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生成AIの台頭により、ソフトウェアエンジニアの仕事が大きく変わりつつある。プログラミングやテストの工数が大幅に減り、エンジニアの役割そのものが問い直される。そんな中、エンジニアはどんなスキルを身につけ、どうキャリアを築いていけばよいのか。1000人以上のエンジニア集団を率いるサイバーエージェントの専務執行役員(技術担当)長瀬慶重さんに、AI時代を生き抜くエンジニアの戦略について聞いた。【亀松太郎】
※内容や肩書は2024年12月の記事公開当時のものです。
1. 生成AIはエンジニアが日常的に使うツールに
2. AI時代のエンジニアの「3つの方向性」
3. サイバーエージェントが重視する「5つの資質」
4. AI時代を生き抜くためのアドバイス
生成AIはエンジニアが日常的に使うツールに
――生成AIの普及を受け、エンジニアの現場はどう変化していますか。
長瀬:ChatGPTの登場から2年が経ち、AIは「普段使い」のツールになったという印象です。エンジニアが日常的に使うGitHubにCopilotやWorkspaceが組み込まれて、生成AIをストレスなく利用できるようになりましたし、GoogleやAmazonの生成AIのAPIを使って、簡単にプロダクト開発に転用できるようになりました。当社でもこれらのツールを全社的に導入し、日常的に活用しています。
――生成AIによる効果はどうでしょう。
長瀬:具体的な効果として、プログラミングやテストにかけていた時間が20〜30%程度は削減できています。今後は7割近く、工数を減らせる領域も出てくるでしょう。
――そうなってくると、エンジニア不要論も出てきそうですが。
長瀬:生成AIによって開発の工数が削減できるといっても、最終的な判断はエンジニア自身がおこなう必要があります。「Copilot」という言葉にあらわれているように、AIはあくまでも協業のツールであり、AIが生成したコードの良し悪しを判断するエンジニアの技術力は依然として重要です。
――サイバーエージェントの専務執行役員として、経営的な視点で見ても、生成AIのインパクトは大きいでしょうか。
長瀬:生成AIの発展が企業の組織や事業に大きなパラダイムシフトをもたらすことは明らかです。そこで、当社では、エンジニアの生産性や開発速度を定量的なデータとして計測し、AIをうまく活用できている組織と活用できていない組織の違いを分析しています。また、うまく活用できている組織のナレッジを社内勉強会などで共有し、活用レベルの平準化を図っています。
AI時代のエンジニアの「3つの方向性」
――AI時代のエンジニアには、どのようなスキルや資質が求められますか。
長瀬:大きく3つの方向性が想定されます。まず、技術に関する幅広い知識を持ったエンジニアです。従来は特定のプログラミング言語のスキルがあれば十分でしたが、AIがある程度は代替するようになると、それだけでなく、ネットワークやAI、アプリケーション実装など幅広い領域の知識を持ったエンジニアが重宝されるようになるでしょう。そういうマルチな知識を持ったエンジニアは、AIを活用することで、1人で多くの価値を生み出せるようになります。
次に挙げられるのは、特定の事業やサービスに深く精通し、その領域でソフトウェアの知識をどう生かせるか、自分の頭で考えることができるエンジニアです。たとえば、医療や金融、動画配信などの領域で、ビジネスドメインを深く理解して、それぞれにあった技術の活用ができれば、大きな成果が期待できます。
もう1つの可能性は、エンジニアが使うツールを作るエンジニアです。たとえば、GoogleやAmazonのクラウドサービスのさまざまな機能を開発するエンジニアや、AppleのOSやChatGPTのAPIを開発するエンジニア。深い専門性を持って、技術者のために「いい道具」を作ることに注力するエンジニアも必要ですね。
――エンジニアはそれぞれがどの方向を目指していくのか、自分の適性や関心をしっかり見極める必要がありそうですね。
長瀬:今後は、優秀なエンジニアとそうでないエンジニアに「二極化」していく可能性が大きいでしょう。
サイバーエージェントが重視する「5つの資質」
――ところで、エンジニアを採用するとき、どのような資質を重視していますか。
長瀬:当社では、2008年からエンジニアの新卒採用を始めました。それから10年ほど経ったとき、優秀で模範的なエンジニアに共通する資質を調査したのですが、いくつかの共通点が見えてきました。
――どんな資質でしょう。
長瀬:(1)オーナーシップが高い(2)最後まで責任を持ってやり切る力がある(3)リーダーシップを持っている(4)知的好奇心が強い(5)ロジカルに物事を考えられる、という5つの資質です。
新卒の時点では、プログラミングのスキルよりも、こういう資質の有無が重要だとわかったのです。そこで、採用面接では、学生時代にリーダーシップを発揮した経験があるかとか、挫折しそうになったときに自分を奮い立たせてやり抜くことができたかとか、人間としての強さを重視するようにしています。
――リーダーシップとオーナーシップは似ているような気がしますが、どこが違うのでしょうか。
長瀬:リーダーシップは、たとえば部活のキャプテンをやっていたとか、自分らしい方法で他の人たちを引っ張った経験があるかどうか。一方、オーナーシップは、目の前の課題に強い当事者意識を持って取り組むことができるかどうか、というのがポイントです。
――エンジニアというと理系のイメージが強いですが、このような資質が重要だとすると、文系・理系の区別はあまり関係ないかもしれませんね。
長瀬:実際に、理系出身者がビジネスの領域で活躍したり、文系出身者がエンジニアとして力を発揮したりしているケースもありますね。なので、新卒の段階では、プログラミングなどの技術力があるかどうかよりも、将来生や伸びしろ、人として魅力的かどうかという本質を重視しています。
AI時代を生き抜くためのアドバイス
――エンジニアを目指す学生にアドバイスをお願いします。
長瀬:文系・理系は関係ないという話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、もしコンピュータサイエンスを学んでいるのであれば、足腰の強い技術力を身につけることを勧めたいですね。たとえば、TCP/IPやデータベース、アルゴリズムやメモリ管理の仕組みなど、コンピュータサイエンスの基礎的な知識は、AI時代でも必須です。
ソフトウェア開発の現場ではトラブルが必ず起きますが、コンピュータの基礎知識があるかないかで、トラブルシューティングができるかどうかの差が出ます。そういう基礎力は学生時代にしっかり身につけておけるといいですね。逆説的ですが、AIに頼らないで済む力も必要だということです。
――具体的にどんな姿勢で技術に向き合えばよいでしょうか。
長瀬:私は毎年開かれる小学生のプログラミングコンテストの審査員をしています。彼らはプログラミングやAIを単なる道具として捉え、身近な課題解決に活用しています。プレゼンでは、おばあちゃんともっとコミュニケーションしたいとか、フードロスのない世界を実現したいといった熱い思いをアピールします。
このように、技術そのものを目的とするのではなく、技術を社会にどう還元するかを深く考えられるエンジニアが、今後は求められるでしょう。自分なりのビジョンを持って「この技術で人を幸せにしたい」とワクワクしながら考えることが、エンジニアとして長く続けていく秘訣なのだと思います。
――ソフトウェアエンジニアという職種の将来性について、どうお考えですか。
長瀬:ソフトウェアエンジニアは将来も間違いなく価値がある仕事だと確信しています。2000年からIT業界にいて実感していますが、この社会にはソフトウェアの技術で大きく変革できる領域がまだまだたくさんあります。行政を含むさまざまな領域でソフトウェアのパワーが実感され始めている段階で、デジタル化がさらに進んでいく可能性が広がっています。エンジニアの未来は明るいですよ。
【インタビュー撮影・北川直樹】
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