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クロスボーダー~外資系若手バンカーの葛藤~ 第六章 煙の世界 後編


前回までのあらすじ〉
外資系投資銀行のドイチェガン証券株式会社IBD部門に新卒で入社した、小川克貴。克貴はディレクターのモーガン土井に資料作成を命じられるが、間違いを厳しく指摘され、印刷も満足にできず、自信を無くしてしまう。そんな中、ロンドン研修が始まり、グローバルのメンバーたちとアクティビティに取り組むことに。

〈著者Profile〉
ショー・ターライ
国立大学を卒業後、外資系投資銀行に入社。退職後は起業家として活躍している。
▶Twitter:@ShowTurai_Novel

 
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注:この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

一枚一枚、条件の書かれたタームシートを真剣に読み込んで判を押していこうとするメンバー、何枚もぱらぱらと見たあと共通の審査基準をマニュアルとして作成しようとするメンバー、枚数を数えてタイムマネジメントを始めチームで割り振りをしようとするメンバー、他のチームを偵察しにいくメンバーに分かれた。

エレンはぱっと見ただけで、書類を手放し、ふらふらと別のチームの様子を見に行っていた。そして持ち前のコミュニケーション能力で、ペラペラと相手を笑顔にさせて情報を引き出していた。

克貴はどうすべきか決めかねていたが、日本人が不真面目だと思われたくなかったため、グループの人数で割った分くらいの枚数を確保してまずは一枚一枚処理をしていくようにした。しかし到底時間内に終わる量ではなかった。

戻ってきたエレンは克貴の横に座り、場に残っていた大半のタームシートを手元に手繰り寄せた。

「Decline、Decline、Approve。Decline、Decline、Approve。Approve、Approve、Approve」とリズムゲームをこなす達人のように、エレンはテンポ良く判を押していった。

「え、速くない?」と克貴は目を丸くしながらたずねた。

「楽しくなっちゃった。ほらもう終わったわよ」とエレンは舌を出しておどけてみせた。

時間終了がアナウンスされ、他のチームを見渡すとすべて終えたのは克貴とエレンのチームだけだった。

集計をしている間、大ホールに集められ、会長からの講演があった。高嶺は熱心にメモを取っていたが、エレンは頬づえを付きながらまぶたを閉じていた。長いまつげがときどき揺れていた。それは、波風に運ばれる陽光のような揺らめきを連想させた。

講演後すぐに、融資審査得点の結果発表が行われ、横にいたエレンが飛び起きた。

「ノリと勢いで押していっただけなのに、1位だなんて」とエレンは飛び跳ねてはしゃいだ。

「あれ適当だったんだ。でもきっとエレンが数をこなしたおかげだね」と克貴は妙に納得して笑った。

次のアクティビティの詳細が伝えられた。別の大部屋に移動すると奇妙な形の工作物があった。克貴の背丈くらいの高さがあり、山城のように入り組んだ形をしていた。

色と形の違うボールが3種類あり、太い箸のような棒で運ばなくてはならない。それぞれに成功した場合に加算される点数と失敗した場合に引かれる点数が書かれていた。また山城にも数カ所ボールを入れる場所があり、難易度に応じて点数の倍率が違っていた。

エレンはすぐに運びやすいボールを棒で挟み、スピーディーに頂上にボールを入れた。あまりに軽々と行ったので緊張したのか、次に動いたメンバーは途中でボールを落としてしまった。

克貴は運びやすさが真ん中レベルのボールを選んだ。そして山城を見た上で高い倍率の頂上方面にボールを運んだ。一度でうまくいかなかったものの何とか入れることができた。

順位は可もなく不可もなくであった。

他にも、折れやすい木の棒を使ってどれだけの高さを構築できるかといったアクティビティや、中身が見えない飲料を飲んで、レモン、グレープフルーツ、ブルーベリー、クランベリー、ラズベリー、カシスの中から味を当てるクイズなどがあった。

歴史上の事件を答えるクロスワードパズルや、論理推理ゲームなどの頭脳系のものもあった。

克貴はエレンにつられる形で、金融の研修ということを忘れて童心にかえって楽しんだ。はじめはライバルのように緊張感のあったメンバーもすっかり仲間意識が芽生え、研修後そのまま飲みに行くくらい仲良くなった。

全体研修の最終日は、アプリ上で開催されるトレーディングゲームであった。一人当たり10億円の原資を与えられ、株式、債券、不動産、コモディティに投資して、終値の純資産総額を競うものであった。

1日で1年分の値動きをするめまぐるしいゲームで、常に相場材料となるニュースやイベントがタイムラインに流れてくる。情報を瞬時に判断し、次の値動きを予測してビッド/アスクを繰り返さなければならなかった。

エレンは大半を突っ込んだ不動産価格が高騰して大当たりした。だがそれは単なるビギナーズラックだった。次に突っ込んだトウモロコシのコモディティ価格が暴落し、あっという間に資金を溶かした。スコールのように降ってくる情報の多さと価格論理の不透明さに、途中からエレンは混乱して叫んでいた。

克貴は上がると踏んだ新興国株式の読みが外れ、煙のように資産が雲散霧消した。損切りをせざるをえなくなってから、リスク回避型の投資で債券に資金を多めに預け、基本的に様子見を続けることしかできなかった。

克貴にはよく分からなかったが、1位のチームはデルタヘッジをしながら多額の利益を積み上げていたようだった。ゲームがスタートしたと同時にオプション取引のモデルを組んでいたらしい。

トレーダーは向き不向きがはっきりしているなと克貴は感じた。高度な方程式構築能力と一種の動物的で獰猛な勘が必要で、努力で追いつけるものではないなと尊敬の念を覚えた。

しかし自分が損をすると、もう少しうまくやるにはどうやれば良かったのかと考えが巡ってしまう。宿泊所に帰る最中も書店で買ったトレーディング本を読み続けていた。

投資銀行部門ではトレーディングは扱わないが、どこか参考になるものがある気がしていた。それが何なのか輪郭すらつかめなかったが、かわりに共用部のドアノブをつかんだ。

するとキッチンから日本語の歌が聞こえてきた。

克貴は恐る恐る声をかけた。

「こんにちは。もしかして日本の方ですか?」

そう克貴がたずねると、大人の色気をまとった男は優麗にほほ笑んだ。

「山崎だ。トレーダーの卵か?」と威圧感のある男は克貴の持っている本を指さした。

「いえ、僕はIBDなんですが、研修でトレーディングのシミュレーションをしていてうまくいかず……」と克貴は肩をすぼめた。

その様子を見た山崎と名乗る男はコーヒー豆をひく手を止めた。

「初心者がトレーディングでこれだけ考えておけばいいことがある。分かるか?」

「現状を把握し、新しい情報を常に入手することですかね?」と克貴は細い声で答えた。

「それは機械でもできることさ。定量と定性を持ち寄って自分なりの理論価格を持つことだ。それをポジションという」と彼は一切の迷いのない声色で言った。

「失礼ですが、どんな仕事をされていらっしゃるのですか?」

克貴はこのオーラのある中年の男に妙に興味を引き付けられてしまった。

「俺はファンドをやっている」と大人の余裕を感じさせる声で男は答えた。

「ファンドマネージャーですか? すごいですね」と克貴は背筋を伸ばした。

「俺はもう現場は退いていて経営しかしていない。しがない投資ファンドの社長だよ」と山崎社長はさらりとすごいことを言った。

経験がにじみ出るような歳の重ね方が見える山崎社長。聞きたいことが山ほど湧いてくるのを克貴は抑えられなかった。

第七章 銀の翼 前編につづく。2022/7/08更新予定です)

 


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