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投資銀行部門の基本知識を身につけよう
こんにちは、外資就活 外銀チームです。
外資系投資銀行への就職をお考えのみなさんの中には、特に投資銀行部門(IBD)に興味をお持ちの方も多いことでしょう。IBDは就活生からの人気が非常に高く、選考突破のための深い業務理解は必須となります。
また、近年更なる選考の早期化が進んでおり、早めの対策が最重要となってきています。
そこで今回は、IBDの構成や求められる人材について深く掘り下げていきたいと思います。本コラムを読み、業界・業務研究を進めましょう。
IBDを抱える投資銀行
IBD(投資銀行部門)を有する主な投資銀行・証券会社として、外資系では ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、J.P.モルガン、BofA(バンク・オブ・アメリカ)、シティグループ、バークレイズ、UBSグループ、ドイツ銀行グループ が、日系では 野村證券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券、大和証券 などが挙げられます。
さらにM&Aアドバイザリーに特化したブティック投資銀行として、 ラザード・フレール、フーリハン・ローキー(旧GCA)、エバコア、グリーンヒル といった企業が存在します。
IBDの業務内容
IBDはフロントオフィスの一つであり、マーケット部門と同様に顧客と直接取引をし、収益を上げることを目的としています。
IBDが担当する業務は、平たく言うと 「財務の専門性を武器にして企業の成長をサポートする」 というものです。具体的には
b. M&Aアドバイザリー業務
を行い、その手数料で収益をあげています。
近年話題になった東芝に対するTOBでは、UBS証券、野村證券、みずほ証券、J.P.モルガンなど多くの投資銀行が関与しています。
IBDの主な業務フローは以下の通りです。
①営業資料の作成
②M&Aや資金調達の提案・営業
③案件の執行
それでは、それぞれの業務を詳しく見ていきたいと思います。
①営業資料の作成
まずは「ピッチブック」と呼ばれる、クライアント(企業)に資金調達やM&Aなどの提案を行うための資料を作ります。
ピッチブックには提案内容だけでなく、提案の根拠となる市場や業界の状況、クライアントの分析など膨大な量の情報が詰め込まれています。多くの場合、高級な紙を用いたフルカラー印刷、厚手の会社ロゴ付き表紙など豪華絢爛なパッケージとなっています。
アナリスト(AN,新卒~3年目)やアソシエイト(AS,4~6,7年目)と呼ばれる若手社員は、このピッチブックを作るために徹夜をすることもあります。IBDのイメージにありがちな「夜遅くまで資料作成を行う」というのは、この営業資料の作成作業が基になっているのではないでしょうか。
「investment banking pitch book」などのキーワードでネット検索すれば実際に作成された資料が多くヒットしますので、興味のある方は一度調べてみるのがよいでしょう。
"Investment Banking Pitch Books: Design, Examples & Templates"
by Brian DeChesare, Mergers & Inquisitions.com
②M&Aや資金調達の提案・営業
次は、作成したピッチブックを持ち、クライアントにピッチ(提案)を行います。IBDの中でも「カバレッジ」と呼ばれる部署に所属する社員がメインでピッチを進めますが、複雑なスキームや資金調達法を説明する際には「プロダクト」 (詳細は後述します) の社員と共にピッチを進めることもあります。
企業によって違いはありますが、社員には「マネージング・ディレクター(MD)」「ディレクター(D)」「ヴァイス・プレジデント(VP)」「アソシエイト(AS,4~6,7年目)」「アナリスト(AN,新卒~3年目)」の5階級のタイトル(役職名)が与えられています。
基本的に、ピッチにはMD〜VPの階級の社員とAS、ANのグループで向かいます。MD〜VPの社員がアイスブレイク、ASの社員がプレゼン、ANの社員が議事録を作成するといった役割分担でピッチを進めていきます。
一方で、ピッチがそのままマンデート(企業から業務の委任を受けること)に至るケースは非常にまれです。マンデートに至る経緯について、外資就活相談室の回答を一部抜粋してご紹介します。非常に詳しく解説されておりますので、ぜひ参考にしてください。
A 投資銀行が考えて、事業会社様に提案する案件
B 事業会社様の方で考えついたり、交渉を開始した案件
Aは、事業会社様が考えたことのない斬新なアイディア・全くご存じなかった情報に基づくM&Aやファイナンスの案件とお考えください。
Bは、事業会社様が日常の業界筋の付き合い等の中で発案されるM&Aの話や、内々に成長戦略を検討するうちに「こういう資金調達が必要だなあ」となるファイナンスの話とお考えください。
理想的な世界では、Aを多数考えて提案し、これについてマンデートを頂くことが投資銀行としては理想ですし目標とするところですが、現実的には、Bの案件のほうがはるかに実際の仕事になる数が多いと思います。そうなってしまう主たる理由は、事業会社様・業界の内外で情報の非対称性が大きいからです。(現実では上記Aを10件も20件もピッチしていると、ある日、ピッチしたそれらアイディアのどれとも違う全く別のBの案件についてご依頼頂くことが多かったように記憶しています)
③案件の執行
無事にクライアントからマンデートを獲得すると、一息つく間もなく案件の執行に向けた業務が開始されます。案件の執行にはIBDの中でも「プロダクト」という部隊が活躍します。
資金調達の案件には、「債券発行による資金調達」と「株式発行による資金調達」があります。
債券による資金調達では、発行総額・利率・償還年数などを債券市場の好不調や企業が以前に発行した債券の償還期限、対象とする投資家などを考慮しながら決定していきます。
一方、株式による資金調達では公募増資や新規上場(IPO)のサポートがメインです。株式の発行総額・発行価格・発行時期などに関して、企業のイベントや株式市場の好不調、発行後の既存株主への影響などを踏まえながらすり合わせていきます。
また、株式発行を行う場合は債券発行と比較して企業の置かれた内外の環境に影響を受けることが多いため、より時間や手間がかかる傾向にあります。これに関しても、外資就活相談室の回答を抜粋してご紹介させていただきます。
企業が調達した資金のうち、経営成績などによって無価値になる恐れがある資本のこと。主に、株主資本のことを指します。
*2 デューディリジェンス
対象企業の財務、成長性などを細かく調査・評価することです。
*3 エクイティストーリー
調達した資金の使途や今後の企業戦略のことです。エクイティストーリーをうまく作ることで、投資家に納得してもらい、株式発行への期待度を高めることにつながります。
*4 ブックビルディング
株式を新規発行する際の公募価格を決定する方法です。大きな機関投資家の意見をもとに仮の価格を決め、その価格をもとに投資家の需要予測を行い、公募価格を決定します。
また、M&Aの提案では主に他社の買収や自社の事業売却がメインの業務となります。このうち、他社買収であればデューデリジェンスを行う必要があります。そして評価が終わると、買収先の買収金額や統合に関する細かい調整をサポートすることになります。
このように、IBDの業務には、 案件の獲得から執行まで一貫して関わることができる という特徴があります。
次に、これまでの業務プロセスの中に出てきた、IBDの各部署について詳しく説明していきます。
IBDの中の部署
ここまでご紹介したように、IBDは大きく 「カバレッジ」と「プロダクト」 の二つの部隊に分けることができます。
カバレッジ
カバレッジは、企業に営業活動を行い案件を獲得する部隊です。具体的には 日々の顧客とのディスカッションなどを通して顧客から信頼を獲得し、クライアントが資金調達や買収合併を行うときにアドバイザーとして指名してもらうことを主眼としています。
カバレッジは、クライアントの業界に合わせていくつかの部隊に分かれています。ここでは、その一例を紹介したいと思います。
①FIG(Financial Institution Group)
銀行や保険会社などの金融機関を担当するグループ
②TMT(Telecom, Media and Technology Group)
テクノロジーやメディア、通信系の企業を担当するグループ
③GIG(General Institution Group)
上記以外の一般事業法人を担当するグループ
プロダクト
プロダクトは、 カバレッジが獲得してきた案件を遂行していく部隊 です。プロダクトも仕事内容によってさらに部署が分かれます。
①資本市場部
資本市場部は、 資金調達のアドバイザリーを行ったり、投資家にヒアリングを行ったりする部隊です。 クライアントの資金調達だけでなく、株式や債券の買い手である投資家とも積極的に関わり、その引受手数料を収益源としています。
さらに、資本市場部は主に二つに分けられます。
ECM(Equity Capital Market)
株式の発行を担うプロダクトチームです。 株式の発行は、社債の発行やM&Aより頻度は少ないものの案件ごとの仕事量が多く、慎重に実行しなければならない業務です。特に、その企業にとって初めての公募増資である新規株式公開(IPO)は、企業のライフサイクルにおいて大きなイベントであり、非常に多くの利害関係者との調整が必要になる仕事です。
ECMの収益源は株式や転換社債などの引受手数料です。ECMの業務は、後述するDCMと比較すると手間がかかる部分も多いですが、引受側の交渉力が強くなる傾向があります。そのためECMの1案件当たりの手数料は、DCMやM&Aの手数料と比較すると格段に高く、IBDにとって大きな収入源の一つになっています。
DCM(Debt Capital Market)
社債の発行を担うプロダクトチームです。 社債やその他の債券の発行は、株式の発行やM&Aと比べると頻度が高く、案件が豊富な部門です。
DCMの収益は社債の引受手数料です。一般に、ECMやM&Aと比較すると案件あたりの手数料は低くなります。しかし、債券の発行は株式の発行に比べて案件数が多く、業務もスピーディーに行われる傾向にあります。そのため、債券の発行引き受けはIBDにとって収益を安定させる業務の一つです。
②M&Aアドバイザリー部
M&Aアドバイザリー部はその名の通り、合併や買収のアドバイザリーを行うチームです。 買収に際して企業価値算定や買収金額の交渉のほか、複雑な買収スキームの策定、契約書作成などを担います。
M&Aチームは買収合併の手数料によって収益をあげています。手数料には、案件執行中に毎月受け取る手数料とM&Aが無事完了した時点で受け取る成功報酬の2種類があります。このうち毎月受け取る手数料は、オーダーの成功報酬と比べると非常に小さくなっています。したがって、M&AプロダクトチームはM&Aの成功報酬によって稼いでいると考えてよいでしょう。これがIBDが成果報酬型だと言われる理由です。
ここまでは、IBDの業務や構造について説明してきました。続いては、IBDの選考がどのように行われるのか、そして、どのような人材が求められるのかについてお伝えします。
IBDの選考フロー
選考フローは企業ごとに若干異なりますが、一般的な流れをご紹介します。
※なお、以下の情報は過去の就活生の体験レポートから構成した内容です。本年度の内容とは相違がある場合も考えられますのであらかじめご了承ください。
選考フローにはサマージョブ経由からと本選考からの2種類のフローがあります。本選考においてもウインタージョブと呼ばれるインターン形式の選考がありますので大きな違いはありません。 違いは時期と倍率 です。外銀IBDの内定者の多くはサマーインターン経由での採用です。企業によっては、サマーインターン経由でしか採用しないところもあります。したがって、本選考からの内定の方が圧倒的に倍率が高くなりますので、できればサマーインターンに参加して選考フローに乗った方が有利になると思います。
【サマーインターン経由】
①サマージョブ(インターン)選考(6〜7月)
8月に開催されるジョブの選考が行われます。エントリーシート、webテスト、グループディスカッション、1〜2回程度の面接を通過するとサマージョブへの参加が決定します。
②サマージョブ(8~9月)
多くの外資系投資銀行や日系の証券会社では、夏にジョブが開催されます。このジョブで活躍が認められるとリクルーターが付き、今後の選考を有利に進めることができます。
③面談(9~11月)
多くの外資系投資銀行や日系の証券会社では、ジョブ後に面談と称して社員の方とランチをしたりする機会が設けられます。ここでは、ジョブである程度評価されている学生が呼ばれるパターンが多いです。ここで、さらに人となりや志望度を確かめて、最終面接を受けても良いかどうかを判断します。
④最終面接(12〜1月)
最終面接は「スーパーデイ」とも呼ばれており、1日に5~10人程度の社員と1対1で面接することになります。
【本選考】
①ウィンタージョブ選考(10〜12月)
12月から1月にかけて開催されるジョブの選考が行われます。外資系投資銀行では、サマージョブ参加者の一部が選考で優遇されることもあります。選考内容に関しては、サマージョブ選考との大きな違いはありません。
②ウィンタージョブ(本選考の一環)(12〜1月)
外資系投資銀行では、このジョブが内定獲得への最大の山場となります。個人ワークやグループワークを行い、優秀と認められた学生だけが最終面接に進むことができます。
③最終面接(1〜2月)
最終面接は「スーパーデイ」とも呼ばれており、1日に5~10人程度の社員と1対1で面接することになります。
選考の大まかな流れは上記のようになりますが、webテストの形式や面接回数などは企業によって大きく異なります。そのため、自分の志望度の高い企業の選考フローは個別に情報をリサーチしておく必要があります。
IBDで求められる人材
IBDは専門性の高い職種ですが、 就職活動の時点からファイナンスへの深い知識が求められるわけではありません。 IBDに内定する学生の出身学部は経済学部のみならず、法学部、工学部などさまざまです。
その中でIBDでは主に以下の5つの特性を持っている学生が求められます。
①志望度の高さ
②論理的思考力
③数的センス
④コミュニケーション能力の高さ
⑤タフさ
⑥カルチャーフィット
以下ではこれらの能力について具体的にご説明します。
①志望度の高さ
IBDの業務は高給である一方、高い専門性・業務内容へのフィットが要求されます。そのため、IBDを目指す確かな動機・IBD業務への理解や金融業界への興味が求められます。
実際の面接でも志望動機を深掘りされますので、自身の経験も絡めた説得力のある志望動機が用意できるとよいでしょう。
また、面接時点では細かいファイナンスの知識は求められませんが、金融業界の現状や興味のあるM&Aの案件などに関して問われることはあります。そのため、普段からニュースや新聞に目を通し金融業界の現状をある程度知っておくとよいでしょう。
②論理的思考力
IBDの実務は、調査・分析・アウトプットのサイクルを高速で繰り返すことが求められます。
具体的には、新しい問題や課題をデータベースやネットワークを駆使して調査し、クライアントにとってのソリューションを考え、提案・アドバイスをすることが業務のフローとなっています。その仕事を高い質で行うためには、論理的な思考力が必要です。
したがって、 問題や課題の分析、ソリューションの分析・考察、クライアントへの説明など、全ての業務において高い論理性が求められます。
③数的センス
IBDでは多くの数字を根拠に業務を行います。そのため 数字の正確性へのこだわりや、数的に判断するセンスは必須です。
実際に、面接の中でも簡単な暗算やクイズが出題されることが多々あります。
複雑な計算が得意である必要はありませんが、計算結果を大まかにでも素早く予測できるなどの数的センスは持っていた方がよいでしょう。
④コミュニケーション能力の高さ
IBDの業務では、クライアントの依頼を正確に汲み取る必要があります。そのため、IBDでは特に 相手の求めていることを正しく理解した上で、それをきちんと提供する力 が求められます。
相手の持つニーズ、不満などを吸い上げるためには、相手の立場に立って考え、多様な価値観を理解することが必要です。また相手が満足するサービスを提供するには、内容の伝達方法、タイミングなどを的確に判断することも大切です。
⑤タフさ
IBDでは 体力・精神面でのタフさ が求められます。
まず体力面では、案件獲得に関わる資料作りや実行に際して徹夜や長時間の連続勤務が求められます。そのため、激務に耐えられるような体力が必要となります。
そして、精神面のタフさは体力面のタフさ以上に求められます。特に入社後は高いプレッシャーを受けながら働くことになります。
具体的には大量の仕事を短時間でこなさなければならない時間的なプレッシャーのほか、高いアウトプットを求められる品質へのプレッシャー、ミスをしてはいけないという正確性へのプレッシャーの中で業務を行うことになります。
そういった緊張感の中、膨大な仕事を抱えつつも淡々とこなしていくためには、精神的にかなりタフである必要があります。
体力的にも精神的にも非常に過酷な環境であるからこそ、案件を執行してクライアントに感謝された際の達成感は大きくなり、高いモチベーションにも繋がるのでしょう。
⑥カルチャーフィット
カルチャーフィットも非常に重要なポイントです。ここまでの5つの条件をクリアすると、IBDで働く能力があるかどうかはほぼ認められています。
最後のピースは、 「自分の会社に合うかどうか」 です。企業ごとに社風の違いがあり、うちの会社のメンバーとうまくやっていけそうか、すぐ馴染めるかなどカルチャーにフィットしそうがどうかも重要な選考基準です。
インターンや面談を通して感じた、社風をしっかりと頭に叩き込んでそこからズレのない回答ができると面接での評価はさらに高くなります。
今後は個人的な対策を進めよう
今回はIBDについての説明をしてきました。IBDの業務や求められる人物像に関する理解は深まりましたでしょうか。
本記事をお読みいただいた後、投資銀行各社ごとの特徴を調べていただければ業界研究がさらに進むことでしょう。ぜひチャレンジしてみてください。
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