三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜②:既存資産を活用した統合的競争優位の構築

三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜②:既存資産を活用した統合的競争優位の構築

2025/10/09

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eyecatch
26卒で三井物産のインターンシップで優勝し内定をいただいた私が、実際のインターンで評価されたポイントを踏まえながら、新規事業案の核心部分を解説します。第2回は、なぜ三井物産がこの事業を実現できるのか、その答えとなる「ハイブリッド・オーケストレーター」としての独自性を詳述します。石油製品物流、再生可能エネルギー、海運、鋼材商流という複数事業領域での蓄積が、どのように脱炭素製鋼事業の圧倒的競争優位に転換されるかを明らかにしていきます。 

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第2章:三井物産の戦略的ポジション

――「石油製品物流」×「クリーン電源」×「脱炭素海上輸送」を束ねる〈ハイブリッド・オーケストレーター〉

三井物産がMi-CAM事業において発揮する戦略的優位性は、単一領域での強みではなく、上流から下流まで一気通貫で統合された複合的な事業基盤にある。この統合力こそが、他社では模倣困難な独自の競争優位を構築する核心的要素である。従来の石油製品物流で培った資産とネットワークを、新たな脱炭素製鋼事業に転用することで、ゼロからの新規参入では実現不可能な圧倒的な事業効率を達成する。


2-1 上流アセット──"自前クリーン電源"を確保できる希少プレイヤー

2-1-1 サラワク水力の長期バンドル権益確保戦略

三井物産は、マレーシア・サラワク州の大型水力発電インフラに対する排他的アクセス権を確保している。サラワク州は、バクン(2,400メガワット)、ムルム(944メガワット)、バレ(1,290メガワット、2028年稼働予定)の3大水力発電所により、累計4,600メガワットの安定電源を保有している。これらの水力発電所の昼夜安定出力比率は90パーセントを超え、24時間連続操業が基本の電炉製鋼に理想的な電源特性を持つ。

州営サラワクエナジー社の産業向け大型電力購買契約(PPA)は、21.7セン/キロワット時(約0.045ドル/キロワット時)という、ASEAN地域最安水準に設定されている。この価格水準が実現される理由は、水力発電の運営特性にある。火力発電と異なり燃料費が発生せず、設備の減価償却が進むにつれて単価はさらに低下する。また、サラワク州政府の産業振興政策により、エネルギー集約型産業の誘致を目的とした政策的な価格設定が行われている。

この電力価格優位性の戦略的価値は、単なるコスト削減にとどまらない。電炉製鋼では電力費が製造コストの50パーセントを占めるため、電力価格の差異が直接的に製品競争力に転換される。中国沿岸部の工業用電力が0.08-0.12ドル/キロワット時であることを考慮すると、サラワクの電力コストは中国の半分以下という圧倒的な優位性を持つ。1トンの鋼材製造に必要な約500キロワット時の電力において、サラワクでは22.5ドル、中国では40-60ドルの電力費が必要となり、この差額は製品1トンあたり17.5-37.5ドルのコスト競争力向上をもたらす。

さらに重要なのは、この電力の環境性能である。水力発電比率70パーセント超の電源構成により、電力由来のCO₂排出係数が0.15キログラム-CO₂/キロワット時以下に抑制されている。これは中国の0.8キログラム-CO₂/キロワット時、ASEAN平均の0.6キログラム-CO₂/キロワット時と比較して大幅に低い水準である。この低炭素電力により、電炉製鋼での電力由来CO₂排出を0.075トン-CO₂/トン-鋼材以下に削減でき、総合的なCO₂原単位0.25トン-CO₂/トン-鋼材の達成を可能にしている。

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