三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartD〜:価値創造・収益世界最大級カーボンプールと多層マネタイズ戦略

三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartD〜:価値創造・収益世界最大級カーボンプールと多層マネタイズ戦略

2025/09/12

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eyecatch

私は26卒で三井物産のインターンシップで優勝し、そのまま内定をいただきました。本記事では、前回の記事に続いて三井物産のインターンについて解説していきます。事業の実現基盤を固めた今、このプロジェクトが創出する多次元的な価値について詳細に分析します。年間9 Mt-CO₂という世界最大級のカーボンプールとしての環境価値から、技術ライセンスやデータビジネスまで、単なる「鉄を売る」事業を超えた包括的な価値創造モデルをご覧ください。ESG指標の透明性確保と多角的な収益機会により、持続可能でありながら高収益な事業構造を実現します。

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第6章 ESG・CO₂インパクト──"削減証書"として世界最大級のカーボンプールを生む


6‑1 CO₂削減効果のライフサイクル定量化

6‑1‑1 LCA(ライフサイクルアセスメント)手法による削減効果算定

BF-BOFベースライン2.3 t-CO₂/t粗鋼の設定根拠

高炉-転炉法(BF-BOF)のCO₂排出原単位2.3 t-CO₂/t粗鋼は、IEA(国際エネルギー機関)とEnergy Transitions Commissionが世界平均値として提示する数値である。この数値は、原料採掘から粗鋼製造までのスコープ1-3排出を包含したライフサイクル評価に基づいている。

この設定値を採用する理由は、国際的な標準として広く認知され、第三者による検証が可能な客観性にある。地域別の排出係数には差異があるが(中国2.5-2.8、日本2.0-2.2、EU 1.8-2.1 t-CO₂/t)、グローバル平均としての代表性を重視している。

BF-BOF法での排出内訳は、コークス製造・焼結30%、高炉還元50%、転炉精錬10%、電力・その他10%の構成である。このうち、化学還元に起因する排出(80%)は技術的に削減困難であり、プロセス転換による削減が必要となる。

H₂-DR-EAFシナリオ0.5 t-CO₂/tの算定詳細

当社H₂-DR-EAFシナリオの排出原単位0.5 t-CO₂/tは、Midrex H2®パイロット結果とLCA分析を統合した数値である。内訳は、H₂-DRI製造0.4 t-CO₂/t、輸送・選鉱0.1 t-CO₂/tの合計である。

H₂-DRI製造0.4 t-CO₂/tの内訳は、電力使用(再エネ外調達分)0.2 t-CO₂/t、設備製造・メンテナンス0.1 t-CO₂/t、その他間接排出0.1 t-CO₂/tである。完全グリーン水素使用により、従来の燃料燃焼由来排出(1.5-1.8 t-CO₂/t)を完全に削減している。

輸送・選鉱0.1 t-CO₂/tは、鉱山での採掘・選鉱0.05 t-CO₂/t、海上輸送0.03 t-CO₂/t、陸上輸送・港湾0.02 t-CO₂/tの合計である。アンモニア燃料船の使用により、従来の重油船比で70%のCO₂削減を実現している。

ネット削減量1.8 t-CO₂/tの検証と意義

ネット削減量1.8 t-CO₂/t(2.3-0.5)は、従来比78%の削減に相当する。この削減率は、IEAが示すDR-EAF技術の削減ポテンシャル「従来比70-80%削減」の上位レンジに位置している。

第三者検証機関(TÜV SÜD、SGS)による検証を受け、算定手法の妥当性と数値の正確性を確認している。ISO 14067(カーボンフットプリント)、ISO 14040-14044(LCA)の国際基準に準拠した算定により、国際的な信頼性を確保している。

6‑1‑2 削減規模のインパクト評価

Phase 1(2 Mt/年)での削減効果3.6 Mt-CO₂/年

Phase 1の年間HBI生産量2 Mtに削減係数1.8 t-CO₂/tを乗じた削減量3.6 Mt-CO₂/年は、以下の参照点との比較で重要性を把握できる。これは中規模火力発電所2-3基分の年間排出量に相当し、大規模な削減効果を実現する。

国別比較では、小規模国家(マルタ、エストニア等)の年間排出量全体に匹敵する規模である。また、日本の製造業セクター排出量の約1%、鉄鋼業界排出量の約7%に相当する削減効果となる。

企業レベルでの比較では、Fortune 500企業の平均年間排出量(約2-3 Mt-CO₂)を上回る削減量である。単一プロジェクトとしては世界最大級のCO₂削減事業となる。

Phase 2(5 Mt/年)での削減効果9 Mt-CO₂/年

Phase 2拡張により達成する削減量9 Mt-CO₂/年は、日本の鉄鋼業排出量の約18%、EU CBAM対象輸入鉄鋼排出量の約5%に相当する。これは業界全体の脱炭素化に実質的なインパクトを与える規模である。

この削減量は、パリ協定の目標達成に向けた日本のNDC(国が決定する貢献)の約0.7%に相当する。単一企業・単一プロジェクトとしては、国家レベルの脱炭素目標に直接的に貢献する規模となる。

6‑1‑3 削減効果の継続性と拡張性

20年間での累積削減効果

Phase 1-2での20年間累積削減効果は約150 Mt-CO₂(平均7.5 Mt-CO₂/年×20年)に達する。この規模は、小規模国家の20年間累積排出量に匹敵し、長期的な気候変動対策への貢献度は極めて高い。

累積削減効果の現在価値は、カーボンプライス50 USD/t-CO₂で約75億USD、100 USD/t-CO₂で約150億USDとなる。環境価値の経済価値化により、社会的便益の定量化が可能である。

技術波及効果による間接削減

本プロジェクトの技術確立により、他社・他地域での同様技術導入が促進される。技術ライセンス・コンサルティング提供により、グローバルでの削減効果拡大に貢献する。

業界全体での技術標準化により、削減効果は本プロジェクトの直接効果を大幅に上回る規模に拡大する可能性がある。技術普及による間接効果は、直接効果の5-10倍の規模に達する可能性がある。


6‑2 水資源・環境負荷の副次的改善効果

6‑2‑1 水使用削減の定量効果と地域的意義

乾式選鉱による93%節水効果の技術的根拠

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