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私は26卒で三井物産のインターンシップで優勝し、そのまま内定をいただきました。本記事では、前回の記事に続いて三井物産のインターンについて解説していきます。事業基盤と技術選択を固めた今、実際の運営と資金面での実現可能性を詳細に検証します。原料調達から製造、物流、そして資金調達まで、脱炭素鉄原料事業を確実に黒字化させる具体的なオペレーション戦略と財務設計をご覧ください。保守的な数値設定と多層的なリスク管理により、投資家にとって魅力的でありながら実現可能性の高い事業モデルを提示します。
他シリーズはこちら
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編Part B〜:事業基盤・技術編 - 統合力と実現可能性
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編Part C〜: オペレーション・財務・産地完結型モデルと確実な収益設計
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartD〜:価値創造・収益世界最大級カーボンプールと多層マネタイズ戦略
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartE〜:リスク管理・多層防御システムで確実な価値保護を実現
第4章 原料確保・物流最適化──
「マルチヘッド調達 × グリーン高品位化 × 低炭素海上輸送」で全工程 CO₂ を最小化する
4‑1 資源ソーシング戦略──三本柱によるリスク分散と供給安定化
4‑1‑1 ポートフォリオ戦略の基本思想
原料調達戦略において、単一地域・単一鉱山への依存は致命的リスクとなる。政治情勢変化、自然災害、労働争議、環境規制強化等により供給途絶が発生した場合、事業全体が停止する可能性がある。
リスク分散の定量的設計 : 三本柱戦略により、各調達源が全体の30-40%を占める構成とする。一つの調達源が完全停止しても、残り二つで事業継続可能な冗長性を確保する。この設計により、供給途絶リスクを単一調達の場合の10%以下に低減できる。
品質補完性の戦略的活用 : 各調達源の品質特性を活用し、最終製品の品質最適化を図る。ブラジル高品位鉱は品質安定性、豪州中品位鉱は処理容易性、アフリカ鉱石はコスト競争力をそれぞれ提供し、顧客要求に応じた最適ブレンドを実現する。
4‑1‑2 ブラジルS11D:即戦力としての戦略的価値
天然高品位鉱の希少性 : 世界の鉄鉱石供給において、天然でFe 66%以上の品位を持つ鉱石は全体の3%未満しか存在しない。Vale S11Dは年間8,000万トンの生産量中、約60%がDR適合品位であり、世界最大のDR-grade供給源となっている。
技術実証基盤としての価値 : S11Dでの4年間の乾式処理実績により、技術リスクは大幅に低減されている。三井物産は戦略的パートナーとして、操業データ、技術ノウハウ、改善事例への完全アクセス権を持っており、これらの知見を他地域に横展開できる。
炭素強度ベンチマーク確立の意義 : 初期HBI製品の市場投入において、顧客は炭素強度の信頼性を最重視する。S11D鉱石をベースとした初期製品により、業界標準となるベンチマークを確立し、後続製品の差別化基準を設定する。
ドライ処理比率70%の技術的意味 : S11Dでは全処理量の70%が既に乾式処理に転換済みであり、残り30%も2026年までに転換予定だ。この実績により、大規模乾式処理の技術的・経済的実現性が実証されている。
4‑1‑3 Rhodes Ridge:中期成長の核心アセット
資源規模の圧倒的優位性 : Rhodes Ridgeの資源量68億トンは、現在の世界年間鉄鉱石生産量(約25億トン)の約3年分に相当する巨大な資源量だ。平均品位Fe 61%は、乾式選鉱によりDR-gradeへの向上ポテンシャルを持つ最適な品位レンジにある。
Rio Tinto共同開発の戦略的意義 : 世界最大の鉄鉱石生産者であるRio Tintoとの共同開発により、技術力、操業ノウハウ、インフラ活用、市場アクセス等の面で大幅な優位性を獲得できる。三井物産単独では困難な大規模開発を、実績豊富なパートナーとの協業により実現する。
既存インフラ活用の経済効果 : Tom Price鉱山からCape Lambert港までの420km鉄道は、年間輸送能力2億トンの余力を持つ。Rhodes Ridgeからの鉄道接続距離50kmにより、新規鉄道建設(通常1,000-2,000万USD/km)比で大幅な投資削減が可能だ。
段階開発による投資リスク管理 : 2026年第1段階(年産1,000万トン)、2028年第2段階(年産3,000万トン)、2030年第3段階(年産5,000万トン)の段階開発により、市場需要に応じた投資実行が可能となる。
乾式選鉱実証サイトとしての活用 : Rhodes Ridgeでの乾式選鉱技術実証により、他地域(アフリカ、南米)への技術移転の基盤を確立する。技術標準化、操業マニュアル、人材育成プログラム等を整備し、グローバル展開を支援する。
4‑1‑4 アフリカ衛星鉱床:長期バックアップの戦略的意義
地政学リスク分散の重要性 : 豪州・ブラジルへの調達集中は、両国の政策変更、貿易規制、資源ナショナリズム等のリスクを抱える。アフリカ西部(ギニア、リベリア、シエラレオネ)での鉱山権益確保により、地政学リスクの地域分散を実現する。
未開発鉱床の成長ポテンシャル : 西アフリカ地域には、推定100億トン以上の未開発鉄鉱石資源が存在する。中国系企業の進出が活発化する前に、有望鉱床での権益確保を進めることで、長期的な資源ポートフォリオを構築する。
ローリングJV方式の利点 : 初期投資を最小限に抑制し、地質調査・環境評価の結果に応じて段階的に投資拡大する方式を採用する。これにより、大型投資リスクを回避しつつ、有望鉱床での権益確保を実現する。
政治・気候リスクへの対応 : 西アフリカ地域特有の政治不安定、サイクロン被害、インフラ不足等のリスクに対し、複数国での分散投資、政治リスク保険の活用、現地パートナーとの協業により対応する。
4‑2 グリーン高品位化ハブの配置と技術統合
4‑2‑1 地域別ハブ配置の戦略的思考
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