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投資銀行へ転職するというキャリア
「社畜」「離職率が高い」「リストラが激しい」といわれる投資銀行への転職。リスキーともいえる選択ですが、個人の裁量が大きい、キャリア形成に有利、スキル向上などの魅力を兼ね備えています。
激動の社会において、就活時に「自分は絶対この会社で定年まで働くんだ!」と考えている人は多くないのではないでしょうか。いずれ迎える転職や独立について、現段階から少しでもその事情を理解しておくことで、会社選びの際や岐路に立った時の選択肢が広がるかもしれません。
今回は、新卒入社したメーカーから投資銀行へ転職した方に、その転職に至った経緯と転職事情について伺いました。
筆者について
私は某大手メーカーに数年勤務した後、現在は日系証券会社の投資銀行部門にてクライアントの資金調達サポート等、日々の業務に翻弄されている怜です。
皆様も想像がつくかと思いますが、いわゆる大手のメーカーは、その独自の技術力やノウハウ等に立脚しており、比較的安定した業界とも言えます。他方、投資銀行は、金融業界全体に言えることではありますが、サービスの差別化というものが比較的難しく、業界的にも不安定でもあります。
新卒でメーカーに入社してから、ある意味真逆の世界である投資銀行に転職するまでを振り返ってみます。
希望通りの入社だった
私は学生時代に国際協力を行うサークルに所属していました。その活動の一環でカンボジアやミャンマー、フィリピン等のいわゆる発展途上国を訪れた際、現地のスラム街や、地方の農村においての生活を目の当たりにして、大きなショックを受けました。日常生活において最も不可欠だと感じたインフラに関わることのできる仕事に就きたいという思いをもって、就職活動を始めました。自分の軸がはっきりと見えている就活生だった、といえるかもしれません。
海外のインフラプロジェクト等の政策立案ができる、省庁など政府系機関に入ることも検討しました。ただ、私は立案よりも、実際に現地に行って活動をすることの方が好きでしたので、メーカーや商社といった複数の事業会社を受け、なかでも国内メーカーとしてある分野で最も大きな事業を手掛けた実績のある某大手メーカーに入社することを決めました。
なぜ転職? メーカーの限界と現実
入社後は、かねてより希望していたプラントのプロジェクトに関わったり、その他の製品の輸出業務に携わったりと、様々なことを経験できました。
しかし、海外の新興メーカー等が力をつけてきており、自社の競争力の低下を実感し始めたこと(実際に、プロジェクトへの入札準備中、マネジメント層が利益率の低さを理由に入札を断念させることも少なくありませんでした)、そうした状況下で事務系として現状を打開できず、ただ慣れた業務をこなすだけの作業屋となってしまっていたこと、そしてこれからもその状況が続いてしまうのではないかという不安が私を襲いました。
投資銀行に転職した理由
転職にあたっては前職のメーカーでの反省点を踏まえ、以下の2つを重視することにしました。
(2)理系/文系を問わず活躍ができる
(1)は、前職のメーカーで関わったプロジェクトが、入札準備から実際にプラントが運転を開始するまで4~5年近くかかったことから、気が付いたら年をとったおじさんになってしまうかもしれない……と危惧したこと、(2)は、メーカーはやはり理系(研究職)が生み出し発展させていく技術に立脚し、文系(事務職)はそれに依存するため(あくまで私個人の感想です)、満足できなかったことが背景にあります。
案件を主導する立場になるためには、文系の自分でも専門性をつける必要がある、というのが前職での気づきです。 会計士等の士業に就くことも考えましたが、必ずしもなれる保証があるわけではなく、社会人として1から目指すのはリスキーだとも思い、コンサルタントや投資銀行マンといったプロフェッショナルになることを決めました。
経済学部出身で金融についてイメージをしやすかったこと、今後のキャリアチェンジで投資銀行を離れるとしても、ファイナンスの知識があれば経理や財務といったポジションで他業界でも引き合いがありそう、と考えて投資銀行を第一志望にしました。
投資銀行への転職理由は明確に、忙しい面接官を攻略せよ
こうして開始した転職面接は、新卒の就活とはまた違った苦労がありました。
一番難しかったのは、メーカーから金融業界に転職したい理由を面接官に的確に伝えることです。 前職でいたメーカーは国内や世界でトップの製品を多く抱えており、そのまま勤めていれば安定的な地位・収入が得られるような企業でした。そこからあえて、差別化が難しく、それ故に案件の獲得・遂行に奔走し続けなければならず、比較的不安定といわれる金融業界(投資銀行)に転職したい理由を、明確に示さねばなりません。この点は面接官に必ず聞かれるだろうと想定していたので、体力のある若いうちにあえて厳しい業界で自身を鍛えたいという旨を伝えました。
「Why 投資銀行?」に対して、私の場合は、前職でM&Aに携わり興味をもったことが投資銀行を選んだ理由の1つにありましたから、M&Aかそうでなくともファイナンスの業界に入りたいということを伝えました。面接官も常に案件に追われている投資銀行マンであり、非常にせっかちなので、うまく伝えることは苦労しました。
また、 投資銀行で求められるスキルをどの程度持ち合わせているかを示すことにも苦労します。 メーカーと投資銀行では求められるスキルが全く異なります。例えばメーカーであれば、クライアントとの円満な関係の構築・維持や、自社製品の輸出に関わる書類作成等がメインでした。一方で投資銀行においては、特に私のような下っ端アナリスト(平社員)は、クライアントへの提案資料作成のためにほとんどの時間を費やさねばなりません。メーカーに在籍していた時とは比較にならないほどPCを使用します。これもポテンシャル採用とは異なる中途の難しさかもしれませんね。
投資銀行で得られるもの “メーカーはぬるま湯、投資銀行は熱湯
投資銀行においては、入社直後の研修期間を除き、労働環境はかなりハードです。 平日は夜中3時、4時の帰宅は当たり前であり、プロジェクトが佳境に入ると、徹夜も珍しくありません。また、クライアントの期待・依頼以上のアウトプットを出すことを求められますので、精神的なプレッシャーもかなりのものがあります。私が在籍していたメーカーと比較すると、メーカーはぬるま湯、投資銀行は熱湯に喩えることができるくらい、環境は違います。
それでも、クライアント、社内関係者、弁護士、会計士等とプロジェクトを着実に進めていき、プロジェクト完遂後にはクライアントから感謝してもらえる点、PCスキルや法律・ファイナンス/会計の知識、コミュニケーションスキル等、自身を大きく成長させることができ、また自身の成長を自身で実感できる点、文理問わず活躍できる点、さらに、皆さんが気になるであろうお給料も、メーカーと比べかなり良い点を踏まえると(笑)、 この業界に移って正解だったと感じています。 強いて後悔していることを挙げるならば、メーカーに在籍していた時と比べ、プライベートの時間を取ることが難しくなったことです。
現在の投資銀行業界は昔と比べて労働環境の改善が進んでいるようで、休みを取ること自体は可能です。しかし予定が不確実であることには変わりありません。例えばある週の土日を自分の休暇に使えるかどうか分かるのは、その週の木・金曜日あたりです。次の週の月曜日にクライアントに持っていく資料の作成を木・金曜日辺りに指示されることもあります。土日を活かして旅行に行くことは勿論、友人との飲み会等の設定も難しくなりましたし、ドタキャンしてしまうことも多々あります。ただし、そういったことを了解した上で転職を決めたので特に違和感はありません。
また業務自体はスピード感があって面白く、自分に様々な知識・スキルがついてきたことを自身で感じることができる満足感もありますので、私の場合、少なくとも今のところは、転職は間違っていなかったと100%断言することができます。今後については、まだ決めきれてはいません。ひとまずはめまぐるしく変わるこの金融業界に必死に食らいつき、自分のスキルを高めて行こうと考えています。
転職事情を理解しながらキャリア形成をしよう
“会社選びに正解はない”からこそどんな状況にも柔軟に対応するために、自分の軸をしっかり持ち、優先順位に基づいた行動が必要とされています。将来何をしたいのか、今何ができるのか、会社に何を求めるのか、早い段階から考えておくべきでしょう。転職事情を理解するとともに、新卒が全てではない、次のステップを考え行動し続けることも大切だ、というメッセージを読み取っていただければ幸いです。
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