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クロスボーダー~外資系若手バンカーの葛藤~ 第十一章 切り札 前編


前回までのあらすじ〉
外資系投資銀行のドイチェガン証券株式会社投資銀行部門(IBD)に新卒で入社した、小川克貴。教育系企業、ドリーバのM&A案件にアサインされることに。先輩の町田とドリーバがこれから伸ばすべき分野について話し合っていると、ディレクターのモーガン土井に呼び出され、克貴が自分の可能性に対して勝手にボーダーを引いて諦めていると指摘される。

〈著者Profile〉
ショー・ターライ
国立大学を卒業後、外資系投資銀行に入社。退職後は起業家として活躍している。
▶Twitter:@ShowTurai_Novel

 
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注:この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

第十一章 切り札 前編

資料を詰めたかばんがずっしりと重い。オフィス下の車寄せにアルファードのエグゼクティブラウンジが止まっている。大事な日には普通のタクシーを使わないらしい。カバレッジのモーガン土井、M&Aチームの町田さん、町田さんの上司のM&Aヘッド、そして克貴というなんとも居心地の悪い車内だった。

町田さんは先輩だが、直接の上司ではない。

外資系投資銀行において投資銀行部門(IBD)は大きくカバレッジとプロダクトに分かれている。カバレッジはTMT(※1)やFIG(※2)、GIG(※3)などと業界ごとに分かれている。プロダクトはECM(株式部)やDCM(債券部)、M&Aなどと機能ごとに分かれている。

ドイチェガンにおいて若手は特殊な立ち位置にいる。特定の部署に配属されず、アサインごとにそのチームの仕事を遂行する、プール制のようなスタイルを採用しているのである。順番に各部署を回っていくジョブローテーションというわけでもない。そのため、カバレッジバンカーのもとでセクター営業をすることもあるし、案件に入り株式発行や債券引受の業務に従事することもある。

克貴は今のところカバレッジの仕事にだけアサインされていたが、例えば高嶺は、同期で一足早く案件に入りECMの業務に現在進行形で従事している。

資料を読んでいても酔わないくらい車は揺れが少ない。

モーガン土井とM&Aヘッドは過去の類似案件について話し合っている。具体的な案件名を出さないで話しているからか、克貴には何の話をしているか、いまいちつかめない。

いつもは軽口をたたいてくる町田さんすら、黙々と資料をにらんでいる。緊張のあまり克貴は喉が渇いて仕方がなかった。

ドリーバの本社は、大企業がひしめく有名オフィスビルの8階と9階を占めていた。1階の総合受付で来訪者カードを受け取り、首から下げた。

8階の入口の受付で、待機したのもつかの間、ドリーバの担当者がやってきた。

二、三言、モーガン土井が克貴に見せないようなにこやかな表情でおべっかを言い、ドリーバの担当者も破顔した。

通された部屋は大きなカンファレンスルームだった。前方には小ぶりの映画館のようなプロジェクタースクリーンが設置されていた。

後方の席には、高級そうなスーツを着た集団が一角を占めていた。

克貴がいぶかしげに町田さんの方を見ると、町田さんは眉を小さく上げ、

「シルバーマンウィングスだ」と呟いた。

「競合相手はシルバーマン……。勝てるんでしょうか?」と克貴は町田さんにだけきこえるような小声で尋ねた。

「勝たなければならない。そのためにこれまで準備してきたんじゃないか。だろ?」と町田さんは力強くささやいた。

「そうですね」

「それに克貴が見えないところで俺も準備していたしな、大丈夫だ」と町田さんは表情を切り換えた。

モーガン土井やM&Aヘッドはシルバーマンウィングスを一瞥すると、彼らがいない側の後方の席へ着いた。

両社とも、間違いなく意識しているのに相手がいないかのように振る舞っている。

なんとも奇妙だった。殺気ともいえるような雰囲気をまとっているにもかかわらず、すましていた。

やがて、ドリーバの担当者が重役たちを引き連れて、カンファレンスルームへ戻ってきた。

いずれの人も50代以上に見える。人に指示をすることに慣れた風格をまとっていた。

担当者は壇上でマイクを握り、おもむろに話し出した。いよいよコンペが始まるのだと克貴はいつになく緊張した。

「皆様、本日はご多用の中、お集まりいただきありがとうございます。弊社のM&Aに関するフィナンシャルアドバイザーを決めるコンペティションをこれから始めさせていただきます。アジェンダは配布資料をお目通しください。それぞれプレゼンテーションを30分で行っていただいたのち、15分間を質疑応答の時間といたします。シルバーマンウィングス証券株式会社様、ドイチェガン証券株式会社様の順に行います。そして両社ともにプレゼンテーションと質疑応答が終わった後、1時間弊社で議論させていただきますので、皆様はご休憩なさってください。その後、両社に最終の質疑応答をさせていただきます。そこで確認をし、結果を通知いたします」

担当者はあらかじめ書かれていたのであろう原稿を忠実に読み上げた。

がさっと一斉に音がし、シルバーマンウィングスの一同が立ち上がった。一挙手一投足、乱れがない。それは威圧感を感じさせるものだった。

威厳を漂わせたカバレッジの人が、マイクもなしに通る声で話し始めた。自信がみなぎる語り口調で、よどみもなく、そのままいうことを聞いてしまいそうな圧力すらあった。

30分間、他人を寄せ付けないような力強い口調だった。話し終えると会場はしばらく静まり返った。我に返ったようにドリーバの担当者は場を繋いだ。

克貴は町田さんに「会社紹介、M&A実績、グローバルチーム含めてのサポート体制、メンバー紹介、ドリーバの企業分析と戦略に今後の案件の進め方か……。構成はドイチェガンとほとんど変わらないですね」と言った。

「まあこういうコンペのときは大概こんな構成だよ。勝負は質疑応答さ」と町田さんはプレゼンテーション自体は気に留めていないようだった。

ドリーバの社長が重低音の響く声で、話し出した。

シルバーマンウィングスの提案は妥当性があり、ドリーバの目指したい世界観を堅実に捉えていることが分かった。そしてその上で、パートナーとしてふさわしいのか、他にもクライアントがいる中で優先順位をトップに持ってくることはできるのかといった鋭い質問をしていた。

克貴はドイチェガンのプレゼンテーションや質疑応答を前に緊張が最高潮に達していた。克貴が直接プレゼンテーションをすることはないが、資料の大半を作ったのは克貴であり、質疑応答で資料について聞かれたら克貴が答えなければならないかもしれない。

そうこう思案しているうちに、シルバーマンウィングスの質疑応答も終わり、いつの間にか拍手が鳴っていた。急に不安が克貴の胸に押し寄せてきた。

「よし、行くぞ」と町田さんは克貴を小突いた。じわりと不安がほぐれていくのを感じた。克貴もいまや雌雄を決する場の一員なのだ。

「いよいよですね。勝ちましょう」
※1 TMT Telecom, Media, and Technology Groupの略。インターネット企業やメディア、通信業などをカバーするチーム
※2 FIG Financial Institution Groupの略。銀行や生損保に対して、資金調達や買収合併の提案活動を行うチーム
※3 GIG General Industries Groupの略。食品業界や製造業など幅広い業界をカバーするチーム

第十一章 切り札 後編につづく。2022/11/25更新予定です)


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