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世界保健機関の2021年2月末時点のまとめによると、新型コロナウイルスの累計感染者は世界で1億1000万人を超え、死者数は250万人に上る。この約1年間、外を歩けば道行く人のほとんどがマスクを着け、スマートフォンやテレビの画面越しに見る“地球の裏側”の光景まで「コロナ一色」となった。

まさに「全人類の危機」といえる深刻な事態。この状況に、外資就活ドットコム・Liiga会員に関係の深い、戦略コンサルティングファームや投資銀行はどう向き合ってきたのか。

通常、個々のプロジェクトの詳細は明かされない。それゆえ、コロナ危機下でも、ともすると「業界レポートの発行」や「寄付・支援金の拠出」といった活動ばかりが目立ちがちだ。

コンサルや投資銀行のプロフェッショナルは、その「本業」でコロナとどう闘ったのか。格闘の舞台裏を描いた。

※外資就活ドットコムとLiigaでは定期的に2サイト合同の特集記事を配信します。



新卒で外資系戦略コンサルティングファームに入社した若者は、新型コロナウイルスによる危機にどう立ち向かったのか。特集「外資戦略コンサル・投資銀行は、新型コロナとどう闘ったか」の初回は、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の5年目社員・松井裕里香氏にスポットライトを当てる。

日本で最初の緊急事態宣言が出されていた2020年5月某日。松井氏が向き合っていたのは、日本を代表する生産財メーカーの企業再生プロジェクトだった。【丸山紀一朗、橘菫】

 

市場予測が「月単位で大幅に変動」。大混乱の中での経営計画見直し

「この数字をどう見ればいいのか……」。松井氏が目にしていたのは、市場予測の最新版レポート。平常時は年単位でもあまり変わらない予測値が、このときは月単位で大きくぶれていた。いつの段階の数字を使うかによって、プロジェクトとして導き出す最終的な値が大きく変わってしまうという“非日常”を実感した松井氏。「本当にこの先どうなるのだろう……と、日々葛藤していた」。

松井氏が担当していたのは、グローバル展開をしている日本の大手生産財メーカー。過去に海外企業を買収したが、その後の統合作業がうまくいったとは言い難かった。当初期待していたシナジー(相乗)効果が見られない状態が続いていたところに、今回のコロナ危機が追い打ちをかけた。

コロナが猛威を振るっていた欧州を中心に、複数の数百人規模の工場が稼働停止。大きなところでは千人を超す規模の工場も止まり、元々悪化していた経営状態がさらに困窮した。

このように「クライアント側は大混乱」(松井氏)の状況下。企業再生を見越した当面の運営資金として銀行からの支援を取り付けることが、このプロジェクトのゴールだった。「支援を獲得するために、クライアントの作った中期経営計画を検証し、目標数字などを現実的な水準に見直す。いわゆるバリデーションが私の主な仕事だった」。松井氏はその当時を振り返る。

「土木」の道からコンサルへ。インターンでの出会いがきっかけ

松井氏は、2016年に東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻を修了した。学部時代から同大学で土木技術について研究し、将来は発展途上国のインフラ開発に携わりたいと考えていた。

しかし、修士1年のときに参加した国際機関でのインターンシップが将来の道を変えた。「そのインターンでBCGのアルムナイ(同窓生)と出会い、『コンサルは広範な問題解決能力が身につく。行ったら面白いのでは』と聞いた」。そこで戦略コンサルに関心を持ち始め、最終的にBCGに入社することになった。

入社後は、消費財関連のクライアントが多めでありながらも、「幅広い業界を見たい」という本人の希望に沿う形で、複数の異なる産業領域における戦略策定などの案件を経験。入社直後のアソシエイトから、経験を積んで、この案件当時はコンサルタントにまで昇進していた。

あえて厳しい質問をすることも、クライアントのためには必要だった

この生産財メーカーの企業再生案件が特異だったのは、プロジェクト全体に漂うシビアな空気感。無論、一般論として、成長戦略を描くようなポジティブな案件に比べ、再生系のプロジェクトでは連日厳しい議論をクライアント側と行うことが増える。しかし一般的なそれに加え、コロナ禍という先の見通せない環境がこの案件のシビアな雰囲気を一層重くしていた。

「事業売却や、リストラが必要な人数まで検討せざるを得なかった。見れば見るほどクライアントが想定している数字より悪くなりそうな状況だった。しかし、会社が存続するためには何とかして銀行からの支援を得なければならない。そのためには現実的な数値を取得することが必要だった」

BCGでこの案件に関わっていたのは10人以上。通常の規模のプロジェクトでは、責任者となるパートナーが1人で、その下にプロジェクトリーダー1人、それに加えメンバーが2~3人という程度のチームが一般的。今回はそれが2チーム分。さらに、社内会議に参加するアドバイザー的な立ち位置のパートナークラスの社員も数人いた。松井氏は、クライアントの大きな1つの事業領域の計画見直しを担当した。

日々のヒアリングで、クライアントとのやり取りの最前線に立ち続けた松井氏。提示されるデータについて、その数字の妥当性を突き詰めて、クライアントと毎日数時間にわたる検討を行った。

「『ここはどうなっているのか』『この部分は実行できていないのでは』『こちらのデータを使うと、この規模には達しないのではないか』といった、厳しい質問も時には必要だった。正しいバリデーションにつなげることが最終的にクライアントのためになると信じていた」

真っ向からの質問に対し、クライアントの担当者の中には、「何でこんな質問をしてくるのか」とあからさまに回答に難色を示す人もいた。緊急事態宣言は解除されたものの、クライアントとの会議はほぼオンライン実施という状況。松井氏にとって初の“完全リモート”のプロジェクトだった。「クライアントが物理的な距離としては近くにいるにもかかわらず、直接顔を合わせて議論することができないという経験は過去になかった」と、当時のもどかしさを振り返る。

銀行側との交渉で第三者としての価値を発揮。不確実性の高い状況も「チャレンジ」

さらに、冒頭で触れた通り、市場予測のレポートの数字も月単位で大きく変わってしまうような“異常事態”。支援を得るための銀行との交渉も、平常時とは異なる難しさがあった。

「銀行側には、『今の時点ではこう見立てている』ということを根拠と共に示し続けた。『前回は5月のデータを使ったが、今回は最新版の数字にアップデートした』といった具合に、納得感を持ってもらえるよう丁寧なコミュニケーションを心掛けた」。銀行相手にこの業界の特徴や構図を基に議論するといった点で、“第三者”としてのコンサルの価値を出せたと語る松井氏。不確実性が高く困難な状況にも、「チャレンジングだった」とポジティブに受け止める。

BCG社内ではどのような議論が行われていたのか。「まずはBCGがグローバルでアップデートを続けている各業界へのコロナの影響予測がある。『楽観的』や『悲観的』など数種類のシナリオで予測値が示されている。さらに業界ごとの市場レポートも参考にする。それらなどを突き合わせ、『これはさすがに悲観的すぎるから、もう少し上に見てもいいのでは』とか、『今回はこのシナリオでいくから○%の影響と見立てよう』といった話をした」(松井氏)。

「工場閉鎖」という厳しい選択肢。シビアなコミュニケーションは企業存続のため

松井氏がこのプロジェクトに関わったのは約2カ月間。そのうちの後半は、さらに厳しい議論がクライアントとの間で交わされた。具体的な再生プランを策定していく段階で、一部の工場の閉鎖が避けられないことが分かってきたのだ。クライアントが元々有していた再生プランはあった。しかし、それよりもさらに踏み込んだ対応をしなければ会社の存続が危うかった。

「例えば『この工場ならば閉鎖しても影響は大きくないのでは』と伝えると、『そこがなくなれば地域における競争力を失う。そちらが言うようなインパクトでは済まない』といった反応がクライアントからあった。さらに『仮でもいいので閉鎖した場合の予測値を出してほしい』と求めると、『100%あり得ないことの数字など示せない。出す意味などないのではないか』と言われたこともあった」

そんなシビアなコミュニケーションをどう乗り越えたのか。クライアントの東京本社を含む会議にはCxOクラスの面々がそろって出席することもあり、どうしても厳しい内容にならざるを得なかった。「ただ、現場の担当者と話すときは暗い雰囲気を少しでも明るくするためにアイスブレイクを多少交えたりすることは意識した。『今後の会社の成長のためだから』ということや、『銀行支援を獲得するため、会社が生き延びるために必要だから』ということを時間をかけて理解してもらう必要があった」(松井氏)。

BCG社内でも、雰囲気が必要以上に暗くならないよう工夫した。プロジェクトメンバーとも、本音で会話できるような息抜きの場を週に1度は設けた。多くのメンバーがリモートワーク中心だったため、コミュニケーションの効率が低かった部分については、社内での成功事例などを参考に情報共有の方法を変えるなど日々改善を重ねた。

また、そうした厳しい状況下でも高い成果を上げるのだというプロフェッショナルマインドも、松井氏を支えていた。「クライアントの期待を裏切りたくない。そのためにロジックをできる限り詰めるといった準備もすれば、仕事に対する自分の納得感を少しでも高めようと努めもする。私はプロフェッショナルファームとしてのBCGが好きだし、プロフェッショナルとして働くことにチャレンジしたいとずっと思っている。それが心のよりどころだった」(松井氏)。

不信感を示していた担当者の姿勢に変化が。コンサルタントとしての幅を広げる学びも

そうした努力の末、プロジェクトの終盤に印象的な場面が訪れた。前述した「何でこんな質問をしてくるのか」と不信感を表していたクライアントの担当者が、松井氏に対する理解を示してくれるようになった。

「いつもは基本的にクライアント側2~3人と私とでミーティングをしていた。しかしその日は、その方が『今回は1対1でミーティングをセットしよう』と。個別に時間を取ってもらえた上に、それまでなかなか明らかにならなかった部分の数字について、協力的に話してもらえた。クライアントの姿勢に変化が表れたことにやりがいを感じた」

2カ月の間に銀行による支援が決定するところまではいかなかったが、その前段階としてクライアント組織のトランスフォーメーションや事業改革の案を提示するところまでこぎつけた。結果として、銀行との交渉が継続できるようになり、その後もこのクライアントへのコンサルティングは続くこととなった。

松井氏はこのプロジェクトを通じて、コンサルタントに必要なコミュニケーションスタイルを新たに1つ学んだという。「パートナーやプロジェクトリーダーから『松井さんはストレートに、シンプルにものを言って相手の信頼を得ていくのは得意。でもそのやり方が通じない場合もある』とフィードバックを受けた。確かに、こちらからの提案などが、クライアント側から何となく押し返されて終わってしまうこともあった」。

そんなときはどうすべきなのか。「基本的なことだが、その時間内に達成したいこと、必ず取りたい情報と意図を明確にしておくこと。そうすれば一度押し返されそうになっても、別の角度から間接的に聞き直したり、時にはギアを入れ替えてあえて厳しい質問をしたりすることで、目的を確実に果たすことができる」(松井氏)。コロナによる未曽有の危機の中で進められた案件が、松井氏のコンサルタントとしての幅を広げたようだ。


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