【第2回】三井物産インターン過去問対策〜銅事業編〜：既存アセットの戦略的活用と技術ロードマップ

こんにちは。徹底した対策をもとに、三井物産をはじめ総合商社から複数内定をいただいた26卒の者です。連載第2回では、三井物産のインターンで最も重要な「なぜ三井物産がやるべきか」という問いに答えます。コジャワシ銅鉱山の権益、ペルーの鉱山機械事業、Mainstream Renewable Powerへの出資など、一見バラバラな既存アセットをどう統合したか。そしてAI選別技術やCopper OSなどの技術戦略をどう構築したか。既存事業の深い理解から新規事業を導き出す思考プロセスを解説します。

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第2章：三井物産の戦略的ポジション分析

2-1 「鉱山銅とリサイクル銅を同じサプライチェーンで管理できる唯一の日系商社」

三井物産がMITSUI Copper Circular Hub事業を実現できる理由は、既存事業で培った独自のアセットとケイパビリティにある。同社は長年にわたる銅事業への取り組みを通じて、上流の鉱山開発から下流の需要家まで、銅バリューチェーン全体にわたる包括的なポジションを構築してきた。

既存アセットの戦略的価値

チリ・コジャワシ銅鉱山：循環型事業の核となる生産基盤

三井物産の銅事業における最重要アセットは、チリのコジャワシ銅鉱山への11%権益投資である。この鉱山は世界有数の資源量を誇る大規模銅鉱山であり、年間約55万トンの銅を生産している。三井物産の持分では年間約6万トンの銅生産に相当する。

コジャワシ鉱山が循環型事業において特に重要な理由は、その立地と既存インフラにある。鉱山には既に大規模な精錬設備が併設されており、隣接地には新しい処理ラインを増設できる十分な用地と電力・水道などのインフラが整備されている。これにより、電子廃棄物の処理設備を新たに建設する際の初期投資を大幅に削減できる。

さらに重要なのは、一次銅（鉱石由来）と二次銅（リサイクル由来）を同一の精錬設備で統合処理できることだ。これまでのリサイクル事業では専用設備が必要だったが、コジャワシでは既存の電解精錬技術を活用することで、両方の原料を効率的にブレンド処理し、統一品質の製品を製造できる。

ペルー鉱山機械事業：データとネットワークの宝庫

三井物産のもう一つの戦略的アセットは、ペルーでのコマツとの合弁による鉱山機械事業である。この事業では市場シェア60%超という圧倒的なポジションを確立しており、ペルー全土の銅鉱山に超大型ダンプトラックやロープショベルを供給している。

この事業の真の価値は、単なる機械販売を超えたところにある。現在、三井物産が供給する鉱山機械には高度なIoTセンサーが搭載されており、稼働状況、燃料消費、故障予兆など、1日あたり3,000万件もの稼働データを収集している。このデータは予知保全システムの基盤として活用されているが、循環型事業においてはAI制御システムの訓練データとして極めて価値の高い資産となる。

2-2 再エネ・水素ケイパビリティ：「コモディティを自前でグリーン化」できる商社

Mainstream Renewable Powerとの戦略的パートナーシップ

三井物産がMainstream Renewable Powerに12億USD投資し27.5%出資した判断には、明確な戦略的論理がある。この出資比率は単なる財務投資ではなく、実質的な共同経営権を意味する。25%超の出資により、重要な経営判断への拒否権を持ち、事業方針に実質的な影響力を行使できる。

Mainstreamを選択した理由は、その開発パイプライン25GWという規模と地理的カバレッジにある。世界最大級の再エネデベロッパーとして、太陽光・風力・蓄電池技術を統合的に開発できる能力を持つ。地理的カバレッジがチリ（8GW）、南アフリカ（6GW）、フィリピン（4GW）、豪州（7GW）と、三井物産の鉱山権益地域と重複している点も重要である。

PPA契約で15-25 USD/MWhという超低コスト電力の確保

再エネ発電から電解水素製造、貯蔵・輸送、精錬投入までの一気通貫システムを構築することで、各工程の最適化と全体効率の向上を実現する。三井保有の再エネ発電により、グリーン水素の環境価値を確実に担保できる。

通常、再エネ発電所から需要地までの送電コストは5-15 USD/MWhを要するが、鉱山隣接立地により送電距離を最小化できる。同様に、水素製造設備をDRI設備に隣接配置することで、水素輸送・貯蔵コストも削減できる。

2-3 ミッドストリーム技術プラットフォーム：「選鉱＋精錬＋ブロックチェーン」を束ねる統合統治力

AI選別技術の蓄積と横展開