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外資系のコンサルティングファームや投資銀行で課される「ケース面接」。実際の面接に近い形式で、就活中の学生が模擬演習に挑戦するシリーズの第4弾をお送りします。
今回も面接官役は、外資系コンサルでの経験をもとにケース面接の指導を行なっているマツモトさん(仮名)。コラム【プロによる実践講座】の執筆者でもあります。
一方、模擬演習に挑むのは、第2弾にも登場した東京都内の私立大生のオサムさんです。今回は「あまり利用したことがない」というクリーニング店の問題に苦戦しながらも、多くの有益なフィードバックをもらいました。
二人のやり取りをできるだけ忠実に再現します。ぜひ、問題に対する解答を自分の頭で考えてから、マツモトさんのフィードバックを読んでみてください。
問題「クリーニング店の売上を上げる施策を考えよ」
マツモト:今回の問題は、個人経営のクリーニング店がテーマです。クリーニング店の売上を推定し、それを上げる施策を考えてください。
オサム:わかりました。考える時間を5分、いただけますか。
マツモト:はい。
(5分経過)
オサム :まず、個人経営のクリーニング店ということで、場所は自分の住んでいる東京の三鷹をイメージしようと思います。
マツモト:三鷹のクリーニング店とは、どのような感じなんですか?
オサム :三鷹は住宅街なので、その中に位置するイメージですね。
マツモト:もう少し具体的に教えてください。たとえば、どのような立地でしょう?
オサム :駅の近くに立地しているイメージです。駅から5分以内のところに立地していて、近くには商店街もあります。クリーニング店は1階にある想定です。
マツモト:わかりました。続けてください。
クリーニング店の売上の構成要素は?
オサム :次に、クリーニング店の売上を構成するものを大まかに考えると、洋服のクリーニングが挙げられると思います。その中に様々なものがあり、たとえば、ワイシャツなどの「洗いやすいもの」や、スーツなどの「洗いにくいもの」があります。
マツモト:それだけでしょうか?
オサム :そこなのですが、ワイシャツとスーツ以外のものについて、ちょっと行き詰まっています。
マツモト:ほかにもいろいろとクリーニングに出しませんか?
オサム :たとえば、「型崩れしやすい服」か、「型崩れしにくい服」で分けて考えてもいいかと思います。
マツモト:わかりました。いったん、そのまま進めてもらえますか?
オサム:はい。次に、お客さんのセグメント分けをしようと思います。まずは、ビジネスマンなどの「個人」と、工場労働者の服をまとめてクリーニングに出すような「法人」が挙げられると思います。
マツモト:はい。
オサム:そして、「個人」の売上は、「顧客数」「顧客単価」「営業時間」の3つの要素が関係してくると思いました。これらについて、もう少し詳細に考えます。まず、「営業時間」は朝・昼・夜の3つで考えていきたいと思います。朝は9時〜12時、昼は12時〜13時、夜は13時〜18時に設定します。
マツモト:なぜ、1日をその3つに分けたのですか?
オサム :夜に関しては、仕事終わりにまとめて洗濯物を出すイメージで、ビジネスマンの利用が多くなると思いました。昼は洗濯物を整理する時間帯を考えると、主婦の利用が多くなり、朝は出勤に合わせてビジネスマンの利用が多いかなと思いました。
しかし、いま発言していて思ったのですが、夜の13時〜18時の時間帯は、ビジネスマンの利用を考えると、もう少し営業時間を伸ばしたほうがいいかもしれません。
マツモト:9時〜12時は、本当にビジネスマンが多いのでしょうか?
オサム :たしかに、その時間帯だと、ビジネスマンはすでに出社している人が多いと思います。
マツモト:13時〜18時の時間帯については、たしかに、もう少し営業時間を伸ばしたほうがいいと思います。では、もう一度、時間帯を振り分けてもらえますか?
オサム :改めて考えてみると、閉店時間が21時であると想定して、夜の時間帯は19時〜21時であると設定を変更したいと思います。そうなると、時間帯は朝(9時〜12時)、昼(12時〜13時)、午後(13時〜19時)、夜(19時〜21時)となります。
マツモト:わかりました。
想定した「顧客数」は現実的か?
オサム :これらの時間帯について、それぞれの「顧客数」を考えます。1時間あたりにどのくらい訪れるのかを切り口にして考えていきます。まず、朝から夕方の9時〜19時の10時間は、1時間あたり10人訪れるとします。そして、夜の19時〜21時の2時間は、仕事を終えたビジネスマンが来るのを考えて、20人訪れるとします。
「顧客単価」については、朝と昼と午後は、主婦が顧客の中心と考えました。主婦が預けるものは、色移りのしやすいものやご主人のスーツなどが挙げられます。以上の点を考慮すると、2000円くらいかなと考えます。夜は、顧客の中心は独身のビジネスマンだと考えました。日々忙しくて洗濯する時間が少ないことを前提にすると、洗いにくい洗濯物のほとんどを預けるのではないかと考えました。洗いやすいものとしてはワイシャツを2着、洗いにくいものとしてスーツを1着預けるものとして、「顧客単価」は4000円と考えます。以上の点を考慮して、計算していきます。
(計算する)
オサム:36万円になりました。
マツモト:計算で出たその数字はどのような印象ですか?
オサム :ちょっと高いかなと思います。
マツモト:なぜ高くなってしまったのでしょうか?
オサム :そうですね・・・
マツモト: そもそも、19時から来る20人のお客さんをさばけますかね?
オサム :少し難しいと思います。
マツモト:それはなぜでしょう?
オサム :1時間で20人なら、3分に1人の計算になりますが、夜という時間帯と三鷹という場所を考えても、ちょっとありえないかなと思います。
マツモト:その視点もあるのですが、もっと根本的な理由もあると思います。今回おいた顧客数は、客単価が設定されているため、衣服を預けるお客さんの数を計算していると理解できると感じます。しかし、支払いのないお客さん、それ以前に服を預けていた人が受け取りに来ることも考えなくてはなりませんよね。なので、預けに来るお客さんのみで夜1時間あたり20人だとすると、実際にはその倍程度のお客さんが店に来てしまうでしょう。
ちなみに、預けることと受け取ることを同時に行っても、それぞれを別のお客さんだと数えています。両方一緒に行ったとしても、必要時間が短縮されるわけではないので。そうなると、個人の店はレジが通常は1個しかないので、1人当たり1.5分とかで処理することになります。これは、物理的に厳しめのような気がします。
オサム :なるほど。
マツモト:ほかに気になった点はありますか?
オサム :朝から夕方のお客さんの構成がざっくり過ぎたかなと思いました。例として主婦を挙げたのですが、ほかにも学生や年配の方も来るかと思いました。
クリーニング店の売上を向上させる施策とは?
マツモト:わかりました。では、売上を上げるにはどうしたらよいでしょうか?
オサム :現状はこのように計算しましたが、個人のクリーニング店にお客さんがくるまでに、どのような段階があるかを考えようと思います。そして、段階は3つあると考えています。
1つ目は「店を知っているか?」。2つ目は「店に魅力があるか?」。具体的には、料金の安さなどですね。3つ目は「店に来る際に障害となるものはないか?」。具体的には「アクセスがいいのか」が挙げられますが、今回は駅の近くの設定なので、この点はそれほど考慮しなくても良いと考えています。以上の3つの段階について、問題点がどこにあるかを細かく分析していきます。
まず、「店を知っているか」についてですが、今回は三鷹の住宅街にある店なので、地元のファミリー層やビジネスマンにすでに知られていることを前提として良いと思います。ただ、あえてこの店の存在をもっと知ってもらうことに注力するのであれば、広告に力を入れることが手段として挙げられると思います。たとえば、SNSを利用してインフルエンサーにアプローチして、存在を広く知ってもらうことがあると思います。
マツモト:SNSを利用することで、本当に存在を知ってもらうことによる売上アップが見込めますか?
オサム :ただ単にSNSを利用するだけでは、広く知ってもらえるか疑問の余地が残ると思いますが、SNSの使い方しだいでは、お客さんに広く知ってもらうことが可能だと思います。たとえば、インフルエンサーにアプローチして、その方々のSNSで店を紹介してもらうことなどが挙げられます。SNSは基本的に利用料金が無料なので、コスト面でも利用する価値はあると考えます。
次に「魅力があるかどうか」ですが、「質」と「量」に分けて考えたいと思います。たとえば「質」は、「クリーニングをした結果、どの程度きれいにしてくれるのか」という点です。「量」については、「クリーニングの代金はどの程度安いのか」などが挙げられます。
マツモト:「質」に関しては、それだけですか?
オサム :あとは、経営者の人柄などが挙げられると思います。
マツモト:なるほど。では、さきほど挙げてもらった3つの段階のうち、1つだけ打ち手を提案するとしたら、どの段階に着目しますか?
オサム :まず着目するべきは「存在を知ってもらう」段階だと思います。
マツモト:その理由は?
オサム :三鷹の個人経営店であることを考えると、経営者は年配の人であると思います。年配であれば、広告でSNSを利用している人は少なく、お客さんも年配の人が多いと考えました。そこで、SNSを利用することで、それ以外の若い年代をターゲットにできると考えました。
マツモト:なるほど。わかりました。それでは、最後に言っておきたいことはありますか?
オサム :今回のケース面接では、顧客の対象を主婦やビジネスマンに限定してしまったり、顧客の単価を2000円にしたりと、少し大雑把になりすぎたと反省しています。
マツモト:では、やり直すとしたらどうしますか?
オサム :たとえば、顧客を4つに分類します。学生、主婦、ビジネスマン、年配の4つにします。そして、それぞれがどのようなものをクリーニング店に預けるかをもう少し考察して、「顧客単価」を決めたいと思います。
マツモト:それぞれの「顧客単価」を決めたら、それをどのように利用しますか?
オサム :次に、時間帯に応じて、それぞれ4つの顧客がどの程度クリーニング店に訪れるかを考えたいと思います。
マツモト:わかりました。ありがとうございました。これで面接を終わります。
オサム :ありがとうございました。
面接官のフィードバック「商圏の視点を持とう」
マツモト:さて、フィードバックですが、今回は様々な議論すべき論点や、有用な視点が抜け落ちており、根本的に厳しい気がしますね。
オサム :そうですか・・・
マツモト:仮に、クリーニング店の新規開店を検討する場合を考えてみましょう。まず、どこに出店するかを考えると思います。その上で売上のシミュレーションをするわけですが、今回のようには計算しないでしょう。私ならば、まず商圏を設定して、その中に住んでいる人の数を想定して、それをもとにシミュレーションしますね。
オサム :商圏ですか?
マツモト:たとえば、東京の市街地に住んでいる人であれば、クリーニング店でもコンビニでも、わざわざ10分以上歩いて店に行かず、近場の店舗で済ませますよね。そもそも、基本的に、料金やサービスの違いが小さい業界だと思われますので、一番近いお店に行く人が多いように思われます。つまり、徒歩3、4分の距離で「商圏」を設定するわけです。そして、その範囲に住んでいる学生やビジネスマンなどの数を推定して、売上を計算するという流れですね。
以上のように、クリーニング店というビジネスにおいては、商圏が「地理的に近いエリア」に限られるという視点が非常に重要です。フェルミ推定では別の方法で計算してもよいかもしれませんが、売上向上施策を考えるときは、商圏の考え方を抑えておくべきでしょう。
オサム:なるほど、わかりました。
商圏が小さければ、認知度アップの方法も制限される
マツモト:その観点からすると、認知度アップの施策において、SNSなどのマス広告を使うのは、ほとんど意味がないと思いますね。今回は個人経営の店であり、チェーン店ではありません。クリーニング店は、客がわざわざ服を持っていかないといけないので、徒歩圏内の店に通うのが普通で、よほど特別な価値がないと、遠くにある特定の店までは行かないでしょう。もし個人のクリーニング店の認知を上げたいならば、ミクロ的な視点による認知向上が必要です。
オサム :ミクロ的な視点とは、どのようなやり方でしょうか?
マツモト:地理的に対象を絞った方法ですね。たとえば、看板ですね。あるいは、開店したばかりであれば、ビラ広告とか。いずれにしても、お店の近くに住んでいる人の認知度をアップさせなければ、意味がありません。一方、SNS広告は、地理的にエリアを絞った認知度アップは厳しく、無駄が大きいでしょう。チェーン店全体のブランド認知度アップならともかく、個別店舗の認知度アップにおいて、SNS広告は、コストパフォーマンスの観点から見て不向きでしょう。
オサム :なるほど。
マツモト:もちろん、そのクリーニング店がほかでは提供できない、高い技術力などを持っているのであれば、例外的に、商圏が徒歩圏内とは限らないので、認知を広げるのも効果的でしょうね。
クリーニングの利用形態はいろいろあり、それぞれ性質が異なる
マツモト:他の視点だと、男性の場合、ワイシャツとスーツ以外にも預けるものはあると思いますよ。たとえば、冬場のコートとか。また、男性の年配の人は、私服のジャケットなどを預けますよね。年配の人は高価な服を持っている傾向があるので、若い人よりクリーニング店を利用する頻度が高いとも言えるでしょう。では、女性が預けるものについては、想像できますか?
オサム :そうですね・・・(困惑)
マツモト:たとえば高価な服やスカーフなど、シルクなどの素材のために洗濯機で洗えないものが挙げられますね。また、結婚式などフォーマルな場の衣装はクリーニング店に預けますね。女性の服は、少し高いものになると、たとえ私服であっても家で洗えない、クリーニング必須の服が多いでしょう。このように、意外とたくさんあります。今回、オサムさんはそのあたりの想像ができていなかったかなと思います。
オサム :そうですね。
マツモト:このようにクリーニング店に預けるものを想像していくと、売上の大部分を占めるものは限られてきます。男性は、ワイシャツとスーツやコートを預けるかもしれないけれど、コートは冬が終わった後に預けるだけでしょう。現状の売上だけでなく、潜在的な売上を見ても、その金額は微々たるものだと考えられます。
また、女性は、服装にかなり気を使っている人は、私服であってもクリーニングに預けることが多いでしょうから、お店全体の売上の大きな割合を占めている可能性が高いです。今回の場合、場所が三鷹なので、よりその可能性が高そうな気もします。
一方で、若い人や子育て中の主婦であれば、汚れることを前提に、ファストファッションなどの安い服で済ませる人もいるかと思いますので、頻繁に利用することはなさそうですよね。ケース面接的な視点で話してしまえば、そこに着目して、服装に気を使う人・使わない人を50パーセントずつで設定するなどという考え方もあるかもしれません。
オサム :なるほど。
服のクリーニング以外にも、サービスの候補は存在する
マツモト:ちなみに、クリーニング屋のサービスは他にもあり得ます。たとえば、ふとんのクリーニングもありますよね。あと、冬服の保管サービス。女性は服が多いので、保管が大変です。実際に自分が利用していなくても、女性のニーズを考えてみると想像できるんですよね。ほかにも、男性と比較して、女性は白い服など薄めの色の服を持っていることが多いので、シミ抜きなどの追加サービスの需要が大きいのではないか、などですね。具体的な利用シーンをイメージできるかが、非常に重要です。
特に、今回のクリーニング店は、三鷹という住宅地にあるので、ふとんのクリーニングは十分にあり得ると思います。また、三鷹は地価の高い東京にあるため、家や部屋が狭い場合も多そうですので、服の保管サービスも十分にあり得るでしょう。このように、三鷹という前提は、オサムさん自身が設定した条件ですので、しっかりとその特徴を加味した分析をしたいところです。
オサム :私はイメージすることができていないんですね・・・
マツモト:これも訓練です。普段から考える癖をつけましょう。私ならば、今回のケースは、まず主婦目線で想像して考えますね。三鷹という土地柄からすると、所得が高い人達が集まっていると思うので、高付加価値のサービスを考えます。
今回、立地が三鷹の住宅地であるという前提を置いているので、ふとんのクリーニング、衣類保管サービスともに、候補として面接官に提示したいところです。これは、打ち手の考案という意味だけではなく、フェルミ推定の時点でも、一応このようなサービスがあるという形で提示するイメージです。さすがに、現状の売上が小さいと思われるので、具体的な売上額を算出する必要はないと思いますが、要素を漏らしていないことを伝える意味で、面接官に提示しておきたいですね。
クリーニングの「質」にも様々ある
オサム :クリーニング店の魅力として、「質」と「量」の話をしていましたが、他にもあるでしょう。例えば、牛丼だと「早い」「安い」「うまい」などと言ったりしますが、今回の議論だと、「早い」の部分に関する言及がなかったかと思います。
例えば、クリーニングを朝に預けたのち、当日の夜に受け取れる店、次の日の夜に受け取れる店、数日かかる店など様々あります。また、預けるときや受け取るときの手間や待ち時間もあるでしょう。
具体例としては、マンションの1階のボックスに入れておけば、勝手に回収してクリーニング後に戻してくれるサービスですね。タワーマンションだと、1階のコンシェルジュが24時間服の預かりと受け取りをやってくれるところもあります。これらのサービスだと、そもそも営業時間を気にしなくてよいだけでなく、お店に出向く必要がなくなるため、非常に手軽で、かつ早く、服を預けたり受け取ることができます。
詳細は省きますが、このように、クリーニング店にとって、「早い」やそれに関する利便性の部分の要素は非常に重要だと思われますので、ここを落としてしまうのは、痛いと思います。
オサム :なるほど、そうですね。
クリーニング需要を発生させる人と、クリーニングに出す人が異なる
マツモト:あと、今回の面接で厳しかった点は、服を「着ている人」とそれをクリーニングに「預ける人」が異なることをしっかり認識し、両者を分けて考えることが不十分であったように見受けられたことです。
基本的には、服を「預ける人」が誰かではなく、クリーニングに出す服を「着ている人」のほうが、本質的には重要な可能性が高いです。もちろん、議論の流れや議論の整理の仕方によっては、服を預ける人が重要になる可能性もあります。たとえば、クリーニングに出したい服があるのに、クリーニング店に預ける時間がないから、仕方なく洗濯機で洗っているなどの場合です。
オサム : なるほど。どうするべきだったのでしょうか?
マツモト:学生、主婦、ビジネスマン、年配の人と分類したあとに、その分類をうまく利用できればよかったと思います。そもそも、クリーニング屋への来店は、掃除・洗濯のような一種の面倒な手間であり、楽しいショッピングなどとは異なるという人が大半でしょう。そのため、家族であれば、わざわざ別々に預けに行くのではなく、主婦などが家族分を一緒に預けてしまうので、服を「着ている人」と服を「預ける人」が異なっているのでしょう。
そう考えると、服を預ける先であるクリーニング店側や時間帯の視点ばかりを見ていても、現実的に、見えてくるものが限られてしまうと思います。クリーニング需要を発生させる服を着ている人や、家庭内の視点を持たないと、広い視野で分析することは困難でしょう。
顧客視点で「想像力」を働かせることが重要
オサム :それから、店の営業時間について、最初は18時までと考えてしまったのですが、自分があまりクリーニング店を利用していないので、イメージができていないなと思いました。
マツモト: 確かにそうですね。大事なのは、様々な視点で物事を考えることです。今回の場合、まずは顧客目線であり、それを具体的にイメージすることです。
そうすれば、客数と客単価を計算するときに行ったような、服を預ける人と受け取る人を明確に分けずに計算し、面接官とのコミュニケーションがうまくいかなくなるといった事態も回避しやすくなるでしょう。
特に、大学生だけでなく、自分以外の視点に立てるようにしたほうがいいでしょう。たとえば、自分の母親や父親の立場に立って考えてみるとか。日々、視点を広げる訓練をしましょう。
オサム :なるほど。今回の面接は、全体としてはどうだったでしょうか?
マツモト:全体的に見ると、根本的にアプローチが厳しいと感じました。そもそも、重要な視点や論点であると思われる、商圏や客層が見えていないために、ふわっとした議論になってしまっていました。たとえば、商圏のことが考えられていれば、SNS広告が無意味なのがすぐにわかると思います。また、商圏や客層が見えていないことが原因なのか、消費者ニーズの分析も不十分なものに終わってしまっていましたし、クリーニングサービスも一部しか洗い出せていませんでした。
ですので、ケース面接では、最初に具体例をできる限り考えて、イメージしてみたほうがいいでしょう。論理的にまとまっていなくてもいいので、多くのパターンを考えることです。構造化はそのあとでいい。最初から構造化していいのは、問題のテーマが慣れ親しんだものであるときのみです。
オサム :ほかに面接官はどのような点を見ているでしょう?
マツモト:感覚的なところですが、スマートに見えるかもどうかも大きいでしょう。
あとは、楽しそうに議論できているかどうか。面接官に突っ込まれたときに、不機嫌になったり、無理やりにでも自分の意見が正しいとして押し通すような人は、厳しいでしょう。そもそも、客観的視点に乏しいと判断されると思います。「なるほど、考えてみますね」という返答とともに、指摘を踏まえて議論をブラッシュアップするなど、肯定的な態度が見られるといいですね。
オサム :スマートさとは何でしょうか。あと、自分はどうだったか、お聞きしたいです。
マツモト:そこは普通だったと思います。一般的には、話し方に知性が見えるかどうかが大事です。だらしない話し方は論外です。例えば、「したがってー」といった感じで、語尾を引き延ばすような話し方は、相手に、社会人としての信頼性についての疑問を持たせてしまうでしょう。ほかには、砕けた表現や単語ではなく、格式の高い表現や単語を利用するなどでしょうか。
楽しそうに議論する部分については、心がけの問題が大きいと思うので、意識しながら練習してみてください。プレゼンだと思うと、どうしても楽しく振舞うことが難しいので、ディスカッションだと考えつつ、1+1を3にする感じで、より良いものを生み出すことを意識すれば、自然と楽しそうに議論できるのではないでしょうか。
オサム :なるほど。たくさんのフィードバックありがとうございました。
マツモト:お疲れさまでした。今回の反省を踏まえて、がんばってください。
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