのは、保育園側にはお金はないだろうから、BtoBにあたる事業は難しいと感じていたためです。

保育の現場が見えてくるとBtoBのお金の事情がつかめて、大手保育園運営事業者のJPホールディングスでのサービス導入に至りました。さらに、子育て世代向けアプリに広告を打ちたいという企業の声も上がり始めました。加えて見えてきたのは、子どもの安心安全につながる商品の普及を目指し、行政が園に対して補助金を出すtoGの流れでした。

これらは事業の過程で気づいたことです。

――資金調達はどのように進めてきたのでしょうか。

土岐:まず金融機関系ベンチャー・キャピタル(VC)から、その後にはジャフコなど大手VCから資金調達し、軌道に乗り始めました。

「保育業界と聞くともうからなそう」と言われていた時代、中長期の戦略や数字に落とし込んで資金調達の交渉ができたのは、過去の経験のおかげだと思っています。商社でベンチャー投資を手掛けたことで、CFO(最高財務責任者)がいない段階でも資金調達時の自社のバリュエーション(企業価値の評価金額)を考えられましたし、事業計画策定は戦略コンサルの時に鍛えられました。

――社会課題解決型の事業体へ出資を考える投資家は増えているのでしょうか。

土岐:その感覚は明確にありますね。ただでさえスタートアップのファイナンス環境は、明らかにお金が余っているくらいの勢いですし、社会課題解決型の事業に手を差し伸べたいインパクト投資家もいる。

我々の立場から言えば、創業当時はそこまで言われていなかった「待機児童」が社会問題となり、メディアが待機児童数や保育士の有効求人倍率などの数字の指標を用いて取り上げるようになりました。これによって保育現場の働き方へ注目が集まり、その問題解決手段として、ICTが注目されたのです。

――社会課題が可視化されたということですね。ただ、そのような課題を解決する法人や組織は多様にありますが、なぜ株式会社を創業して取り組もうと考えたのでしょうか。

土岐:我々の事業領域の中でも、子どもの安心安全は本来的には政府やNPOが手掛ける領域かもしれません。ただ、このビジネスに関しては我々株式会社のスタートアップが取り組んでも十分に利益は出ますし、これから上場に耐えられるような時価総額になっていくと思っています。

10億円の規模の資金が得られるNPOというのは、そんなに多くないのが現実です。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国が開発したスマートフォンアプリ「COCOA」にしても、すぐに不具合が出るといったことが起きていますよね。ラストワンマイルで最後にユーザーが使いたくなるようなサービスを作ることは、政府では基本的に難しいと思っています。

政府でもNPOでもない第3の道として、ファイナンスを駆使したスタートアップによる問題解決が今、求められているのではないでしょうか。

資金調達環境は「追い風」。それでも感じるのは「社会問題をビジネスで解決できる経営者不足」

――そもそもですが、今の事業内容で起業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

土岐:ベースにあるのは、自分自身が家族のために仕事を捨て東京を離れた、というプライベートなエピソードです。親戚もいない愛知県で保育園児を育てる中で、手書きの連絡帳や壁に貼られた行事写真など、保育園のアナログな光景を目の当たりにしました。保育園の先生やベビーシッターも含めた「チームで子育て」をしなければ生活が回らない。回すためには情報共有が重要で、そのためのデジタルインフラの整備が求められると考えました。

また、ビジネスの潮流としてLINEなどがはやり始めた時代でもあり、これからクローズドなコミュニティーが動きそうだという考えもありました。最もクローズドなコミュニティーを考えた時、それは家族でした。「保育×Tech」、つまり保育園と家庭をデジタルインフラによってつなげるプラットフォームを作ろうというアイデアでした。

――社会的な事業は数多くある中でも、保育業界は保守的でマネタイズが難しそうに感じます。どのような戦略をお持ちだったのでしょうか。

土岐:初めに取り掛かったのは一人での営業活動です。

しかし、これは現場で実感したことですが、どんなにいい商品でも、それを信頼されている人が持って行かなければならないのが、この業界の鉄則でした。企業からの訪問を受ける保育園からすれば、創業数年のスタートアップが来たと言われても、危なっかしいと思ってしまいますよね。実際、あまりうまくいきませんでした。

そこで、保育関連商社で100年を超える歴史があるフレーベル館、その親会社の凸版印刷との提携を進めました。先方企業にとっては新たな成長領域を伸ばす戦略の一環となり、我々にとっては顧客のロイヤリティーがある企業の販売ネットワークを活用することが可能となりました。

これに基づき、我々経営陣はICTソリューションを活用する戦略を練り、全国の支店で関係性を作って、本当の現場である営業担当者たちが共に保育園を回る。この3階層で結びつきを作り、コンバージョン(商談の成功率)は10倍以上高くなりました。

――そのように事業を戦略的に進められる事業体ばかりではないように感じます。

土岐:社会課題解決型の事業を展開する経営陣の中には、ファイナンスをする発想を持っていない例があります。ここは経営者たちが成長すべきところです。

初めは赤字でも、上場やM&Aによって企業価値は大きく上げられる。SDGs(持続可能な開発目標)やインパクト投資といった潮流もあり、深刻な社会課題の解決に対してTechでレバレッジをかける戦略を打ち出せば、株式を使って資金調達し事業を成長させることができるともいえます。現在は多くの社会起業家にこのようなエクイティファイナンスの発想がほとんどないのだと思います。

社会課題を解決するために、顧客を理解する、もしくはプロダクトが作れる、営業ができるといったところまでは頑張れる起業家はいるでしょう。さらに彼らがファイナンス領域の力を伸ばしたら、事業を通じて最終的に救える人の数が増えてきます。

――スタートアップへの追い風を感じる中でも、課題はありますか。

土岐:根深い社会問題をビジネスとして解決できる経営者は、まだ足りていないと感じます。

数限りない日本の社会課題の中には、政府でもNPOでもスタートアップでも取り組めていないものがあります。例えば子どもの貧困やDV(ドメスティックバイオレンス)といった問題に対して、欧米ではビジネスによって取り組めているのに、日本ではそれができていない。

スタートアップがその問題に向き合おうとした時、お金の出し手はいるのに、パッションを持ってストーリーを語り人やモノや資金を集められる経営者、その経営者を支えるチームが不足しているからだと思うのです。

また、いまだ注目されていない深刻な社会課題も結構あると思います。その場合、起業家自ら、その問題にスポットライトを当てる動きから始めなければいけません。

自分の人生と社会問題、それを解決しようとする企業との間に補助線が引けるか

――社会事業領域へのジョインを考える仲間を増やすためにしていることはありますか。

土岐:私が重要だと考えているのはそれぞれの人材のキャリアや将来のビジョンと、企業の進むべき道との間に補助線が引けるかだと思っています。

――人材と企業との間に「補助線を引く」とは。

土岐:一人一人の強みが企業の進む道の中でどのように生かせるかを語り合ったり、その人の人生において今はどのようなチャンスかを気付いてもらったりと、本当に十人十色の補助線の引き方があります。ここはテーラーメードでやってきた自負はあります。

2019年にCFOに就任した星直人のケースだと、私自身が1年以上口説きました。彼はモルガン・スタンレーで勤務していた時に娘が誕生し「子どもの目を見て誇れる仕事をしたい」という、キャリアの軸が新たに生まれたところでした。

我々は子育て×Techの分野でファイナンスやM&Aを駆使して事業成長をしてきたし、海外進出を見据えているという点も、彼にとっては意味があったと思います。お互いの親和性が高いことをじっくりと時間をかけながら語り合う中で、何が一緒にできそうかという点に、双方の“腹落ち感”のようなものを作っていきました。

――社会課題解決に取り組む経営者を社会全体で増やすには、金銭的な保証も重要なのでしょうか。

土岐:創業後の数年間は、経済的に我慢する場面や制約があるのは事実です。私も起業当時、子どもたちのために貯めていた1000万円以上のお金のほとんどを突っ込んでもすぐになくなり、友人たちから出資を募って事業を形にしました。

ですから、全体の創業者の数を増やしていく、チャレンジの数を増やしていくという面では経済的な負担感を減らすことは意味があるでしょう。

ただ、初めの1年で生活できるくらいのお金があれば起業家が増えるというものでしょうか。社会課題解決に取り組む経営者が増えないのは、金銭面より、「俺の人生はこれだ」と思い込める力を持った人、言い換えれば自分の人生と社会問題との間に補助線が引けている人が多くないからだと思います。

待機児童問題も含め、社会課題というのはみんなが気付いているものの解決策が難解で、誰も解けなかった、基本的には「しんどい問題」です。そういう課題と自身の人生とを「ひもづけ」できる力を持つ人が、まだ圧倒的に少ないのではないでしょうか。

それらの問題の解決策として「ファイナンスを駆使した経営」の必要性が、もっと意識されるようになるといいですね。


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