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26卒三井物産内定者による、インターン対策⑤です。これまで4回にわたって解説してきた事業構想を支える、最も重要な基盤であるサプライチェーン戦略を詳述します。年間300万トンの鋼材製造を支える原料をいかに確保し、効率的に輸送するのか。スクラップ・HBIの多元的調達戦略、ボルネオ島を中核とする物流ハブ構想、アンモニア燃料船による革新的輸送システムなど、インターンで差がつく「オペレーション設計」の実例を示していきます。
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三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜②:既存資産を活用した統合的競争優位の構築
三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜③:世界最高水準の低炭素製鋼技術システム
三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜④:デジタルトレーサビリティと段階的事業展開
三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜⑤:低炭素・高信頼サプライチェーンの構築
三井物産インターン過去問対策〜鉄鋼製品事業編〜⑥:投資10億ドルの事業採算性と価値創造
第4章 原料確保と物流最適化
――「多元的なフィードストック×ボルネオ中核ハブ×アンモニア燃料船」で〈低炭素・高信頼〉サプライチェーンを構築する
Mi-CAM事業の成功は、高品質な原料の安定確保と効率的な物流システムの構築に決定的に依存している。この章では、ASEAN地域特有の原料制約を克服し、同時に世界最高水準の低炭素物流を実現するための統合戦略を詳述する。戦略の核心は、原料調達の多元化、既存インフラの戦略的転用、革新的な脱炭素輸送手段の三要素を統合したサプライチェーンの構築にある。
従来の製鋼事業では、原料調達と物流は独立した機能として最適化されてきたが、Mi-CAM事業では両者を統合システムとして設計することで、個別最適では実現不可能な総合的競争力を創出する。この統合アプローチにより、原料コスト削減、供給安定性向上、環境負荷最小化を同時実現し、CBAM等の国際的な環境規制への対応力を確立する。
4-1 資源ソーシング戦略──"三本柱"で量と環境ラベルを同時に確保する
原料調達戦略の基本思想は、単一ソースへの依存を回避し、地理的・技術的・経済的に異なる特性を持つ三つの調達源を組み合わせることで、供給安定性と品質安定性を同時確保することにある。この多元化戦略は、ASEAN地域の原料市場が抱える構造的制約を技術的・戦略的に克服する解決策として設計されている。
第一の柱:マレーシア域内のスクラップ回収体制の構築
域内スクラップ発生量の増加トレンド分析
東マレーシア(サラワク・サバ州)では、政府主導のインフラ投資と経済成長に伴う自動車保有台数の急増により、解体系スクラップの発生量が年率4-5パーセントで継続的に増加している。2024年時点での発生量85万トンは、この成長トレンドが継続すれば2030年には約110万トンに達すると予測される。しかし、Mi-CAMプロジェクトでは目標調達量を150万トン/年に設定しており、自然発生量を40万トン上回る追加確保が必要となる。
この追加確保の実現可能性は、現在の回収率の低さに起因する潜在供給量の存在にある。マレーシア全体での自動車廃棄台数は年間約45万台だが、適切な解体・回収システムを経由するのは全体の60パーセント程度にとどまっている。残り40パーセントは非効率な零細回収業者による処理や、不法投棄により資源として活用されていない。
グループ会社リサイクル網の戦略的拡張
三井物産グループが保有するリサイクル事業網を活用し、回収効率の大幅改善を実現する。現在、グループ系列の自動車解体業者3社がサラワク・サバ州で年間約12万台の解体実績を有しているが、これを2030年までに30万台規模に拡張する計画である。この拡張により、域内発生スクラップの回収率を現状60パーセントから85パーセントまで向上させることが可能となる。
回収効率向上の技術的基盤は、最新の電磁分選設備の導入にある。サラワクの工業用電力料金21.7セン/キロワット時(約0.047ドル/キロワット時)という低コスト電力を活用し、高性能な渦電流分離装置と密度分離装置を組み合わせた分選システムを構築する。この設備により、従来は除去困難だった非鉄金属の分離精度を95パーセント以上に向上させ、電炉投入可能な高品質スクラップの回収率を向上させる。
電磁分選設備の経済性は、電力コストの安さにより他地域では実現困難な高効率運転を可能にすることにある。同等の設備を電力コスト0.12ドル/キロワット時の地域で運転する場合と比較して、年間電力費を約60パーセント削減できる。この電力費削減により、分選処理コストを1トンあたり15ドル削減し、市場調達スクラップとの価格競争力を確保できる。
建設廃材スクラップの組織的回収
自動車スクラップに加え、建設廃材からの鉄スクラップ回収も重要な供給源となる。サラワク州では、SCORE(Sarawak Corridor of Renewable Energy)計画に基づく大型インフラ建設が継続しており、建設廃材の発生量も大幅に増加している。これらの建設廃材は、一般的に品質が安定しており、不純物含有量も自動車スクラップより少ないという特徴を持つ。
建設廃材回収では、主要建設会社との長期パートナーシップ契約により、廃材の優先回収権を確保する。建設現場での分別回収システムの導入により、鉄筋、鉄骨、配管材等を効率的に分離・回収し、電炉原料として最適な形状・サイズに加工する。現場分別により、後工程での選別コストを大幅に削減できる。
建設廃材の品質的優位性は、使用履歴が明確であることにある。建設用鉄筋や鉄骨は、製造時の品質管理が徹底されており、化学成分のバラツキが小さい。また、亜鉛メッキ等の表面処理も限定的であり、電炉での溶解時の品質安定性に優れている。この品質安定性により、HBIブレンド比率を最適化し、最終製品の品質向上を図ることができる。
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