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私は26卒で三井物産のインターンシップで優勝し、そのまま内定をいただきました。本記事では、前回の記事に続いて三井物産のインターンについて解説していきます。最終回となる今回は、MITSUI Green Iron Nexusプロジェクトの成功を確実なものとする包括的リスク管理戦略を詳述します。多様かつ複合的なリスクに対する三層クッション(ヘッジ・冗長設備・ESGガバナンス)による多層防御システムで、投資家・顧客・地域社会の全てが「リターン>リスク」を定量的に確認できる強固な事業基盤を構築します。
他シリーズはこちら
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編Part B〜:事業基盤・技術編 - 統合力と実現可能性
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編Part C〜: オペレーション・財務・産地完結型モデルと確実な収益設計
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartD〜:価値創造・収益世界最大級カーボンプールと多層マネタイズ戦略
三井物産インターン過去問対策〜鉄鉱石事業編PartE〜:リスク管理・多層防御システムで確実な価値保護を実現
第8章 リスクマネジメント──多層防御でROIと環境価値を守り抜く
大規模長期プロジェクトにおいて、リスク管理は事業成功の決定的要因である。本プロジェクトでは、多様かつ複合的なリスクに対し、予防・軽減・転嫁・受容を組み合わせた包括的なリスク管理戦略を構築する。単一のリスク対策ではなく、ヘッジ・冗長設備・ESGガバナンスの三層クッションにより、確率×影響で可視化されたリスクに対する多層防御システムを確立する。
8‑1 市況・財務リスク:価格変動と金融環境への包括的対応
8‑1‑1 価格下落シナリオへの三段階ヘッジ戦略
HBI価格下落リスクの構造的分析
HBI価格は、基本的には鉄鉱石価格、エネルギー価格、為替相場等の複合的要因により決定される。しかし、グリーンHBIは環境価値という新たな価格決定要因を持つため、従来の価格モデルでは予測困難な変動リスクがある。
最大リスクシナリオとして、LME HBI指標が現在の375 USD/tから300 USD/tまで下落する場合を想定している。この20%の価格下落は、世界的な経済低迷、環境規制緩和、競合技術の急速普及等により発生する可能性がある。
第一段階:プットオプション戦略
生産量の50%を320 USD/tのプットオプションで24ヶ月間カバーする戦略は、価格下落リスクの根本的な軽減を目的とする。権利行使価格320 USD/tの設定は、債務償還に必要な最低収益水準(DSCR 1.15以上)を確保する水準である。
プットオプション・プレミアムは販売価格の1.2-1.5%と想定しており、年間コストは9-11M USDとなる。このコストは価格下落リスクの保険料として位置づけ、リスク管理費用として予算計上している。
第二段階:先物固定売り戦略
追加30%の生産量について、3-6ヶ月先物での固定売りを実行する。この戦略により、中期的な価格変動リスクを軽減し、キャッシュフロー予測の精度を向上させる。
先物価格と現物価格の乖離(ベーシス・リスク)は存在するが、HBI市場の流動性向上に伴い、このリスクは継続的に縮小している。先物市場の発達により、より効率的なヘッジが可能となる。
第三段階:長期契約による安定化
残り20%は顧客との長期契約において固定プレミアムを設定し、基準価格の変動を吸収する設計とする。固定プレミアム部分により、環境価値に対する安定した収益を確保する。
長期契約の価格条項は、基準価格(LME HBI指標等)の変動に対し、固定プレミアム部分が一定の範囲内で変動を相殺する設計とする。これにより、価格下落時の収益下支えと、価格上昇時の収益機会確保を両立する。
8‑1‑2 金利・為替リスクの統合管理
借入構成の最適化戦略
借入の70%を変動金利(SOFR+110bp)、30%を固定金利(3.1%)に分散する戦略は、金利変動リスクと金利機会の両方を考慮した設計である。変動金利部分により金利低下時の恩恵を享受し、固定金利部分により金利上昇リスクを限定する。
この構成により、想定金利変動±200bpの範囲でDSCR(債務償還比率)1.3以上を維持できる。DSCR 1.3は、金融機関の融資継続判断基準(通常1.15-1.25)を上回る安全水準である。
為替リスク管理の基本方針
キャッシュインを100% USD建てとすることで、主要な為替リスクを排除している。円転は月次必要額のみに限定し、長期的な円高リスクへの過度な露出を回避する。
この戦略の背景には、HBI市場がUSD建て取引を基本とする国際商品市場であることがある。顧客もUSD建て決済を前提とするため、為替リスクの転嫁が比較的容易である。
金利変動シナリオ分析
±200bpの金利変動シナリオでの財務影響は以下の通り:
- +200bp:年間金利負担+15M USD、DSCR 1.31→1.25
- -200bp:年間金利負担-15M USD、DSCR 1.31→1.37
いずれのシナリオでも、DSCR 1.15(融資継続基準)を上回り、財務安定性を維持できる。
8‑1‑3 流動性リスクと信用リスクの管理
運転資金・緊急時資金の確保
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