三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜④：デジタルトレーサビリティと段階的事業展開

　
三井物産インターン優勝者が、評価の決め手となった「段階的実装計画」の立て方を実例で示します。第4回は、製造ロット単位でCO₂排出を追跡し、CBAM対応の証書を自動発行するOil2Steel™システムによる環境価値の可視化を解説します。さらに、リスクを最小化しながら事業を立ち上げる段階的スケールアップ戦略、国際認証取得計画など、2029年の商業稼働に向けた具体的ロードマップを、インターンで高評価を得るためのポイントとともに示していきます。

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3章：技術・オペレーション設計②

3-7　デジタルCO₂トレーサビリティ：Oil2Steel™（仮称）データレイヤー

3-7-1　測定境界とデータ粒度の標準化設計

世界鉄鋼協会のCO₂データ収集メソドロジーに準拠し、Scope 1（直接排出）およびScope 2（間接排出）を統合した「鋼材1トンあたり排出量」を標準指標として採用する。この標準化により、高炉-転炉法、スクラップ電炉法、直接還元鉄-電炉法の製造プロセス別比較を共通の評価基準で実施できる。

測定境界の設定では、原料調達から製品出荷までの全工程を対象範囲とし、輸送段階のScope 3排出も部分的に含める拡張設計を採用する。原料スクラップの回収・輸送、HBIの製造・輸送、電力の発電・送電、製品の出荷輸送までを包含することで、製品のライフサイクル全体でのCO₂排出量を定量化する。

データ粒度では、製造ロット（ヒート）単位での排出データ切り出しを実現し、CBAM報告形式への自動変換機能を実装する。1ヒートは通常150-200トンの製品に相当し、この単位での排出量計測により、顧客要求に応じた柔軟な証書発行が可能となる。ヒート別データの蓄積により、操業条件と排出量の相関分析も可能となり、継続的な改善活動を支援する。

API（Application Programming Interface）の設計では、CBAM報告書、日本のJCM（Joint Crediting Mechanism）、ISO 14067（カーボンフットプリント）等の複数の国際基準に対応した自動データ変換機能を実装する。顧客の要求に応じて、異なる報告形式でのCO₂データ提供を自動化し、顧客の環境報告負荷を大幅に軽減する。

データの信頼性確保では、ブロックチェーン技術による改ざん防止機能を実装する。測定データのハッシュ値をブロックチェーンに記録することで、データの完全性と追跡可能性を保証する。第三者機関による検証プロセスとの連携により、国際的な信頼性基準を満たすデータ品質を確保する。