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はじめに
こんにちは、外資就活 外銀チームです。
今回も、前回に引き続き外資系投資銀行(以下、外銀)の選考で聞かれることの多い「気になるM&A案件は?」という質問にどうやって答えたらいいのかを解説します。
ただ、前回の記事と同様に最近の各社の案件を紹介しても、ただ知識がつくだけのコラムとなってしまいます。そこで、今回はコラムの最後に実際に 「気になるM&Aは?」と聞かれた際の具体的な解答例 をいくつかご紹介します。
最近の外銀各社が行った案件一覧
まずは、前回の記事に引き続き、外銀各社が最近行ったM&A案件をご紹介します。自分で調べるとかなりの時間がかかりますので、興味を持ったM&A案件だけを調べる、志望先企業が担当した案件に対してだけ詳しくなっておく、というように面接までの限られた時間を有効に使うようにしましょう。
J.P.モルガン
2018/4/19 武田薬品工業 シャイアー買収
<買収額>:83864億円
<武田薬品>:JP
<シャイアー>:モルスタ シティ GS【資金調達方法】:現金と株式の組み合わせ。買い手会社(武田)の株券を「通貨」として使った買収。
【シナジー】:製薬業界は「規模」がシナジーを生み出す典型的な業界。即ち、新商品である新薬の開発には莫大な資金と時間が必要で、かつそれは成功確率が3万分の1と言われるほど低く、大きな資金力・財務基盤がなければ勝負をし続けることができない。そしてひとたび製薬に成功すると世界中の国々で認可を得て販売できるようになり大きな富をもたらすわけですが、そのためには世界中に認可取得と販売のネットワークを築くことが必要です。より多くの新薬を持てば持つほど販売インフラは効率的で収益力が上がるという事業構造です。
【デメリット】:今回の借入金が加わると総額6兆円と、かなりハイレバレッジな、つまり財務破綻するリスクの高い財務構造となります。事業が生み出すキャッシュフローの多くが借り入れ元本と利息の返済に充てられることは、将来の新薬開発投資の足枷となり成長の制約要因にもなりかねない。
ニュースでも有名になった巨額のM&A案件ですが、武田側はJ.P.モルガンが担当しました。 医薬業界のM&Aはゴールドマン・サックスが強いといわれている中でJ.P.モルガンが担当した理由などを聞いてみるのもありだと思います。
ちなみに、とにかく額が大きく、有名な案件なので、他の学生が面接で話す可能性が高いため、この案件は最低限の知識として留め、これ以外の案件についても調べておくといいでしょう。
バンクオブアメリカ・メリルリンチ
2016/8/31 JXホールディングス 東燃ゼネラル石油買収
<買収額>:6463億円
<JXホールディングス>:シティ
<東燃ゼネラル石油>:メリルリンチ モルスタ【シナジー】:ブランドの一本化により消費者の利便性を高めると同時に、経営の効率化につなげる。
【デメリット】:供給戦略を巡る考え方の違いをどう埋めるかなど多くの課題が待ち受ける。もともと規模の利益を追求してM&A(合併・買収)を繰り返してきたJXと、製油所の運営効率の高さを競争力の源泉としてきた東燃ゼネラルの事業戦略の違いは大きい。取引先との関係維持も課題となる。これまで東燃ゼネラルから年間300万キロリットル規模の燃料油を調達してきたキグナス石油(東京都中央区)は、JXTGにのみ込まれることへの警戒感から、仕入れのほぼ全量をコスモエネルギーホールディングス(HD)グループに切り替えた。同様な離反が続くことになれば、製油所の稼働率がさらに低下する。
In-OutのM&A案件に強みを持つメリルリンチですが、この案件に関してはIn-Inです。更に多くの外資系投資銀行が絡んでいるなど、額の割には多くの投資銀行を巻き込んだM&A案件です。
おそらく これだけ外資系投資銀行が絡んでくるということは、この案件特有の難しい点があったと思われます。そのため、事前にこの案件について良く調べ、面接で他の学生が思わないような点に疑問を投げかけられるようにすると有効でしょう。
これだけ外資系投資銀行が絡んでくるということは、この案件特有の難しい点があったと思われます。そのため、事前にこの案件について良く調べ、面接で他の学生が思わないような点に疑問を投げかけられるようにすると有効でしょう。
UBS
2016/7/18 ソフトバンクグループ ARM買収
<買収額>:32424億円
<SG>:その他(みずほ)
<ARM>:GS UBS
【資金調達方法】:中国アリババの一部株式売却のほか、フィンランドのスーパーセル、日本のガンホー・オイライン・エンターテイメントの株式売却により、約2兆円の資金を調達。こうしてできた手元資金の2兆3000億円に加えて、みずほ銀行から1兆円の融資を受けるが、これはブリッジローン(つなぎ融資)であり、「買収資金は全額確保している」とする孫正義社長の発言は、すべて自らの資金で賄うという意味が込められている。
【シナジー】:ARMは独自の基盤技術を保有するマーケットリーダーであること、モバイル、エンタープライズ、IoTといった巨大市場においてさらに成長するポテンシャルを持っていること、長期的な潮流に対して投資するというソフトバンクグループの戦略に適合していること、ARMが非公開企業として、長期的、戦略的に投資できること
【デメリット】:ARMを得たソフトバンクグループは、ARMから得た知見を基にしながら、設立したばかりの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を活用し、将来を見越して必要な技術を持つ企業に投資する狙いがあるものと考えられる。ARMの持つ資産や価値をどこまで生かせるかが、ソフトバンクグループの将来に非常に大きく影響してくるといえそうだ。
最近何かと話題になるソフトバンクが関係している案件です。年度自体は少し古いものですが、かなり特殊な資金調達方法のスキームということで有名になりました。現在のソフトバンクの事業戦略と合わせて面接で話すと有効でしょう。
バークレイズ
2018/4/29 TモバイルUS スプリント買収
<買収額>:63987億円
<TモバイルUS>:モルスタ GS バークレイズ
<スプリント>:JP【資金調達方法】:株式交換
【シナジー】:「コストの低減とともに規模の経済を確保することにより」サービスの価格を下げることが可能になると主張される。5Gへの移行に向けて400億ドル(約4.4兆円)を投じるほか、従業員数は別々に事業を行うより増える見通しで、数千人の雇用が創出されるとしている。また、経営統合によって「2社が別々に行うよりも迅速に、高密度かつ広いエリアをカヴァーする5Gネットワークを構築することが可能」という。
【デメリット】:今回の合併でキャリアの数が少なくなって消費者の選択肢が減るだけでなく、市場全体にとっても適正な競争が機能しなくなることが懸念。
武田の買収の話でやや影が薄くなっている感じもありますが、エクイティに強みを持つバークレイズが活躍したM&A案件でもあります。多くの企業が関与して株式調達が行われたため、どのように担当する株式を分配するのかなど、バークレイズの社員の方が詳しい分野の質問をすると有効でしょう。
実際に面接で話す場合の想定問答例
最後に、「実際に面接で気になるM&Aを聞かれた際の答え方」の具体例を解説します。
今回はスタンダードな例として、「武田薬品のM&A案件」を回答する場合について紹介しましょう。今回は2つのパターンの答え方を紹介・解説します。自分の専攻や興味、金融知識と照らし合わせて、どちらの戦略を選択するか決めておきましょう。
答え方(1)
面接官「最近気になったM&A案件は?」
学生「今年の4月に行われた武田薬品のシャイアー買収案件です。莫大な借り入れによる資金調達ということで、武田薬品もB/Sが大きく悪化するのはわかっていたはずです。ただ、それでも勝機があると考えた武田薬品の意思決定プロセスに、投資銀行はどのように提案し、どのように関与したかは是非知りたいと思っていました。」
このように、クライアントの視点だけでなく投資銀行の視点を踏まえて答える形がオーソドックスな答え方でしょう。
一方、ある程度金融知識に自信があり他の学生と差別化したいと考える学生の場合は、以下のような答え方もあります。
答え方(2)
面接官「最近気になったM&A案件は?」
学生「今年の4月に行われた武田薬品のシャイアー買収案件です。武田の買収の意図として、研究開発機能を強化したい、販売インフラを強化したいと考えがあるのは自明です。ただ、買収でいらない部門や機能も買ってしまうこととなるので、PMIでこれらをどう処理するかに興味があります。」
例えば上記のような答え方です。ちなみに、このように回答すると恐らく、
面接官「では、どのように要らない部門や機能を処理すると思う?」
といったように質問されることでしょう。是非続けて、自分の金融知識を基に自分なりの見解を堂々と述べ、他の学生と差別化してみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
外銀で聞かれる気になったM&A案件に関する質問も、意外と各社で担当している案件が違うため、選考を受ける会社ごとにマイナーチェンジが必要です。
しっかりと各社の行った案件を整理し、そのうえで相手の面接官の印象に残るような受け答えをしましょう。
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